第414話

眼を瞑ったままこちらに歩いて来る女性。背中に在る羽はとても見覚え在りますねぇ・・・・。そしてその女性、このエアリオンの女王様が俺達の方に顔を向けて(目は一切開けてない。)口を開いた。


「お待ちしておりました旅人の皆様方。私はこの大陸を守護する女王シーラと申します。以後お見知りおきを。」


そう言って頭を下げる女王シーラ。おいおいそんな簡単に頭を下げて良いのか女王様が。横にいるカラスが滅茶苦茶驚いて居るんだが?あと何気にこの大陸に来て初めて“旅人”だと言われたな、つまり俺達に関する知識も持ってる訳か。何気にここに居る奴等は俺達の事を住人として扱っていたからな。


「初めましてだなシーラ女王。俺はルド。仰る通り旅人だ。」

「同じく旅人のリダです。よろしくお願いします。」

「私はルゼダですわ。」

「僕はクリン。」

「ルリやで!」

「ベニです!」

「そんでもってこっちが俺の友魔の・・・。」

「私がシアだよ!それとアイギスとマロだよ!」

「(`・ω・´)ゞ」

「きゅっ!」

「この子は私の友魔のロアですわ。」

「ピーッ!」

「はい皆さんよろしくお願いします。」


俺達の自己紹介を聞いてふんわりと笑う女王様。いやぁ絵になりますなぁ。美人は何しても似合うと言うけど本当だな。うん、リダさんは尻を抓るのを止めようか?


「それで?女王様はなんで俺達の所に?」

「はい、実はここに来たのは確認する為なのです。」

「確認?なんの?」

「それは・・・・シア、と言いましたね。あなたは植物に由来する精霊『ドリアード』で合っていますか?」

「うんそうだよ!」

「そうですか・・・・。この気配間違いないですね・・・・。シア、あなたに私の後を継いで頂きたいのです。私の娘として。」

「はっ?」


いやいやいや、何言ってんのこの女王様。シアが女王様の後を継ぐなんて無理に決まってんだろ。後家の子を勝手に勧誘しないでくれ!


「あっもちろん契約主であるルドさんは私の伴侶として一緒に居て欲しいのですが?」

「はい?」


さりげなく腕を取ってぴったりとくっ付いて来る女王様。ふむ、結構大きな物をお持ちで・・・・じゃない!!この人一体何を考えてるんだ!!


「それは駄目です!!」

「どうしてでしょう?王族となれば重婚も許されますが?」

「それだとルドさんと一緒に冒険できないからです!」

「私、パートナーとなった方を束縛するつもりは在りません。必ず戻って来て頂けるなら冒険に出ても気にしませんよ?」

「むー!!とにかく駄目です!」


それ明確な反論が出来なくて困った時にでる台詞じゃよリダさんや?あと女王様、そんな事をこんな往来で言ったら大問題になりますよ。ほらカラスの顎が地面に落ちてる。あっこらっ!恋人繋ぎしようとするんじゃない!にぎにぎしない!蔓にピンクの小さい花を咲かせて良い香りを漂わせない!


「ルドさんはまんざらでも無いんですか?」

「俺だって突然の事で驚いてるだけだぞ?」

「ふふふ、ごめんなさい。あなた達の事は空神様から聞いてましたので、ちょっと揶揄って見ました。」


口に手を当てて笑う女王様、そっかー空神から俺達の事を聞いてたのかぁ。揶揄ったんだったらいい加減手を離してくれませんかね?ちょっとそこに鬼が見えてるんで。


「ですが後継者を探しているのは本当です。どうでしょうシア?後継者になって頂けませんか?」

「ん~、パパと一緒じゃないとやだ!!」

「そうですか。ならルドさんはやはり私と婚姻して頂かないと。」

「なんでそうなるんです!!別に一緒にいるなら結婚する必要はないと思います!!」

「これでも私この大陸の女王ですので、身内でない殿方と一緒に居るというのはかなりの大問題になりますから。シアを後継者にするのであれば必然的にルドさんに伴侶になって頂くしかありません。」

「ちょっとちょーーっと待った!なんで後継者を探しているんだとか、それが何故シアなのかとか色々と聞きたい事も多いから落ち着いた所に案内してくれ!それにこんな所でして良い話じゃないだろうそれ!!」

「あらっ照れてらっしゃるの?」

「普通に照れるわ!後恥ずかしいわ!」


こんな往来で俺を巡って争うんじゃありません!見てる人たちがあらあらうふふふと見てるから本当に恥ずかしいんだよ!見物人は昼ドラ好きの奥様か!


「だからまず先に移動させてくれぇ!!」

「ルド兄必死やな。」

「私も気持ちは解るよ。凄い注目されてるもんねルド兄。」

「僕なら恥ずかしくてすぐ逃げちゃうかなぁ。」

「ここはリダさんに頑張って欲しいですわ!」

「┐(´д`)┌ヤレヤレ」

「きゅっ?」

「ピー?」


俺の叫びを受け入れてくれたシーラ女王は、俺達を城に案内してくれた。その間ずっと腕を組んでいるから注目度が半端ない!女王と親しそうにしているあれは誰だ?とか、なんで女王様に腕組まれてるんだ?とか、一緒に居るシアを見て女王様には子供が居たのか?つまりあいつが夫なのか?とかそれはもう街中に噂が広がりまくった!!あぁ滅茶苦茶胃がいてぇ・・・・。


そんな女王様に対抗心を燃やしたのかリダも反対の腕に抱き着いて来てたしなぁ・・・。当のシアは俺に肩車して貰ってご機嫌だったけど。


そんなこんなで首都エアリオンの王城に辿り着いた俺達は、これまた城で働く人たちに滅茶苦茶注目されながら城の応接間に案内されましたとさ。あぁやっと解放される・・・。


「どうしましたあなた?ご気分が優れませんか?」

「あれだけ注目されたら気分も悪くなるだろ?それに結婚したつもりは無いんだが?」

「ふふふ、時間の問題ですよ。」

「いや了承してないって話なんだが?」


この部屋に入ってきてやっと女王様が目を開けてこっちの顔を見た。これまたエメラルドみたいに綺麗な緑色の瞳だな。それと俺の顔を見て「やはりあなたでしたね。」と確信めいた事を言ったのは何でだ?


「ちょっとよろしいですか?」

「あらあなたはクリンさんでしたね。どうしました?」

「どうしてそこまでルドさんに好意を寄せられるんですか?今日初対面でしたよね?」


そうだそうだ!もっと言ってやれクリン!俺達はさっき門の所で出会ったばっかりだってな!それをいきなり結婚だの伴侶だのと突然言い出した理由は一体なんだ!!


「それはルドさんが世界を救った英雄であるという事を知っているからです。まぁそれだけではありませんけど。」

「他の理由は何ですの?」

「私と彼は初対面では無いのです。一度激しくお互いに求め合った仲ですわ。」


うっとりとした顔をしながらそんな事を言い始めた女王様。いやいやいやいつ俺達出会ったって言うんだよ!そんな俺の心の声は決して仲間に届かず、女性陣にとても冷たい目で見られてるんですが!?


「そんなっ!ルドさんにそんな相手が居た何て!!」

「見損ないましたわルドさん!リダさんの事は遊びでしたのね!」

「悪いやっちゃなルド兄は。観念したらどうや?」

「最低です!」

「待て待て待て!俺は女王様に在った事は無いんだってば!!」

「あらお忘れですか?あの暑い夏の夜、お互いの体を絡め合ったじゃないですか。」

「そんな話知りませんけどねぇ!?」


一体全体何の話をしているんだこの女王は!!後普通のその発言はNG喰らうだろ!!


「パパ、気が付いて無いの?」

「ふぅー、ふぅー、気が付いて無いって何に?」

「この人シアのママだよ?」

「いや、それはこの人が勝手に言ってるだけだろ?別に本当にシアのママって訳じゃ・・・・・ん?」


ニコニコしながらこっちを見ている女王。そしてその背中からウネウネと伸びる蔓。そして女王は徐に口を大きく開けて俺に掴み掛かるポーズを取った。その姿を見て女王の後ろに大きな花型モンスターの幻影が見える。ってえぇぇぇぇぇぇぇぇこいつもしかして!!


「開拓村を襲ったクイーンレイシア!?」

「あぁっやっと思い出してくれましたかあなた!!」

「「「「「えっ?」」」」」」


俺の言葉に嬉しそうに抱き着く女王と、俺の口から正解が出たことに驚くパーティーメンバー。確かにこいつとは体を絡め合ったわぁ。一方的に食われそうになっただけだけどな!!ってかなんであいつが人型になってるんだ?親父の攻撃で消し飛んだはずだろ!!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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