第467話
「どうですか?そちらは連絡取れました?」
「だ、駄目ですぅ。チャットも何も送れませーん。」
「だめだよ?もうここはようせいのもりだもん!」
誘拐されているという精霊たちを助ける為に水の精霊に案内されて入った森は、妖精の森という場所だった。その場所は外部との連絡が一切取れなくなるという特殊フィールド。2人は連絡を入れる前に森に入ってしまった事を後悔している所だった。
「貴方は精霊ですよね?」
「そうだよ?」
「では妖精も居るのですか?」
「いっぱいいるよー。ほらあそこにも!」
精霊が指さした先には光る小さな玉が浮かんでいた。無数に浮かぶ光りは辺りをフヨフヨと漂うだけで、特に意思がある様には見えない。
「あ、あれが妖精ですか?」
「そうだよ?せいれいになるまえのちいさいこたちなのよ。このもりはあのこたちをまもるゆりかごなのよ?」
「精霊の仲間が捕まっている場所は何処なんですか?」
「このもりをぬけたはんたいがわなのよ。ようせいをまもろうとしてるせいれいをつかまえてるのよ!」
彼女の言う悪い人の狙いが分からない。聞いている限り男ばかりの様だが、精霊を捕まえて何をしようとしているか、ただ金儲けが目的なのかが2人には解らなかったのだ。だがそれもその悪人達を捕まえればハッキリする。それに、精霊だけじゃなく妖精も目的だとしたらこの森全体が危険だ。
「急ぎましょう。ここまで来てしまっては自衛できない妖精は抵抗できません。」
「いそぐのよ!」
「み、皆うーちゃんに乗って!急ぎます!」
ワン!にゃー!グル!キュー!ゴリッ!ホーッ!ヒヒーン!
ワッフルが呼び出した馬型の友魔、うーちゃんに乗って森の奥を3人目指す。うーちゃんの足は速く、あっという間に神秘的な森を抜け、通常の森に入った。すると森の奥から人の声が聞こえ始める。
「がはははは、あいつの言った通りだな!」
「精霊がより取り見取りでさぁ!これで一生働かなくても良くなりまさぁ!」
「この森を守っていたスートタの連中は今内乱で忙しいみたいだからな!今のうちに荒稼ぎさせて貰うぜ!」
「そうはさせないよ!」
高笑いを上げる男達に赤い髪の精霊が襲い掛かる。精霊の手には滾る炎の塊が握られていた。
「おっとお前達は大人しく捕まるんだよ!」バリバリバリ!
「ぐぅ!?」
リーダー格の男が取り出した髑髏の杖。その杖が黒い光りを放った。光に当たった精霊は、準備していた魔法が霧散して身動きが取れなくなる。
「この杖の力はすげぇっすね!精霊が手も足も出ねぇ!」
「これも謎の男様様だな!」
「そこまで信用して良いんすかねぇ。何か裏が在りそうで俺は怖いっす。」
「そこまで深く考えなくても心配ねぇさ。こっちには他にも色々とアイテムが在るからな!」
そう言いながら、リーダー格の男が茶色い荷物袋を掲げる。中には大量のアイテムが入っているのか大きく膨らんでいた。
「精霊で稼いだら次はあの男を襲いましょうや!あいつの持ってる物全部奪えばさらに儲けられますぜ!」
「そりゃあ良い!前の場所も大量に精霊が居たからな。ここの精霊を捕まえてまとめて売り払ったらかなりの金になる!その後にあいつを襲って俺達で全部頂いちまうぞ!」
「「「がってん!!」」」
どうやら男達がここを襲ったのも、精霊たちが碌な反撃も出来ずに掴まっているのも、その謎の男が関係しているらしい。
「みんな!」
「落ち着いて下さい精霊さん。このまま無策で戦闘をしても精霊さん達を助けられるか解りません。」
「どうしたらいいのよ?」
「そこはモッフルさんの友魔を頼りましょう。」
「み、皆を囮に使うんですか?」
「違いますよ。今捕まっている精霊さん達は後で助けるとして、先に捕まってしまっている精霊さんを助けます。」
友魔に危ない事をさせると聞いて少しだけ躊躇するモッフル。だがタンケは安心させるように笑顔を浮かべて役割を伝える。
「ほかのみんなをさきにたすけるのよ?どうやってたすけるのよ。ばしょがわからないのよ。」
「こう見えて色々と経験して来てますからね。あぁいう人達が考える事は簡単に予想できます。この近くに馬車か洞窟は在りませんか?あれだけ多くの精霊を捕まえていますが輸送手段が見えません。この近くに拠点が在ると見て間違いないでしょう。」
「ち、ちょっと待って下さい。ピーちゃん!オーちゃん!」
ピー!
ヨバレタ!ヨバレタ!
「周りを偵察して来て下さい!洞窟や馬車みたいな何かを隠せる物です!」
ピッ!
ワカッタ!ワカッタ!
飛び発つチビドラゴンとオウム。2匹を見送ったモッフルは次はどうすれば良いのか分からずタンケに視線を送る。タンケはその視線に気が付いて笑顔を返す。
「あいつ等が精霊を隠している場所が見つかるまでこのまま待機ですね。」
「そのまえにあいつらにげちゃうのよ!はやくたすけないとだめなのよ!」
「大丈夫ですよ。あいつらの会話を聞いている限り、出来るだけ多くの精霊を捕まえる事が目的の様です。私達が来る前にすでに売却されている事を懸念していましたが、まだ売り払っても居ない様子。つまりあいつらは精霊郷破壊の噂を聞いて来たのではなく、最近別の国からか来た人攫いの類でしょう。違いますか?」
「そうなのよ。わたしがさとにかえるまでじかんがかかったのよ。やっとのおもいでかえったらあいつらがきたのよ!」
「やはりそうでしたか。でしたら今捕まっている精霊さん達には我慢して貰い先に捕まっている精霊さんを開放しましょう。そうする事で全員を助けられる可能性が上がります。」
「ならこのままみてるのよ。」
タンケの言葉に納得したのか水の妖精は待機する事を了承した。その間にも男達はこの場所に居る精霊達を手当たり次第に捕まえていく。そして今、最後の精霊が捕まった。
「こいつでこの場所は最後みたいですぜ。」
「うっし、じゃあアジトに戻るか。」
「そろそろ今まで捕まえた精霊を買い取りに来る時期っすね。」
「ずっと捕獲してたからなぁ。全部運ぶとなったら大分時間掛かるぜ?」
「仕方ねぇだろ。あの男の注文なんだからよ。まぁ精霊を取りに来て金を払った後は。ぐふふふふ。」
「俺から言った事ですが、兄貴も悪っすねぇ。」
「お前等も同じ悪人だろうが。さっさと荷物を纏めて帰るぞ!」
「猿が帰って来てませんぜ?探しに行きやすか?」
「放って置け、どうせどこかで道草食ってるんだろうよ。」
男たちは精霊を入れた檻を背負子に乗せて運び出す。捕まってしまった精霊は檻の中で項垂れて動かない。あのカラミティモンキーも子の男達に与えられた魔物だった。
男達が帰り支度を始めるのをじっと見守っていると、上空から先程飛んで行った友魔の2匹が帰って来た。
ピィピィ!
ミツケタ!ミツケタ!
「ど、洞窟を見つけたみたいです。」
「荷物を持っている分、あいつ等の足は鈍ります。今のうちに先回りして精霊さん達を助けましょう!」
「みんな、まってるのよ!」
男達に気付かれないように移動を始めたタンケ達は、友魔に案内されて森の中の洞窟に辿り着いた。
「中に他の仲間が居るかもしれません。サイレントオウルに中を偵察させて下さい。」
「わ、解りました。」
ホーッ
サイレントオウルが洞窟の中に入って行く。モッフルは洞窟の入り口から<同期>というスキルでオウルの見ている物を共有して中の様子を探った。薄暗い洞窟の中には人影は無く、数多くの小型の檻が並んで置かれていた。中には先ほど見た精霊と同じ様に項垂れて身動きを取って居ない。
「ひ、人は居ないみたいです。でも、せ、精霊の入った檻が沢山在ります。皆辛そうです・・・・。」
「見張りも置いて居なかったですし、こんな場所に他の人が来るとは思っても居なかったのでしょうね。では時間も在りませんしさっそく中に入って救出を始めて下さい。私はここで男達を待ち伏せします。」
「だいじょうぶなのよ?」
「防衛戦は得意なんですよ。任せて下さい。」
ニコリと笑うタンケ。その笑顔にどこか冷たい印象を受けたモッフルだった。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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何かこの話難産だった・・・・。
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