第397話

クランハウスを飛び出したマロはどんどん上空に向かって加速して行く。すると不思議な事にマロの形が変化してきた。


「キャノピーが出てきましたわ。」

「翼は完全に広がったね。」

「なんか椅子の下が凄い振動するんやけど?」

「お姉ちゃん後ろ見て!ジェットエンジンみたいな物が見えるよ!」


元々マロの飛行はバイクの状態で空を飛ぶことを言っていた。だが、スキルのお陰で明確に飛行形態と言う状態が出来た事で、飛行に特化した形に変化出来る様になったらしい。


浮遊ユニットが付いていた頭は機首になり浮遊ユニットは消失。バイク状態の時に風除けになっていた翼は横に広がり本来の役目を取り戻した。折り畳まれた後ろ脚の裏からは、ゴォォォォと音を立てながらジェット噴射を出している。俺達が乗っている場所は透明な鱗で完全に覆われ、マロの体の中に半分埋まる形で落ち着いた。


『きゅっ!!』

「中に居てもマロちゃんの声が聞えますね。」

「これが飛行形態か・・・。戦闘機っぽい感じか?こりゃ早そうだ。」

「頑張れマロー!」

「ファイトォ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*!!!☆」

『きゅーーーーーっ!!』

「うおっ!?」


シアとアイギスの応援を受けて気合が入ったのか、さらにマロが加速する。風の影響を極力受けない形になったマロは、とうとう飛行機乗りにとって鬼門の壁を突破する。


ドパァァァァァァン!!


「今の音はなんや!?」

「これは音速を超えた時に出るソニックブームの音だよ。」

「マロちゃんはとうとうマッハで飛び始めたんですわ。」

「本来だったら振動や揚力の変化で操縦が滅茶苦茶大変なんだよな。機体制御を失敗するとそのまま墜落コース何だぞ?まぁそこら辺は半分生物であるマロが自分で調節してくれたみたいだが。」

『きゅきゅっ!!』

「凄い凄―い!!」

「ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ」


音速を超えたマロはあっという間に雲を突き抜け、雲と宙の境界に飛び出した。辺りを見回せば透き通るような青と、眼下に広がる雲の白。頭上を見ればうっすらと宇宙の黒と輝く星々が見える。


「滅茶苦茶綺麗ですね・・・・。」

「遮るものが何もない空間だしな。たまに方向感覚を失って墜落する奴も居るくらいだ。」

「ゲームだと解っていてもこの景色が見られた事に感動してしまいますわ・・・・。」

「こんな景色写真とか動画でしか見た事無いもんね。」

「うちスクショ撮っとこ。これは写真にして部屋に飾りたいわ。」

「私もそうする。」

「うっとり・・・・。」

「(人´∀`).☆.。.:*・゚」


リアルだと一般人がこの高度まで飛ぶことは無いからな。宇宙旅行が一般化すればまぁ見られる景色ではあるが、今はゲームならではだと言えるだろう。俺もスクショ撮っとこ。


「ふぅ・・・・。心配していたが無事ここまで上がって来れたか・・・・。」

「後はここで嵐を探すんですよね?どうやって見つけるんです?」

「アイン達の話だと、見れば解るそうだ。」


クルーに聞いた話だと、唐突に雲の壁が現れたとか。龍〇巣が在ったとか。風が逆向きに吹いているとか色々言ってたなぁ。話を聞き終わった後に情報を整理すると、黒い雲の塊がこの場所に在るらしい。それを探せば良い訳だ。


「こんな場所に本当に嵐なんて在るんですかね?」

「見つけた座標は教えて貰ってるからな。そこを起点にして探せば良いだろ。」

「マロちゃん、もうっちょっと北に飛んでくださいまし。目標座標はそちらですわ。」

『きゅっ!』


マロに乗ったまましばらくは遊覧飛行だ。と言っても見る物が空と雲しか無いからな、ずっと同じ光景が続くともちろん飽きる。


「なんも変化無いなぁ・・・・。」

「もうお姉ちゃんも真剣に探してよ!!」

「せやかて飽きたんやもん。」


うーむ、目標座標までは来てるはずなんだよな。となるとやはり空中大陸は移動しているって事になる。風に乗って移動しているのかそれとも自立飛行しているのかは分からないが、移動しているなら探し出すのはかなり難しくなるぞ。


「?(*・・)σ」

「うん?何か見つけたのかアイギス?」

「(・∀・)ウン!!」

「マジックドールの反応が在るんだって。」

「あぁ!サーチアイのスキルですわ!」

「うわっ!いつの間にかアイギスちゃんの眼がギランギランに輝いてる!!」

「成程!マジックドールならアイギスも修理したし、良く知ってる事になる。サーチアイで探せるって訳だ。よくやったアイギス!」

「よう見えたなぁ。偉いでアイギスちゃん!」

「アイギスちゃんの眼も特別製なんですね。さすがルド兄さんの友魔です!!」

「(∀`*ゞ)エヘヘ」


アイギスに誘導して貰いながら見つけたマジックドールの反応を追う。しばらく飛行していると反応が近くなったらしく、アイギスのテンションがどんどん上がって行った。そして、ぽつぽつとマロのキャノピーに水滴が付き始める。


「こんな所で雨か?」

「ルドさん!!前方に黒い雲の塊が在ります!!」

「あれがアインさん達が行っていた嵐ですか?時折光ってるのは稲光ですかね?」

「どうするんですの?あの中に突入しないといけないんですわよね?」

「これは度胸いるわぁ。めちゃくちゃ怖いやん・・・。」

「ゴロゴロ言ってますぅ・・・・。」


見つけた雲の塊は、周りに水滴をまき散らしながらも渦を巻くように動いて居る。だがアイギスはしきりにあの雲の中心を指し示した。アイン達の話とアイギスの反応から目的地があの雲の中に在る事は間違いない。


「ここまで来たら行くしか無いだろ。行けるかマロ?」

『きゅっきゅっ!』

「大丈夫だって!!」

「うっし、なら行けマロ!!」

『きゅーーーーーーーっ!!』


ぼふんっ


気合を入れて雲に突入したマロ。雲の内部は荒れ狂う風と激しい雨、乱れ飛ぶ雷で滅茶苦茶だった。マロの体も強い風に煽られ、ガタガタと激しく揺れる。降りしきる雨はマロのスピードを下げ、雷は直接俺達を落そうと狙って来る!!マロは風にうまく乗りつつ、雷を躱しながら飛び続けてくれている。


「キャノピーのおかげで落ちはしないが全員しっかり捕まっとけよ!俺達がバランス崩すとマロが飛び辛いからな!」

「私はもうルドさんにしっかり捕まってます!」

「うちらも出て来たバーでしっかり体固定してんで!」

「こっちも同じくですわ!!」


マロの奴が気を利かせて、サイドカーに乗っている皆の体を固定するバーを出したらしい。ジェットコースターなんかに着いている奴だな。こんな所を飛んでるのに気配り迄出来る何て偉いぞ!安全な場所に着いたらうまい飯たっぷり用意して、念入りに体を洗ってやるからな!!


ピシャーンッ!!


『ぎゅぴっ!?』

「どうした!大丈夫かマロ!!」

「あぁ!左足に雷が当たりました!!」

「この雷変や!ずっとこっちを狙って来る!」

「今回復しますわ!!」


一瞬視界が真っ白に染まったかと思えば、マロの左足から黒い煙が立ち昇っていた。その所為で左側のジェット噴射は止まってしまっている。それでも荒れ狂う風に乗り、こちらを狙い撃ちする雷を巧みに躱してマロは飛び続けてくれている。ルゼダの回復で徐々に損傷個所は直って行くが、何度も近くを雷が通りこちらを攻撃してくる。


「マロ、無理だけはするんじゃないぞ。」

『きゅーきゅっ!』

「今頑張らないと駄目だって言ってるよ。」

「回復は終わりましたわ!」


ブォン・・・・ブォン・・・・ヒュィィィィィィィッシュゴーーーーー!


ルゼダの回復のお陰で左足のジェット噴射が元に戻った!これで墜落する可能性は低くなったな。


「ルドさん上!!」

「上?ぬあっ!なんじゃありゃ!!」

「巨大な目玉がずっとこっちを見てます!」

「これがこの嵐の正体という訳ですわね。」

「あれがずっとこっちを攻撃してきてたんやな。」

「あっ!目から流れ落ちる涙が雨になってます!」

「あの目が雷でこっちを攻撃してたんだ!逃げてマロ!」

「アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ」


クリンが慌てた様子で頭上を指さした。その声に反応して俺達が見たのは、雲の中に浮かぶ巨大な目玉だった。あの目玉が空の魔。つまり厄災の片割れだと言われる泣き虫か!!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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