第643話
さて、意気揚々と戦闘に戻った俺達だったのが1つの問題がここに来て浮上してきた。
「オリジンスキルしか効果が無いとはなぁ。」
「まだ通常スキルが使える旅人が試してみましたが、殆ど効果が在りません。全く無い訳ではないというのが唯一の救いですが。」
「で、今一番活躍してるのがうちのメンバー達だと。」
「他の方々も頑張ってくれています。龍星組や飛行愚連隊、私達英知の図書や魔女の茶会等ですね。ですが、一番戦果を挙げているのはティーターンになりますね。少数クランなのにたいしたものです。」
「ふふん。どうだ。俺が選りすぐったメンバーだぞ!」
「ルドさん!ふんぞり返ってないでちゃんと攻撃を防いでください!さっきこっちに飛んできましたよ!」
「すまんリダ!けど言い訳させて貰えば、ミルバのヘイト誘導がうまく機能しなくなって来てるんだよ。」
『申し訳ありません主様・・・・。』
「その分大きな体と、大きな盾で皆を守るんでしょう?全く、自分の仕事を放り出して話し込んでちゃ駄目よルド君。」
戦い始めてから2時間くらいは経ってるか?最初は戦闘に立たずとも、ミルバの能力で攻撃が全部こっちを狙って来るから攻撃役は自由に動き回れていた。
だが、戦闘開始から1時間位した時くらいに、敵の攻撃があまりこちらを狙わなくなったのだ。何度かミルバを発動し直しても、いくつかの攻撃はアタッカーに向く。
まぁミルバの身代わり能力は今だに健在なので、味方の攻撃は全て俺が引き受けているからダメージは無い。が、相手の攻撃を受けたという事実は変わらない訳で。こちら側が攻撃する隙を作る為に前に出て俺が守る必要が出て来た訳だ。
「私のオリジン<真理究明>にて敵を分析したところ、どうやらヘイト変動に対する耐性を獲得し始めている様なんですよねぇ。」
「マジか。ますますこちらが不利になるな。」
「その分相手の防御力が下がってるみたいなのですがね。まぁ硬かろうが柔らかかろうが一方的に蹂躙されている訳ですし、足止めには数が居れば良いという事なのでしょうけど。」
「で、そんな指示を出したであろう本体様と言えばそろそろあの脳髄が樹に完全に取り込まれそうって所な訳だ。」
ボスの分身たちとずっと戦っている間本体にはどうやっても攻撃出来なかった。その間に向こうは着々と何かを進行中らしく、今や脳髄は完全に樹と1つになろうとしていた。
「あ、あれ見て下さいルドさん!樹が変形していきます!」
「枝が脳髄を包み込んでる、のか?」
「うえぇぇぇ、樹の表面に人の顔が浮かび上がっとるんやけど。なんやアレ気持ち悪い・・・。」
「お姉ちゃん。あれってもしかして樹に倒された人達じゃない?リアルじゃ意識が戻ってないんだよね?」
「・・・・。間違いないみたいです。顔の上にキャラクターネームが見えます。」
「人質って事なのかしら?」
「変化が、終わる。」
青く輝く脳髄が枝の中に完全に隠れ、浮き上がっていた人の顔も波が引く様に樹の中に消えて行った。そして、周囲に生えていた植物が一斉に枯れ始め。塵となって樹に取り込まれて行く。
樹は次第に球体になって行き、ドクンドクンと脈動を始めた。もちろんそんなのを黙って見ている俺達じゃない。メガネの号令に合わせてアタッカーがしこたま攻撃をぶち込んだが、全く効果が無かった。
「見えている球体は中身を守る固い殻って訳か。」
「うぅぅぅ、私の槍も弾かれましたぁ。」
「大丈夫よベニちゃん。走り込みが足りなかっただけよ。」
「そうですよね!走り足りないだけですよね!じゃあ私もう一度走り行ってきます!」
「さて参謀のメガネさん?これからどうするよ。」
「静観しかないでしょうね。攻撃は無意味。ギミックもなし。打つ手が在りません。今の内にこちらの態勢を整えて置きましょう。」
「おっけ解った。とりあえず俺は飯でも配るか。攻撃力アップと自己回復力上昇くらい付けてな。」
「頼みます。」
さらに変化が訪れたのは、敵が球体になって2時間が経った頃だった。その間俺達は装備の点検や食事によるバフの付与。バフ魔法の掛け直しを行って準備していた。
「やっと割れるのか。モグモグモグ。」
「長かったですねぇ。あっこの玉ねぎ美味しい。」
「罅が入ってから長かったわね。それにしてもシチートさんは何処に行ったのかしら?うーん、豚肉最高。」
「こここ、こっちに一緒に来てたんじゃないんですか!?あっそのパプリカ取って下さい。」
「さて何が出て来るんやろうなぁ。牛肉うまぁ!」
「お姉ちゃーん!串投げてぇ!」
「うまうま!」
「(๑・﹃ ・๑)ジュルリ」
『芋もほくほくしててうまいなぁ。』
「皆さん食べるか真剣になるかどちらかにしてはどうですの?あ~お茄子が蕩けますわぁ。」
「ルゼダも人の事言えないじゃない。うん、鶏肉も良い味してる。」
「なんで呑気にバーベキューなんてしてるんですか!?全員戦闘態勢ですよ戦闘態勢!急いでください!」
「「「「「「「「「これ食べてから!」」」」」」」」」」
いやぁ、戦っている全員にバフ効果の在る料理を振る舞うにはどうしたら良いかね?と考えてたら、鍋で料理するかバーベキューしか思いつかなかったんだよな。で、俺が下処理した具材を配って勝手に焼いて食べて貰ってた訳だ。下処理も立派な料理だからな、それでバフが作って訳だ。
「だからそんなのんびりしてる暇は無いんですってば!」
「おっ、メガネの言う通りだな。中からどす黒い光りが漏れて来てるわ。」
「はいはい、それじゃ皆片付けましょう。準備しますよ。」
「皆さん今が緊急事態って自覚在ります?」
「ずっと緊張してても疲れるだけだ。それにこれでバフは盛れたからな。」
「うぅぅぅぅ、そうですけど・・・・。」
ガシャーンッ!
全員が戦闘準備を整えた所で、それを待っていたかのように黒い球体が割れる。中から現れたのは・・・・。真っ黒い巨人?しかもまぁ、俺に似たような顔をしている事で。
「なんでルドさんなんでしょうね?」
「装備迄そっくりなのはどうしてかしらね?」
「ででで、でも持っている物が違いますよ?」
「盾じゃ無いわね。」
「真っ直ぐな刀?日本刀とは違いそうやな。」
「両手に持ってないのも違いですわね。」
「全員攻撃開始です!」
またもやメガネの号令に合わせてアタッカーが全員攻撃を加えて行く。だが巨人は動かない。飛来する様々な攻撃をジッと眺め、自分に着弾しそうになったその時に、ただ1度だけ剣を振るった。
「はい?」
「攻撃が全部掻き消された?いや斬られたんですか!?そんな!あの巨体ではそんな事出来るのはあり得ない!?」
「これはかなり厄介な事になったわね。」
「相手に隙を作って攻撃するしか無いか。」
「私が行くよー!」
「ベニ!十分走れたのか!」
「今200キロ突破したぁ!」
いや軽く言ってるがどんだけ走ってるんだよ。空中だとは言えとんでも無い距離だぞ。
「攻撃出来る人は分散して攻撃を継続!狙いを一点に絞らせないように全方位から攻撃を!ルドさんヘイトの方は?」
「どうだミルバ?」
『・・・・。駄目です。敵意の変動が起こりません。完全に対策された物かと。』
「だそうだ。」
「ではヘイトを向けられた部隊は即座に撤退を。死なない様に立ち回って下さい。」
巨人の周囲から色とりどりの攻撃が飛ぶ。巨人はその攻撃を全て切り伏せ無効化して行った。だが背中側にいくつか被弾。巨人の後ろに居た旅人達を攻撃しようと、巨人はそちらに向き直る。
「今です!」
「行きます!」
その無防備な背中に向かい、俺達の頭上を通り過ぎたベニが突貫する。巨人は周囲からの攻撃を斬る事に集中している様に見えて、攻撃は当たるように見えた。だが、あの巨人と同じ大きさの俺だけには見えた。ちらっと後ろを向きニヤリと笑う奴の顔が。
「やべぇっ!」
「ルドさん!?」
突貫して行くベニに追いつける筈もないが、ダメージに肩代わりは出来る。ベニを対象にダメージの肩代わりを発動させた。
「ルドきゅん駄目!」
「はっ?師匠?」
その時師匠が突然俺の目の前に立ち塞がった。いや、駄目と言われてもすでに発動しちまったんだが?
「死ね。」
「えっ?」
突然の師匠の登場に驚き止まっていると、巨人が初めて喋った。それと同時に木の葉の様に舞う二つの何か。それが、突貫したベニだと気が付くのに少し時間がかかった。そして、気が付いた後には、俺の体も2つに分かれ始めていた。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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