第404話

作ったグライダーを皆に配ってから俺達は村の近くまで移動してきた。練習がてら全員が空を飛んで移動して来たぞ。バフ料理を食って来たのも在って、全員問題無いみたいだな。


そしてそんな俺達を見て唖然とした顔をしていたのが梟隊長だ。村を守る為の物見櫓から空を飛ぶ俺達を見て完全に固まっていた。どうだ!時間さえあれば自力で翼は作れるんだぞ?


「さてさて、あれがレース会場って事で良いのかね?」


村の外にはなぜか白い線で作られた滑走路らしきものが在った。そこに色々な鳥人種が集まり準備運動や装備に確認をしている。ペンギンやエミューに似た兵士がワイバーンに餌をやっているのも見えるな。


「降りてみれば解りますわ。」


という事でルゼダの言葉に従ってその滑走路に降り立つ。どうやら他の参加者も大層驚いてくれたみたいだな!おやおやそこの鳥人のお嬢さん?卵が出て来てますよ?


「完全にビビってますねぇ。」

「叫び声を上げながら逃げる事無いと思うんやけど?」

「何人か驚きすぎて卵を生んじゃってます・・・・。」

「なんとまぁ、下半身の緩い人達です事。」

「シアもアイギスもマネしちゃ駄目だからな。」

「もう、シア達は卵産めないよパパ。」

「(*´з`)」


呑気に慌てる鳥人達を観察していたら、会場を騒がせている俺達の元に慌てて梟隊長が飛んで来た。今更だがこいつの名前は何て言うんだろうな?まぁ全く興味が無いから知りたいとも思わんが。


「おっお前等その翼は何だ!!」

「なんだと言われてもなぁ。翼の無い奴は何かの力を借りて飛んでも良いんだろ?こいつはその何かだよ。」

「レースに参加する為に必要なんやろ?やから全員が飛べるように自作して用意したんやけど?」


俺達のまっとうな返答に苦虫でも食べたような顔をする梟。ははぁーん?どうやらこいつは俺以外の奴が飛べなければ問答無用で不合格にするつもりだったな?まぁ残念ながらそんな未来は無くなったが。


「それで?レースってのはどうやるんだ?」

「くっ!翼を持たぬ者の癖にいい気になるなよ!!」


別にいい気になんかなってないだがなぁ。はよレースの説明してくれや、はよはよ。


「レースってどうするのー?」

「はっ!これは姫様、本日も大変翼が麗しく・・・。」

「レースってどうするのー?」

「はっ!あの者が先導してコースを飛びます。各所に控えた妨害者の攻撃を潜り抜け、無事にゴールに辿り着ければ合格です!もちろん順位が高い程待遇が良くなります!」


最初は挨拶の常套句の様な言葉でシアを賞賛しようとした梟。だけどまったく相手にされずに同じ言葉で聞き返されて、それでもめげずに敬礼しながら教えてくれた。


そんな梟隊長が指し示す先には燕の様な顔をした兵士が立っていた。目立つように赤い服を着ている。見失わないようにって事かね?


「そのルールですと先導役から先には飛べませんわよね?」

「コースさえ理解していれば先導役など早々に抜き去って構わん。お前達に出来ればだがな!!」


態度は悪いがシアが見ているからか俺達の質問にも答えてくれるようになった。ってかそのルールだとコースを知らない俺達がめちゃくちゃ不利じゃないか?


「コースってどんなコース?」

「今回のコースはこのようになっております姫様。」


はい、この梟ちょろ過ぎである。梟隊長は俺達に見えないように地図をシアに見せた。だがシアが見た情報は俺達にも共有出来るんだぜ?いやぁ精霊の瞳様様だな。そしてシアが地図を見た瞬間に俺達に通知が来た。


ピロン♪『鳥人アスリートレース』のコース地図を手に入れた! レースが始まるとミニマップがレース仕様に変わります。


航空競技とか言ってたが、本当の名前は鳥人アスリートレースなのかよ。かなり俗っぽくなったな。それともゲーム的な仕様で名前をわかりやすくしたとか?まぁ今考えても仕方ないか。


「これなら行けそうですわね。」

「一位狙うで!!」

「ちょっと楽しくなって来たよ僕。」

「私も負けません!!」

「頑張ろうなマロ。」

「きゅっ!」

「ふん!せいぜい死なないようにする事だな!」

「じゃーねー。」

「( ´Д`)ノ~バイバイ」


梟隊長は物見櫓に飛んで行ってしまった。よく見ると櫓の上には見物人が沢山居るな。地上の方にも大勢の人が詰めかけている。出店も出ているみたいだな、巨大な芋虫が棒に刺さってくるくると回されながら焼かれていたり、木の実や花の蜜が入った壺が売られている。あの芋虫はうまいんだろうか?


おっと?あの大きな掲示板みたいなものは順位表か?その横ではだれが一番になるか賭け事もしているみたいだ。どれ、俺もちょっと一口「駄目ですよルドさん?」


突然横から声を掛けて来たリダにビクッとする。いや、別に悪い事をしようとしている訳じゃないんだし、堂々としていれば良いだろ俺。


「なっ何もしてないぞ?」

「あのボードを見て動こうとしましたよね?あれは賭けを行っている場所ですよね?」

「ちょっ、ちょっと様子を見てこようかなって。」

「駄目ですよ?」

「少しくらい・・・・。」

「駄目ですよ?」

「・・・・・・はい・・・。」

「完全に尻に敷かれてますわね?」

「何か理由があるん?」

「ルドさん大体賭け事をすると大負けするんです。あっリアルの話ですよ?」


そんな事無いと思うんだけどなぁ?競馬とか競輪、競艇何かのレースに少額を賭けてたまに遊ぶんだが、最初はちゃんと勝つじゃないか。その後勝った分も全額突っ込んで失敗するけど。


「ルド兄さんは賭け事禁止!」

「駄目だよパパ!!」

「(乂・ω・´)ダーメッ」

「はい・・・・。」


まぁ身持ちを崩すほど熱狂している!!って程でも無いからな。推測して、予想が当たったらよっしゃ!!と思うだけで・・・・。まぁこれだけ皆に駄目出しされるって事は俺に賭け事の才能は無いんだろう。だったらすっぱりと手を洗おう。・・・・でもたまになら良いよね?「駄目です!!」そうかぁ、駄目かぁ。ショボン・・・・。


プワァーン♪


皆とわちゃわちゃしていると角笛の様な音が滑走路に響き渡った。音の出所を探るとオウムの様な鳥人が口に翼を当てて息を吸っている。


プワァーン♪


どうやらラッパの代わりにあのオウムが音のマネをしている様だ。そしてその音を聞いて滑走路に居た鳥人種達がそれぞれ白い枠で区切られた中に入って行く。この音はレース開始前の準備をしろという合図らしいな。俺達にも教えて置いて欲しかった・・・。


まぁやる事は解ったので俺達も近くに在る枠の中にそれぞれ入った。あっアイギスは鈴の中に入っとけよ。「( ´ ▽ ` )ノ」


滑走路の先に居る先導役が、その傍にある櫓から降られた赤い旗を見て飛び立つ。先導役が飛び立ってしばらくしてから、同じ櫓で大きな黄色い旗が振られた。旗が振られたと同時に飛び立つ鳥人達。どうやらあれが出発の合図だったらしい。俺達も慌てて続くように飛び立つ。


「ぎゃっ!」

「ぐわっ!」

「ぎゃーっ!!」

「あぁ神よ、罪深きわれをお許しください・・・。」

「ぐぺっ!」

「うわーっ!!」



どうやら妨害はすでに始まっていたらしい・・・・。マロとルリが作ったグライダーは後部からエネルギーを放出して推進力としている。つまり後ろに立つと非常に危険なんだ。だがそんな事は知らない鳥人種達が俺達が飛び立つ時に妨害しようと後ろから武器を抜いて襲い掛かって来た。まぁそんな事をすれば焼かれるに決まってるんだがな。


リダに襲い掛かった者は全身に強風を受けて地面に叩き付けられ、クリンに襲い掛かった者は爆風で全身を焼かれながら吹き飛ばされ、ルゼダに襲い掛かった者は聖火に焼かれて穏やかな顔をしながら墜落。ルリに襲い掛かった者は体の中心を大きく凹ませながら落ちて、ベニに襲い掛かった者は顔面を蹴られて鼻血を吹き出しながら錐揉み回転していた。シア?一切襲い掛かられずにマロの頭上を飛んでいる。俺に襲い掛かった奴はどうなったかって?マロが相手の両翼をわざと炙って落としてたぞ。鳥の焼ける良い匂いがして少し腹が減ったのは内緒だ。レースが終ったら焼き鳥でも作るかぁ。


さて、妨害を受けながらも全員が無事に空に上がった。先導役は目視できる位置に居て、先頭を飛んでいる。後ろに続く鳥人も追い抜かそうとしているようだが全然追いつけていないな。もしかしてあの先導役は去年の優勝者か何かなのか?まぁ俺達には関係ないが。


「さぁマロ!最初から全力で飛ぶぞ!!」

「きゅっ!!」


空に上がるまではホバーバイク状態だったマロが姿を変える。そう、あのジェット機モードだ!


ヒュィィィィィィィィィシュゴーーーーーー!!


ジェットエンジンが火を噴き一気にマロの体が加速する!!さぁこいつらを一気にぶち抜くぞ!!妨害なんか置き去りにしちまえマロ!!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る