第417話

お爺さんに聞いた道を進みます。この庶民街は似た建物ばかりが並んでいて目印になる物が少なく、入り組んだ形で建物が密集しているので自分が今どこに居るのか見失いそうになってしまいます。地元の人でも無い限り、何も見ずに目的地にたどり着くのは不可能でしょう。私達旅人にはマップという力強い味方が居ますけどね!


「確実に迷子になる作りをしていますわね・・・・。」

「マップが在って良かったねお姉ちゃん!!」

「本当にマップ様様やなぁ。これ無かったら絶対目的地に辿り着けへん自身が在るで・・・。」

「直線距離だと短いのに、大きく迂回する関係でかなり遠く感じるからねぇ。」


クリン君の言う通り、目的地はお爺さんとお話をした所から500メートルも離れていないのです。ですが、建物が入り組んでいる所為で中々たどり着けません。というかこれ、一旦城壁付近まで抜けてから戻って来ないと目的地に行けないようになってますね?


「もう!早く戻りたいのに!!」

「リダ姉は本当、ルド兄の事好きやなぁ。何でなん?」

「そうです!私もそれが気になりました!!」

「確か気になり出したのはALOのイベントで助けられたからでしたわね?」

「もっと前じゃなかった?」


はわわわわ!なぜ今の発言で恋バナになるんですか!!全く脈絡も無かったのに!!


「そそそ、そんな事言えるわけ無いじゃないですか!!」

「え~、うちめっちゃ気になるんやけど?」

「私もです!!」

「そこまで思っているのならさっさと告白してくっ付けば良いんですわ。その為の協力もしましたでしょう?」

「歳の差結婚について長々と語ってたよね。」


うぅぅぅぅ、確かにオフ会をした時に私の事そっちのけでルゼダちゃんとクリン君が語ってくれました。ですけど、そんな簡単な事じゃないんです!!


「確かイベントの時にピンチを助けてくれて?男性不信に陥っていたはずの自分がその大きな背中に安心感を覚えたのが最初でしたっけ?」

「その後リアルでもストーカーから助けて貰って、完全にその時に堕ちたんでしたわよね?」

「えっそれってまじなん?うわぁルド兄カッコええやん!」

「ちょちょちょっ!何でここで言うんですか!!ルリちゃんとベニちゃんには話して無いのに!!」

「ルド兄さんが居ないから良いじゃないですか!それにリダさんの気持ちは傍で見てたらすぐに解りますよ?」


そっそんなに解りやすいですかね?・・・・・いや、惚けるつもりはありませんよ?自分でもかなり解りやすい行動を取っていると思います。取ってますけどそれで気が付かないルドさんが可笑しいのです!!


「なんであの人は私の好意に気が付いてくれないんですか!一緒に買い物行ったり部屋に行って料理を作ったりしたら気が付いてもおかしく無いでしょう!?なのにどうして!!2人で1日過ごした事も在るんですよ!?」

「単に年齢差かなぁ?ルドさんにはリダさんと同い年くらいの姪っ子が居るみたいだし。」

「姪っ子さんとも昔は良く一緒に遊んでいて。泊りがけで遊びに行く事も在ったとか。その時も弟さんに任されて2人っきりで遊びに行っていたと言ってましたわよ?今は家が遠くなってしまって中々会えなくなったとか。」

「・・・・リダ姉。完全に姪っ子ポジにカテゴライズされとるんちゃう?」

「ちょっと可哀そう・・・・。」


そんなぁ~。これでも女性らしい所をアピールしたり、体調管理をして頼れる出来る女を目指したりしてたのに・・・・。


「私は一体どうしたらルドさんに女性として見て貰えるんでしょうか?」

「あっ目的地に着いたみたい。」

「おー、これは目立ちますわね。」

「2階建ての建物の屋根に飛行船・・・・やなくてあれは模型?窓からなんで線路が伸びとるん?時たまトロッコが出入りしとるけどあれは意味あるんか?あと無駄に大きな歯車と水車がくるくる回っとるけど、水もなんもないで?どないなっとるん?」

「わぁー、すっごく面白そう!」

「ちょっと!?」


私が真剣な相談をしようとしているのに、皆さんは目的地に興味を奪われてしまいました!自分達の方から恋バナを始めたのに酷い!!


ですが家に注目するのも解ります。庶民街の建物は平屋が多いのにこの建物だけ2階建てですし、なかなかファンタジーな見た目をしていますから。


「これがドアベルかな?」

「鳴らしてみれば解りますわ。」

「ほな失礼して。」


カランコロン。パカリッ


ドアにぶら下がっている小さなベルをルリちゃんが鳴らします。すると、ドアに着いている小窓が開きました。中から家の人が覗いているのかな?と思い見てみると、そこには大きなレンズが在るだけでした。


『誰?』


おっと、どこからともなく声が・・・・。あっ多分これですかね?花壇に咲いている花だと思った物がスピーカーになってました。ファンシーな見た目のスピーカーですねぇ。


「私達は女王様に飛行船を修理出来る人を紹介された者ですわ。ここにその人物が居るとお聞きして訪ねて来ましたの。ここにクイナという方はいらっしゃいまして?」

『クイナは私やん?女王様の紹介って証明できる物はあるやん?』

「これですわ。」


ルゼダちゃんが紹介状を取り出すと、またパカリと扉の下が開きポストの様になりました。これはここに入れろって事で良いんでしょうか?


「こちらに入れれば良いんですの?」

『そうやん。』


コトリッ


「入れましたわ。」

『ちょっと待つやん。』


シューッ


扉の中から何かが滑る音がしています。これはさっき入れた手紙が移動してるんでしょうか?おやっ?2階の窓からトロッコが出てきました!そのトロッコが線路を通って1階の窓から入って・・・・・。反対側から出てきましたね。あっ!さっきの手紙がトロッコの中に見えました!あれは郵便物を運ぶための物だったんですねぇ。


トロッコはそのまま2階の窓に入って行きました。これでクイナさんの元に届いたのでしょうか?


『・・・・・。解ったやん。入って欲しいやん。』ガチャリ!

「ありがとうございますわ。」


トロッコが2階の窓に消えてからしばらくして、手紙を読み終えたのかクイナさんが玄関のカギを開けてくれました。代表でルゼダちゃんがお礼を言った後に、私達は中に入ります。


家の中は一言で言って・・・・・ゴミ屋敷でした。何に使うのか分からない道具が床や棚に無造作に置かれ、何かの設計図らしきものや参考書の様な物がそこかしこに散らばっています。左奥にはキッチンの様な物が見え、右側には2階に上がる階段が見えます。部屋のど真ん中にさっき見たトロッコの線路が走っていて、今も私達の前をガタンゴトンと音を立てながら通過して行きました。


「これは凄いな。」

「足の踏み場も無いとはこの事ですわね・・・・。」

「うわっ!バナナの皮で滑った!なんで生ごみ放置しとるんや!!」

「ぷっ!もうお姉ちゃんコントみたいな事しないでよ!」

「あのークイナさーん!どこに居られるんですかー!」

『2階に上がってきて欲しいやん。』


トロッコが2階に手紙を運んでいたので解っていましたが、やっぱりあの階段を上らないと行けないんですね。このごちゃごちゃの中を歩くのは一苦労なのですが・・・・。


「行くしか無いですわ!!」

「簡単に片づけながら階段迄行こう!」


という事で私達は歩けるくらいに部屋を片付ける事にしました。と言っても床に散らばっている物を脇に避けただけで、本格的な掃除はしていません。階段も案の定、本やら壺やら花瓶やらが沢山乗っていたので、上り下りできるくらいのスペースを空けました。2階も似たような状態で、私達がクイナさんが居るであろう部屋に辿り着くのに1時間も掛かってしまいました・・・・。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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