第633話

「こんのっ!邪魔するんやない!」

「敵さん自分達の存在がバレたから一気に攻勢掛けて来ましたね!」

「死に体だった赤ネーム達も息拭き返しているってよ!」

「それでこっちバッカリ狙っているって訳?生産職だからって舐められたものね!」

「うち等を舐め取ったら痛い目見るって思い知らせたれや!」

「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」


拠点を作りながら進んでたうち等。やっとルド兄の背中が見えた!と思ってた所で、突然目の前の森が深くなった。


ある程度先まで見えとったのに、急にそんな事になってどうしたんや?と疑問符を浮かべ取ったら、草原拠点の方から敵が樹に化けられると連絡が来たからピンと来た。この目の前の樹は全部敵やと。


せやからうち等はまずその樹を排除する事から始めたんや。アーロンの力を使えば戦闘職に近い近接戦闘が出来る。だからまず目の前の樹をぶっ飛ばして、正体がバレとる事を教えてやった訳やな。


そうしたら次々敵がこっちに向かって来て、中には赤ネームの敵旅人迄来る始末。どうしてこうなったんや!


「そりゃあれだけ宣伝してたらなぁ。」

「『ふはははは!生産職でもアーロンさえあれば戦えるでぇー!』って言ってたもんねぇ。」

「あれで完全に俺達が戦闘職じゃ無いってバレたよな。まぁ戦えない訳じゃ無いんだけどさ。」

「戦闘スキルを伸ばしてる人と比べたらねぇ。まぁその問題をこのアーロンが解決してくれたんだけど。」

「それで次はそんな厄介な物は先に壊してしまえ!って重点的に狙われてると。もしかしてルリ隊長はこれを狙って?」

「そそそそ、そうや!うちはこれを狙ってたんや!これで前線の負荷も下がるっちゅうもんやで!」

「絶対嘘ね。」

「嘘だな。」

「嘘だね。」

「嘘よねぇ。」

「何でバレた!?」

「「「「そんなに冷汗掻いてたらバレるわ!」」」」

「おーい、こいつ等片付けるの手伝ってくれぇ。後方に何人か送ったから人手足りてねぇんだわ。」


うち等が倒した樹人を捕虜として確保してる旅人から応援要請や!今すぐ行くで!


「あっ逃げた。」

「まぁ私達も行きましょ。人手が足りてないって言うのも間違いないのだし。」

「まさか最初に作った生産拠点が襲われるなんてなぁ。」

「草原拠点の仲間が様子を見に行ったら、あいつ等壁が壊せないからって見えている範囲の自動防衛設備を破壊して回っていたって話だもんなぁ。」

「残っていた仲間が整備追い付かないから戻って来て!って泣きついたんだから仕方ないじゃない。補給路の大事さは解ってるでしょ?」

「よっしゃ!これで全員捕縛出来たな!ここに拠点作って前を追いかけるで!」


後2~3個くらいなら拠点を作れる程の資材は在る。そこに牢屋でも設置して放り込んでおけばええやろ。さぁ先言った人たちを追いかけるでぇ~。


時折急に深くなる森を片付け、襲って来る赤ネームの旅人を撃退しながら徐々に進む。道中の話で敵の攻勢も激しくなって来たから、拠点の形を工夫して対処しよかって話になった。


具体的には拠点の形を円から星形に変えて、その突き出した角の部分にタレットやミサイルを設置するっちゅう奴やな。


敵が壁の凹んでる部分に入り込んでから、防衛設備を起動して殲滅するって寸法や。それまでは設備の姿が見えへん様に壁の内側に隠す様に改造もした。余計に資材は必要になるけど、それでもやらへんよりはええやろ。


「建築途中に襲って来る事も多くなったけどなっ!」バキッ!

「壁はどのくらいで出来るのかしら!」ボンッ!

「あと10分欲しいな。」

「壁だけでも完成したら中に逃げ込んで防衛線するぞ!」ドパパパパパパパッ!


うちのアーロンは殴る事と掌から弾を発射する事しか出来へん。だから今はもっぱら前に出て盾職の真似事をしとる。


他の人らは、自作の榴弾を発射出来る大砲を背中に装着してたり、足をキャタピラにして腕の他にクレーンを装着してたり、両手を回転式のガトリング砲に変えてたりと色んな改造をしとる。うーん、人のを見てると自分も色々と弄りたなって来たな!


「ん?あれ?前線の人達戻って来てない?」

「ほんまか?ほんまや。でもどないしたんやろ?」

「誰か救援出したか?」

「誰も出して無いわよ?」

「補給部隊を援護!周辺の安全を確保するぞ!」

「「「「おーっ!」」」」


うち等だけでも余裕で撃退できてたんやけど、なんでか前線から戻って来た仲間のお陰であっという間に周りの敵は排除された。前線組が戦ってくれている間に、うち等は壁を作り上げたで。


そんでもって、壁の中に入ってもろもろの設備の増産と設置を行ってから前線から来た人達に話を聞く事にした。


「うちが補給部隊の隊長しとるルリや。其方さんは何もんなん?」

「俺はクラン『ワンダラー』のダンドって盾職だ。後方に居る補給部隊に前線の情報を

伝えに来た。」

「それっておかしくない?情報ならチャットで伝えれば良いじゃない。怪しいわねぇ?」

「詳細鑑定してみたけど本当みたいだぞ?で、チャットでは言えない情報って何だ?」

「あっいや。別に言えない訳では無いんだが、実物も在った方が良いだろうという事でルド隊長から後方に行けと言われたんだ。」

「そう言うって事は何か発見したんやね?」

「あぁこれだ。」


そう言ってダンドはんが取り出したのは、ガラスみたいな容器に入れられたどう見ても真っ黒い手やった。


「気色っ悪!?」

「人の手を持ってくるとかあんたどういう神経してる訳?」

「猟奇的なのはちょっと・・・。」

「いやいやいや!良く見てくれ!これは植物だ!」

「あっ本当だ。こいつ根が在るよ。」

「うわっ!よく見たらこいつまだ動いてるぞ!」

「シャーーーッ!」

「掌の中に口が在るとかそういう妖怪の類かいな?」

「こいつの分析も頼みたいだそうだ。前線に居ると詳細に調べる時間も設備も無いからってさ。」


ふむふむ、ルド兄はこいつが今回のクエストに深く関わっとると思ってる訳や。でもこんな植物今まで見てへんかったけどなぁ?


「こいつは何処に在ったん?」

「それが解らないんだ。いつの間にかルド隊長の脚に無数に噛み付いててさ。最初はヒルかと思ったんだがどう見ても違うだろ?それで引き剥がしてみて発見したって訳だ。」

「うへぇ。想像しただけで寒気が・・・。」

「私は鳥肌が立ったんだけど・・・。」

「このケースは?」

「前線に居る友魔使いが餌を入れる為に使っていた容器を貰ったんだ。大型の友魔が噛み付いても破れない様に出来てる頑丈な物だからってな。」

「それ正解だったかも知れないわ。」

「おっ?鑑定の結果出たか?」

「詳しくは体組織に一部を取ってからになるけど、詳細鑑定の結果はね。堕神アードザスの手っていうらしいわよこいつ。属性は闇・浸食・捕食・吸収。弱点は光・加護・神・生命ですって。」

「なんじゃそりゃ?聞いた事ない属性バッカリなんだが?」

「私も知らないわよ。浸食は状態異常で見たことあるけど、捕食と吸収属性なんて知らないもの。」

「加護と神と生命っていう属性も知らないよな?もしかして隠し属性?」

「そうだとして、何で今その鑑定結果が出るんだ?今まで見た事ないんだろ?」

「だから知らないってば!」


ドドォーーーンッ!


新しく確認された属性について考察しとったら、大樹の方向から大きな爆発音が響いて来た。アーロンを防壁の上に立たせてインベントリから望遠鏡を取り出して確認すると、大樹の下からなんや煙が上がっとる。天辺付近からは炎と煙が立ち昇っとって、クジラが急いでその場を離れるのが見えた。


「あれはモッフルのエーちゃんかいな?逃げとるって事は精霊の保護は成功したんやろか?」

「大変!植物が!」

「あっ!?枯れてる!」

「一体どうして?」


ダンドはんの傍に残っとった皆が容器に入っとった植物を見て驚いとる。慌てて様子を確認し手に来ると、植物は見るも無残に枯れ果てて、塵になって消えてしもうた。


「鑑定は!?」

「・・・・・。この状態じゃ無理ね。唯のゴミと出るわ。」

「ぐわーっ!せっかくの手掛かりがぁ!」

「ねっねっねっ!大変大変!」

「こっちも大変なんだよ!」

「そうじゃなくて!チャットを見て!敵が崇めてる神様の正体が解ったって!後それに関しての続報が今上がってる!」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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