第418話
「やっやっと辿り着きましたわ・・・・。」
「家に入ってから長かったね・・・・。」
「もう!物があり過ぎやねん!!ちぃっとは片付けんかい!!」
「お姉ちゃんおかんみたいになってるよ?」
やっと2階に在る部屋の前に来た私達。この部屋以外にも部屋は在るのですが、物が溢れかえって廊下にまで流れ込んできてるのでそこにクイナさんは居ないでしょう。つまり、唯一扉が閉まっているここがクイナさんの居る部屋で間違いない・・・・はず。
「これで外れていたら家を吹き飛ばしてしまいそうです・・・・。」
「その時は私も協力しますわ。」
「うちもやるで!!」
バタンッ!!
「まって!待って欲しいやん!」
扉の前で話す私達の声が聞えたのでしょう、慌てた様子で中の人が飛び出してきました。飛び出してきた人は髪は茶色で首から下の毛が白と黒のメッシュになっていました。瞳は茶色で嘴は茜色をしています。この方がクイナさんなんでしょうか?
「うちがクイナやん!お客さんを歓迎するやん!」
「モデルはヤンバルクイナでしょうか?私はルゼダと言いますわ。」
「僕はクリンと言います。クイナさんに会えて嬉しいです。」
「うちはルリやで!ちょっと自分片付けはちゃんとした方がええと思うで?」
「私はベニです!ゴミ屋敷になってますよ?」
「私はリダです。私達は飛行船を修理出来る人を探してここまで来ました。」
クイナさんに自己紹介をしながら、彼女の後ろに見える部屋の中を観察します。表の惨事が嘘のように部屋の中は片付いていて、天井には小さな飛行船の模型がいくつもぶら下がっています。壁には何かの設計図が額縁に入れて飾られ、本棚の本もきちんと整理されてますね。後は彼女が寝る為のベットと、作業をする為の机が在ります。時折1階で見たトロッコが通り過ぎて行くのも見えますね。あっ机の横に在る花の様な奴は声を届けていたマイクでしょうか?こちらも似た様な物と言う事はマイクと言うより伝声管に近いのでしょうか?
「紹介状は読んだやん!飛行船の修理の事やんけど・・・・。実はうちは一回も修理したことないやん。」
「無いんですの!?」
「知識は在るやんよ?爺ちゃんが飛行船技師だったやん。小さい頃は色々と爺ちゃんに教えて貰ってたやんけど、その爺ちゃんも大分前に死んじゃったやん。今は爺ちゃんの残した資料を基に飛行船を作ろうと頑張ってるやん!」
そう言えば物資の供給が止まり、飛行船技師は30年前に廃業しているのでした。クイナさんはどう見ても20代くらいに見えますし、彼女のお爺さんが最後の飛行船技師だったんですね。引退されても後継者として彼女に知識を残したのでしょう・・・・。
「違うやん?爺ちゃんに教えて貰ったのは基本的な事だけやん?後は爺ちゃんの工房を相続して残されてた資料を読み漁ったやん!」
「つまりほとんど独学という事で?」
「そうやん!」
・・・・・・。今ものすごく不安になって来ているのですが、本当にこの人で大丈夫なんでしょうか?
「そう言えば紹介状に書いてあったやん?地上にもまだ飛行船が残ってたやんねぇ。戦争で全部失ったと思ってたやん!」
「私達も戻って来た時にそう思っていたんですわ。ですが、うちのリーダーがとある方と協力して地下に眠っていた飛行船を発掘したんですのよ。」
「凄いやん!でもその飛行船が落ちちゃったやん?船の名前は何だったやん?」
「ウィンドル・・・・は解りませんよね。元々の飛行船の名前はルシファーと言うんです。」
「っ!?原初の飛行船ルシファーやん!!あの芸術作品が残ってて、墜落したやん!?」
私が飛行船の名前を告げると突然クイナさんが豹変!ずいっっと私に詰め寄り襟首をつかまれてしまいました!おっおっ落ち着いて下さい!首がガクガクするから揺らさないでぇ~!!
「はぁ、はぁ、はぁ、ごめんなさいやん。ちょっと興奮しちゃったやん・・・。」
「ゴホッゴホッ、いえ。お気になさらず・・・・。」
「その様子だとクイナさんはルシファーの事を知ってるんですか?」
「知ってるも何もこの世界で初めて空を飛んだ飛行船の名前やん!!黒き翼は空を割き、行く手を阻むものは業火に焼かれる!数多の空を駆け抜け、時には神にも牙を剥き、多くの人に夢と希望を運んだ漆黒の船!異界の技術を使った伝説の飛行船やん!!はっ!?そうやん!!」
バタバタバタ!バタンッ!!ガタガタガタガタッ!!
クイナさんが机の引き出しを開けて何やら探しています。その投げ捨てている資料は貴重では無いのでしょうか?と言いますかそんな小さな棚の中にどれほどの資料を詰め込んで?
「あった!これやん!!」
取り出したのは1枚の紙。それを大事そうに抱えてこちらに持ってきたクイナさんが、それを広げて中身を見せてくれます。そこには空を飛ぶルシファーの姿を下から見た絵が描かれていました。
「これ爺ちゃんが描いたやん!!」
「まぁ!ずいぶんとそっくりですわ!」
「よっぽどルシファーの事が好きだったんだろうね。凄く心が籠ってる。」
「良い絵ですね!滅茶苦茶上手に描けてる!」
「交易してた頃の絵何やろうなぁ。」
「雄大に飛ぶルシファーへの憧れと、いつかルシファーの様な飛行船を作りたいという羨望と、そして船を操る友に送る友愛。この絵からは沢山の心を感じますね。」
「爺ちゃんが最後に整備した時の風景って言ってたやん。爺ちゃんたちの作品を沢山乗せて、交易してくるって友達が言って飛び立ったって。その後ルシファーがここに戻って来る事は無かったやん・・・。爺ちゃんは凄く寂しがってて、せめて友が無事かどうかだけでも知りたいって方々手を尽くしたやん。でも情報がなんも無くて・・・。爺ちゃんは体を壊してそのまま死んじゃったやん。」
たぶん地上で戦争が激化した時だったんでしょう。ルシファーを戦争の道具に使われたく無くて、お爺さんの作品と一緒にあの地下室に眠らせた。そして持ち主はそのまま亡くなってしまいました。その頃には厄災に閉じ込められていたでしょうから、地上の情報を一切得られなかった空中大陸では、その事を知る術は無かったんですね。
「ルシファーの持ち主は戦争に巻き込まれ、仲間を助けて亡くなられてますわ。ですが!ルシファーとお爺さんの作品だけは守り抜こうと地下室を作って隠していました!恐らく、争いが終ったらもう一度ここに来る為に準備していたんですわ。」
「整備用のパーツが一緒に置かれていたからね。何が在っても戻って来ようとしていたんだと思うよ。」
「それを聞けて安心したやん。爺ちゃんたちが見捨てられたんじゃなくて良かったやん。」
「所でそのルシファーが今大変な事になっとる訳やけど、修理に手ぇ貸してくれるんかいな?」
「ルシファーは今ウィンドルと名前が変わってるけど、バラバラになっちゃってるの。クイナさんはそれが直せますか?」
私の問い掛けに顎に手を当てて考えるクイナさん。そして、結論に至ったのかその手を降ろします。
「確実に直せる!とは言えないやん。だけど、爺ちゃんが憧れて、いつか追いつこうとした飛行船の修理が出来る何て運命やん?やからうちが修理するやん!!その為の資料はここにあるやん!」
そう言って両手を広げるクイナさん。頼もしいお言葉です!ですが私以外のメンバーの顔が蒼褪めています。何やら汗も出ている様な?一体どうしたんでしょう?
「つかぬことをお聞きしますが、資料っていうのは何処に?」
「?この家に在る物全部やん?」
「・・・・・それって一階部分や隣の部屋の資料も全部ですの?」
「そうやん?」
「「「「・・・・・・・・。」」」」
私達は最初に家中の片付けと、資料の整理整頓から始める事になりました。今日中に終われば良いなぁ・・・・。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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