第640話

イルセア達から種子の対処が終ったと連絡が来た。ウィンドラに乗っていた俺はその連絡を受けてアインにザーラタンを降ろす様に伝える。


「解った!降ろしてくれウィンドラ!」

『心得た。』


ザパァァァァァァン!


ザーラタンが海に戻り、ウィンドラが腕を離して上昇する。その時ウィンドラの腕に絡み付いて居た植物がブチブチと千切れ落ちて行く。


「さて、向こうはどう出て来る?」


ゴアアアアアアアアアアア!


俺が相手の次の動きを観察していると、海に戻ったザーラタンが叫び後を上げたと同時にドンドン干からびてミイラになって行く。体もヒレも海の中に居る筈なのにカラカラに乾いて行き、最後には甲羅を残して塵となって消えてしまった。


ドパン!


消えたザーラタンの肉体が在った場所に、巨大な植物の根が生えて来る。その根はウネウネト動き出し、残った甲羅を運び始めた。


ピシッ!パキッ!バァン!がらがらがら・・・・。


そして、甲羅の後方に在った大樹がはじけ飛び、中から気色悪い樹が大きくなりながら飛び出して来た。


「「「「「「「「ぎゃあああああああああっ!!」」」」」」」

「いやうるさ。」


その樹の幹に生えている口が一斉に叫び声を上げる。余りの五月蠅さに耳を塞ぎながら相手の姿を見ると、モッフルとタンケが持ち帰って来た情報そのままの姿に見える。


幹の口から人の脚が飛び出しているのが見える。恐らくあれはあの樹の周りで儀式をしていたという樹人達だろう。種子を破壊されて失った力を取り戻す為に喰われたって所か。


そんな敵の枝の先に生えている目玉はぎょろぎょろと動いて周りを観察し、俺達の姿を見つけた途端に動きを止めた。


「「「「「「「ユルサヌ!ユルサン!ユルスマジ!」」」」」」


どうやら相手はかなりご立腹の様だ。そりゃ大事に育てていた種子を台無しにされたんだから怒るのも当然か。まっ!こいつの好きにさせてたら世界が滅びるんだから相手の都合なんて知った事じゃないけどな!


「「「「「「「許さんぞ虫けらぁ!!」」」」」」」」


突然流暢に話し始めたかと思ったら、根の様になっている鼻からドロッとした黒い液体を吐き出して来た。どう見ても鼻水です。きったねぇなぁおい!


「そんなの喰らいたくねぇな。頼むぞミルバ」

『お守りします主様。』

『我に汚物をまき散らすなゴミめ!ドラゴニックロア!』


ミルバを発動しっぱなしだったが為に、俺を狙って攻撃されている。そうなると必然的にウィンドラも狙われる訳で、俺と同じ様に相手の攻撃が汚いと思ったウィンドラがブチ切れてブレスを吐いて攻撃した。


ウィンドラのブレスが樹の鼻水が空中で衝突してせめぎ合う。結局ブレスと鼻水はお互いエネルギーを消費し尽して対消滅した。


『ぬぅ。我のブレスと同等だと?』

「1人で戦うなウィンドラ!私達も協力するぞ!」

『頼む主よ。我だけでは敵いそうにない。』


アインがクランメンバーに指示をしてウィンドラ全体の武装を発動させていく。機関銃や砲撃にレーザーが樹に向かって次々と打ち出され、ウィンドラ自身も隙を見てドラゴニックロアを撃ち込んでいく。俺?俺はほら守るしか出来ないから。その攻撃を見守ってるよ。


「「「「「「「「「コンナモノキカヌワァ!!」」」」」」」」」」


そんなこちらの攻撃を、樹の上で光っている脳髄から出た光が全て防いでいく。あいつバリアも使えるのか。俺の防御とどっちが固いかな?


「「「「「「「「「シネェ!!」」」」」」」」」」

「させねぇって。」


こちらの攻撃を防いだ樹が枝の先に在る目玉から黒い光線が撃ち出してくる。攻撃速度が速く、ウィンドラの胴体に命中して行くが、ミルバの効果でダメージは全て俺が肩代わりしている。光線のダメージは3000ポイントだから、ノーダメージに出来る。


「「「「「「「「グヌヌヌヌ!!オノレ!オノレェ!」」」」」」」

「今です攻撃して下さい!」


おっ?地上で見メガネ達が樹に向かって攻撃を始めた。海の方からもイルセア達が攻撃に参加している。


「「「「「「「効かぬと言っているだろう!!邪魔だ!」」」」」」」」

「はい残念。お前の攻撃はコッチを向くんだよ。」


残念な事に地上部隊の攻撃は全部バリアに防がれた。樹の方が反撃として地上に手を生やして地上部隊を喰おうとしたが、その手が全部空に居る俺に向かってガチガチと口を開閉させるだけに留まった。


「おいおい、随分間抜けな光景だな?」

「ルドが可笑しいだけだと思うぞ?」

『一部の人間が見たら恐怖で縮み上がると思うが?』


地面一杯に生えている手が全部こっちを向いて、掌の中に在る口を開閉する。確かにホラー映画何かに在りそうな映像だな。まぁ俺は平気だけど。


「「「「「「「「キサマガジャマダァ!!」」」」」」」」


俺が居ると他の奴に攻撃出来ないと解った樹が、脳髄から雷を発してこちらに攻撃してきた。攻撃は俺とウィンドラに命中。HPを200程減らされた。ダメージ3500って所か。


「じゃあ満を持して<金剛巨人体>を発動っと。」


HPの3分の1をコストに払い、ダメージを80%カットする。俺のHPは残り800ポイントだ。


「さて、これでしばらく耐えられるがあのバリアどうっすかねぇ。」


ウィンドラのドラゴニックロアはダメージ60万出てるんだよな。その攻撃が弾かれるって事は、それ以上の攻撃をしないとあのバリアは割れない訳だ。本当にどうっすかねぇ。


「任せて下さい!」


そう考えていたらベニが俺達の横を走っていった。


「ずっと空中を走っていたので力が溜まっていますよ!カウントは100キロです!そして師匠に教わった<厄兎走法>のダメージ倍率はメートル×100ポイント!1000万パワーの力お見せします!」

「「「「「「「「来るなぁ!!」」」」」」」」」


ベニを撃撃しようと樹が攻撃を開始する。だがその攻撃は全部俺に向かって来るので軌道が読みやすく、攻撃を回避しながら一直線にボスに向かって行くベニ。


「ヤァァァァァァァァッ!」パリーンッ!!

「「「「「「「「グオオオオオオオオオオッ!!」」」」」」」」」


そしてベニの攻撃が易々とバリアを貫き、そのまま樹の幹に大穴を開けた。これはやったか?


「「まだだぁ!この世界を壊すまで倒れぬぅ!」」


あらま。まだまだヤル気らしい。大穴が開いた事で口が減ったが、元気に喋ってるし。そもそもこいつは何で世界を滅ぼしたいんだ?


「「あの方の為にこの世界は壊すのだぁ!」」ぶわぁっ


あの方って誰なんだろうな?なんて事を考えている隙に樹に開けた大穴から黒い霧が発生して周囲に広まって行く。その霧を周囲に在る樹が吸い込むと幹が捻じれ、口と眼が生え、小さいボスの様な姿に変わって行った。


「「あの方の物にならない世界等要らぬぅ!」」


あいつ種子じゃなくても分身増やせるのかよ!やばいこのままだと世界が滅ぶ!


「そんな事させませんよ!<仙心夢想><森羅万象>!」

「まったく、Gみたいな奴ね。忌々しいわ。<憤怒の赤>」

「<精霊魔法(守)>皆危ないから下がっててねぇ!」

「( `,_・・´)フンッ」

『全武装展開。大掃除やぁ!!』

「ここは僕達の出番だね。<旭日の剣>!!」

「<救済の祈り>私も攻撃出来るんですのよ!自身の罪を償いなさい!」

「成分分析完了や!生産職お手製の特性除草剤を喰らえ!」

「私はまだまだ走れますよ!」

「周りの草が邪魔だね。<竜牙絶嵐>」

「こちらに都合の良い事が起こりますように。<偶像の歌唱舞台>」

「タンケさんの敵討ちです!皆やっちゃって下さい!」

「全員攻撃開始!あの樹の増殖を止めますよ!」

「「「「「「「「ウオォォォォォォォォッ!!」」」」」」」」」



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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