第552話

【さぁ、ハプニングがありましたが試合は続きます!だからそんなに殺気立たないで下さいね?】

【ちゃんと機会は用意するから抑えてねぇ。しっかし、こんなに精霊ちゃんの事を思ってくれる人が多いとは思わなかったよ。】

【見た目は小さな女の子でしたからねぇ。あんな子供が爆弾にされたと聞いたら・・・。はいはい落ち着いて下さーい!今すぐ攻めようとしない!!】

【まっ、今の君達じゃ多分辿り着けないと思うよ?だから、このお祭りでしっかりと自己強化してから行こうね。】

【さぁこの話題は危険なのでここまでにして、次の試合の説明です!!】

【今回は趣向を凝らして戦い方を変えるよ。試合内容は障害物レースだ!えっ?なんで突然変えたのかって?そりゃもちろん次の戦場が森の中になるからね。その中で自由に動けるようにだよ?】

【もう空神様ったら。せっかく話題を逸らしたっていうのに蒸し返しちゃ駄目ですよ?さぁ選手の入場です!まずはルド・イルセアペア!鉄壁のルド選手と魔法使いのイルセア選手。イルセア選手の方はまだ本気を出していないという状況です。このレースでどんな動きをするのか期待ですね。】

【おっ?反対側からも選手が出て来たね。こっちは獣人種の2人だ。豹と虎かな?ネコ科の女性コンビだよ。】

【ニャーゴ選手とトラジ選手ですね。この2人は先の戦いで俊敏な動きで相手を翻弄し、その鋭い爪で相手を倒しています。】

【コンビネーションも良いからね。これはたとえルド君だとしても苦戦するんじゃないかな?唯の戦闘じゃなくてレースだしね。】

【さぁ試合開始前の対話が始まりますよ!!】


「少し良いだろうか?」

「ん?俺か?」

「そうだ君だ。」


何やら虎の人が俺に声を掛けて来た。特段敵意的な物を感じない。何だろうか?


「礼を言いたいんだ。私達を助けてくれてありがとう。」

「それだけじゃない。あの精霊達を助けてくれてありがとう。」

「いや、俺は助けられて無いぞ。だから礼を言われる筋合いはない。」

「いや、君は確かにあの子達を助けたんだ。私達はその光景を見ている。」

「私達も精霊と交流が在る。だからこそ、あんな事をした奴等が許せない。純粋無垢な精霊をあのような兵器に改造した奴等にはこの爪をぶち込んでやる。」


そう言って牙を剥きだしにし、爪を伸ばす両名。そうか、君達も仲間か。


「だからと言って勝負に手は抜かないがな。」

「私達は必ず仇を取ると誓った。あの子達の思いを受け止めた君には悪いが、力を付ける為にも負けられなくなったのだ。だから先に謝罪を。」

「いや、謝罪はいらん。俺達も同じ思いだからな。だからこそ、俺達も負けられない。」

「それにこちらが劣っているように言う物じゃないわよ?勝つのは私達ですからね。」


好戦的にほほ笑むイルセアに相手の2人が驚いた顔をする。おっと?俺の方も見てるな。あぁ、俺も笑っていたか。


「ふふふ、お互い引けない訳だな。」

「ならば全力で勝負するとしよう。」

「そうだな。そのほうが後腐れが無い。」

「もし私達が勝ったら、力を貸しなさい。」

「ならば、私達が勝てば力を貸して貰おう。」

「えぇ、良いわよ。」


どっちが勝っても攻める時に協力するって約束だな。2人はかなり強そうだし、味方に引き込んでおくのも悪くない。


「もちろん試合に参加していない奴でも協力してくれるのは嬉しいぞ。聞こえてるかどうか解らんがな。」

「聞こえてるみたいよ?」


周りを見ると拳を突き上げている人達が見える。その中には樹人種の人達も見える事から、彼等も相当腹に据えかねている様子だ。


【もう!選手も蒸し返したら収集が付きませんよ!】

【まぁまぁ、これで彼が奴等を攻める時の旗頭になってくれるんだから良いじゃない。これで勝手に攻める連中は居なくなるよ?】

【それもそうですね。ではそろそろレースの説明です!!】

【まずは基本的なルールの説明だね。今回は友魔や乗物以外全部使って良いよ。走るコースは一緒で妨害も出来る様になってるよ。持てる力を全部使って相手より早くゴールしてね。あっ、外部からの協力は禁止だからねぇ。自分1人の力で乗り切って。】

【パートナーの力は頼って良いですよー。1人じゃなくて協力して乗り越えて下さい!】

【最初のコースは林立する柱の中進む物だね。避けても良し破壊しても良しのコースとなるよ。】

【次のコースは沼地になります!毒沼ですので触れるのでしたら気を付けて!】

【その次は惑わしコースだね。幻術が掛けられていて、次のコースまでの距離や自分の居場所が解り難くなってるよ。】

【最後は火力勝負!結界の破壊です!!】

【ゴール直前に在る結界を破壊すれば晴れてゴールとなるよ。このコースをどれだけ早く抜けられるかで勝敗を決めるんだね。そうそう、今回から負けてもペナルティは無しになるよ。だから気兼ねなく頑張って!】

【審判はおなじみパンシーンさんでーす!公平なジャッジをお願いしまーす!】


「双方、準備はよろしいですか?」

「いつでも。」

「大丈夫だ。」

「負けないわ。」

「ぶっちぎってやる。」

「では、レース開始!!」


俺達は同時に駆け出す。相手はすでに柱の中に飛び込んで飛び跳ねながら移動してるな。


「私達はどうするの?」

「こうするのさ。」


俺は最大迄巨大化してイルセアを肩に乗せた。これなら一歩がでかくなるし、邪魔な障害物は無視出来る。


「ここまで大きくなれるようになったのね。」

「金剛巨人体の熟練度が上がったからな。いまは50メートルまで巨大化できる。」

「神話の中の巨人の大きさね。何でもかんでも飲み込んじゃうのかしら?」

「残念ながら鉄の胃袋は無いな。さぁ行くぞ!しっかり捕まってろよ!」


俺は柱を破壊しながら進む。追い上げる俺達に、前を走っていた2人が驚いが表情をしているな。


「くっ!負けないわ!」

「恐竜に追いかけられているみたいで怖えな!はっはっは!」

「向こうもスピードを上げたわよ!」

「すぐ追い抜いてやる!」


そうは思っても、なかなか追いつく事が出来ずに柱エリアは終わってしまった!次は沼地コースだ。何と前方を走る2人は空中で何かを蹴りながら進んでいく。


「どうなってんだアレ?」

「魔力の動きを感じるわ。多分空気を固めて足場にしてるのよ。でも消費MPが大きいみたいね。あれは長時間は使えないわ。」

「うっし、ならこのまま突っ切る!」

「毒沼なのに大丈夫なの?」

「俺には純潔が在るからな。毒など効かん!」


俺は沼地に足を突っ込む。ぐっ!これは思った以上に動きにくいぞ!追い付きそうだった2人がどんどん先に行ってしまう!


「もう、しょうがないわね。私が足場を作るわよ。<水氷魔法>【アイスカーペット】!」


イルセアが杖を振るうと、俺の前に氷の道が出来た。これ乗って大丈夫か?


「大丈夫よ。そこは私を信じなさい。そう簡単には壊れないわ。」

「うん、これなら大丈夫そうだな。」

「ルド君。そのまま踏ん張ってね?<雷嵐魔法>【ティルウィンド】」

「うおっ!?」


イルセアが作った氷の床に乗って、いざ走り出そうとした瞬間に背中から強い風が吹いて来た!これもイルセアの魔法なのか?


「そうよ、言ったでしょ?私はポイントを使って魔法を習得したって。」

「凄いな。他にも在るのか?」

「えぇ、隠し玉がね?さぁ追い付くわよ!」


もう一度杖を振るうイルセア。氷の道と追い風によって、グングンとスピードが上がり空中と駆ける2人に迫る!


あと少しと言う所で毒沼コースが終り、惑わしコースに入ってしまった。目を離したつもりはないのに、前を走る2人の姿が消える


「どこ行った?」

「解らないわね。私の眼にも見えないわ。」


俺が周りを見回すと、2人はお互いはぐれない様にジグザクにゴールに向かて走っている。これはどっちかが幻術に強い耐性を持ってるな。


「状態異常耐性なら俺も自信が在るけどな!」

「ここは任せるわね。」


俺は真っ直ぐゴールに向かって走る。ゴール前の結界に辿り着いたのは同時だった。


「こっからは火力勝負!」

「私達が負ける筈はない!」

「イルセア頼む。」

「任されたわ。<憤怒の赤>」


殴るけるで結界の破壊を試みる相手チームを尻目に、惑わしのコースの間ずっと瞑想を続けていたイルセアに後を託す。そして杖の先に太陽を生み出したイルセアが結界に向けて魔法を放った。


チュィンッ。パリィィィィィン!!


「「なっ!?」」

「お先!」

「勝者!ルド・イルセアペア!!」

【ゴーーーーーール!!勝者はルド・イルセアペアです!!】

【あっという間の出来事で僕達も実況する暇が無かったね。】


割れた結界を唖然とした表情で見つめる相手ペアを尻目に、俺の足はゴールテープをっ切った。同時に告げられる勝者宣言。これで俺達の勝ちだな!

 


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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