第459話
さて、大陸に来て早々に厄災と出くわした俺達は集まっていた兵士達に事情を聞こうとして。檻に入れられた。
シルの嘘つき!即投獄は無いって言ってたじゃないか!あっという間に牢に入れられたんだけど!!
大層立派な兵士詰所の地下に在る牢屋に俺達は1人ずつ放り込まれた。そんでもってしばらくそこに居ろと一方的に言われ、こちらの言い分も聞かないまま放置されている。名前の色が変わってないから犯罪者扱いって訳じゃないんだろうが・・・・。一体どうなるんだ?
コツコツコツ。
檻の中でじっと暇つぶしの修行をしていると、誰かが階段を下りて来る音がし始めた。そして徐々に会話も聞こえて来る。
「申し訳ない。私の力が及ばないばかりに・・・。」
「イオク殿の所為ではありません。それに即処刑だったところを止めて頂いたのです。その上で私の面会も許可して頂きました。感謝しかありませんよ。」
「そう言って貰えて助かる。この国の上層部は私の眼の事をまだ完全に信用していないのだ。」
ふむ、この声はイオク隊長とホウノさんか。即処刑とか滅茶苦茶怖い話が聞えたけど止めてくれたのか。これは九死に一生を得た感じ?
「他の方々の釈放迄手を回して下さったのです。十分ですよ。」
「魔女と巨人だけは偽物が問題を起こしていて出してやれなかったがな。おい!面会だ!扉を開けよ!」
ガチャリ。地下牢の扉が開かれてそこから光が差し込んだ。そこに人影が2つ現れる。聞えて来た声通り、イオク隊長とホウノさんが牢に入って来た。
「お待たせしてしまって申し訳ありませんルドさん。」
「状況を説明してくれるんだよな?ここの兵士達俺の話を全く聞こうとしないからさ。」
「あぁ、しっかりと説明させて貰う。」
「あっその前ちょっと。」チリーン♪
「パパ呼んだ?」
「(。´・ω・)?」
牢にぶち込まれる前にシア達には友魔の鈴に戻って貰っていた。持ち物は没収されなかったのかって?インベントリに入れてるアイテムは住人には手出し出来ないんだよ。
「すまんなシア。この2人が本物か確認してくれるか?アイギスも何か解ったら教えてくれ。」
「はーい!<精霊の瞳>!!」
「( ¯•ω•¯ ) ジトー」
精霊と機械の眼で確認すれば本人かどうか解る筈だ。そもそもシアの眼だけでも十分だと思うけどな。
「この2人は厄災じゃないよー。」
「( ´∀`)bグッ!」
「了解だ。これで話が出来るな。」
こういう時はどこかに厄災が紛れていて、俺達の妨害をするのが定石だろうからな。しっかりと確認して隙を見せないようにしないとな!
「確認は取れましたか?」
「あぁ取れた。」
「こんな幼子が私と同じような目を持っているとは信じられんな。」
イオク隊長はどうやらシア達の眼に懐疑的な様子。まぁだけどそんな事は関係ないんだよなぁ。
「厄災が混じってないと俺が確認できれば信じられなくても良いんだよ。そちらも同じだろ?」
「言われてみればそうだな。」
「話は纏まりましたか?それでは報告させて頂きますね。」
ホウノさんの話によると。俺とイルセアさん以外の仲間達はすでに釈放されているらしい。ではなぜ俺達が釈放されないかと言うと、まぁ厄災が行った犯罪の所為だな。
俺は精霊郷の破壊と猥褻物陳列罪。イルセアさんの方は淫行罪と猥褻物陳列罪。うん、あの野郎イルセアさんの姿だけじゃなく俺の姿でも色々やらかしてくれたらしい。あれだ、コート姿で突然裸を見せる奴。簡単に言えばそう言う事をされたと。
それでだ。ジャイアント王国からの抗議文を無視して俺達を処刑しようとした一部の勢力が、王国との友好を深めたい勢力と衝突。権力闘争が始まっちゃって身柄をどうするかまだ決まって無いらしい。何じゃそりゃ。
「あなた方が捕まっている間に件の厄災が問題を起こせば、無実を証明できるのですが・・・。」
「こちら側で奴の正体を暴けるのが私しか居ないのだ。偽物を暴く為に行動を起こしたいのだが、2人が本当に厄災でないと信じ切れない勢力が私をここに縛り付けている。もし私が離れた後、厄災が本性を現して暴れたら誰が責任を取るのか。それが奴等の言い分だ。」
まぁ、イオクさんが俺達を偽物じゃないと言った所で証拠がないもんなぁ。名前の色判定は旅人にしか出来ないし。いや、でも守備隊は名前判定出来なかったか?
「この大陸には旅人はまだ上陸していないそうなんです・・・。」
「旅人と呼ばれる者達がどのような者で在るのかも良く解って居ないのが現状だ。」
おろ?もうすでに冒険好きの旅人が上陸してると思ったんだが。俺達が最初の上陸者だったらしい。
「ジャイアント王国から君達が来ると聞く前まで、入国は厳しく制限していたからな。」
「うん?じゃあホウノさんは?」
「こちらの大陸に来てすでに10年にはなりますから。」
成程、厄災騒動の前にこの大陸に特使として派遣されていた訳か。
「それで?俺達はどうしたら良いんだ?イルセアさんは大丈夫なのか?」
「このままでは君達の無罪も、厄災を捕まえる事も出来ないと私は判断した。だからこそ、偽物を見抜ける私が君達の監視として同行する事になった。」
「厄災捜索に協力しろと。」
「そう言う事だ。」
元々そのつもりでここに来ているからな。出来れば牢に入れられる前にその提案をして欲しかった。
「では急いでイルセアさんの所に向かいましょう。」
「イルセアお姉ちゃんは何処に居るの?」
「(・・?)」
「女性用の独房だ。彼女はその・・・。男性が近くに寄ると色々と問題が在るからな。徹底的に異性を排除している。」
あー、それってつまり兵士の中にも偽セアに騙された奴が居るって事か?
「それも複数な。」
「彼女は自分の嫁だと今だに言っている人も居るのです・・・。」
それってこのまま外に出したら不味く無いか?
「対応策は考えてある。まずは彼女の元に行こう。そこで一緒に説明する。」
という訳でイルセアさんの居る牢屋に来ましたよっと。まずは厄災捜索に協力する事を説明して、了承を得た所だ。
「それで私はどうやったらここから出して貰えるのかしら?」
「この国では婚姻した男女に手を出す事は重大な禁忌として厳しく取り締まっている。正式な書面として登録すれば、魔道具の力によって強制的に守られる程の物だ。」
何故ここでそんな説明をし始めたのか。うん、何となく言いたいことは解る。解るんだが認めたくない!ここは惚けて聞いてみよう。もしかしたら違う方法かもしれないしな。
「それで?どうすれば良いんだ?」
「ルドさんとイルセアさんにはこの国で婚姻を結んでいただきます。簡単に言えば夫婦になって下さい。」
「「はぁっ!?」」
「パパ結婚するの?じゃあイルセアお姉ちゃんが新しいママ?」
「( ゚д゚)」
案の定、イオク隊長が提案してきたのは俺とイルセアさんが結婚するという方法だった。うわっ、今背中に寒気が・・・・。遠くで猫と悪魔が怒り狂ってる気がする。友魔の鈴の文字も赤く光ってるような・・・。
「でもあの偽物が他の人と結婚してるんじゃないの?」
「魔道具を使っての婚姻だ。その強制力は厄災でも逃れる事は出来ん。つまり他の男に手を出す事も出来なくなる。だからか奴はその気にさせておいて婚姻の前に逃げるのだ。」
「私の方でも確認しましたが、偽物のイルセア殿はどなたとも婚姻を結んでいませんでした。ですからこの提案が出来たのです。」
「あらそうなのね。なら良いわよ。」
「えっ!?」
「婚姻なんてこの国だけの事だし。騒動が終われば別れれば良いのよ。出来るんでしょ?」
「あぁ、きちんと筋を通すのであれば婚姻の解除は出来る。」
「なら何も問題はないわね。」
こういう時優等生とかだとお互いの気持ちがーやら、誠実さがーとか言って五月蠅いんだろうけどな。最初から利益目的だとお互い解ってるんだし俺はそこまで言わん。さっさと婚姻結んじまうぞ。
こうして俺は新大陸で結婚した。ゲーム内でだけど。
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