ものまねされたルド!
第454話
砂の海を有する巨大な大陸。その大陸の中央で1人の男が砂嵐の中に浮かぶ大きな影と対峙していた。
「この先には絶対に行かせん!!」
黒い肌に皮鎧の様な物を纏い、頭にターバンを巻いた男はシミターを両手に持ち砂嵐に襲い掛かる。だが・・・・。
ガキンッ!!
砂嵐の中に居る化け物は、いとも簡単にその攻撃を弾いてしまった。
「くっ!やはり一筋縄ではいかんか・・・。だが!真の姿を現すまでに散って行った仲間の為にも、私は負けられんのだ!!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
何らかのスキルを発動させたのか。ターバン男はシミターに青色のエフェクトを生み出し、自身の体からは赤いオーラを放っている。そして、体を捻るようにして武器を背後に構えた。
「キィエェェェェェェェェェェッ!!」
叫び声を上げながら大回転を始めるターバン男。すると次第に足元の砂が舞い上がり、男の周囲を渦巻き始めた。その回転方向は、敵とは逆方向に回っている。
お互いの砂嵐がぶつかり双方の勢いが落ちていく。完全に砂嵐が収まった後には、膝を付き片方のシミターを地面に刺しながら荒い息を吐く男と、岩の様な甲羅を持ち、四肢が在るはずの場所から勢いよく風を吹き出している巨大な亀の姿が在った。
「やっと姿を現したか厄災!このアジーズ・デルミーがその首切り落としてくれる!」
「BAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
「ぬぅわっ!!」
何とか立ち上がり啖呵を切ったデルミー。だが次の瞬間には厄災からのブレス攻撃を受けて吹き飛ばされてしまった。
「こっこんな所で!」
「BAU!!」
「ぐふぅっ!!」
吹き飛ばされ、半場砂に埋まったデルミー。即座に脱出して厄災に攻撃を加えようとするも、厄災が放った追撃の紫色の光球が体に当たり、その場で圧し潰されるように砂に寝転がってしまった。
「ぐぬぬぬぬ!!」
「BAO!BAO!BAO!BAO!」
「ぬおぉぉぉぉぉっ!!体が沈む!!」
厄災の追撃は止まらない。次々と光球を放ちデルミーに命中させていく。攻撃が当たる度に彼の体はどんどん砂に飲み込まれて行く。
「こっここまでか・・・・・。」
身動きする事も出来ず。すでに顔以外の場所は砂の中に埋もれてしまったデルミー。眼前の厄災はそんな彼に止めを刺そうと最後の光球を口から解き放った。
悔しさに顔を歪めながら目を閉じるデルミー。その時!!
「ちょーっと待ったぁ!!」
厄災とデルミーの頭上。丁度太陽のある場所から1つの人影が舞い降りて来た。
「住人に対する度重なる乱暴狼藉だけに飽き足らず。彼らの英雄を亡き者にしようとするとは笑止千万!そのような事は万人の騎士にして世界中の女性の恋人。『銀風騎士団』団長にして一番の人気者!このシルバーが許さんぞ!」ババーン!!
砂地に着地したと思えば銀一色の装備をキラキラと輝かせ、なぜか背後に爆発を起こして決めポーズを取っている男。銀髪銀眼迄もを輝かせた痛い人。それがシルバーだった。
「勝手に先走ってんじゃねぇぞごらぁ!!」
「抜け駆けは禁止だと言ったはずだろうが!」
「うちの友魔を貸した恩を忘れないで下さーい!」
「はぁ・・・。馬鹿と一緒に動くのは疲れますわね。そう思いませんことイルセア?」
「そのお陰であの人は助かったみたいだけどね。」
「おごぉっ!!」
紫の光球の進む先に飛び降りたシルバーは、デルミーの代わりに攻撃を受ける事になった。カッコいい(と思い込んでいる。)ポーズをしたまま、地面に倒れる様に沈んだシルバー。その様子を見て同行していたメンバーはそれぞれ呆れたような視線を彼に向ける。
「たっ助けたまえ!特に女性諸君!優しく助けてくれたら僕の恋人にしてあげるよう!」
「お断りですわこのお馬鹿さん。」
「私も遠慮します。」
「ぷーっ!振られてやんの、ざまぁみろボケェ!!」
「相変わらず口が悪いよね君。」
この場に居るのはかつて一緒に戦った仲間達。シルバー、バルド、モッフル、クイン、ウケン、そしてイルセアだった。
「に、逃げたまえ!死んでも生き返る旅人とはいえ、こいつ相手には分が悪い!!」
「その厄災を1人で抑えていたあなたがそれを言いまして?それに私達がいつから“この人数しか”連れて来ていないと言いましたの?」
「他クランから連絡来ました。全員“上陸”完了したそうです。」
「最寄りの復活ポイントは発見済み。リスポーン地点の更新と物資の搬入は終わってます。」
「よっしゃ!これで思う存分喧嘩出来るな!!」
「その為に色んな人が無理した事を忘れんじゃないよ?」
「僕を放って話を進めないでくれたまえ!今回の“厄災討伐合同作戦”の総司令官は僕だぞ!」
「「「「「「誰も認めてない!!(ねぇよ!)(ませんわ!)」」」」」」
「あっ皆さんが来ます!」
・・・・・・ぉぉぉぉぉぉっ!
振動や音さえも吸い込む砂漠が、わずかに振動し始める。遠くから微かに人の声の様な物が聞えて来た。その声は徐々に大きくなり・・・・・。
うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!専用装備を手に入れるのは俺だぁぁぁぁぁぁぁ!!
俺に決まってんだろうが!
私達が手に入れるのよ!!
相手を罵り合い、時には殴り合いながらも無数の旅人達が砂漠の向こうから土煙を上げながら走って来る。それを見たデルミーは驚きで目を見開きながら、事情をしってそうな人達に問いかけた。
「あれはなんだ?」
「簡単に説明すると、厄災を倒す為に手を組んだ旅人の軍団です。」
「有象無象も集まれば戦力になるってな。まぁこの中で一番の戦力は俺だけどな!」
「皆で協力して厄災を倒そうと集まった人達ですよ。厄災武器を狙って、ですけどね。」
魔女の恰好をしたイルセアが、その大きな帽子の端を摘まみ上げながら遠い目をしながらそう言った。
「さぁこうしては居られませんわ!私達も攻撃に参加しましてよ!」
「俺がMVPを取って専用装備をゲットしてやるよ!!」
「それは譲れないね。」
「早い者勝ちですぅ!」
我先にと厄災に向かって行く旅人達。その姿は砂糖菓子に群がる蟻の様だった。時折色とりどりの光りが走り、厄災が苦しがる。
「君達は馬鹿なのか?」
「えぇそうよ。ゲーム馬鹿なの。だからこんな面白そうな事、独り占めしちゃ駄目よ?」
そう言いながらイルセアも箒に乗って厄災に向かって飛んで行ってしまった。デルミーが呆然とその様子を見ていると、厄災はあっという間に討伐されるのだった。
「で。これがその時に手に入れた専用武器だと。」
「そうなの!凄いでしょ?」
シルに空中大陸での厄災討伐を報告して1週間。なぜか突然城に呼び出された俺は、シルと一緒に厄災を討伐した旅人と面会していた。それがまぁイルセアだった物だからビックリだ。最初期にお世話になってから色々とお世話になった恩人でもある。
そんなイルセアが自慢げに見せているのは黒い捻くれた樹で出来た杖だった。杖の頭の部分には、さっき見せられた厄災討伐映像に出ていた敵の目玉が嵌っている。
「いやぁあのラノイ・タチバルグは強かったわぁ。」
「いやきっちり倒してるじゃないか。それで?なんで俺迄呼んだんだ?」
「それは最後の厄災について話が在るからですよ。」
いや、俺しばらく修行するからこの大陸から離れるつもりは無いぞ?厄災武器ももっと色々な人に取って貰いたいしな。
「はぁ・・・ルド兄様何を『俺には関係ない。』みたいな顔をされてるんですか?関係あるからお呼びしたんですよ?」
「ん?そうなのか?」
「最後の厄災。その1人が“巨双盾神”を名乗ってもう1つの大陸で好き勝手暴れていると情報が入りました。しかもルド兄様の姿を真似て。」
「いやマジか。」
俺の姿を真似したって何にもならないと思うんだが?
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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