第458話

こちらを見上げながらずっと武器を構えている兵士さん達。さぁこっからどうすっぺ?


「とりあえず話をしないと始まりませんね。」

「俺が声掛けても良いと思うか?」

「や、止めておいた方が良いと思いますぅ・・・。」


完全に視線が俺をロックオンしてるもんな。俺が話しかけた瞬間に攻撃されそうだ。ここは俺が表に出る訳には行かないなぁ。


「ならここは私が話しますわ!」

「じゃあギリギリまで近づけるぞー。」

『近づくのは私なのですが?あぁ今日も主人に人格を否定されながら仕事をさせられる・・・・。』

「人聞きの悪い事言うなよ!ほらぁ、お前のせいで兵士達の殺意が上がったじゃねぇか!!」


兵士達にも聞こえるくらいの大声で言いやがって!視線だけで人が殺せるなら俺はもう死んでるぞこれ。


「私怨が大分入ってそうだね。」

「なぁ、ぶっ飛ばしちゃ駄目か?」

「バルドハウス!」

「俺は犬じゃねぇ!」


ゆっくりと近付きながら相手の出方を見る。厄災の奴は・・・。うわぁ、良い笑顔でニヤニヤ笑ってやがりますわ。絶対正確悪いぞあいつ。


「皆様ごきげんよう。私達はジャイアント王国から来た使者ですわ。そちらの代表の方はどなたかしら?」


クインが話しかけても微動だにしないんだが?代表者が居ないって事か?そう思っていたら特使に化けている厄災が声を上げた。


「皆様騙されてはなりませんぞ!あ奴等は全員偽物です!その証拠に船で来ると聞いていたのに意味の分からない乗り物で空を飛んできましたぞ!」


いやいや、ちゃんとディアに乗って来るって通達してるはずだが?まさかこいつ、かなり前から特使に化けてやがるな。それでシルからの伝達をすり替えやがった。


「早く奴等を倒してこの大陸を平和にしましょうぞ!ジャイアント王国もそれを望んでますぞ!」

「総員攻撃準備!!」

「ちょっと待って下さいまし!ここに相談役から頂いた書面も在りますわよ!」

「あれも偽造ですぞ!浅ましくも自分達が正式な使者だと謳っているのです!早く攻撃を!」

「構え!」


おいおいおい!なんでこんなにも聞く耳持たないんだよ!これも厄災の能力か?磯巾着みたいに洗脳されてたりするのか?


「もう良いよな?もう殴りに行っても良いよな?そのほうが早いしよ。」

「ぜ、絶対に駄目です!厄災はともかく兵士さん達は職務を全うしているだけですぅ!」

「どうどう、バルド君どうどう。そんなに鼻息荒くしてたら駄目だよ。今こちらから戦闘を始めたら外交問題にもなっちゃう。」


俺達も自分の身を守る為に武器を構える。バルドなんか今にも飛び出して行きそうな所を、モッフルとタンケが必死に抑えてくれている。このまま戦うしか無いのか?


「私達の話を聞いて「ちょっと待って下さーい!!」?あれは?」


今にも攻撃が飛んできそうなまさにその時!兵士達の後ろから大声を張りながら誰かが走って来た。


来ている物はボロボロで、土や泥で汚れている。髪の毛もボサボサだし、眼の下には隈がはっきりと浮かんでいる。どことなくげっそりとしたその男は、よく見ると厄災が化けている特使にそっくりな姿をしていた。っていうかあれが本物だろう。だってこっちが厄災で確定してるし。


あとなぜか綺麗な女性騎士さんと一緒に走って来てるのはなぜ?


「皆の者騙されるな!そっちが偽物だ!本物の特使殿はこちらに居られる!」

「騙されてはなりませんぞ!あちらこそ偽物!向こうも攻撃するんですぞ!」

「私はそんな話し方ではない!真似するならきちんと真似をしろ!」

「そうだ!それに私の眼は誤魔化されんぞ厄災!」


おぉ!!女性騎士さんの眼が金色に光った!あれはシアの精霊の瞳と同じ様な効果なのか?


「イオク近衛隊長!?なぜあなたがここに!」

「特使のホウノ殿が緊急信号を発信したのだ。救助した所ジャイアント王国からの使者を厄災が狙っていると慌てた様子でな。急いで駆け付けたのだ。」

「ちぇ~。お姉さんが来ちゃったかぁ。残念!もうちょっと遊びたかったのになぁ。まぁ良いか、今度は何して遊ぼうかなぁ。」

「逃げられると思うなよ!全員そいつを囲め!」


わぁお!あの女性騎士イオクさんって言うのか。あの人の号令で俺達に武器を構えていた兵士達が全員武器を厄災に向けたぞ。これで終わってくれると良いがな。


「ふふん!そんなんじゃ掴まんないよー。」ぼんっ!「うっふん♡」

「「「「「「「「ぎゃーっ!!」」」」」」」


うん、筋肉ゴリマッチョが顔面に化粧してる上にピンクのピッチピチの服を着てるな。髪もツインテールにしてるし凝ってるなぁ。しかもセクシーポーズ取ってウィンクまでしてるし。しかもね、ピッチピチの服は上しか着てないんだよ。下半身?もろ出しですが?でっかいソーセージが見えるよ。


突然そんな物を見せられたら誰でも悲鳴上げるわ。俺?俺はほら、カマーンさんで耐性出来てるから・・・・。


「ニヒヒヒ!じゃあねぇ~。」


他の人達が動揺している内に厄災は人の中に消えていった。兵士の誰かに変身してこのまま逃げるつもりだな?そうはいくか!


「シア頼む!」

「絶対捕まえるぞー!」


シアの両手に魔法陣が浮かぶ。おぉ!そうやって魔法を発動させるのを始めて見たぞ!普段はそんなエフェクト出ないもんな。これもパワーアップした影響か?


「見つけた!それー!」ずあっ!

「残念!当たんないよーだ!バイビー!!」

「ぶぅ!!逃げられたぁ!」

「。・゚・(ノД`)ヾ(゚Д゚ )ナデナデ」


シアが蔓を出して厄災を捕えようとしたが、厄災の方が上手だった。瞬時に姿を入れ替えて走り去ってしまったのだ。最後の姿は一体誰だ?凄いツンツンした髪型をしていたが・・・。


「くぅ!伝説の走り屋に化けるとは!またしてもやられた!」

「仕方ありませんよイオク。あのお方はこの大陸を始めて一周した伝説のお方。そんな人に化けられてはどうしようも在りません。」


ほえ~。あれって過去の人なのか。いや待て、つまりあいつは人の数だけ色々な姿に化けられるって事か?それって強すぎじゃね?


「兎にも角にも大きな問題になる前に間に合って良かったです。それもイオク隊長のお陰です。」

「ホウノ殿に念の為にと渡していた魔道具が役に立って良かった。さて使者の方々!どうかこちらに来て頂きたい!話したい事も在るのでな!」


ホウノ隊長がこちらに向かって声を掛けてくれた。俺達を攻撃しようとしていた兵士達はバツの悪そうな顔をしているけどな。さて、これで少し話が進むか?


「どう思いますイルセアさん。私ちょっと気になっておりますの。」

「クインさんもですか?私もです。あれってそう言う事ですよね?」

「お、お2人も感じたんですか?や、やっぱりそう言う事ですよね?」


ん?女性陣が何やらコソコソ話をしているぞ?どうしたんだ?


「「「あの2人にラブの波動を感じました。」」」


いや、声を揃えて言う事じゃないだろう。


「でもでも、さっき見つめ合っていた時の雰囲気は絶対そうです!」

「魔道具を渡したというのもそう言う事だからでは?群の支給品を手に入れるのは中々大変ですわよ?」

「ぜ、絶対両想いなのに所属する国が違うから一歩先に進めないって奴ですぅ。」

「「「これは面白くなってきた!」」」


はいはい、変なちょっかい掛けようとするんじゃないよ。それより降りるぞー。


「なんで女って恋バナが好きなんだろうな?」

「自分がもしもそうなった時のシュミレーションをしていると聞いた事在りますね。」

「それって信憑性無いだろ?」

『主様の周りが一番面白んですけど。』

「何か言ったかディア?」

『なんでもございません。』


今も後ろで盛り上がっている女子達を尻目に、俺達はグルンジャ大陸に上陸した。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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