第637話

「さぁ部隊を二つに分けて移動しますよ!」

「生産スキル持ちも均等に振り分けるで!」

「私達の目的はザーラタンを釣り上げるウィンドラの両椀の防衛だよ!尾の攻撃部隊には人手を集中しているからそっちに増援は必要ない!」

「さぁさぁ各部隊のまとめ役の指示に従って動いて下さい!」


ルドさんがウィンドラに乗り込んですぐ、私達も動き始めていました。ザーラタンを持ち上げはウィンドラ自身の巨大な腕で行われるので、その防衛が主な任務です。


「注意事項としてはあまり腕に近寄り過ぎない事です!敵と例の植物で挟み撃ちになりますよ!」

「防衛拠点の底部には1枚の金属板を使用して下さい。分厚い装甲を使えば一定時間侵入出来ない事が判明しています。材料は使い切っても構いません!」

「生産部隊は先に行くで!全員が安心して回復出来る場所を作るのが先決や!その後あの植物の分析始めるで!」


私はルリちゃん達と一緒に右腕が接地する予定の場所に赴きました。到着と同時に上空から巨大な3本指の龍の腕が降りて来ました。


ガゴンッ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


「おっ?おっ!?おーっ!!」

「ザーラタンが持ち上がり始めました!各員移動には十分注意して!」

「拠点作成を急ぐで!アーロン展開や!」


私達の目の前で海の中に手を突っ込んだウィンドラ。その後海岸全体から潮が引き始め、次第に地面が激しく揺れ始めました。


その後はゆっくりと視点が高くなり空に向かって上昇していきます。離水するまでは揺れが続くでしょうし、しばらく注意が必要ですね。


「地ならし完了!」

「底部設置開始します!」

「同時に壁立ても行くで!時間が無いんや!」

「今まで作った拠点から物資持ってきました!」

「旧拠点の解体も始めてます!」

「敵が襲ってくる前に全部回収するんや!物資奪われんように気ぃつけや!」

「運搬型アーロンが完成したので回収行ってきます!」

「防衛設備増産開始して良いですか!?」

「壁が先や!戦闘班が居るんやから防衛設備は後でええ!」


そんな激しい揺れの中でルリちゃん達の動きが凄いです。ルリちゃんはしっかりと皆に指示出ししてますし、部隊員の人達は不安定な足場の中でどんどん防壁や倉庫を作って行くんですから。


「リダ隊長。索敵班から通電。敵方に動き在り。襲撃を企てている模様。」

「生産途中の拠点を守りますよ。拠点解体に赴いている味方の護衛は?」

「2個中隊200名を派遣しています。恐らく大丈夫かと。」

「そちらにも敵の襲撃が在る筈です。物資を持った人だけは確実に逃がす様に言って下さい。黒い植物が出て来た際は全員全力で逃走する事。誰一人として食べられてはいけません。良いですね?」

「はっ!」

「さぁ戦闘職の皆さんお客様です!丁寧に、十分に、1人1人にしっかりとおもてなしをして上げましょう!まずは戦闘可能地点まで進軍しますよ!」

「「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」」」


私の指示に従って皆さんが動いてくれます。若い私が指示を出して良いのかと思ったのですが、反対意見も無くそのままになったんですよね。どうしてでしょうか?


「何でリダ姉の部隊は軍隊みたいになっとるんやろなぁ。」

「それはあれですよ。この中で一番強い上に、人を指揮するのがうまいからですよ。」

「そういえば元々リダ姉は赤落ちのリーダーしとったんやったっけ。元々人を使っとったんやから指示はうまいか。」

「えっ!?そうなんですか!?」

「あっ、これルド兄から内緒やって言われてたんやった!」


ふむふむ、ルドさんは私の秘密を暴露してくれたみたいですね?これは後でお仕置きです。


ぶるる!「うっ!?なんか寒気が!」

「大丈夫かルド!敵の攻撃か!?」

「大丈夫だ。多分気の所為だから。」


さて、拠点制作予定地点から離れて戦闘領域の構築です。索敵班の情報ではもう少しで敵方の旅人達が襲って来るという話ですから。急いで準備しないとですね。


「では<森羅万象>」


どごぉっ!


私の腕の一振りで目の前に在った森は消し飛びました。この場所がすでに汚染されて、見た目とは違い敵の占領下にある事は知っています。少し試してみましたが、私の<森羅万象>でも樹々と地面は動かせませんでした。ならば、全て真っ新にしてしまおうという訳ですね。


「相変わらず隊長はおかしいよなぁ。」

「だな。オリジンスキルとは言え腕の一振りで地形迄変えるかよ。」

「生産拠点作ってる人たちが見たらむなしくなるんじゃね?」

「向こうは手作業で樹を切り倒して整地してるもんなぁ。まぁスキル使ってるから現実よりもかなり時間短縮になってるけど。」

「はいはい、無駄話は良いですから作った塹壕や盛り土の安全確保をしてください。礼の植物が生えてきたら意味が無いんですよ?」

「「「「はーい!」」」」


因みに言いますと、樹の除去も塹壕作りも風を使ってやりました。強風を使ってこうグイッとやる感じですね。地面と樹は掌握できても、空気は出来ないみたいで良かったです。


さて、追加情報によると樹人達の姿は見えないという事なので、又樹に化けているか例の神様の所に居るのでしょう。ならばこの見晴らしのいい場所は相手に取ってかなり動き辛い場所になった筈です。場所を作るのに何人か犠牲になったかもしれませんね?拠点方向もあらかた樹を片付けてしまいましたし、これでもう奇襲は受けませんよ!


「報告!ウィンドラ腕部付近に件の植物の現出を確認!攻撃を受けています!」

「おや早かったですね。被害状況は?」

「目視による確認だけですが損傷は見当たりません。ですが徐々に腕を登って行っている模様。」

「ウィンドラから連絡!ウィンドラ本体と乗員に被害は無し!登って来ている植物の対処はウィンドラクルーが行うのでこのまま作戦を続行されたしとの事です!」


流石ルドさんですね。ウィンドラとクルー両方をしっかりと守ってくれているみたいです。現状のままなら向こうは大丈夫そうです。私達はこちらの対応に集中しましょうか。


「敵補足!」

「拠点制作間に合いません!」

「ルリちゃん。所要時間は?」

【あと30分あれば壁は出来るで!】

「という事は1時間は防衛しないとですね。皆さん行けますか?」

「盾班配置に着いた。」

「魔法班、範囲攻撃いつでも大丈夫です。」

「銃撃班照準は調整済みです。指示を。」

「近接班、敵が着たら任せてくれ。」

「皆さん準備は大丈夫そうですね。では私の合図を待って各自攻撃開始。フレンドリーファイアは無いのです。思いっきりいぶっ放しましょう。」


すでに風の動きで敵の居る場所は解っています。私はそれぞれに攻撃目標地点を伝え、時を待ちます。


ざわざわ、ざわざわ。


「ごくりっ!」

「なっ、なんか緊張して来た!」

「まだ、まだですよ・・・・。まだまだまだ・・・・・。」

「うわぁ、映画みたい。」

「これってうまく行ったらPVとかに使われるかな?」

「しっ!お前等集中しろ!」


がさがさ、がさがさ、がさ・・・・。ばさぁっ!


「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」」

「攻撃開始!」

「バフ掛けます!」

「魔法班撃てぇ!」

「銃撃班魔法班の撃ち漏らしを狙え!」

「盾班気合入れろ!」

「遠距離攻撃組が終ったら俺達の番だ!今は力を溜めとけよ!」


削っていなかった森の向こうから赤ネームの旅人達が雄叫びを上げながら向かって来ます。よく見ると体の一部から例の黒い植物が生えていますね。何らかの強化を受けていると見て間違いないでしょう。


ですが、我々だって負けていません。飛び交う魔法。飛来する銃弾。敵の攻撃は盾に弾かれ、突出して来た敵は近接の人に切り伏せられています。


「掛かって来なさい。私達は負けませんよ!」



毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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