第406話

村を抜けて森の上空に差し掛かる。なぜかまだ先頭集団に追いつけないんだよなぁ。普段よりも速度が出ていない気がする。一体なぜだ?(答え:死角にリダ達が張り付いているから。)


それでも他の鳥人達よりかは速い。だからどんどんと順位を上げていける。しっかしなんの変哲もない森だなぁ。コースに組み込まれてるって事は何か在るんじゃないのか?


「きゅっ!」グインッ!

「おっと!どうしたマロ?」

「きゅきゅっ!!」


マロが突然コースを変え、背面飛行をし始めた。すると、森の木々から無数の何かが飛んでくるのが見える。しかしてその実態を見極めようと目を凝らすと、なんと超デカい蚊が空を飛んでいた!


「まぁ唯の蚊だからすぐ逃げられるだろ。」


そう思っていたのだが・・・・。飛んで来た蚊の一体が横を飛行しているカモメに似た鳥人に襲い掛かった!!長い脚で飛んでいるカモメの体を抱きかかえたと思えば、その槍の様な吸血針をぶっすりと胴体に突き刺す!!


「あの大きさで血を吸われるとなると確実にミイラになるよなぁ・・・。」

「きゅ~・・・・・・。」


そんな風にマロと考えていたら、カモメの様子がおかしい事に気が付いた。何と言うか幸せそうと言うか、人様にお見せできないようなだらけ切った顔と言うのか・・・・。うん、誤魔化すのは止めよう。あれ完全にアヘ顔してるんだが?


「あへぇぇぇぇぇ・・・・・・・・。」


何とも力の抜ける悲鳴を上げながらカモメは森に落ちて行った。一体何だあの蚊は!!


プレジャーモス HP50


よっわ!!体力50しかないとかかなり弱いぞ!!しかし快楽蚊とはそのままの名前だな・・・・。


「あひぃぃぃぃぃっ!!」

「そこはらめぇぇぇぇっ!!」

「あぁもっと!もっと刺して!!」

「あぁ駄目!そこだけは、そこだけは駄目!!あっあっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


一部危ない奴も居るが蚊に刺されてどんどん周りの鳥人が落ちて行く。うん、なんでこんな事に?一体あの蚊に刺されるとどうなってしまうと言うの蚊!!ってそんなくだらない事を考えていると、とうとうマロも蚊に取り付かれてしまった!!


「振り落とせマロ!」

「きゅーっ!!」


速度を上げてどうにか組み付いた蚊を振り落とそうとするマロ。しかし蚊の足はがっちりとマロに食いつき離れない。そして吸血針がマロに打ち込まれた!!


「きゅぺっ!?」

「しっかりしろマロ!!」


蚊の吸血針からピンク色の何かがマロに注入される。くそ!このままじゃマロが墜落しちまう!


「・・・・・・・きゅ?きゅきゅ?きゅわ?」

「・・・・何ともないのかマロ?」

「きゅっ!!」


ぷ~ん。


どうやら本当に効果が無かったみたいだ。プレジャーモスも変化の無いマロに飽きたのか早々に離れて別の奴を襲いに行ってしまった。しかしなぜ?・・・・・って簡単じゃないか!そもそもマロはバイクであって生物じゃないんだから。バイクが蚊に刺されてもなんとも無いに決まってる。


「よっしゃ!多分この森の妨害はこれなんだろう。マロに効果がないなら無敵状態で進めるぞ。蚊は無視して一気に先頭集団に追いつくぞ!!」

「きゅーっ!!」


マロは次々と落ちて行く鳥人達の間をすり抜けながら森を抜けるのだった。


一方マロにくっ付いて来ているリダ達はと言えば・・・・・。


「森に入りましたわね。」


吸着ロープをくっつけた私達はマロちゃんに引っ張られて森の上空まで来れました。合体グライダーはマロちゃんの動きに十分ついて行けてますね。


「そう言えばなんでルリちゃんはグライダーを合体させようと思ったの?これならルドさんと一緒にマロに乗っても良いと思うんだけど・・・・。」

「そら自力で飛べるって事を証明する為にグライダーを準備したからやね。自力で飛べるもん同士が協力しとるんやから文句もでぇへんやろ?協力して飛んだらあかんっていうルールも無いみたいやしな。その証拠にほら、あそこの集団見て。」


ルリちゃんが指さした先では同じ鳥人の群れが飛行していました。あれは雁でしょうか?集団で飛行する事で有名ですがリアルと一緒でVの字になって飛んでいますね。ですがあれは協力している訳じゃないですよね?


「あぁ、なる程ですわ。」

「ルゼダは何か解ったの?」

「雁のあの編隊飛行は先頭の鳥以外に上昇気流を発生させて飛びやすくしているんですわ。そして先頭の鳥が疲れたら後ろに居る別の鳥が先頭を交代する。そうしてお互いに体力を消耗しないように飛んでいるんですわ。」

「つまり協力して飛んでいる訳ですね。お姉ちゃんいつの間にそんな事を知ってたの?」

「グライダー作る時に鳥はどうやって飛ぶんやろって調べたからや。他にもムクドリとかめっちゃ集まって飛ぶんで有名やん?まるで1つの生き物みたいに飛ぶんやから、実際に合体しても文句言われへんやろうって思ってん。」


確かに他の場所ではムクドリそっくりな鳥人達が群れを成して飛んでいますね。あれが許されるのなら私達もある意味集団で飛んでいると言えるかもしれません。


「なるほど、ルリちゃんはこの飛び方は編隊と一緒だと主張したいわけだ。」

「そう言う事やね。」

「編隊というより変形合体、略して変体って感じだよね。」

「ベニさん?略してしまうと別の意味に取られますわよ?」


そんな会話をしていると回りが騒がしい事に気が付きます。一体何を騒いでいるんでしょうか?マロちゃんもなぜか背面飛行をしていますね。


そう思っていると私達のグライダーに大きな影が取り付いている事に気が付きました。


「これは魔物の襲撃ですわ!!」

「これが森の試練って事だね!」


グライダーは唯皮を張っただけの物ですから、敵に攻撃されると簡単に破れてしまうかもしれません。どうにかして外に居る敵を排除しなければ!!


そう思い行動しようとしたのですが遅かったみたいです。憑りついた影は何やら尖った物をグライダーに突き刺そうとしました。そして・・・・・。


グニョン、グキィッ!


何かを突き刺そうとした敵の攻撃が皮に弾かれ、何かの折れる音がしました。すると影の主がフラっとグライダーから離れて落下して行きます。その姿はとても大きな蚊でした。


「あんなのに刺されたら死んでしまいますわね。」

「あの口凄い鋭いよ。なんでグライダーは無事だったんだろう?」

「ふっふっふ、こんな事も在ろうかと!!」

「良かったねお姉ちゃん、こんな事も在ろうかと!!って言えて。1回言ってみたいって話してたもんね。」

「シャラップ!!めっちゃハズイから黙って!」


そう言えばアニメで発明家や科学者の人が窮地に陥った味方を助ける為にそんな台詞言ってましたね。つまりルリちゃんはこうなる事を予想していた?


「予想はしてへんで?でも皮だけやったら耐久度に不安が残るやん?やからスライムの粘液をつこてコーティングしとったんよ。」

「それも鍛冶場の人の教えかい?」

「たまたまや。皮を使った物を作る場合はそうすると長持ちするようになるって教えて貰ったんよ。ついでにコーティング材も貰えたんやで!」


一体ルリちゃんは何を目指しているのか・・・。そもそも鍛冶スキルで皮の加工が出来るのでしょうか?実際出来ているのですからスキルの範疇何でしょうが・・・。あっヘルプが起動しました。何々?なるほど、剣の持ち手に皮を巻き付けたりしますしそれでスキルの対象範囲何ですね。


「しかしスライムの粘液がここまで強いとは・・・・。」

「何でもこれ塗ったら破れそうなのを即座に修復してまうんやって。限度は在る言うてたけど・・・。蚊くらいの攻撃なら大丈夫やったみたい。」

「スライムは核さえ無事なら無限に再生するって聞いたよ?」

「つまりその再生力で皮が敵の攻撃に耐えて、破れずに跳ね返したんだね。」

「でもこれで無事に森を抜けられそうですわ!」


そう思っていた私達の前に又蚊が飛んできました。そして、グライダーとマロちゃんを繋ぐロープに取り付きます。そんな細いロープを突き刺すんですか?無駄だと思いますけど・・・・。


「あっあかん!」

「どうしたんですの?」

「何が駄目なのお姉ちゃん?」

「ロープにはコーティングしてへん!攻撃されたら簡単にちぎれてまう!」

「「「「えっ?」」」」


ぶすっ!ぶちぃっ!!


マロちゃんに付けていたロープは簡単に千切られ、あっという間にルドさん達は先に行ってしまいました。


「はっ!呆然としとる場合やない!!はよ推進機関始動して追いかけな!!」

「<聖火>発動ですわ!!」

「爆弾作るからどんどん放り込んで!」

「お手伝いします!!」

「私も!お姉ちゃんは舵をお願い!」

「まかしとき!!」


こうして、楽をしていた私達は自力でゴールを目指さないと行けなくなりました・・・・。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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