第545話
さて、待合室に戻って来た訳だが師匠も係の人に次の試合について話が在ると連れて行かれた。イルセアもまだ戻って来ていないようだがどうなってるんだろうな?
「あっルド様!待ってましたよ!」
「おっ次のパートナーはローズか。他の2人と違ってちゃんと待ってたんだな。」
「はい!準備もばっちりです!!」
そう言って手に持ったメイスを振り回すローズ。最初に出会った時は戦士みたいな話し方をしていたのに、今やおっとりとした神官みたいな話し方をしている彼女。だが武器を持つと昔の血が騒ぐのか、とてもいい笑顔でブンブンとメイスを振っている。
「防具は要らないのか?」
「この神官服が防具ですので。巨神様から直接賜った品なんですよ?」
そう言ってその場でくるりと回るローズ。丈長で纏められた赤い長髪が靡き、良い匂いをあたりに振り撒く。
ローズが来ているのは巫女装束のままだ。上半身には白衣と千早を身に纏っている。袖の部分が風になびいているな。足元はもちろん緋袴。あの赤い袴だな。
脚には白足袋と草履を履いている。本当に防御力が在るのか?と心配になる装備だが、巨神様が渡した装備だというのなら多分心配いらないだろうな。
「どうです?似合います?」
「あぁ、とても良く似合ってるよ。」
「やりました!ルド様に褒められましたよ巨神様!」
嬉しそうに飛び跳ねるローズ。その反動でメンバー1デカい山脈がボヨンボヨンと撥ねる。着物から零れ落ちそうだからちょっと落ち着きなさいな。
ポーンッ♪「ルド様・ローズ様。試合時間になりました。会場までお越しください。」
「おっ、呼ばれたな。それじゃあ行くか。」
「はい、お供します。」
「いや、横に並んでも良いんだぞ?」
「良き妻は夫の3歩後ろを歩くと聞きました!だからこれで良いのです!」
いや、それは大分昔の価値観だと思うぞ。まぁ本人がそうしたいなら止めはしないけど・・・・。
「ささ、早く参りましょう。皆様を待たせては申し訳ありません。」
「それもそうだな。それじゃあ行くか。」
会場の入り口ではまた係の人が待っていた。今度は遅れて来なかったことにほっとした様子でそのまま舞台に行くように促される。心配かけてすみませんね。
【さぁルド選手の試合も3試合目です。さすがに大勢の女性を妻にしているという事で男性から向けられる嫉妬と怨嗟の念が強くなってまいりました!】
【彼は今回のパートナーともう一人を妻にしているからね。恨まれても仕方ないと思うよ?】
【その恨みは試合で晴らして頂きましょう!さぁ今までルドペアが遅刻して出来なかった選手入場です!】
【まず入って来たのはルド・ローズペアだね。今まで鉄壁の防御を見せたルド君と、姉さんの巫女であるローズさん。もちろんルド君が盾でローズさんが攻撃役という編成だよ。】
【次に入って来たのは何やら怪しい雰囲気を纏う2人組!歪んだ杖を持って黒いローブを着ているのがスイモさん。もう一方の黒い陰陽服を纏ってお札を大量に持っているのがアマイモさんです!】
【2人共術師タイプの職業だね。一体どんな戦いを見せてくれるのか凄く期待してるよ。】
【さぁ両者舞台に上がりました。審判の登場です。】
【サンドリア王国の衛兵部隊長のパンシーンさんです。今までの試合も彼女が審判をしてくれてたんだよ。】
【さぁ試合開始、の前に何やらスイモペアが話しかけ始めました!】
【試合前の舌戦だね。しばらく聞いてみようか。】
「げっへっへっへ!良い体してるな姉ちゃん!こりゃ試合が楽しみだ。」
「しかも巫女とは、清楚な姿を汚すのは非常に興奮しますね。大衆の面前であられもない姿をさらして差し上げましょう。その後で私達が楽しみますがね。」
「?この2人何言ってるんだ?頭おかしいのか?」
「私に聞かれても解りません。この方々は何を言ってるんでしょうか?」
何やらジロジロとローズの方を見ながら変な事を言い始める2人。言っては何だがそんな事させる訳無いだろう?どんな攻撃も俺が引き受けるんだから。
「これ以上不愉快な視線を向けないで頂けますか?不快です。」
「げひひひひ、その強気な態度もすぐに変えてやるよ。」
「さぁ審判さん、早く試合を開始して下さい。」
「俺の事は完全に無視かい。」
「・・・・双方準備はよろしいですね?試合開始!!」
いつもの如く双璧と守護者を発動させる。さて、どんな攻撃をしてくるんだろうな?
「あなたは止まりなさい。<停止>。」
「こいつもお見舞いしてやるぜ?<スキル封印>」
陰陽師の方が投げた札が盾に張り付いたと思ったら体が一瞬動きを止めた。その間にローブの方から黒い靄が飛んで来て俺の体を包む。
「ぎひひひひ!これでお前は何も出来ないだろう!」
「さぁ、では私達のショーを始めましょう!まずは<洗脳>」
「薄い本の御約束<感度3000倍>だぜぇ?」
黒い靄に包まれている間に陰陽師が別の札をローズに向かって投げる。ローブの方からはピンクの靄が飛んでいった。
「こんな物当たりません!」
「残念そこは俺の領域だ。ぎひひひひひ!!」
「きゃっ!?」
ローブの方が杖を振るうと、ローズの足元が沼地になって動きが止められた。そして飛んで来た札と靄がローズに命中する。
【あーっと!ここでスイモペアの攻撃が命中!一体どうなってしまうのか!!】
【あー、彼等は旦那さんの前で奥さんを辱めようとしてるんだねぇ。下手したら赤落ちするようなスキルを良くもまぁここまで集めたもんだよ。】
「くくくくく、これであなたは私の意のまま!」
「どんな事も思いのままだぜぇ?」
「さぁ、まずはじゃまな服を脱いで頂きましょうか?」
「その後は体の疼きを自分で沈めてみなぁ?まぁ無理だがなぁ!!」
札が体に張り付き、靄に包まれたローズにそんな事を言う2人。靄の中では影が動き、そして・・・・。
「女性にこのような仕打ちをしようとは卑怯千万!私が成敗します!!」
「「なっ!?なぜだ!!」」
体を巨大化させたローズがメイスを振り上げていた。いやぁ、どんな事をするのか様子を見たいから守護者を切ってくれと念を飛ばして来た時はどうしようかと思ったが、ローズが無事で良かったよ。
【ななな、なんとぉ!ローズ選手は無事です!一体どういう事でしょう!?】
【あー、多分姉ちゃんの過保護が発動したんだろうね。ほら、彼女厄災戦の時に敵に操られちゃったでしょう?その所為でルド君に迷惑を掛けた事をひどく後悔しててね?見てられないから姉ちゃんが力を貸したって言ってたんだ。たぶん、洗脳や状態異常に対する耐性を授けたんだろうねぇ。完全無効化するのはやり過ぎだと思うけど。】
【さすが巨神様の巫女!その身は神様に守られていたぁ!!】
【どうでも良いけど、ヘルプさんこの試合ノリノリだね?やっと頭から実況出来て嬉しいの?】
「このような術は私には効きません!あなた方を倒し、そのスキル。封印させて頂きます!!」ドゴーンッ!!
メイスを振り下ろすローズ。残念ながら対戦相手はすでに移動しており、攻撃は当たらなかった。
「くっ!こうなれば力尽くで言う事を聞かせて見せましょう!!」
「ボロボロにしてから楽しむのも乙な物だぜぇ!!」
「させる訳無いだろうが。」
ジュッ!ボウンッ!!
陰陽師の投げた札が、ローブが放った黒い魔法が俺の盾に当たって霧散する。
「なっ!?あなたは動けない筈!!」
「スキルも使えない筈だぜぇ!?」
「あんなのが効くと本当に思ったのか?」
俺の状態異常耐性は元徳スキルの<純潔>っていう特殊スキルな上に、スキル練度がMAXになってるんだぞ?お前等の状態異常攻撃なんて銀の乙女が全て消し去ってくれたわ!
「よくよく聞いてみれば下種な事ばかり言いやがって。そもそも何だぁ?旦那の前で妻をボロボロにするだぁ?辱めるだぁ?そんな特殊性壁の変態は許す訳には行かないよなぁ!!」
「ぐはっ!!」
「声だけでダメージが入るだとぉ!!」
人の愛を踏みにじろうとする輩にはきつーいお仕置きしてやるぜ!!
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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