第382話

「早速二人が動き始めましたわね。」

「そう言えば食材は何処に在るんだろう?普通こういう時って食材は用意されている物だよね?」


クリンの言う通り、こういう時は事前に食材が用意されているはずだがここには見当たらないな。一体どこに在るんだ?そう思っていると料理人の2人がずんずんとこちらに向かって歩いて来た。


「おう兄ちゃん!!出すもんだしな!!」

「無料で料理が食べられると思わない事ですね?私の方に極上の素材を出しなさい。」


はい?なんで恐喝まがいの言動で詰め寄られてるんだ俺?


「これあれちゃうか?食事代として食材出せって事やろ?」

「そこの嬢ちゃんは話が早えな!!」

「えぇえぇ、至高の料理人の料理を食べられるのです。喜んで食材を提供して下さいますよね?」

「出す訳無いだろ!!」


強制的に審査員にされた挙句に食材まで持って行かれるとか納得できるか!!こういう事するなら最初から用意しとけよ!!


『ちなみに、断りますとこの先の階層には降りられなくなりまーす。』

「という訳だ。食材を取るか探検を諦めるか。選びな兄ちゃん。」

「もちろん私共としては食材の提供をお勧めしますよ?」


何ちゅう罠だよ。先に進むためには食材出せってか。仕方ない、ここは適当な魚と野菜くずでも・・・。『今回のテーマは『満腹』ですので、規定量以上の食材を提出して頂かないと諦めると判断いたします。』くぅ・・・。見透かされてる・・・。


「あの、僕の我儘でルドさんに迷惑掛けるのも申し訳ないので今まで取った食材を全部放出しますね?」

「鮫のあんちゃん。それじゃ足りねぇって言ってんだよ。」

「そうです!!このメンバーの中で私達を満足させられる程の食材を持っているのはこの方だけなのです!!」

「ルドさん?一体どれだけ食材を持ってるんですか?」

「・・・・・。アイギスの収納を使ったうえで、インベントリの8割は食材だな。」

「つまりインベントリの30枠の内23枠が食材と言う事ですの?個数はどうなってますの?」

「一応全種類50個以上になるようにしてる。」

「それは又詰め込んだというか良く買い込んだというか・・・・。」

「シアが沢山食べるからな。食材だったら無駄にはならないし、ドロップをコツコツ集めて貯めてたんだよ。」


アイギスの空間庫に至ってはほぼ無限共言える収納量を誇ってるからな。どれだけ入れたか分からんくらい放り込んでるぞ。


「それだけ持ってるなら少しくらい減っても変わりあるめぇ。さぁさっさと出した出した!!」

「私達の腕が速く料理と作れと訴えているのです!さぁハリーハリー!!」

「えぇい!半分だけだからな!!それ以上は出さんからな!!アイギスも空間庫の中身を出してやれ!!」

「( ´゚д゚`)エー」

「無駄遣いしようとしたら撃って良し!!」

「( `д´)b オッケー!」

「アイギスちゃんは倹約の呪いが在りますからね。」

「無駄に消費しようとしたら呪いが発動する訳ですわね。」

「そうならないように気合を入れて下さいよ2人共?僕達も料理期待しておきます。」

「おう!!任せてくれ!!」

「この人よりもおいしい物を作って差し上げますよ!!」

「なにおう!!」

「やりますか!!」

『はいはい、さっさと食材を受け取って料理を始めて下さーい。』


何処からともなく現れた食材を載せる台に、俺は貯めていた食料を放出した。板長とシェフはそこから使う分の食材を即座に選び出し、カートに乗せて自分のキッチンに持って行く。余った食材?まだ使うかもしれないからってこのまま置いとけとさ。台の上に乗せて置けば時間経過は無いらしいから別に良いが、シアが今にも全部食べそうになっている。早く料理完成させてくれ!抑えるの大変なんだよ!!


『さぁやっと料理が始まりました!おーっと先行はイタチョウ!その巧みな包丁さばきで魚の下処理をどんどん進めていくぅー!!これはイタチョウの18番!海鮮丼を作る流かぁー!!』

「へん!!今回は丼は丼でも海鮮丼だけじゃないぜ!!」

『反対のシェフと言えばぁ?おーっと、シェフはまだ食材をさばいても居ない!!それ所か野菜を鍋にそのままぶち込んで煮込んでいるぞ!!』

「これはブイヨンを作っているのですよ。」

『なんとシェフは出汁から取って居たぁー!!果たして時間は大丈夫なのかぁー!!』

「へん!!そんな悠長な事してたらあっという間に俺があいつらを満腹にしちまうぞ!!」

「冗談はその顔だけにしておいて下さい。絶対にあなたの料理では満腹に等なりませんから。」

『ここで両者激しい口撃の応酬だぁ!!私としてはいい加減にしろと言いたい所ですが、お互い罵り合いながも料理を進めていくぅー!!はぁ・・・。何回同じやり取りするんだろこの2人・・・・。』

「このナレーターの人、絶対苦労してるだろうなぁ。」

「私もそう思います。」

「苦労人の気配をビンビン感じるよねパパ!!」

「(´―`*)ウンウン」


俺の言葉に全員が賛同して頷いている。この勝負が終ったらナレーターの人にだけは何か差し入れして上げよう。フルーツタルトが残ってるからそれで良いだろうか?


『さぁここでイタチョウが仕上げに掛ったぞ?これはぁ・・・・油だぁぁぁぁぁ!!大量の油が鍋に入っております!!つまりイタチョウが作っていた物は!!』

「海鮮天丼に決まってんだろうが!腹一杯にするってんならこれが一番でぇ!!」

『天丼だぁ!!海老、イカ、ホタテ、アジ、キスとどんどん天麩羅粉に入れて揚げていくぅ!!』

「あぁ、凄い良い音がしてますぅ。」

「匂いも美味しそうだね。」

「テッタもカイトも涎出てるぞ?」


カイトの奴は頭が鮫だからか、完全に獲物を狙うハンターみたいになっている。暴れたりしないよな?


「へいお待ち!!特製天麩羅タワー丼でぇ!!」

『最初の一品はイタチョウが仕上げたぁ!!白身魚やイカホタテが土台を築き、その上にそそり立つ海老の天麩羅!!まさにタワー丼の名にふさわしい出来です!!』

「さぁ食ってくれ!!」


目の前に出されたのはナレーターさんの言う通り、エビの天麩羅が何本も天を突くように伸びている巨大な丼だった。これリアルだったら確実に胸焼けするだろ・・・・。


「量はともかく匂いはとても良いですわね。」

「天麩羅の上がり具合もさすがだね。外はカリっと、中はふんわりと仕上がってるよ。」

「しいて言えば野菜が欲しかったなぁ。天麩羅全部海鮮ばっかりや。」

「欲張りセットって感じだね。」

「もう食べていいんでしょうかカイト君?」

「皆外見から先に評価してるよテッタさん?」

「パパもう我慢できない!!食べていい?」

「そうだな、じゃあ頂きます!!」

「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」イタダキマス (*^∇^)o<■~~


サクッ!!


うん、海老の上げ具合が絶妙だな。外はさっくり、中はプリプリ。掛かっている天つゆもしつこくなく、だけどしっかりとそのしょっぱさを主張してる。その中にわずかな酸味を感じるが・・・。これは柑橘系の何かが入ってるな?


「おっ?兄ちゃんは気付いたか!その天つゆは俺っちの特製でぇ!!ガボンの皮を浸してさっぱりとしたつゆに仕立てたんだぜい!!」

「これなら油っぽい天麩羅もさっぱり食べられますわね。」

「野菜が無いって心配しとったけど。これやったらいくらでも食べられそうや!!」

「美味しいですぅ!!」

「箸が、ハフハフ、止まりません!!もぐもぐ。」

「お代わり!!」

「オカワリ(^-^)_□」

「あいよ!!ちょっと待ってな!!」


全員がどんどん食べ進める。俺も自分が出した食材がシッカリと生かされていてホッとしながらも、少しでも技術を盗もうと吟味しながら味わった。


「ふぅ、ご馳走さん。」

「おうよ!!どうでぇ!!満腹になったか!!」

「いや、飽きた。」

「飽きたぁ!?」


天高くそびえる丼にどれだけの天麩羅が詰め込まれてると思う?具材が数種類入っているとは言え、これだけ巨大な丼だ。飽きが来るのも仕方ないと言えるだろ?


「この天麩羅の山の中に別の食材、もしくは変わり種でも仕込まれていたんなら話は別だったんだがな。」

「中身もぎっしりと同じ具が入ってましたから・・・。」

「正直私も飽きてしまいました・・・・。」

「タレで工夫されているとはいえ、やはりさっぱりした物が食べたくなりますわね。」

「おっちゃん同じもんばっかりやったらあかんで?せめてご飯にも工夫加えな。」

「量も多すぎです。この半分でも普通の人なら満腹になりますよ?」

「僕も正直油物は苦手だから、これ以上はちょっと・・・・。」

「私としては漬物とかが在ればなお良かったと思います。」

「皆食べ無いの?じゃあシアが頂きまーす!!」

「( ´Д`)=3 フゥ」

「そんなアホな!!」

『おーっと!!審査員からの評価は全くと言っていい程振るわなかった!!これはイタチョウピンチです!!』


俺達の感想を聞いてガゴーンと顎を外す板長。するとその後ろからシェフがカートを押しニヤニヤと笑いながら近づいて来た。


『おっとここでシェフの料理が完成したようだぁ!一体どんな料理を持って来たのかぁー!!』

「だから普段から言っているでしょう?食べる人の事を考えていない料理など唯の生ごみだと!!」

「ぐぬぬぬぬ!!だったらてめぇの料理はどうなんでぇ!!」

「それをこれからお披露目しますよ。私の料理はこれです!!」


ぱぁー!!


シェフがクローシュ(良く高級なレストランで見る銀の半円の蓋の事)を取ると、そこから光が溢れる。そしてそこには皿の中に入った赤色のスープが入っていた。


「私が提供するのは野菜と魚介のうまみたっぷりのブイヤベースになります。」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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