第1話 結婚は突然に
よくよく資料に目を通すと、新婦様のお名前は『吉崎由香』様。
私よりも二つ年下の26歳とあってか、流行りのミルクティーカラーのロングヘアを緩く巻いている今どきの女性だ。
「え、そうなんですか?」
自分と一文字違いなんていう偶然など、そうそうあるものではない。
吉崎様は前のめりで私の胸元に付いているネームプレートを覗き込んだ。
私のプレートには『菱崎』とだけ記してある。
「ひしざき……さんっていうのね」
「はい。ちなみに名前も一緒ですよ。字は違いますけど、私も由華っていうんです」
吉崎様ににっこりと微笑むと、彼女も驚いたように目を丸くした。
「菱崎由華さん……。すごい偶然だわ」
吉崎様は私の手を取って、きゃっきゃと高く笑った。
されるがままに手を握り返しながらチラリと新郎様を見ると、彼と初めて視線が絡んだ。
その視線には驚きや戸惑い、いろんな感情が混ざっているように感じるのは私の気のせいだろうか。
「……うそだろ……」
そう呟いた新郎様の視線から逃れてプロフィールを確認した瞬間、新郎様のその混ざった感情の理由がわかった。
新郎様の名は、月島蒼空(つきしまそら)28歳。
私の記憶が正しければ、この人物は私と小中学校が同じ同級生であるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます