第427話

俺達はシルの案内で飛行船の造船ドッグに来ている。てっきり地下ドッグを再開発したのかと思ったら、地上に作って在った。場所は俺達が建設に関わった第2城壁の外だ。何とすでに第3城壁の建設が進められている。


「昔の兄様を見ならってドラゴン素材を使った城壁を作っているのです。その際に頂いた物で飛行船ドッグを作り上げました。」

「それって一体どんな物なんですか?」

「見て貰った方が早いですね。」

「絶対にこれじゃない!!っていう使い方をしているから驚くわよ?さすがルドきゅんの妹さんよね。やる事のスケールが違うんだもの。」

「ふふふ、そう言って貰えて嬉しいですね。あっあれです。」

「大きな・・・・骨?」

「翼も在るよー?」


シルが指さした先には、大きなアバラの骨格がデンッ!と置かれていた。よく見るとアバラの間には何やらアームの様な物が見える。羽の部分は屋根か?骨の間に幕の様な物が張られていて、日差しを遮っていた。


「あれはドラゴンの中で超長命だったと言われるグレートドラゴンの骨なんです。」

「ほえー、長生きやからあんなに大きくなるんやね。」

「人が豆粒に見えるよ。」

「飛行船が出入りする時には、口の部分が開いて出入りします。秘匿作業をする際は今透明なっている部分に色が付き、ちゃんと目隠しされるようになっています。」


アバラの隙間から中の様子が見えていたが、どうやらあそこにきちんと壁が在るらしい。なんとまぁ、凄い技術を使ってるな。


「ドラゴン素材が貰えるならドラゴンの心臓は無いやん!それが在ったら新しく飛行船が作れるやん!」

「そうなのですか?残念ながら今回はドラゴンの心臓は無いのです。」

「交渉できないですか?」

「出来るとは思いますが望みの品が届くまで半年ほど掛かりますよ?」


そりゃ駄目だ。なんてったってアインの奴が我慢できないんだから。今もほら、ドッグよりも早く墜落現場でパーツを集めたいって息巻いてるし。


外観を見た後は中に入って施設の見物だ。中はドッグだと言うだけあってかなり広い空間になっている。ど真ん中に飛行船を置くための台が設置され、左右には作業用アームが伸びていた。このアームは、あばら骨に直接くっつけられていて、今も作業員が動かしながら調子を見ている。


「今は最終調整で組み立て用の魔道具を設置している所です。」

「あのアームで一気に組み立てる訳やね。」

「耐久度はどうやん?生半可な奴だとすぐに折れるやん。飛行船のパーツは耐久度を上げる為に重くなる傾向にあるやん?」

「それなら大丈夫です。あの頭の骨を持ちあげられる位の力は在りますから。」


俺達が入って来た場所にある巨大な頭骨。それを持ちあげられるなら大丈夫そうだな。骨粗鬆症で骨スカスカじゃ無ければかなり重そうな代物だし。


「尻尾の方には住居兼事務所が在ります。作業員にはそこで寝泊りして頂く予定です。」

「シャワーもトイレも完備しているわ。なぜか建築に私も手伝わされたんだから。」

「有能な人材を遊ばせておくほどこの国に余裕は在りません。」


シチート師匠が手伝ったのか。元々城塞って技を使ってた師匠なら、建物の構造何かにも詳しいだろうしな。良い人選だったんじゃないか?


「もう見学は良いだろう!早く墜落現場で部品探しをするぞ!」

「そう焦らなくても大丈夫ですよ。私の命で墜落現場に在る部品を1つ残らずここに運び込むように指示を出していますから。」

「いつの間に?」

「兄様の元に向かう前に。飛行船修理の為に空中大陸に行ったことは知っていましたからね?」


良く出来た妹だよ。それならここで待っていればいい訳だ。多分シルの事だから自分が一番信用出来る人達に頼んでいるだろうしな。


「シル様、飛行船の部品は全て搬入しておきました。」


そんな事を考えていたらすでに部品が届いていたみたいだ。今まで居なかったファランがいつの間にかシルの元で報告していた。


「早速調べるやん!全部広げて欲しいやん!!」


クイナの号令でドッグの中が慌ただしくなる。おっ!壁に色が付き始めた!本当に目隠し機能が在るんだなぁ。徐々に暗くなっていく室内。しかし、背骨にぶら下がっていた証明が部屋を明るく照らした。


「全力で調査するやん!」

「私は念のために現場に行くぞ!取りこぼしている部品が在るかもしれん!ルドも来い!」

「引っ張るなアイン!お前は俺を重機代わりに使いたいだけだろうが!」


まぁここに居ても俺は邪魔になるだろうしな。だったらアインの手伝いをする方が良い。


「という訳で皆はクイナを手伝ってくれ!アインの手伝いが終ったら俺は一旦ログアウトするから!!」

「解りましたわ!」

「僕達が見て解るのかなぁ?」

「何事も経験やでクリンはん?」

「おー!これ面白い形してる!」

「それ魔素供給弁やん!お手柄やん!」

「シアも変なの見つけたー!」

「ρ(・д・*)コレ」

「一杯使えそうな物があるやん!」


何か楽しそうだな皆。俺もこっちに残ろっかなぁ・・・。


「ほらさっさと行くぞ!!」

「へいへい。」


俺はアインに引きずられて墜落現場に向かった。ファランの奴は部品を全部持って行ったと報告している。つまりはある程度片付けは終わっている訳で、現場は結構綺麗になっていた。


ドッグに着いていたアームを使ったのだろうか。翼や胴体の部品なんかも端に避けられている。さすがに人の2倍はデカい残骸は運べなかったか。


「一応これらも持って行ってくれ。」

「あいよ。アインはどうするんだ?」

「もう一度地下ドッグに潜って使える者が無いか探す。」


多分何度も探しているんだろうなぁ。まぁそれで落ち着くならやれば良いと思うぞ。しっかし結構大きな残骸だなぁ。これ普通に中に何か残ってる可能性が在るぞ?


「よいしょっと。」ガランッ!「ん?何か落ちたか?」


元々船体部分で在ろう残骸を持ちあげると、中から鉄の板が飛び出して来た。装甲版でも剥がれたかね?


「どれどれ?・・・・・。あぁ、懐かしいなぁ。」


そこには領主になったリク・ラカー。通称村長からのメッセージが書かれていた。


『やぁ、このメッセージを見ているのは一体誰になるだろうか。僕の知っている人かな?それともまったく知らない別の人かな?どれくらい年月が経っているか分からないし、最後まで読まれないかもしれない。それでも僕はここにメッセージを残すよ。


このメッセージが読まれているという事は、ルシファーは飛行不可能な程に破壊されているはずだ。この船は世界の隣人。旅人と言う異界の人達と一緒に僕達が作り上げた。まぁ殆どは旅人さん達が作って僕達は重要な所だけ作ったんだけどね?


その皆の努力の結晶が壊れてしまった何てとても悲しい事だけど、物は何時か壊れる。だからここに修理方法を残しておくよ。もしその修理方法が知りたかったら、この板を炉に入れてどろどろに溶かすと良い。そしてまっ平に伸ばして見てくれ。実行してくれればどうしてこんな事をするか解って貰えると思う。


もし修理して、また飛べるようになったらこの船の事を大事に扱ってくれ。この船はこの世界の住人と、異界の旅人の友好の証だから。


PS:もし、万が一このメッセージを見ているのがルドくんなら。この板をとある場所に運んで欲しい。ヒントは幸運兎だ。よろしく頼んだよ。』


もしもの時用に村長がメッセージを残してくれていたんだな。あの発明馬鹿の事だから、この板も普通の金属の板じゃないのだろう。溶かしたら本か何かに変わるんじゃないか?


そして最後に書かれている事は・・・・・。まぁ村長は俺が旅人だと知っているしな。親父からもいつか戻って来ると聞いて居るだろうし、本当に万が一の可能性を思ってこのメッセージを残したんだろう。


「・・・・・。村長の最後の頼み、叶えてやるか。」

「どうしたルド!まだ全然片付いて無いぞ!」

「すまんアイン!ちょっとやる事が出来た!すぐに戻る!」

「なっ!どこに行くんだルド!」

「ちょっと元“ゴーレムダンジョン”にな!」


俺にとって幸運兎は最初に出会ったラブラビットだ。その兎が教えてくれた場所が最初に発見されたダンジョン。今その場所はゴーレムダンジョンに変わっている。そこにこの板を持って行けば良いんだろう?何を見せてくれるんだろうな村長は。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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