第410話

レースももう終盤。俺達はやっと先頭集団の中程まで食い込んでいた。


「このっ!堕ちろ!」

「きゅっ!」

「邪魔だ!」

「きゅきゅ~♪」

「くそぉぉぉぉぉぉっ!」

「きゅん!」


さすが先頭集団だけあって選手自らが妨害してくる。爪で攻撃してくる奴、体事ぶち当たって飛行を妨害しようとする奴。マロの前に出て進路妨害しようとする奴。他にも色々と棒外相とする動きもある。だけどそれじゃマロは止まらないなぁ。


爪での攻撃は軽く避け、体当たりは逆にマロの方から辺りに行き吹き飛ばし、進路妨害しようとする奴の横をスイッと抜けてドンドン前に行くマロ。そしてやっと先頭の赤い服を着た燕鳥人に追いついた。と思ったら燕はふっと力を抜き落ちて行く。


何故だ!!と思ったら俺達の目の前に結界が迫っていた。つまりここまで来ればUターンしても良いって事らしい。まぁ勢い余って結界抜けちまったんだけどな。


そして始まる絨毯爆撃ならぬ絨毯隕石攻撃!結界を抜けた途端に上空から無数の隕石が降って来る!慌てて結界に戻ろうとする俺達の前には、翼を広げて結界に戻るのを邪魔する鳥人達の姿が!お前等卑怯だろそれ!


「ふはははは!戻れる物なら戻ってみるが良い!」

「貴様はそこで魔獣の攻撃にやられて堕ちろ!」

「結界を抜けた方が悪いんだよ!!」


まぁ言い分は最もだが、それだとお前達もレースに勝てないが良いのか?


「我々はスワローちゃんファンクラブ!」

「あの子の為ならレースなんぞ糞くらえ!」

「スワローちゃんを守れるなら本望だ!!」


先頭を飛ぶ燕兵士は女性だったんかい!まぁ洞窟のトラップ考えたら女性がトップになってもおかしくないわなぁ。わざと掴まる奴とか居そうだし・・・・。


「という訳でさっさと落ちて死ね!」

「嫌だね!」


お前等が邪魔するって言うならこっちだって考えが在るからな!という訳で<盾の障壁>展☆開!!突っ込めマロ!


「きゅっ!」

「オラオラ邪魔だ邪魔だー!!」

「ぐはぁっ!!」

「何だとっ!!」

「我等の防御を抜くだと!!」


やってる事は簡単。俺が張った盾の障壁で鳥人の体を押してスペースを作っただけ。もちろん押された鳥人達はバランスを崩して落ちて行く。隕石は無事に結界にぶつかって流れて行ったな!


「さて先頭を急いで追うぞ!」

「ぎゅいっ!!」


まだスワローちゃんの背中は見えている。こっからは純粋なスピード勝負だからな!何も考えずにフルスロットルだ!


ゴォォォォ!!


唸りを上げるエンジン。ゴーゴーと音を立てながら過ぎて行く風。空気抵抗を受けてなのかガタガタと揺れる機体とハンドル。それでもマロはスピードを緩めない!真っ直ぐに、あの赤い服を着た燕を追い掛ける!


しかして相手もこのレースの先導役を任される程の人物。後ろに俺達が迫ってきているのを知って何やらベルトをカチャカチャと触り出した。そしてベルトのバックルが開き、中に在る赤いボタンを殴るように押す。


ウィーンガシャガシャガシャン!


すると、ベルトの腰部分に在る金属パーツが広がりジェットエンジンの様な物が生えたじゃないか!そのエンジンの側面には『I♡スワロー』『スワローファンクラブ一同より愛を込めて』と書かれている。ってか良いのかこれ!


そんなスワローちゃんは徐にベルトの左横に在る金属パーツを叩く。すると腰に展開されたジェットエンジンが唸りを上げ、一気に加速し始めた!!


「負けてられないぞマロ!!」

「きゅーーーーーーっ!!」


マロも負けじとスピードを上げる。


ドォーン!!


マロは空気の壁を突破し、グングンと先を行くスワローちゃんに迫る!!だがスワローちゃんも負けられないのか、今度は腕に巻いた腕輪に触れて体に何やら黒いスーツを纏う。そしてさらに右横に在る金属パーツを叩いた!スワローちゃんの体はさらに加速し、加えて透明な障壁が前面に展開されている。どう考えても空気抵抗を軽減する結界だなあれは!


「こっちはそもそも戦闘機だぜ!空気力学はバッチリよ!!」


そこまでやっても迫って来る俺達に恐怖の表情を浮かべるスワローちゃん。すでにゴールの村が見えてきている。ここで抜けなければ俺達の勝利は無いぞマロ!


スワローちゃんに迫るマロ。負けじと進むスワローちゃん。両者は村の上空でほぼ横並びになり、そのままゴールに飛び込んだ!さぁどっちだ!!どっちが勝った!!


そう思い、村の順位表に目を向ける。すると驚愕の結果が目に飛び込んで来た!


1位 リダ

2位 ルゼダ

3位 クリン

4位 ルリ

5位 ベニ

6位 ルド

7位 シア

8位 スワロー


・・・・・・はい?なんであいつ等もうゴールしてるの?


時は少し遡り、洞窟を抜けたリダ達。


「さぁ結界の前を目指しますわよ!」

「ちょっといいかいルゼダ。その結界の前何だけどさ。」

「どうしましたのクリン?」

「マップを見て貰ったら解るんだけど、あの人達みたいにあそこ迄上昇しなくても良いみたいだよ。」


一体どういう事でしょう?確かルールでは結界の前まで行って急降下するという話でしたよね?


「あっ!本当ですわ!マップを見たら結界の傍まで行かずに、村から観測できる高さにまで上昇すれば良いみたいですわ。」

「たぶん急降下した後のスピードを確保する為にあれだけ上昇してるんじゃないかな?でも僕達には関係ないよね?」

「・・・・・確かに。私達は自力でスピード上げられますわ。」

「自力でスピード上げるって言うても限界在るで?」

「そこはほら、僕とルリちゃんのアイテムで加速。リダさんに空気抵抗を減らして貰えば何とかなりそうじゃない?」


むむむ、クリン君の言う通り機体全体を包むように風を操れば空気抵抗は何とか出来ます。ですが加速性能に難在りでは?


「ルリちゃんも取って置き、在るんでしょ?」

「そう言うクリンはんも何か在るんやね。」

「うん、最後に皆を驚かせようと思って準備してた奴が在るよ。」


ほう、それを使えばここから一気に逆転出来ると?


「そっちはどんな性能なん?」

「簡単に言えばロケットかな?複数の爆弾をくっつけて、連鎖的に爆破。どんどん加速させて行く代物だね。」

「うちの方も似たような奴やね。火薬と魔力を無理矢理詰め込んで作った特大の奴が在るんよ。ベニに協力して貰わな使えへんけどな。」

「お互いの隠し玉を使えば。」

「トップ取れるんちゃう?」


ニヤリ。


どうやら2人の間で作戦は決まったみたいです。


「そうと決まればベニ!機首曲げてや!高度は十分やさかい下るで!その後は後部に来てや!」

「えぇっ!!本当に良いのお姉ちゃん?」

「ええに決まっとるやろ?」

「リダさんは機体の周りの空気抵抗を減らしてください。出来ますよね?」

「えぇ、出来ますよ。」

「私はどうしたら良いんですの?」

「ルゼダはこのまま聖火で巡航速度を保って。準備に時間が掛かるから。」


という訳で私が先頭になり空気抵抗を減らします。すぐ後ろでルゼダちゃんが聖火で速度を維持、クリン君は推進装置に赤く長い筒を入れています。そして一番後ろではルリちゃんが大きな弾丸をベニちゃんの厄喰いの砲口にねじ込み、厄喰いを構えるルリちゃんの後ろから支える位置に立ちました。


「ほな行くで!」

「最初は私達です!!」ヒュィィィィィィィンッボカーンッ!!


厄喰いから発射されたエネルギーはアホウドリを即座に加速させました!あまりの衝撃に乗っていた皆が後ろに引っ張られます。


しかしそのエネルギーも徐々に失われ、勢いが無くなって来ました。ここでクリン君が動きます。


「点火!」


ボン!ボーン!!ボボーン!!


段階的に爆発する爆弾。その度にアホウドリはさらに加速して行きます!そして最後の爆発が終った時、私達は村のゴールに飛び込んでいました。


・・・・・・・・・・・。


「という訳なんです。」

「爆発音何て聞こえなかったぞ?」

「丁度マロちゃんが音速を超えた時だったからでは?」

「あぁーあの時抜かれたのか。」


そう言えば目の前に居るスワローちゃんに追いつく事に夢中で、周りを見ていなかったからなぁ。しかし、グライダーを合体させて飛ぶなんて何を考えているんだルリは・・・・。


「まぁでもこれで。」

「上位独占ですね!」

「それはもう凄い待遇になるんでしょうねぇ。」

「これから楽しみですわね。」

「期待してるで梟のおっちゃん!」

「まさか市民を守る兵士が約束を守らない、何て言わないですよね?」

「ぐぬぬぬぬ。仕方あるまい。貴様等の入村を許可する!」


ふぅ、これでやっと先に進めるな。所でシアはずっとどこに居たんだ?


「ん?シアはずっと一緒に居たよ?」

「鈴の中に入ってたのか?」

「んーん。ずっとマロの下に張り付いてた。」


どうやらシアはずっとマロの腹にくっ付いていたらしい。どこにも居ないと思ったらそんな所に居たのかい!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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