第1話 入籍は突然に
確かに『好きにしていい』と『丸投げ』は同じだと考える私にとって、今の蒼空はただの無責任男に見えなくはない。
けれどなんとなく、蒼空には事情があるのではないかとも思う。
「そんなつもりはないんだけど、俺と由香さんではやりたい式の内容があまりにも違いすぎるんだ。でも彼女の理想を否定したくはないから、つい任せてしまう。俺の条件は一つだけ。俺側の参列者の人数を、可能な限り抑えたいってことだけなんだ」
意見の食い違いで揉めるカップルなんて見飽きるほど見てきたし、新婦の意見を大切にしたいという蒼空の気持ちはわからないわけではない。
「かしこまりました。新婦様のご要望に沿えるよう、サポートしてまいります。ご安心ください」
そう答えたが、この二人の結婚、なにか普通のカップルと違う気がする。
どうしてそんなに参列者の人数を気にする必要があるのだろう。
他のことは新婦の好きにしてもいいけれど、参列者は減らしたいだなんて。
そもそも結婚式というのは、新しい夫婦のお披露目の場でもある。
自分の親族や友人、お世話になった方々などに、自分達はこれから夫婦としてともに歩んでいきますという、新たな人生のスタートなのだ。
今まで担当させていただいた新郎新婦様も、本当はもっと参列者を増やしたいけれど、予算の関係上無理だと嘆いていらっしゃった。
だからこそ、蒼空の望んでいることの意図が図れなくて、私はモヤモヤしているんだろう。
一瞬だけきゅっと眉間にしわが寄ったけれど、私はそれを咳払いで誤魔化した。
「ごめんね由華ちゃん。後はよろしくお願いします」
蒼空は申し訳なさそうに頭を下げるものだから、私は慌てて両手を振って制した。
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