第405話
さて、鳥人アスリートレースのコースだが最初は村を一周する事から始まる。その後は郊外の森の上空を通り、その先に在る崖の間を抜けて洞窟に突入。そのまま洞窟を抜けた先で空中大陸を覆う結界ギリギリまで上昇、その後急降下を挟み村まで一直線に戻ってきてゴールとなる。
まぁマロだったら楽勝だろう!なんせスピードも旋回能力も他の奴には負けないからな!という訳で皆には悪いがサクッと村を1周して抜けるぞ!1位は俺だフハハハハ!!
・・・・・なんて思っていた時期もありました。
村の周囲に備え付けられている櫓、そこには村を守る兵士や村の住人達がレースの見学の為に集まっている。と思い込んでいた。だがどうやら事実は違ったようだ。
「おらおら落ちろー!!」
「この前殴られた恨みだ!おら落ちろ!!」
「あたしの御尻を触った罰よ!!さっさと落ちなさい!!」
「あんた又浮気しただろ!!今度という今度は許さないからね!!」
「結婚するって言ったじゃない!!嘘つき!!」
「羽無しはさっさと落ちろ!!」
何とも私怨溢れる言葉が櫓から大量に響き、レース参加者に向けて木の枝や、鍋やコップ、さらには矢や剣なんかも飛んでくる。どうやら櫓に居た連中は立派な妨害要員だったらしい。ってか私怨が多すぎて羽無し云々が埋もれちまってるんだが?どれだけ鬱憤貯めてるんだここの連中は・・・。
「ぎゅっ!?」
「ぬおっ!今のはあぶねぇ!!」
しかも矢鱈目ったら攻撃するもんだから攻撃の余波が他の関係ない参加者にも及ぶ!今も浮気された鶏の御婦人が投げた巨大な中華鍋がマロの前を通り過ぎて行った。だれだよあんなオーク見たいな鶏を怒らせた旦那は!!ある意味勇者だろそいつ!!
「すまねぇカカァ!だが俺はこのレースに勝ってキューティーちゃんと添い遂げるんだ!」
「あんた戻って来たらから揚げにしてやるからね!!」
あっ俺の横を飛んでたわ。ってかこっちも鶏かよ。キューティーちゃんってそんなに良い女なのか?
「キャー!!コッコさん頑張ってー!!」
「キューティーちゃん見ててくれ俺の雄姿!!うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
鳩だった。奥さんと同じく大きな体躯の鳩だった。両者ともに体が横にも縦にも大きいですね?まぁ胸部もそれに伴ってかなりデカい。が、その分腹もデカい。お前デブ専なの?
「きゅっ!!」
「あべしっ!」
余りにも聞くに堪えない言葉が出たからなのか、それともお前はさっさとあっちに行って制裁を受けてこいと言う事なのか。マロが翼でコッコと呼ばれた雄鶏を地面に叩き落した。その先に待ち構えているのは愛しのキューティーちゃん・・・・ではなく、中華鍋に油を注ぎ入れて熱し始めた奥さん。横にはデカい包丁と香辛料入れが置かれている。美味しく揚げてやってくれ・・・・・。
さてそんな訳でレース再開だ!!マロは次々と先を行く鳥人達を追い抜いて行く!!
「このっ!!」しゅっ
「きゅっ!!」
「行かせるか!!」もふ~ん
「きゅきゅ~♪」
「これでも喰らいな!!」ぽんっ!
「きゅーん。」
先を進むカラスの爪攻撃を避け、その次に見えた雀の体を使ったモフモフ妨害をちょっと堪能してから振り払い。最後に鶉のお姉さんの産卵攻撃を汚い物を嫌がるかのように大袈裟に避ける。うん、最後のお姉さんちょっと涙目になっちゃったな。でもほら、卵を生む所は排泄物と一緒の所だから特殊な性癖でもない限り誰も喜ばないから。
そんな感じで妨害されながらもどんどん順位を上げて行く。村を1周する頃には俺達の順位は真ん中くらいに上がっていた。
「構え!狙いは羽無し!てー!!」
ドドンッ!
最初に飛び立った滑走路に差し掛かったところで、滑走路に多くの大砲が置かれていた。そしてその指揮を取っているのが梟隊長。野郎、最初からこれが狙いだったか!!だがそんな大砲じゃマロに命中する事は無いがな!!
「きゅーーーーーーっ!!」
村を一周した後の森上空コースは一直線だ。だからこそマロは本気で飛べる。加速したマロに大砲が当たる事は無く、むしろ追い上げて来ていた鳥人達を巻き込んで大爆発した。
「ありがとうよ隊長さん!これで上位を狙いやすくなったぜ!」
「きゅっきゅきゅー♪」
梟隊長にお礼を言うと、ぐぬぬと食いしばりながら悔しがっておられた。そんな事してていいのかい?俺の仲間もすぐ後ろを抜けているみたいだぞ?
さすがにリダ達もスピードじゃマロに敵わないだろう。まぁグライダーだからな。推進機関が付いているとは言え、飛ぶことに特化したマロに勝てるわけが無い。だけど小回りなんかはあっちが上だからな、村を回っている間近い距離を飛んでたんだよ。
不思議な事に今はその反応が1つに固まっているが・・・・。まぁ大砲攻撃を避ける時に近くに固まったんだろきっと。さぁここからしばらくはマロの独断場だ!さっさと先導役を追い抜くぞ!!
~・~・~・~・~
一方リダ達はと言うと・・・・。
レースがスタートして何とか私達はルドさんに食いついていました。しかし、村を半周した所でルドさんとマロちゃんがスピードを上げて先頭に追い付こうとしています。さすがにグライダーでは全力を出したマロちゃんに追いつけません。レースに勝つ為にはこんな序盤で置いて行かれる訳には行かないのです!!
「という訳でルリちゃん礼の物を!」
「あいさー!パパラパッパパー!『吸着ロープ』ぅ~!」
「これをマロちゃんの後ろにポイっとな。」
ふふん、私達を置いて行こうなんて甘いですよルドさん!!やるからには私達もレースを勝ちに行きますからね!!
「続いてグライダー合体や!」
私達はそれぞれインベントリに入れていたアタッチメントを取り出します。なんとルリさん、ルドさんが料理を作っている短時間の間にグライダーを改良してくれたのです!!
まずクリン君のグライダーの上下が反転。ルゼダちゃんのグライダーの下に着きます。そして私とベニちゃんのグライダーの翼が変形して行きます。四角くなったグライダーはクリン君とルゼダちゃんのグライダーの隙間に縦になりながら滑り込み、そしてアタッチメントがドッキング!最後にクリン君のグライダーの翼が私達のグライダーを抱え込むように変形。これで4つのグライダーが固定されました。そしてルリちゃんのグライダーが3分割されて行きます。真ん中と、左右の翼に広がって行きルゼダちゃんのグライダーの翼を延伸する形で合体!その際にルリちゃんのグライダーの銃口は前方を狙うように折りたたまれて変形しています。最後にルリちゃんのグライダーの胴体部分から前後を挟むように透明な壁が降り立ち、下の空間を包み込みました。その姿はまるでかつて私達が使っていたアルバトロスの劣化。アホウドリとそのままの名前を付けられた私達の飛行装置です!!
「自力で飛べる姿は見せた!やったら後は一緒に飛んでも問題無いやろ!!」
「ルールもキチンと説明されてないもんね!!」
「皮張りのはずなのに床が大分しっかりしてますわね・・・・。」
「薄く鉄を伸ばして張って在るんやで!あっでも力いっぱい踏まんでね?破れるんよ。」
「この技術力凄いと思うな。どこかで教えて貰ったの?」
「工房を借りてたおっちゃんに見どころ在るって手解き受けたんよ。後はアニメで見ててやってみたかったから作った!」
「それを実現できるのは凄いですわ。」
まぁここがゲームの中だから出来たというのも在るんでしょうけど、実現する為に相当努力したんじゃないでしょうか?ルリちゃんのその努力に感服します。
ぐんっ!
「おっ、マロが加速し始めたね。」
「これで途中まで引っ張ってって貰うで!!」
「その後どうするの?」
「推進機関が複数あるから森を抜けるまでに調整して何とか逆転する!!」
「結構無茶苦茶言ってるねこの子。」
「だけどその発想は好きですわ!抜け駆けしようとしたルドさんに目にもの見せてあげますわよ!!」
こうして私達はルドさんに気が付かれないまま、高速で森の上空を飛行するのでした。いやぁ、ずっとぶら下がったまま移動するのは大変でしたのでこれは助かりました。ゆっくりしていれば進む何て凄く楽ちんですね♪
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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