第634話

部隊員の仲間が騒いどった情報を知る為にチャットを起動する。そこには今回のイベント様に専用のチャット欄が出来とって、そこに最新の書き込みから表示されるようになっとった。


騒いどった最初の投稿はモッフルやな。敵はあの大樹の地下に潜んでる化け物樹木やっちゅう話やった。精霊達を食べて、力を蓄えてるみたいに見えたと。自分達が逃げる為にタンケさんが犠牲になったって話も上がっとる。


その次の投稿はついさっきや。リスポーンしたタンケさんからの情報で、敵は樹木の様な見た目の化け物でスクリーンショットも上がっとった。その見た目は完全に冒涜的な何かに連なる感じやな。見てて気持ちのええもんとちゃうなぁ。


そして、敵の能力は捕食と吸収。旅人がその敵に喰われると、その部位情報が敵に奪われて復活しても治らんくなるらしい。現にリスポーンしたタンケさんはなんとか草原拠点に転移したけど、右手と左足が無くなっとったそうや。


「うげっ!何しとるんやタンケさんは!」

「何かあったのかルリ隊長?」

「タンケさん右手食われたて言うてるやろ?」

「?そうね?それの何が問題なの?」

「タンケさんの右手にはなぁ。厄災武器のミラージュウェポンが装備されとったんや。その手が武器事喰われとる。この意味解るか?」

「「「「「あっ!?」」」」」」


敵に喰われただけやったら問題は無いんやろうけど、さっき見た鑑定結果には捕食と吸収が入っとる。つまり敵はミラージュウェポンの能力を吸収したって事になる。こりゃ不味い事になったで!


「あっ!草原拠点に居る人から今ルリちゃんが言ったのと同じ事が書き込まれてる!」

「それについての続報も上がったぞ。大樹から逃げる時に手の形の草が銃に化けたらしい。」

「こりゃ確定かな?」

「えっ?えっ?えっ?つまりどういう事?厄災武器1つ取られただけなんだよね?それなら他の厄災武器でどうにか出来るんじゃない?持ってる人居るでしょ?」

「その1つが問題やっちゅうことや。ミラージュウェポンは影の武器を生み出す厄災武器。武器を作り出す対価に必要なんは少量のMP消費だけや。つまり、相手はほぼ無限の武器庫を手に入れたも同然ちゅうことや。」

「えーーーーっ!?それってまずくない!?」

「かなり不味いで。」

「情報を受けてルド隊長が一度前線を下げるとさ。最寄りの拠点に引き返すらしい。つまりここに来るぞ。」

「あかん!壁をもっと強固なもんにせんと敵全員に銃撃されたらさすがに持たへん!」

「急いで補強を始めるわよ!」

「後方の拠点も壁の増強を支持しておく!」

「あわわわ!資材発注しとかなきゃ足りなくなっちゃうよ!」

「全員急いで動くで!」


くぅっ!忙しくなって来たで!


一方。沿岸を移動しているイルセア達は・・・・・。


「あちゃー。やらかしちゃったわねタンケ君。」

「何かしでかしたのかしら?」

「厄災武器を敵のボスに奪われちゃったって。タンケ君自身も右手と左手を失くしちゃったらしいわ。」

「旅人なのに?」

「そう、旅人なのに。」

「それは変ね。あなた達には神の加護が在る筈でしょう?どうしてそうなったのかしら?」

「私に聞かれても知らないわよ。」

「お前等!そろそろ潜航するぞ準備しろ!」

『海に潜っても皆さんが平気な様に結界で船体を覆いますが、万が一の為に準備をお願いします。準備不足で死んでしまっても責任は取りませんぞぉ~。コーツコツコツコツ!』

「笑う所じゃないと思うよボン?」


最初の襲撃以降しばらくは散発的な襲撃は在ったけど、島の内部が騒がしくなって来た事もあってこちらは放って置かれたみたい。


お陰で何事もなく島の沿岸部をグルっと回った私達。だけど特に拠点に出来そうな場所が発見できなかったから、沿岸部の調査を打ち切ることになったわ。


飛空艇が降りられる場所を考えるとなると、砂浜が在っても森迄近かったり、崖になっていたりで丁度良い場所が無かったのよね。


その代わり、ボンの能力で海中の調査をすることになったの。どこかの大陸に近づいて敵の増援が送られてくる事が無いように、ザーラタンを足止めする方法を考えるというのが次の私達の作戦。でもそううまく行くかしらね?


「不穏な情報が次々に上がってきているし心配だわ。」

「捕食と吸収に侵食よね。その3つを持っているなら、ザーラタン自体が乗っ取られている可能性は大いにあるわね。」

「足止めするにはその本体を叩かないと行けない!何て事になったら、私達は地上部隊と合流しないといけないわね。」

「旅人の撃退以外は成果を上げられて無い物ね。海中で何か見つかると良いわね。」

「潜航開始!」

「潜航開始なの!」

『潜りますぞー!』


ゴボッ!ゴボボッ!ゴボボボボボボボッ!


船体が徐々に海に沈んでいくわ。甲板迄海水が上がって来た後は、透明な膜が海水の侵入を防いでどんどん海中の様子が見える様になったの。


海中は綺麗な物ね。ゆっくりと前後に動かされる大きな亀のヒレが見えるわ。甲羅の下には多くの魚達が集まっているのも見える。砂浜になっていた所は甲羅の淵の部分で、そこには沢山の海藻が生えていたわ。


潜ったのが草原拠点の傍だった事も在って、船の真横には大きな亀の頭が見えるたわ。でもその眼は濁り切って、何も移していない様に感じるのよね。まるで死骸が動いて居るみたい。


「その感覚は当たりね。ザーラタンはすでに死んでいるわ。」

「あらやっぱり?じゃあこの亀を動かしているのってあの植物なのかしら?」

「そうとしか考えられないわね。でもどうしてザーラタンを選んだのか、それが解らないのよね。」

「それは今後の調査で解るでしょ。」

「さぁ全員目を皿の様にして異変を探せ!ボン!全速前進!」

『目をさらにしたら何も見えませんぞ!ほら!』

「前が見えないよー。」

「誰が目に皿を張り付けろって言ったんだい!例えだよ例え!馬鹿やってないでさっさと進みな!」

『ヨーソロー!』


船が海中を進んでいくわ。敵の襲撃を予想していたけど・・・・。さすがに海中迄は手が届いていないみたいね。付近に見えるのは魚ばかりだわ。


しばらくは何事もなく進んでいたわ、異変が在ったのはザーラタンの丁度尻尾の部分に差し掛かった時。その尻尾が急に私達に襲い掛かって来たのよ。


「シャーーーーッ!?」

「あら、尻尾が蛇になってるのね。まるで玄武みたい。」

「その玄武って何かしら?」

「方角を司る神様みたいな物よ。物語によってはかなり強かったり、加護を授けたり、突っ込み役だったり、漫才師だったり色々だわ。」

「愉快な神様なのね?」

「人になったりもするのよ?」

「外の世界の人は色んな事を考えるのね。」

「あんたら談笑してないで戦闘に加わりな!他の連中はもう戦ってるよ!」


船長であるカーラさんに怒られてしまったわ。だけどただ喋っていた訳じゃ無いのよ?あの蛇の眼も濁っていて死んだ目をしているわ。そして、口を開けた時に見えた喉の奥。そこには光りが射しこまないから生まれた暗闇ではなく、真っ黒い何かが詰まっていたの。


「シャーーーッ!!」

「見えたかしら?」

「えぇ。まずいわね。カーラさん今すぐ攻撃を注視して逃げなさい!あの蛇に攻撃しては駄目よ!」

「はっ?何言ってんだあんた?」

「あの蛇は種子よ。爆発させたら、この島に居るボスが量産されてしまうわ。」

「なんだって!全員攻撃中止!」


そう、あの蛇に包まれた黒い物体。口を開けた時にそれを鑑定したらその正体が解ったの。


堕神アードザスの種子袋:精霊の力を取り込み用意された大量の種子が内包された袋。外敵の攻撃により周囲に種をばら撒き、自身の分身を増やす。アードザスはこの種子を使って世界の崩壊を狙っている。


まさかの内容だったわ。敵が樹精霊を取り込んで居たのはこの種子を作る為だったのね。


「これの対策も考えないといけないわね。」

「本体が倒されたら問答無用で破裂するでしょうからね。凍らせる事は出来ないのかしら?」

「凍らせても海水の影響ですぐに溶けるわよ。同じ理由で燃やす事も不可能。絶望の黒が成功すればもしかしたらという可能性は在るけども、失敗した時のリスクが大きすぎるわ。」

「駄目ね。私達だけで考えてもいい案は浮かばないわ。他の人にも報告しておきましょう。」

「本部のメガネさんに情報を渡しておくわ。」

「ひゃーっ!?蛇さんがずっと追って来てますよ船長!」

「こらボンッ!さっさと逃げないか!」

『ひぃぃぃぃっ!これでも全速力ですじゃー!』


敵の狙いがハッキリしたのは良いのだけど、これからどうしましょうか?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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