第421話

「くんくんくん・・・・・こっちです!こっちからお腹の空く良い匂いがしています!!」

「今更ですがリダさんの鼻はどうなってるんだろうね?」

「屋台なんかも出ていますのに、一切迷わずに追いかけて行けてますわ。」

もぐもぐもぐ「単純に。」むしゃむしゃごくんっ「匂いが違うんとちゃう?」

「あっお姉ちゃんズルい!私も串焼き食べる!!」


匂いを頼りに庶民街を移動していたら、いつの間にか屋台が沢山出ている市の様な場所に来てしまいました。ここは庶民街と商業区の中間の場所でしょうか?そこかしこで美味しそうな匂いがしていますが、最初の匂いを完全に記憶した私は見失う事無く目標を追えています!


「くんくんくん、間違いないです。この中ですね!」

「『鳥食堂』?なんかそのまんまなネーミングやなぁ。」

「食堂と言いながら完全に酒場ですわね。」

「本当にここに居るんでしょうか?」

「中に入ってみれば解るんじゃない?」


という訳で私達はそのまま鳥食堂の中に入りました。


カランコローン♪


中は西部の酒場と言った印象でしょうか?奥にカウンターが在りお酒の並んだ棚を完備しています。カウンターの左には大きな樽も在りますね。カウンターの中には奥に続く通路も見えます。


手前にはいくつかテーブルと椅子もあり、今もお酒と料理を楽しんでいる人達が居ますね。ここに居る人達は全員飛べない鳥の人ばかりです。


「い、いらっしゃいませやん・・・・。」

「「「「あっ居た。」」」」


食堂に入ってすぐにクイナさんは見つかりました。それもかなり際どい格好で。


頭にはフリフリの着いたカチューシャを付け、胸元が大きく開いたメイド服を着ています。下は超ミニのスカートを履いていました。歩けばパンツが見えてしまいそうです。そして、白いニーソックスはスカートと合わせて絶対領域を作っています。この服装を考えた人はとても変態さんだと思います!!


「何してるんですのクイナさん?」

「うぅぅぅぅ、恥ずかしいやん・・・。借金を返す為にここでバイトしてるやん・・・。」

「借金ですか?どれくらい在るんですか?」

「100万マネやん・・・・。」

「一体全体どうしてそない大きな借金こさえてもうたん?」

「爺ちゃんの遺産を守る為に仕方なかったやん・・・・。」


ふむふむ、成程成程?クイナさんの他の家族がお爺さんの貴重な資料をいくつか売り払ってしまって?それを買い戻す為に仕方なく借金をしたと?その返済の為に時折お金を貸してくれた人の店でウェイターとして働く事になったんですね?ふんふん、それでお客さんを呼ぶために店長に言われるままに服を着たらこの格好だったと?その店長さんが変態さんなんですね。エッチなのはいけないと思います!私が懲らしめて上げましょう!!


「やっやめるやん!ここの店長はそれはもう恐ろしい事で有名な人やん!!」

「それは誰なんですの?」

「庶民街で飛べない私達を守ってくれる凄い人やん!コッコリー親分やん!」


ドゥクトゥン♪ドゥクトゥン♪ドゥクトゥン♪ドゥクトゥン♪

ドゥクトゥン♪ドゥクトゥン♪ドゥクトゥン♪ドゥクトゥン♪


クイナさんここの店長の名前を言ったと思ったら、突然お店の中に謎の音楽が流れ始めました。そして、お店の中に居たお客さん達が俄かに騒ぎ始めます。何やら音楽に乗っている様な?


「飛べない奴等のまとめ役~♪」

「「「「「イエーッ!」」」」」

「イカしたボディの大親分♪」

「「「「「イエーッ!」」」」」

「こんがり焼けたこの身には~♪」

「「「「ぬらりと輝く光りありー♪」」」」

「一度死んだこの身にはぁ~♪」

「「「「不死鳥さんが宿ってるぅ~♪」」」」


バァーーーーン!!


「それが俺様コッコリー!!」

「「「「大親ぶーん!!」」」」


突然カウンターの中から紙吹雪と共に飛び出して来たのは、全身が茶色い液体でぬらぬらと輝く、歩く丸焼き鳥でした。美味しそう・・・・。はっ!私は一体何を!


「おいおいおーい、何してんだクイナ!さっさと客に料理を運ばねぇか!!」

「はっはい解ってるやん!」


コッコリーの言葉に飛び上がって驚いたクイナさんは、カウンターから料理を受け取って給仕を始めてしまいました。飛び上がった拍子にピンク色の布が見えてしまい、お客さん達が盛り上がって口笛まで吹いています。ここの人達は大分お下品ですね、ぶっ飛ばして良いですか?


「ちょっとあなたが店長さんですの?私達はクイナさんに仕事を頼んだんですの。急ぎの用事ですのでバイトは今度にして頂けませんこと?」

「おいおいおーい。馬鹿言ってんじゃねぇよ。先約はこっちだ。クイナには借金が在るんだからよう?それを返すまで他の事をする余裕何かねぇっての。」


コッコリーはカウンターの下から液体の入った容器を取り出して、刷毛を使って体に塗っています。新しく塗られた液体はぬらりと輝きながら周囲に良い匂いを放ち、その身を美味しそうに染めて行きます。


「うん?これが気になるのか?これは俺の体を保護するクリームよ!昔死ぬ程の火傷を負っちまってなぁ。これを塗らないと痛みで動けなくなるんだよ。」

「火傷っていうよりはこんがり焼かれたっていう方が正解ちゃう?」

「お腹空いてきました・・・・。」


実は私もさっきから焼き鳥が食べたくて仕方ないのです。・・・・・では無くて早くクイナさんを助けないと!!


「先ほど借金と言いましたが、クイナさんの借金を返済すれば彼女は自由になりますのよね?」

「おいおいおーい?あいつに何をさせたいのか知らねぇが止めときな。あいつの借金は俺の黒光りの体より焦げ付いてるぜ?」

「何を言ってるのか全然分からないね。まぁいいや、はいコレ。」


ガシャン


クリン君が茶色い袋をカウンターに置きました。あの中にはクイナさんの借金である100万マネが入っているのでしょう。こう見えて私達結構お金持ちなんですよ?いろんなボスの素材を売ってますしね。


「足りねぇなぁ。」

「あら、クイナさんの借金は100万マネのはずですわよね?」

「しっかりと在るはずだけど?」

「借金には利子ってもんが付くんだよ。あいつの借金は利子を合わせて1000万マネだ。」


ふむふむ、これはぼったくりと言う奴ですね!クリン君がポンと100万マネを出した事でもっと取れると思われたのでしょう。まぁ出せるんですけどね?


「ならこれも追加ですね。」ドンッ!!

「さらに倍額出せますわよ?」ドドンッ!!

「本当は装備買いたかったんやけどなぁ」ドドドンッ!

「私達に合う装備ってなかなか売って無いんだよねぇ。だからお姉ちゃん頑張って作って?」ドドドドンッ!

「これでも足りないって言う?」ドドドドドンッ!

「・・・・・・・・・。」


私達が出した金額は最初の100万マネをあわせて5100万マネ。これで足りないなんて言おうものならそれこそ戦争ですよ?だって完全にぼったくりですもん。


まぁ当のコッコリーさんは私達が積み上げたマネ袋を見て口を大きく開けて呆然としてますが。


「たたたたたた。」

「これで足りないとか言ったら暴れるよ?」バキィッ!!


壊れたスピーカーみたいになり始めたので目の前でカウンターを粉砕して上げました。ちょっと力が入ってしまったので床まで抜けてしまっています。いやぁ失敗しちゃいました。(棒)


「・・・・・・。すみませんでした。本当は10万マネです。もう借金は返済済みです、どうか連れてって下さい・・・・。」

「あら、良いんですのよ?これを持って行っても。」じゃらり

「・・・・・すんません、勘弁して下さい・・・・。」

「「「「「親分情けねぇ・・・・。」」」」」


ここで戦闘になると思っていましたが、何事も無く解決してしまいました。なんで突然素直になったんでしょうか?


「あっあんた達を見ていると体がふふふ震えて来るんだよ!何か思い出してはいけない事を思い出しそうというか、地獄を見そうと言うか・・・・。」

「あっ!」

「ひぃっ!!」

「突然大きな声を出してどうしましたの?」

「こいつ僕達会った事在るよ。リダさんは特に2回会ってるんじゃないかな?」


そうなんですか?こんな美味しそうな人に会ったら忘れないと思うんですけど?


「ほら、僕達に話してくれた闘技大会の出場者。」

「あぁ!ずっと空を飛び続けて降りて来られなくなった人!」

「そう言えばシルちゃんを狙った組織の下っ端にも居ましたわね?」

「最後に盛大に自爆して黒焦げになったあの人ですか!」

「ひぃぃぃっ!おおおお、お前等あの時の悪魔!」

「「「誰が悪魔だって?」」」

「いいい、命だけはお助けをぉぉぉぉぉ!」


成程あの時死んだと思っていましたが何とか生きていたんですねぇ。今は無残にも全身の羽は無くなり、唯の焼き鳥になってますけど。


「それじゃ遠慮なくクイナさんを連れて行きますが良いですわね?」

「あんた達に暴れられたら俺の店が無くなっちまう!早く連れて出て行ってくれ!」

「はいはい、そう怯えなくても出て行きますよ。さぁクイナさん行きましょうか。」

「はよ帰らなうちのリーダーが食われてしまうんよ。性的に。」

「急いでください!」

「あのぅ、せめて着替えさせて欲しいやん?」


ふぅ、これで本当にルドさんの元に戻れます。今度は邪魔されないようにしっかりとクイナさんを連れて行きますよ!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 


ちょっと裏話

本来であればクイナを助ける為にコッコリーと店の客たちを相手に戦闘を行うイベントです。で・す・が!一度コッコリーの所属組織を潰しているリダ達が居た事でそのイベントがスキップされました。コッコリーの魂に深く刻まれた恐怖は、リダ達の姿が変わっても気が付く程の物だった。というお話。


ボスとしてのコッコリーの特性

体に塗るソースの味によって能力が変わります。

塩味:体を浄化して体力を回復する。

バーベキュー味:攻撃力が上がって攻撃が苛烈になる。

ステーキ味:足が速くなって相手を翻弄する。

レモン味:魔法が使えるようになる。

焼き鳥味:体が硬くなりダメージを減らす。

焦げ味:自爆


段階を経て雑魚が敵を足止めし、その間に体に塗るソースを変えて戦うのがコッコリーの戦闘方法でした。無駄な設定ですがw


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