第461話
ここは王都の地下下水道。その場所で小さな影がスキップをしながら水路を進んでいた。
「るんるるんるる~ん♪悪戯は楽しいなぁ~♪」
調子外れの自作の歌を歌いながら、目的地がはっきりと決まっているかの様に進む影。そして彼は鉄格子で仕切られた行き止まりに辿り着いた。
「笑ちゃーん!来たよー!」
「ゲハハハハ!やっと来たか影!」
鉄格子の向こう側から現れたのはこちらも影だった。だが小さな影と違って実態の在る形をしていた。どうやら姿を見せないようにしているらしい。
「で?どうだったよ今回の作戦は?お前が化けた奴は困ってたか?」
「ううん。全然困って無かった!」
「ぷっ、ぶはははははは!そうかそうか!全く困って無かったか!」
作戦が失敗したというのに笑い声をあげる笑ちゃんと呼ばれた影。
「もう、ずるいんだよあいつ等!僕がせっかく化けてるのに、すーぐ見抜いちゃうんだもん!」
「おっ?モノマネがすぐにバレちまうってか?バハハハハ!お前腕落ちたんじゃねぇか?プクククク。」
「絶対違うもん!あのお邪魔なお姉さんと同じ目を持ってるんだもん!」
「ほうほう、成程?それじゃあ直接狙うのは止めた方が良いかもなぁ。」
ニヤリと口だけを浮かび上がらせて笑う笑ちゃん。
「ならこんなのどうだ?コショコショコショ。んでもって、ボソボソボソ。どうだ?面白そうだろう?」
「うん!うん!それってすっごい面白そう!沢山悪戯も出来るね!」
「そして俺は不幸になる人間をたっぷり観察できる。お互いに良い事尽くめの作戦だ!ぶぁはははははは!」
「あはははははは!じゃあ早速行ってくるね!」
「気を付けろよー。ククククク。」
小さな影は来た道を戻り、下水の外に踊り出す。大柄な影の方は、又暗闇の中にその姿を消した。
その後に、王妃の不貞が発覚し、後継者問題が大々的に騒がれ始めるようになるのはルド達が王都に辿り着く1週間前の事だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺達はガタゴトと馬車に揺られてゆっくりと王都を目指していた。なんでディアで向かわないのか?その答えは随行する兵士の多さに起因する。
俺ってばまだ妖精郷破壊の容疑者のままだからな。何かあった時に取り押させる人員がずっと張り付いてないと行けないんだわ。その為に用意された兵士が50人。イオク隊長の直属の部下らしいんだが、まぁそんな人数をディアに乗せて飛べるわけが無い。
かといって置いて行くわけにも行かない。という訳で馬車でゆっくりと王都に向かっている最中な訳だ。
「しっかし暇だよなぁ。」
「兵士さん達が敵を倒してくれるから楽出来るわね。」
容疑は晴れたとは言え、一部の人達が暴走するかもしれないって事でイルセアさんは俺と一緒の馬車に乗っている。他のメンバー?俺達がパレードしてる間にどっか行っちまったよ!まったくチームで来た意味が無いじゃないか。港町で別れたホウノさんが許可を出したらしいけど本当かよ。
「ふみゅ~。」
「( ˘ω˘)スヤァ」
「ふふ、2人共気持ちよさそうに眠っちゃってるわ。」
「暇なんだろうな。でもなぜイルセアさんの膝で寝てるんだ?」
「もうルドったら、イルセアって呼び捨てにしないと駄目よ?私達は夫婦何ですから。」
「いや、それって厄災の騒動が終るまでだろ?なら今は良いじゃないか。」
「いつボロが出るか分からないんだから普段から練習しとかないと。ほら呼んで?」
「・・・・・はぁ、イルセアってそんな性格だったっけか?」
「ふふふ、女は色々な顔を持っている物なのよ?」
コンコンコン
移動中の馬車の扉がノックされた。外を見るとイオク隊長がこちらをのぞき込んでいる。何か見つけたか?隊長は窓を開ける様にジェスチャーしている。はいはい今開けるからちょっと待て。
「どうした隊長?何か在ったか?」
「仲良く談笑している所悪いがな。そろそろ王都が見えてきている。ほら、あれだ。」
「おぉ!!あれがこの大陸の王都アンファングか!」
「立派な城壁ねぇ。」
「んみゅ?着いたのパパ~?」
「(´つω・`)コシコシ」
ここまで来るのに半月くらい掛かったからな。いやぁ長かった。移動中は馬車から出れんし、中で出来る修行をして何とか暇を潰してたぞ。
「隊長!先に行って手続きして来ます!」
「いや、このまま進むぞ。厄災に入れ替わられたら面倒だ。王都の方には先に連絡もしてある。」
「そうでありました!了解であります!」
部下の1人の提案を即座に却下するイオク隊長。まぁここから王都が見えてるとはいえ、途中何が在るか分からんしな。このまま一緒に進んだ方が問題は少ないだろう。
そう、思ってたんだけどなぁ・・・・・。
「貴様等を王都に入れる訳にはいかん。」
「なぜだ?私は厄災特別対策部隊隊長のイオクだと、そう言ってるだろう。この通り許可証も身分証明も在るが?」
「あの売女の出した許可証など意味はない!さっさと帰れ!」
どうやら事はそう簡単に進まないらしい。そもそも売女て、王妃様に言う言葉じゃないだろうに。
そう思っていたら案の定イオク隊長が切れた!
「王妃様への侮辱、許せるものでは無いぞ!」
腰の剣を抜いて構える隊長と、止めようとする兵士達。だけど門兵はそんな隊長を鼻で笑った。
「はんっ。不貞を働いた女等売女で十分だ。」
「そんな事出来る筈が無いだろう!この国には魔法契約が在る!」
「それが在ったんだよ!王を騙し、王都の男を騙す方法がな!おかげで王は人間不信になり、魔法契約を結んでいた夫婦の仲はズタボロだ!それもこれもあの女がその方法を広めた所為だがなぁ!」
偉い剣幕で怒ってるけどこいつもしかして、その方法の所為で奥さんに逃げられたか?それとも信用できなくなって奥さんを捨てた?まぁどっちにしろ、相当その王妃さんを恨んでるってのは間違いないよなぁ。
「そ、そんな馬鹿な。王妃様がそのような事をする筈がない!」
「男と宿にしけ込む姿や、既婚女性にその方法を伝授している所を目撃されてもか?他にも近衛騎士を誘惑する姿や、果てはスラムの男共と大層立派なパーティーをしている所も目撃されてるぞ?それで信用できる筈が無いだろう!」
「ならばそれは偽物の王妃様だ!厄災の奴が化けていたのだ!」
「はっ!ずいぶんとお花畑な頭だなぁ!そんな事こっちは念頭において調べてるんだよ!だがそんな証拠は何も出て来ちゃ居ねぇぜ?」
「私が居なければ厄災を厄災と認識できる筈が無かろう!」
「残念だなぁ。出来る奴が居たんだよ。そいつが公衆の面前でハッキリ言ったんだ。その王妃は偽物では無いってな。」
あーらら、これ完全に嵌められちゃってますなその王妃様。目的はこの王国全体の混乱かね?
「間違いないでしょうね。その判別した人もかなり怪しいですし。」
「ずいぶん前から不破の種を撒きまくってたんだろうなぁ。じゃないとここまで一気に燃え広がらんだろう。相手は相当頭の切れる奴じゃないか?そう言えば2人共、あの兵士さんは厄災じゃないよな?」
「違うよ?」
「(´―`*)ウンウン」
って事は一般市民全体も同じ考えを持ってると見て良いな。うーん、こういう時クリンやルゼダが居ればいい知恵が借りられるんだけどなぁ。
「さっさと帰れ!こっちは王妃の処刑準備で忙しいんだ!」
「なっ!今処刑と言ったか!」
「言ったがどうした?王族の血を汚したんだ。当たり前の処置だ。」
「それは、それは何時なんだ!」
「間者かもしれんのに言う訳無いだろう!さっさと去らねばこの場で貴様等を処分するぞ!」
おっと、門兵が手を上げたらいつの間にか出て来ていた大砲がこっちを狙い始めたぞ。あれくらいなら受けられそうだが・・・・。そうしたら余計に問題が拗れそうだな。
「イオク隊長。ここは一旦引こう。」
「だが、王妃様が処刑されると聞いてじっとしている訳には!」
「助けるにしても情報が居るでしょ?他の兵士の人達も突然の情報で困惑してるわ。一旦ここは離れて情報を整理しましょう?」
「・・・・・。解った。」
俺達は一旦門から離れる事になった。さてこの先どうするかねぇ。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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