第381話
「まぁそんなこったろうとは思ってたよ。」
「大丈夫ですよ。こちらで準備しておきましたから。」
テッタ達が休憩エリアに肩を落として入って来たから何が在ったかを説明させた。そうしたらボスを超火力で吹っ飛ばしてドロップを手に入れられなかったと言うじゃないか。まぁ俺達も暇だったから炭を熾しながら休憩エリアの外の敵を狩ってて、ある物を手に入れていたし今回は元気付けられそうだな。
「という事でほれ。鰻のかば焼きだ。」
「えっ?ルドさんこれはどこで?」
「この階層の敵がウナギやアナゴ何かの細長い水生生物だったんだよ。ウツボとかも居たぞ?」
「どうもこの階層から複数の種類の敵が出るみたいなんです。魔法無効とか、物理無効とかが多くてちょっと大変でした。」
「シア達頑張ったんだよ!!特にアイギスが凄かったの!!」
「(`・∀・´)エッヘン!!」
ちょっとした探検のつもりで出向いたらリダの攻撃は効かないわ、シアの魔法はすり抜けるわで本当に驚いたよ。だが、アイギスの攻撃だけは全部通じたんだよなぁ。
「恐らく物理と魔法。両方の特性を備えているからだろうってのが俺達の考えだな。」
「レーザーとかは通じませんでしたもんね。」
「ミサイルが一番効果的だったよ!!」
「物理と魔法、両方を使っていれば簡単だったんですね・・・。」
「僕の道具を使ってルゼダに魔法を込めて貰えばそれで良かったのか・・・。」
「私達の苦労は一体何だったんですの・・・・。」
「まぁ色々と試してみた結果だからな。そんな事より早く食わないと冷めるぞ?」
「「「「「「頂きます!!」」」」」」
ボス戦の悔しさを晴らす様にウナギをがっつくテッタ達。よっぽど食いたかったんだなぁ。狩っといて良かった良かった。
「お代わり居るか?肝吸いも在るぞ?」
「「「「「「「「お代わり!!」」」」」」」」
「リダにシア?いつの間に混ざってるんだ?」
「匂いで我慢できませんでした・・・・。」
「美味しい!!」
「はぁ、食べたらちゃんと休憩してバフ延長しておけよ。」
「「はーい!!」」
ちなみにウナギのバフ効果は水中呼吸・水中移動・物理・魔法ダメージ減少だった。高級食材だから複数のバフが付くんだろうか?他の食材でも確認しておかないとな。
「さてと、無事階層を抜けられた訳だが。」
「又広くなってますわね。」
という訳で俺達はサクッと休憩エリアの在った階層を抜けて下に降りて来た。この階層じゃ変なギミックは無くて面倒くさい敵が湧いて来るだけだったからな。アイギスに頑張って貰ってすいすいと突破させて貰ったよ。食材も大量にゲットしてある。
「なぁーんで、こんな所にキッチンが在るんだろうなぁ?」
「しかも対面する様に並んで設置されてますね。」
「どっかのテレビ番組で見たような配置ですわね。」
そう、なぜかこの広場にはキッチンが二つ並んで設置されている。そしてその奥には下に続く階段が見えている。マジで何なのこれ?料理対決でもするの?
「そう言えば今思い出したんですけど・・・。」
「ん?どうしたリダ?」
「ここってあの時のイベントダンジョンですよね?」
「多分そうだな。」
「確かあそこにはご飯屋さんが在ったと思うんですよ。」
「あー、確かにあったなぁ。あの海鮮丼はうまかった。」
「ルドさん。そろそろ現実を見ないと駄目ですわよ?」
「嫌な予感しかし無くてなぁ・・・・。」
リダの言いたい事も解る。ルゼダの現実を見ろって言う話もな。俺が言いたいのは、また厄介な事態に巻き込まれる事が確定しているって事なんだよ。
パーン!!
『かつて、多くの旅人を唸らせた料理人が居た。』
「あっ何か始まったで!!」
「シルエットが見えてます!」
「2人居ますねぇ。」
「持っているのは包丁とお玉ですかね?」
君達静かにして上げようね?反応するからナレーションが止まっちゃってるじゃないか。こういう時は静かにしておかないとな。あっ俺達の事は気にせず続きをどうぞ。
『料理人はダンジョンの番人だった。しかし!旅人達が自分の作る料理を楽しみ。笑顔で帰って行くことに快感を覚えた番人は、ダンジョンの縛りを抜けて1人の料理人として再生した!!』
『だが運命は残酷だった。料理人の元を訪れていた旅人達は亜空に帰り。彼の店にもう一度来ると約束した人々も長く訪れる事は無かった。』
『料理人はダンジョンに帰り。番人として再び働き始めた。そしていつか、旅人達が戻ってきたら、自分の考えた至高の料理を食わせてやろうと研鑽も積んだ。』
『それをずっと見ていた助手もまた、旅人達に自分の料理を食わせたいと研鑽に励んだ。そして、2人の腕が並んだ時争いは勃発した。』
『どちらの料理がうまいのか!!その決着が着かないまま幾度となく行われてきた料理勝負!!その勝負の決着が今!!再び訪れた旅人によって決定する!!いでよ!!フィッシャーシェフ、イタチョウ!!』
「うぉぉぉぉぉぉ!!俺の海鮮料理が世界一ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
前掛けにねじり鉢巻きをした、タラコ唇のインスマス顔の男が包丁を掲げながら一方のキッチンに入って行く。
『いでよ!フィッシャーシェフ、チーフ!!』
「私の至高の海鮮料理が世界で一番です!!」
こちらはコック帽とコック服に身を包んだ。同じくインスマス顔の男がお玉を掲げながらもう一方のキッチンに入って行く。2人が定位置(?)に着いた所で、部屋に声を届けたナレーターが最後の締めの言葉を発した。
『君達は、歴史の生き証人となる・・・・。』
「ルドさん良かったですね。料理する必要が無くて。」
「絶対料理対決するもんだと思ってたからな。まさか審査員を頼まれるとは・・・。」
「強制的にですからねぇ。しかもいつの間にか僕達の前に人数分席が用意されてますし。」
「完全にテレビ番組のそれですわ。」
「なんや楽しみやなベニ!どんな料理食べれるんやろ?」
「和食と洋食じゃない?見た目的に。」
「パパ!早く座ろうよ!!」
「(´―`*)ウンウン」
「大丈夫かなぁ?変な料理出てこないよね?」
「ルドさん達が全然心配してないみたいだし、大丈夫なんじゃない?」
前に来たときはあの板長が海鮮丼作ってくれたんだよな。量は多かったが滅茶苦茶うまかったから心配しなくても良いぞ?
「おうおうおう!!久しぶりだな兄ちゃん達!!帰って来れたんだな!」
「板長も久しぶり。元気してたか?」
「おう!俺っちは何時でも元気でぇ!!」
「かなり性格が変わってますわ・・・。」
「江戸っ子って感じだね?」
その板長の言葉に反応したのか、反対側のキッチンから声が上がった。
「あーやだやだ。そんなのだからあなたの料理には繊細さも気品も無いというのです。まったく同じ料理人として嘆かわしい・・・。」
「あんだとー!!」
「皆様お久しぶりです。以前は助手。今はシェフをやらせてもらっています。覚えていますでしょうか?」
「突っ込み役の板前さん!!」
「あんたも元気だったんだな。」
「えぇ、あそこにいる馬鹿とは袂を分けて日々精進の日々です。今日は私の至高の料理を是非ご堪能ください。」
ぺこりと頭を下げるシェフ。板長の方はと言えば、シェフの言葉にブリブリと顔を真っ赤にして起こっている。顔がブリに似てるからって怒り方まで寄せなくて良いと思うんだが?ちなみにシェフの方はキスの顔に似ているぞ。
『さぁ本日の料理対決。お題は~・・・・。『満腹』!!お2人には審査員が満腹になる料理を作って頂きます!!審査は早い者勝ち、先に審査員がこれ以上食べられない!と言わせた方が勝者です!!』
「なっ!!おい!!そんなの聞いてないぞ!!」
『今言いましたから。なお、この勝負を辞退する事は審査員も含めて出来ません!!もちろん味も見た目も、そして効果も審査内容に含まれます!!あっ食べられなかったら残して頂いても構いませんよ?食べたくても食べられない!それがここでの『満腹』という意味ですので!!では!!調理開始!!』
こうしてダンジョンの中で行われる料理対決になぜか巻き込まれるのだった。文字通り美味しい思いが出来るから良いんだけどな。・・・・・出来るよな?
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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