急げリダ!ルドが食われる前に!

第416話

私達は駆け足で城から飛び出しました!!おや?今ルドさんの悲鳴が聞こえたような・・・・。いや気のせいですよね。さっき別れたばかりだというのに私はもうルドさんの事が恋しいみたいです。待っていて下さいねルドさん!あの女からすぐに助け出して上げますから!!


「気合を入れてる所悪いんですけど。飛行船技師の居る場所は解ってますか?」

「この紹介状にバッチリ書かれています!マップにもしっかり反映されてますよ!」

「あっほんまや!マップに目的地が表示されとるで!」

「これで迷う事は無いね!」

「では早速向かいますわよ。どうやら目的の人物は王都南側の庶民街に居るみたいですわ。」


私達はマップの案内に従って移動を始めました。城の周辺は煌びやかでとても高級感溢れる建物が多かったのですが、そこから離れて行くにつれてだんだんと寂れた雰囲気を醸し出し始めました。道行く人たちの格好も色々な装飾を施した派手な服装から、なんの装飾も無い所か茶色く薄汚れたボロボロの服に変わって行きました。人々の表情にも元気が無くなって来ています。


「飛べない人達が不遇な扱いを受けているとは知っていましたが、ここまで変わるんですのね・・・・。」

「うーん、あの女王様からは考えられない待遇の悪さだよね。一体どうしてこんな風になってるんだろう?」

「あの女王はんも何か救済措置取ればええのに。」

「本当だよね。」

「おめぇさんら、今女王様と言いなすったか?それはあのお城に居られるシーラ女王様の事だか?」


おっと、私達の会話が耳に入ったのか、ペンギンのお爺さんが杖を突きながら私達に話しかけてきました。白いまつ毛が異様に長く、口から生えた髭も地面に着きそうになっています。まるで仙人みたいですが違いますよね?


「えぇ、そのシーラ女王ですわ。どう見ても貴方達は不遇な扱いを受けていると思いますの。それを救済しないのであれば為政者として失格だと思いませんこと?」

「そったらこたねぇ!女王様はわし等を助けて下さった心優しいお方だ!!わし等の女王様を馬鹿にするでねぇだ!!」


お爺さんが杖を振り回して問いかけたルゼダちゃんに対して怒っています。ですがルゼダちゃんの言っている事は私達の意見と一緒だったので、その豹変ぶりに全員が驚きました。


「どうやら失言でしたわね。先ほどの発言は撤回しますわ。」

「解ったなら良いだ。女王様がおらなんだらわし等はとうの昔にこの大陸から突き落とされて死んじまっとるでな。」

「あのぅ~。そこら辺の話聞いても良いですか?」


ルゼダちゃんの謝罪に合わせて私達も頭を下げます。それでお爺さんも許してくれたみたい。それにしても死んでしまっているというのは穏やかな話じゃありません。どうしても気になった私はお爺さんに質問してしまいました。


「ええだ。わし等がどうしてこんな生活をしているのか、わし等の事をどうやって女王様が救って下すったかを語って上げるだ。」


お爺さんが言うには、地上と交易をしていた時までは皆平等に生活していたそうなんです。飛べない鳥人達も魔道具を使えば他の人と遜色無く飛ぶ事が出来ていて、そこには飛べる飛べないの差別は無かったんだとか。その頃の空中大陸は各地と頻繁に交易をしていて、行商人の様な事もしていたそうです。別の土地で買った品を持って行ったり、その土地で余った物を買い取って別の土地に持って行ったり。それはもう人々に喜ばれていたんだとか。


ですが、地上との交易が途絶え。品物が手に入らなくなると状況は一変します。今まで魔道具に頼って飛んでいた人達が、魔道具の開発も修理も出来なくなり空を飛べなくなりました。鳥人達は行商人として働く事も出来なくなったんです。


それでも自力で飛べる人達はこっそりと地上に降り、ひそかに交易を続けていたんだそうです。たとえ国から禁止されていても、そうしなければ食べる物も少ないこの空中大陸では飢えて死ぬ人が出てしまうから。国も実情を鑑みて黙認していたのだとか。


そんな勇気ある人達のお陰で自力で飛べない人達の多くは助かりました。だからこそ、飛べない人達はお礼として飛べる人達の待遇を良くして欲しいと国にお願いしました。国はその願いを聞き届けたんだそうです。


ですがその状況が3年も続くと飛べる人に被害者が出る様になります。そして、親族を失った飛べる人達が何故、飛べない者の為に自分達の家族が死ななければならなかったのかと声を上げました。そこからが飛べる人と飛べない人の確執の始まりでした。


飛べる人は自分達が手に入れた物資を法外な値段で飛べない人達に売り渡し始め。支払いが出来ない人を奴隷に落とし始めたのです。


奴隷となった飛べない人達の待遇は最悪で。罵詈雑言や暴力を受ける事は当たり前。遊び半分で大陸の端から突き落とされたり、見せしめとして人々の前で殺されたりもしたんだそうです。


そして、飛べる人よりもあまりにも飛べない人の方が多いという理由で、飛べない人達全員を大陸の端から追放する計画が持ち上がってしまいました。その時にはすでに国の中枢は飛べる人達だけになっていて、反論出来る人も居ませんでした。


しかし、その計画は実行に移されませんでした。なぜなら空中大陸が厄災に取り囲まれ、完全に外界と切り離されたからです。そして、絶体絶命の空中大陸を救う人が立ち上がりました。そう、現女王のシーラさんです。


彼女は大陸を救うために結界を張り、人々の前に姿を現しました。その時、国を仕切っていた人達がシーラさんにずっとこの大陸を守り民を導いて欲しいと願い出ました。彼女は空中大陸を守り続ける条件として、この大陸に住む人をむやみに傷付ける事を禁じました。国は条件を飲み、奴隷の解放と共にシーラ女王が誕生したのです。


飛べる人達はポッと出のシーラさんを傀儡にしようと思っていたのでしょうが、彼女は強かでした。女王としてその手腕を発揮し、まず飛べない人たちに作物を育てるという仕事を与えたのです。これにより食糧事情が改善し、その功績を持って飛べない人達を保護する区画。そう、今私達が居る庶民街を作り上げたのです。


「女王様はわし等に生きる場所を下さっただ。じゃから悪く言うてはいかん。女王様を悪く言う奴はこの街では生きて行けんでの。」

「立派に女王してるんですのねシーラ女王様は。」

「でもなんで女王様は差別を無くさないんですか?それだけ発現力が在るなら皆さんの待遇をもっと良く出来ると思うんですが・・・。」

「それはわし等が多くの土地を占有しとるからだで。その代わりに飛べる者達に何かを補填せにゃならないだ。」

「飛べないから土地を占有してしまう。畑仕事をしていたら特に土地が必要になる・・・。」

「つまり、土地を使わせて貰っている代わりに特権階級としての地位を与え続けているという事ですのね。」

「それが差別を助長しとると思うんやけどなぁ。」

「仕方ないのかなぁ・・・。だって資源の少ない空中大陸じゃ、他に何かを渡す何て出来ないだろうし・・・・・。」

「仕方ないだよ。わし等は女王様のお陰で多くの土地を使わせて貰ってるだ。そのお陰で生きて行ける。少しくらいの不平等は我慢するだ。じゃけどこうも思うだ。わし等も飛べたなら、こんな風にならずに済んだだのにと・・・・・。」


また魔道具を使って飛べるようになれば、この人達の不遇な扱いも無くなるでしょうが・・・。そう言えば飛べない人達は元々何をして生活していたんでしょうかね?魔道具を使って行商人の様な事をしていたのは解りましたが、それ以外の職業は無かったのでしょうか?そこら辺のお話が全く無かったですよね?


「そう言えばお爺さん達はどんな仕事をしていたんですか?」

「ん?わし等の仕事だか?わし等は整備工だども?」

「えっ!?それって飛行船のですか!?」

「飛行船だけじゃないだ。この大陸で作られた魔道具の整備はぜーんぶわし等がやってただよ?今も時たま整備を頼まれるだ。」


ナイス質問ですクリン君!!なんという事でしょう!私達は当たりを引いたのかもしれません!!これでルドさんを助けられる!!


「あっあの!!飛行船の修理は出来るでしょうか!!」

「その飛行船はどんな状態だか?」

「船体がバラバラに壊れとるんよ。」

「機関部が無事かどうかも解らない状態です。」

「ん~。そこまで壊れてしまっているならわし等には無理だで。」

「えっ?」


どうしてでしょう。さっき飛行船の整備をしていたと言っていたのに・・・・・。


「わし等は整備は出来るだが、1から組み立てるような本格的な修理は出来ないだ。修理が出来る奴は飛べないもんが又飛べるようになるのを恐れた奴等に真っ先に狙われて殺されちまっただ・・・・。」

「つまり今飛行船を完璧に修理出来る人が居ないと?」

「1人、もしかしたらって奴なら居るだよ。」


そう言えばマップが指し示す場所はここじゃないんでした。もっと庶民街の奥を指し示しています。私とした事が気が急いてしまって目的地に辿り着いていない事を失念していました!!


「こっちの道を真っ直ぐ進んだ所に変な形の家が在るだ。そこに住んでいるクイナちゅう奴なら直せるかもしれないだよ。」


お爺さんが指し示す先は、さっき私がマップで確認した方向と一致していました。早く連れて帰ってルドさんを私達の手に取り戻さないと!待っててくださいねクイナさん!!


「ぶるる!!今肉食獣に狙われた気がするやん・・・・。」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る