第407話

森を抜けるとそこは渓谷の中でした。いや何を言って居るんだ貴様は!と言いたい気持ちも解る!!だが現実なのだから仕方ない!!


森の切れ目が見えたと思ったら突然目の前に、正確には左右の視界に聳え立つ崖が見えたんだよ。そして丁度その真ん中に谷が在るんだってば。先頭集団はその風景の変化に驚く事も無く悠々と先を飛んでいくしさぁ。マップを見てもこの谷の中が正規ルートで間違いないし・・・・。


さて、突然ですがここで問題です!マロは狭くなった渓谷の中を飛べるでしょうか?チッチッチッチッチッチ。はい、正解はもちろん問題無く飛べるです!!


そもそも鳥人種の人達にも個体差が在って、翼を広げるとマロ以上にデカくなる種類の奴も居るんだよ。具体的に言うとアホウドリそっくりな奴とかコンドルみたいな奴だと翼を広げたら6メートルくらいになるからな。最大サイズのマロと変わらん大きさだ。えっ?今は最大サイズじゃないのかって?1人乗り状態なのでサイドカーが必要ない分小さくなってるよ。


「という訳だから突撃だマロ!!」

「きゅっ!」


猛スピードで谷を突き進むマロ。うぉぉぉぉぉっ!!超こえぇぇ!!左右の崖が迫って来てるように見える!!所々出っ張ってたりするし、結構なスリルがあるな!!ジェットコースター何て目じゃないぜ!


「きゅきゅ♪」

「ちぃっ!」

「だにぃっ!俺が抜かれただと!!」

「認めたくない物だな!翼持つゆえの過ちなど!!」

「そろそろそんな病気みたいな言葉使い止めなよ。女子全員引いてるよ?」

「「まじで!?」」


うん、何やら抜き去った奴等が学生みたいな事言って学園ドラマでも始めそうな程にのほほんとしている。良いのかあれは?あっほらどう見ても今の3人三角関係じゃん。雀女子がカラス男子を見る目が乙女だわ。だけどその横に居る鳩男は完全に雀女子にお熱な感じ。うわぁ、泥沼になりそう。(小並感)まぁ俺達には関係ないから別に放置で良いか。


さてさて?コース上には障害物が見えるが妨害はまだない。この場所の妨害は一体何じゃろな?


谷の間を進む事しばし、先頭集団の一番後ろを飛んでいる奴をやっと視界に収めた所でそれは起こった。


ゴロゴロゴロ


「っ!?マロ避けろ!」

「きゅっ!!」


崖の上から岩が落ちて来たぞ!これ下手したら他の参加者も死んじまうじゃねぇか!・・・・ん?落ちて来た岩がかなり茶色い気がするんだが・・・・・。それに何か飛び出して無いかアレ。


「ぎゅぴっ!!」

「ななな!どうしたマロ!落ち着け!!」


岩はマロに当たらずに谷の底に落ちて行った。だが岩がそばを通った時にマロはかなり嫌がるように身を捩り暴れ出す。その所為で危うく姿勢を崩しそうになった。何とか落ち着かせようと声を掛けると、涙目で情けない顔をしているのが見えた。俺はキャノピーの中に居るから解らなかったが、まさかあの岩は・・・・・。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「くっせ!お前超くっせ!!」

「ちょっと近寄らないでよ匂いが移るでしょ!!」

「ぎゃぁぁぁぁ!私の頭にう〇こが!!」


・・・・・・岩だと思っていた物をよく見るととても柔らかそうだ。そしてとても臭そうだ。うん、よく見たら岩を落している奴はフンコロガシに見えるもんな。あれ岩じゃなくてうん〇かよ!!


「あんなばっちぃ物受けるんじゃないぞマロ!!スピードは落ちても良いから全力で回避だ!!」

「ぎゅっ!!」


それからはもう死に物狂いで避けまくった。一発貰うと(社会的に)死亡するという極悪トラップを被弾0で抜けられたのはデカいと思う。なんせ先頭集団の何人かは〇んこ爆弾喰らって落ちて行ったからな・・・。谷の底が茶色く見えるのはまぁそういう事だろう。落ちて行った鳥人種の冥福を祈る・・・・。(元気よく下で騒いでいるので死んで無い。)


しっかしフンコロガシがなんでこんな場所にう〇こ集めてるんだろうな?元々食う為とかじゃなかったっけ?まぁ虫の生態なんて詳しくないから知らんが。


そんな事より次は谷の先に見える洞窟だな!さすがに中は暗いしこのスピードでは飛べないだろうけど、行けるとこまでこの状態で突っ込むぞ!信じてるからなマロ!!


「きゅっ!!」


一方リダ達はルド達と切り離された後、やっと森を抜けた所だった。


「やっと森を抜けられました・・・・。」

「あの蚊、かなり執念深かったですわね・・・・。」

「女性ばかり狙ってたように感じたよ・・・・。」

「アホウドリが破れんで良かった・・・・。」


グライダーの中で安堵の息を漏らす私達。しかし、安心してられるのも束の間でした。


「ねぇねぇお姉ちゃん。このグライダーこのままこの中を飛べる?」


ルリちゃんに質問するベニちゃん。合体前のグライダーでしたら簡単に通り抜けられそうですが、現在は5機分が1つに固まっています。このままだと厳しい感じでしょうか?


「ふっふっふ、甘い、甘いでベニ!お姉ちゃんがその事を考えんかった訳ないやろ!!」

「おぉっ!!つまり!!」

「こんな事も在ろうかと!!」

「出ました!こんな事も在ろうかと!!」

「翼は畳めるようになっております~。」

「畳んだら飛べないよ?」

「空間がせまなるけど、胴体翼になるから平気やで。」


そう言って操縦桿を引っ張るルリちゃん。すると、広かった胴体部分の空間が狭くなっていきます。それと同時に広がっていた翼が畳まれて行くように動きました。グライダー一機分の幅にまで畳まれて行きます。


「ちょっと苦しいけど我慢してや。」


胴体部分の空間が狭くなり、左右の壁が外側に向かって広がって行きます。私達は寝転がる形でそれぞれの場所に収まりました。一番前は操縦しているルリちゃん、そのすぐ後ろにはベニちゃんが寝転がり、その左右に私とルゼダちゃんが居ます。一番後ろにはクリン君が寝転がりました。


結構狭いですが苦しいと言う程では無いですね。推進装置を使う関係上この配置になってしまいましたが、問題無く飛行出来ています。ルリちゃんの技術力はやっぱり凄いですね。このサイズで飛べるなら最初からこうしていた方が良かったのでは?と思ってしまいますが・・・。まぁ壁が無ければ蚊にやられていたでしょうからあの状態が正解だったのでしょう。


「さぁルド兄に追いつくで!!ってなんやあれ?」

「わっわっわっ、岩が落ちて来るよお姉ちゃん!避けて避けて!!」

「言われんでも避けるわ。あらよっと!!」


頭上から落ちて来た岩を巧みな操縦で避けるルリちゃん。しかし、岩がグライダーの横を通り抜けて行ったその時、私達の鼻に耐えがたい衝撃が走りました。


「くさっ!!」

「めっちゃ臭い!!」

「なんですのこの匂いわ!!」

「あの岩もしかして・・・。」


頭上を見ると崖の上に虫が居ます。黄金色に輝き、エジプトでは太陽神として崇拝される虫スカラベ。そう、俗にいうフンコロガシの姿が!!


「ルリちゃん全力で離脱しますよ!!」

「う〇こ塗れにはなりたないから言われんでも!!」

「お姉ちゃん急いで急いで!」

「そう言うんやったら推進機関の出力上げんかい!!」

「わぁー前!!前!!」


騒いでいる私達の目前にうん〇の塊が落ちてきます!変形の関係上完全に密封されていない状態であれに当たったら鼻が死んでしまいます!!ですが落ちて来る“アレ”をもう避けられる感じではありません!!


「こなくそっ!!」

「う〇ちだけに?」

「ダジャレちゃうで!!」


バーンッ!!


操縦桿の引き金を引くルリちゃん。すると頭上の発射装置が火を噴き、目の前の“アレ”を粉砕しました!これで直撃は免れます!!・・・・ただし、細かい“アレ”が降り注ぐ中を飛んだアホウドリの翼は、所々が茶色くなってしまいました・・・・・。


「うえぇぇぇぇ!くちゃいよー!」

「はれかほうにかできまへんの?」

「ふぁんねんながらほうにもできふぁいね。」


あまりの臭さに皆鼻を摘まみながら話をするせいで何を言っているか分かりません。これ以上臭くなる前にさっさとここを抜け出さないとあまりの臭さに強制ログアウトを喰らうかもしれません。


「ふぉいうふぉとでいふぃまふぉー!」

シュコー『何言うてるか全く分からんな。』シュコー

「おねぇえふぁんだけするい!!」

シュコー『一個しか無いんやから仕方ないやん。うちが匂いで気絶したら墜落するんやで?それ考えたらうちが使うのが一番やん。そういう訳やからさっさと行くでー。』シュコー


1人だけガスマスクを装着したルリちゃんが操縦桿を握り、やっと谷を抜けた所で洞窟が見えました。ルドさん達は先に中に入っている事でしょう。早く追いつきたいですね。・・・・・・それよりもこの匂いを何とかする方法は無いでしょうか?鼻がもげそうです・・・・。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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