第646話

「だらぁ!!」ガインッ!

「ふんぬぅっ!」ゴーンッ

「うがぁっ!!」ガギンッ!


奇声を上げて何してるんだって?そんなもん敵の攻撃を受け止めているに決まってんじゃねぇか!


「そうそう、ルドきゅん以外が斬られたら死んじゃうから頑張って防ぎなさい。」

「そう言う事は早く言えっての!?」

「ミラージュウェポンを取り返した効果はあったみたいですけどね。範囲攻撃が無くなっています。」

「その分一撃が重たくなってるけどな!」ガィィィィィン!


刀を失った巨人の攻撃力が落ちると思っていたが、全然そんな事なかった!取り込んだ力を無理やり使っていたからなのか攻撃力が下がってたらしい。今は自分の腕から黒い木刀を取り出して攻撃して来てるんだが、その攻撃がめちゃくちゃ重い!


「ぐんぅ。」ゴゴギンッ

「ちょっとルド兄!盾から変な音がして来てるで!」

「耐久無限でも壊れる事は在るからな!相手の攻撃が強すぎて壊れかけてるんだよ!」


ここに来るまでにもずっと使って来た蛮族の盾。その表面は刀傷でボロボロになり、右手の盾何て下半分が斬られて無くなっていた。感覚から言ってそろそろぶっ壊れるぞこれ。


「パパパラパッパラー!そんな時にはこれや!【装備直す君】~。これならどんだけ傷付いた武器でも直せるで!」

「使ってる暇が無いだろうが!」ゴインッ パキッ「あっやべ!?」


左手の盾の真ん中に罅が入った!次攻撃受けたら真っ二つに割れちまう!!


「誰でも良いからアイテム使う時間作ってくれ!」

「そうは言ってもですね!ふんっ!私達も手一杯ですよ!」

「くそ!攻撃しても攻撃しても傷が治るのは何でなんだ!」

「治るというか傷を受けていない様に見えますわよ!」

「フェンリルが噛み付いても平気な顔してる!こいつ変だよパパ!」

「。・゚・(ノД`。)・゚・。うわぁぁん」

『なんぼ攻撃して効いてるように見えへんで!』


これだと本当に手詰まりじゃないか!一体どうしたら良いんだ!


『お待たせしました!修正パッチ完成です!』

『いやぁ、大変だったねぇ。そいつがシステムの大半を乗っ取っちゃったから作るのに苦労したよ。』

『緊急事態ですので、オリジンスキルを持っていない人達も強制的に覚醒させます!力を合わせてそいつを倒してください!』

『なおこのメッセージは自動的に止まります。返事できないのでごめんねぇ!』

『私達も頑張りますから、皆さんも頑張ってください!』


天高くから巨神様と空神様の声が響く。その言葉が聞えたのと同時にそこかしこでまばゆい光の柱が立ち昇っていた。


「ちょっイルセア!?」

「イルセアさんが滅茶苦茶光ってます!?」

「これが覚醒って奴ですか?私も体験してみたかったですねぇ。」

「これそんな良い物じゃ無いわよ!体を勝手に弄られてる感覚が凄いの!」


光りの中心に居るイルセアが実況報告してくれている。うーん、体を内側から変えられるってどんな感覚なんだろうな?


「ってうおっ!?お前は待ってくれたりしないのかよ!」ガインッ!

「ルドきゅんは敵に集中しなさい。」

「くはっ!やっと終わったわ!<原色魔法>を覚えたわよ!」

「おめでとうございます!これで『ティーターン』全員がオリジンを覚えましたね!」

「効果はどんなもんなのでしょう?気になりますねぇ。」

「それじゃあ見せてあげるわ。<原色魔法(赤)>」


イルセアの指の先から、真っ赤な球体が飛んでいき巨人に命中する。攻撃を喰らった巨人は・・・。皮膚が焼けただれてる?だというのに命中した腕を掻きむしってるぞ。挙句の果てには子供の駄々の様にブンブン振り回し始めた。こりゃ一体どういう事だ?


「原色魔法の効果は色で想起される現象を引き起こすのよ。今回は赤色に高熱と辛み、そして痒みを入れて見たわ。」

「それで掻いたり腕を振り回したりしてるんですねぇ。」

「それもすぐに治ってしまうみたいですけどね。」


タンケの言うように、アードザスの腕が徐々に元に戻り始めている。


「でも修理する暇は出来たで!という訳でそおーい!」

「うおっ!?」パリーン!


巨人の攻撃が止んでいる間に、ルリが壊れかけの盾に向かって瓶を投げつけて来た。瓶は盾に命中し割れて、中身の薬品が飛び散る。


液体の掛った盾が、光りを放ちながら徐々に元に戻って行き・・・・。ついでとばかりにさらに光輝いて形を変え始めたぁ!?


「ちょちょちょっ!今変化されるのは不味い!あいつの方が早く動いちまうって!」

「ここは任せて下さい!」

「そうよ!私達が足止めするわ!」

「だ、だからルドさんはどっしり構えておいてください。」

「どんな盾になるのか楽しみですよ。」

「僕だって盾役は出来るんです!だから任せて下さい!」

「さぁ張り切って使えないリーダーを支えますわよ!」

「ルゼダだけ酷い!?」


早く、早く変化が終ってくれ。じゃないと皆が危険なんだ。


「落ち着いて、しばらく任せなさい。大丈夫よ。蘇生薬も在るんだから。」


師匠にそう言われるけど俺はソワソワして落ち着かない!早く変化が終ってくれぇ!


目の前でリダ達が戦っている。オリジンスキルが強烈な光を放ちながら炸裂し、巨人の動きを阻害している。


だが、アードザスも負けてられないとしっかりと反撃し、その反撃をクリンの奴が夕闇の色をした盾で受け止めていた。俺はてっきりクリンもそのまま切り裂かれると思っていたから「止めろ!」何て大声をだしてしまったが、クリンはそのまま元気に動き続けている。


アードザスの方は、クリンに攻撃した事で変化が在った。樹の状態だった時に見た人の顔。その顔の本人がアードザスの体からニュルリと排出されたんだ。


これには俺も仲間もクリン本人もビックリ!どうやら<逢魔の盾>というスキルに内包された人を操る力を飲み込み無効化するって力が取り込まれた人を分離する事に成功したらしい。


勢いに乗ってどんどん攻撃して行く仲間達。クリンはその中心となって殺された取り込まれた人達をどんどん助け、ルリがその人達を回復して戦力を増やしていた。


「目障りだ。」


体が幾分か萎み、顔も俺とは似ても似つかないようなものに変わったアードザス。だけど体が萎んだ分迫力が増し、一言発したかと思えば周囲に居た旅人達全員を謎の衝撃波で吹き飛ばしていた。


「我が狙いは貴様のみ。大人しくその体を明け渡せ!」


随分と喋れるようになったアードザスがこちらに向かって剣を振るう。仲間達が止めようとするが、吹き飛ばされて距離が開いてしまっていて間に合わない。俺は、変化途中の盾を咄嗟に構えて攻撃を防いだ。


カンッ


とても軽い音がした。盾が放っていた光りが徐々に剥がれて天に昇って行く。俺の手の中には、中央に赤い宝玉をはめ込み、その宝玉を包み込む巨神様のデザインが施されたタワーシールドが握られていた。


巨神双盾 耐久∞ ダメージ半減 神威により障壁を展開可能 消費神威10

世界を守護する神の大盾。創造神達が巨双盾神に送った一品。


盾の変化が終りニヤリと笑う俺。


「これでお前には絶対に負けん!」


だが、アードザスも笑っていた。


「この時を待っていた!」


俺の不敗宣言に被せる様に声を上げたアードザスは、突然その体を解いた。まるで、体を構成している繊維がバラバラになったかの様にこちらに向かって来る。そして、盾を伝い、俺の腕に巻き付き始めた。


「さぁ、我と一つになるのだ!」

「なる訳無いだろう!」

「早く障壁を展開して!その盾なら出来る筈よ!」

「もう遅いわ!」


速度を上げて俺の体を包み込む黒い影。新武器の力を使う暇もなく俺は影の中に飲み込まれて行った。



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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