第455話

「そもそもなんでその情報をイルセアさんが居る所で言うんだ?」

「彼女も関係在るからですよ。」


シルの説明によると、そのものまねをしている厄災は色々な人に姿を変えて悪さをしているらしい。そして最初に確認された姿が俺の巨双盾神の時の姿だったと。


「その証拠は?」

「私が持ってるわよ?」


そう言ってさっき厄災の討伐を映し出していたウィンドウを操作して動画を切り替えた。ムービー撮影機能とか在ったんだな。今度俺も使ってみるか。


「はいはい、ちゃんと見ていてね?さっきの厄災を倒した直後の映像よ。」


そこには専用武器を手に喜んでいるイルセアさんと、それを悔しそうに見るギルドメンバーの姿が在った。場面は進みそれぞれが手に入れた戦利品を確認し合っていると、突然頭上に大きな影が降り注ぐ。


全員が状況の変化に瞬時に反応し、戦闘態勢を取りながら影の主を見ると・・・・。


『我は“巨双盾神”である!お主たちの戦いは見させて貰ったぞ。なかなかやるでは無いか、その力我の為に使ってみないか?』


偉そうにそんな事を言いながら胸を張る白熊装備の俺が立っていた。もちろんあの、世界を守った時の超豪華版の姿のままで。うわぁ・・・・・おれ自分から神様だ何て名乗った事無いぞ。なんでこんな黒歴史満載みたいな搭乗の仕方してるんだ?


『はぁ?馬鹿言って居んじゃねぇよこの偽もんが!!』

『化けるならもっとマシな人に化けるんですね。その姿は冗談じゃ済みませんよ?』

『ぶっ殺す!』

『こらこらモッフルさん、抑えて抑えて。あいつの首を狩り取りたいのは皆同じですから。』

『1秒以内に本当の姿を見せなさい。そうすれば、苦しみ無く殺して差し上げますわ。』

『死にたく無かったらすぐにその姿を解除しなさい?良いわね?これが最後通告よ?』


おっおう・・・・・。皆殺気立つのが早すぎるだろ。それに一発で偽物だと見抜くのもどうなってるの?俺フレンド登録消えちまったからALO2になって全員と連絡取れてないんだけど?


「何を不思議がっているのですかルド兄様?」

「いや、偽物だと見抜くのがえらく早いなと思ってな。」

「ルドさんは魔物暴走で運営として参加したり、極楽島で公式モブ扱いされたり、飛行船墜落で救助活動していたり、最初の厄災討伐パーティーだったりと色々活躍してたじゃないですか。露出も多かったですし、ルドさんがALOを救った人だというのは有名ですよ?最新情報も流れていたりしますから、すぐ偽物と解ったんです。」


そんなに情報漏れてるの?あっスキル構成なんかはさすがに漏れてないと。だけど俺の姿はバッチリと記録されてるのね。誰がやった?メガネ?ちょっと後でOHANASHIしないといけないなそれは。


まぁ絶対それだけじゃないような雰囲気だけどなコレ。その事については・・・・協定があるから言えない?とっても感謝しているだけ?うーん、そう言う事なら納得・・・・出来るのか?そんな事より続きを流すって?そう言われたら仕方ない、大人しく続きを見るか。


『・・・・・・ちぇ~。向こうの大陸だと騙せたのにこっちじゃ駄目かぁ。面白く無いなぁ。』

『良いから早くその姿を止めやがれ!!』


随分と子供っぽい声で拗ねる俺の偽物。その間にも周りに居る旅人達の殺気が膨れ上がって行く。


『仕方ないにゃ~。向こうに戻ろうっと。』

『逃がすと思うなよ!』

『残念逃げまーす!ほれっ!』

『きゃーーーっ!皆見ちゃ駄目です!!』

『バイビー!』


うん、音声だけだと何が起こったか分からんよな。簡単に説明しよう!!


逃げようとする巨大な俺。旅人全員が攻撃態勢に入って敵を止めようとする。敵の姿がイルセアさんに変わる。何と奴は装備を全部解除して全裸に!イルセアさん暴走、姿が見えない様に攻撃魔法を放つ。明るい声を残して敵が消える。以上!!


なお、あの瞬間にスクショを取っていた猛者が居たらしく。期待に胸を膨らませた奴等が即座に確認した所、スクショには影しか映っていなかったんだと。泣きながら悔しがって居たそうだ。


でだ。当然の疑問が浮かぶだろ?動画だとどうだったんだって。こちらもイルセアさんの撮影した奴以外は全部影にしか映っていなかったらしい。うん、俺が見せられた動画ってイルセアさんが撮った奴でしたね・・・・。


「見ましたね?」

「・・・・・・バッチリ見たな。」

「~~~~~~~~~!」

「さすがにそれは止めて下さいイルセア。私達が見る様に言ったんですから事故です。だからその構えた杖を降ろしなさい。」

「今度デザートを作ってやるから。それで許してくれ・・・。何か罪悪感が凄い。」

「・・・・ジャンボプリンアラモードで手を打ちましょう。」


気まずいってもんじゃねぇぞ。あれだ、家族でテレビを見ていたらアニメでアハァ~ンな映像が流れて気まずくなる空気。そのまんまだけどあんな状況になった。俺に謝罪する以外にどうしろと言うんだ?


まぁ見ちゃったものは仕方ないし、お詫びの意味も兼ねてバケツプリンを2つ使って作って超巨大な奴を用意して上げよう。良い物見せて貰ったしな。なぜ2つかって?深い意味は無いぞ?ただインスピレーションが浮かんだだけだ。もちろん天辺にはサクランボを乗せるぞ。


「さて、これで解りましたね?敵は誰かの姿に変身する事が出来ます。」

「それは解った。俺の姿を真似ている事もな。だからって俺を呼ぶ理由が無いよな?」

「それが在るのです。奴が言っていた大陸。それは砂漠の大陸の反対に在る、国土のほとんどを熱帯雨林とするグルンジャ大陸と言う場所です。そこに在る国からルド兄様の身柄を渡す様に通知が来ています。」

「はっ?それってどういう意味だ?」

「かの大陸に在った精霊郷。そこを奴はルド兄様のあの姿を借りて破壊しました。その罪を裁く為と言う理由です。」


おいおいおい、それは偽物がやった事だろう?なんで俺が裁かれないと行けないんだ。


「もちろんこちらからは偽物が行った事だと使者を通じて正式に抗議しています。ですが、向こうは聞く耳を持っていません。ルド兄様を渡せ。ずっと同じ要求をし続けています。」


それって完全に操られてませんかねぇ・・・・・。その国大丈夫か?


「で、俺はどうしたら良いんだ?」

「ルド兄様にはイルセアと一緒にかの大陸に行って身の潔白を証明して欲しいのです。奴が偽物で在ると。」


それって大分危険じゃ無いのか?俺が行ったらそれこそ相手の思う壺だと思うんだが?


「身柄を渡さないと全面戦争をすると言われまして・・・。」

「あー、そうなった場合勝てないのか。」

「いえ、この国には多数の旅人も居ます。私が鍛えた兵士達も居ますので決して負けないとは思います。ですが民がこれ以上傷付くのは・・・。」


シルが戦争になった場合の事を考えて表情を暗くする。


「戦争からやっと復興してきた所だしな。」

「ルド兄様であればたとえ処刑されたとしても復活しますし、向こうの行政府には監視付きで一緒に動いて貰って構わないと言っていますから即座に投獄とはなりません。他にも選抜メンバーと一緒に行って貰いますので・・・・・・。」


うん、まぁ俺が直接乗り込んで目の前に偽物が現れたらそれが一番解りやすいか。即座に身柄を確保されないなら、自分で犯人を捕まえる事も出来るだろうしな。


「所でなんでイルセアさんも一緒に?」

「・・・・・向こうで私の姿を使って暴れ回ってるからよ。」

「それはエロい意味で?」

「・・・・・そうよ・・・・。」


こっそりとシルに聞いたら。男漁りはするわ、人の旦那を誘惑するわ、往来を全裸で走り回るわ、道端でオ「それ以上言ったら燃やすわよ?」あっはい。


それはもう色々とやらかしているらしい。そんな事されたら自分の手で仕留めたくなるわなぁ。だけど向こうに行った時に遊ばれた奴等に言い寄られないかねぇ。後は賠償とかモロモロ問題にならん?


「イルセアの安全の為にも一緒に行って貰う事になります。ルド兄様なら守れるでしょう?」

「まぁ、そこら辺の有象無象からなら守れるな。」

「いつかの道場の時の様に群がる敵を纏めてくれると嬉しいわ。全部焼き払ってあげるから。」


おう、笑顔が怖いですよイルセアさん。これ本当に大丈夫?大陸事燃やしたりしない?


「イルセアの件も偽物が行ったと通達して貰っています。実害もそこまで無いですし大丈夫でしょう。多分。」


うむ、向こうに着いたら常に一緒に動くようにしておこう。絶対問題起こる奴だコレ。


「さぁそうと決まったら早速行くわよ!懐かしいメンバーも揃ってるんですからね!」

「あいよ。」


経験値UPイベントとか、港の特殊クエストとか受けたかったけど仕方ない。さっさと行って片付けてきますかね。すぐ出て来てくれよ偽物さんよ。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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