第463話

さて、門を潜った先はボロボロの木造建築が立ち並ぶ区画だった。まぁスラムって言ってたからな、こんなもんだろう。所々新しい建物が建っていたりもするが、あれは王妃の政策の1つなのかねぇ。


王都の中に入れたからなのか、イオク隊長が先頭に立って城を指さした。


「さぁ王妃様を救うために城に行くぞ!」

「行くわけないでしょこのお馬鹿!まずは情報収集が先よ!」

「まったく反省してねぇなこの隊長・・・。」

「やれやれだね。」

「┐(´д`)┌ヤレヤレ」


他の兵士達と協力して城に殴り込みに行こうとするイオク隊長を宥めながら、チャットでバルドが指定した建物に入る。スラムの中に在って殊更ボロボロの建物で本当にここで合ってるのか?何て思っていたが、どうやら地下室が在るみたいだな。イルセアが下に行く隠し階段をさっくりと見つけてたよ。


地下に続く階段を下りていくと金属製の立派な扉が見えてきた。先頭を歩くイルセアが扉を不規則な順番で叩いた。


コン・ココン・ココン・コン・ココン


すると扉に付いていた小窓が開いて、髭面の男が目を覗かせた。あぁ言うの後ろ暗い場所に良く在るよな。


「誰だ?」

「狂犬の仲間よ。魔女と巨人にその御付きって言えば解るわ。」

「少し待て。」


中で入れても良いか確認してるんだろうな。ゴソゴソしている音が聞こえる。ってか早くしてくれないかね。50人も人が居るとこの通路狭いのよ。


ガシャン


「入れ。」

「ありがとう。」


ガチャリ。


小窓が再び開いて中に入って良いと伝えられた。その後鍵が開く音がした扉を潜り地下室に入る。中はかなり広かった。というか街が丸々地下に入ってる感じだった。扉が在るのはすり鉢状になっている地下街の縁の部分だったらしい。結構いい眺めだ。


「このまま奥に行け。あの中央にある建物、そこでボスが待ってる。」

「解ったわ。」

「王都の地下にこのような場所が在ったとは・・・。」

「お前等王族や兵士達の所為で居場所を失った奴の溜まり場だ。王妃が居た時は殆ど使われてなかったがな。今の王都じゃ安全な場所はここしかない。」


ほむ、王妃様はスラムの住人も平等に扱ってたらしいからな。その時はこんな所に隠れなくても良かったんだろう。門番に地上に安全な場所が無いと言われて兵士達がちょっとむっとしてるな。まぁ上が騒がしい理由に王族が関係しているのは間違いじゃないんだから堪えなさいな。もしかしたらこの人達と協力するかもしれないんだしさ。


おっとそうだシアとアイギス、こういう所は身分を偽って隠れやすいから厄災が居ないかどうか見張っててくれな?


「了解!」

「(`Д´)ゞラジャー!!」


目的地に向かって俺達は進む。ああいう天幕に近い建物はバラックって言うのかね?そんなのが沢山ここには並んでいるな。火を焚いて炊き出しをしていたり、何やら物を売っていたりもする。本当にここは1つの街みたいな感じだなぁ。子供も元気に走り回ってるよ。しばらく進むと奥の方にちゃんとした建物が見えた。これがさっき門番が言っていた建物だな。石造りの立派な奴だ。


「あれは隠し教会みたいよ?この国で昔邪教とされていた教えを広めていたんだって。」

「ほう、よくそんなのが残ってたな。」

「この空間も昔同じように隠し街として使われてたのかもな。それもバルド情報か?」

「そうよ。」

「よく来たな!俺の地下街にようこそ!」


建物の前で談笑していたら、教会の2回部分から真っ赤なガウンに身を包んでワイングラスを片手に持ったバルドが出てきた。うわぁ、完全に裏社会のドンを気取ってるわあれは。


「シアちゃんアイギスちゃん、あれは偽物よね?攻撃して良いかしら?」

「あれ偽物じゃないよー?どうして攻撃するのー?」

「(。´・ω・)?」


それは多分あの格好とドヤ顔にイラっとしたからだと思うぞ。厄災の調査に来たのに何でエンジョイしてるのかねあいつは。


「まぁ中に入れ!話はそれからだ!」


がちゃん!


メイドさんが扉を開けてくれた。そのメイドさんに中に入るように促されたので、素直に俺達は中に入る。あのメイドさんは厄災じゃないよな?あっ大丈夫。なら良かった。っていうかなんでメイドさん?こういう時ってスーツ来た男とかじゃ無いのか?


「ここを管理していたのが彼女なんだよ。久しぶりだな4人共。」

「そっちは豪く元気そうだな?」

「厄災の情報は集まってるんでしょうね?もし何も無かったらこの教会消し飛ばすわよ?」

「それは絶対止めてくれ!俺があいつに殺される!」


へぇ~。バルドが怯える程の使い手なのか。あの何でも殴って解決しようとする奴がねぇ。それとも何か弱みを握れちゃったか?


「それでそっちが追い出された王妃派の兵士達か。あんた達がこっちに付いてくれれば心強いな。」

「・・・・・・協力するかどうかは話を聞いてからだ。ルド殿達の仲間らしいからな。」


あらま、イオク隊長達は完全に警戒しちゃったな。まぁこんな隠し街作ってたら信用出来んか。それともあのうさん臭い格好の所為か?後者の理由っぽいな。


「警戒しているのは解る。だからこっちから先に情報を伝えるわ。女王の処刑は3日後、王都の広場で大々的にやるってよ。実行は第1王子のタブツカだ。」

「なぜ第1王子が!?」

「愛されなかった仕返しだと周囲に言い触らしているらしいぞ?」


うん?そりゃおかしいな。王妃が厳しくしている理由を子供たちは知ってる筈だろ?だからこそ立派な王様になろうと努力したんじゃなかったか?そこんところどうなのイオク隊長?


「間違いない!王子様達は普通とは違うが王妃様の愛情を受け取っていた筈だ!」

「そんなのは知ったこっちゃ無いな。まぁ本当の気持ちは本人の胸の中だな。確認したいなら直接聞くしかねぇ。」


まぁそんな事は出来ないだろうけどな。とバルドは肩を竦めた。俺も同意見だな。


「王妃様の処刑が3日後なのね。助け出すには時間が少し足りないかもしれないわ。それと情報はこれだけじゃないんでしょ?」

「もちろんだ!王が倒れたのは料理長が毒を盛ったらしい。まぁそれは厄災だったっと確認が取れたって言う話だ。その確認をしたのが最近王様に登用された男何だとよ。今もその男が主導で厄災の捜査をしてる。だけどそいつが胡散臭くてなぁ。スラムの連中を中心に怪しい奴はとにかく全員捕まえて牢にぶち込んでるって話だ。後は王妃が幽閉された後から王の女遊びが酷くなった。それでな?お前等に面白い話が在るんだよ。」


なにやらニヤニヤと悪い顔を浮かべてるなぁ。この先を言いたくて仕方ないって顔をしている。もったいぶらずにさっさと言えよ。まぁしょうもない話だろうけどな!


「クインが王の側室候補として城に入ってる。」

「はっ!?そんな事して大丈夫なのか!?」

「クインさんは厄災を見抜けないでしょ?なんでそんな事になるのよ!」

「そりゃお前、毒で弱った時に女に優しくされてコロッとな?あいつあぁ見えて薬学の知識持ってやがってよ。毒の治療に行ってそのまま城に閉じ込められちまってるよ。」


あー、病院に入院してる時にナースさんにときめくあの心理か。それが王様にも働いたと。女王様やるくらいに見た目美人だからなぁクインは。しかもSっ気を相手に感じさせるように意識してキャラメイクしてる。そんな女性に優しくされたら特別に思って貰ってると勘違いしちゃうかもなぁ。王妃様が浮気してたと聞いて傷心状態でも在ったんだろうし。


「王妃の処刑の時に一緒に出て来れるんだとよ。その時に王妃と一緒にクインも助ける算段だ。その為にも人手が要る。だから手伝え。」

「まぁそりゃ手伝うけどよ。王妃も助けるのか?ここに居る連中は悪感情持って無いのか?」

「スラムの連中は誰もあの噂を信じちゃ居ねぇよ。一緒にバカ騒ぎした奴等も偽物と見破る為に一芝居したんだと。捕まえる前に逃げられちまったらしいけどな。随分と悔しがってたぜ?」


かなり強力的なんだなスラムの連中は。それだけ王妃様を信頼してるって事なのか?


「そりゃもう心の底から信頼してるのさ。スラムに疫病が発生した時に直接スラムに来て治療はするわ、飢餓の際にスラム住人が死なない様に食糧支援したりと実際に動いてくれている所を見てるからな。さらにはここに居るガキ共に教育を受けさせてたんだと。おかげで子供達の明るい未来を見ちまってたんだ。だが今回の騒動が起こったろ?しかもその原因が厄災と言う偽物で、スラムに明るい未来を齎そうとした王妃を蹴落としたんだ。ここに居る奴等の怒りはすげぇぞ?」

「大恩ある王妃様を陥れた報いは必ず受けさせます。えぇ、必ず!」


バルドの後ろで立っていたメイドさんが、殺気を漏らしながらそんな事を言い始めた。そう言えばこの子が元々この場所を管理してたんだよな?


「王妃様のお陰で私は勉強する事ができました。そしてこの場所を任される事になったのです。その恩は忘れていません。」

「そう言えばあなたのお名前は?」

「おっと失礼しました。私の名前はプリムラ。この教会の管理者にしてバルドの妻です。」


・・・・・・・・・・・ん?今何か余計な情報が聞えたような?


「私はここに居る狂犬。バルドの妻ですと言ったのです。

「「「「えぇ~~~~~~~~っ!!」」」」


俺達の絶叫が教会内に響き渡った。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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