第372話

「という事で候補地にやってまいりました!!」

「ルドさん、いったい誰に向かって言ってるんですか?」

「リダさん、ルドさんは決して私達には見えない相手に向かって言っているのですわ。」

「それが理解できるルゼダも怖いよ?」

「うちはなんとなく解るで?皆元気―?」

「お姉ちゃんが壊れた!!」

「シアだよー!いつものメンバー全員集合してるんだー!皆見てるー?」

「|ω・`)ノ ヤァ」


収集つかなくなるからここらへんで止めるか。んでもって来た場所っていうのは第1城壁を抜けた先、つまりは草原フィールドである。


「ここならば土地は切り取り放題。どんだけ大きな建物でも納まるという訳ですよ。」

「だがよクリン?ここ完全に魔物の領域なんだが?」

「その状態を何とかする為と言いますか、ぶっちゃけ第2城壁までを取り戻す為に旅人に土地の割譲を認めている訳ですわ。」

「でも城壁が無いと取り戻してもすぐに魔物が入り込むよね?」

「リダ姉、これ見てみ?」


何処からかルリが1枚の書状を取り出した。そこには第1城壁の外の土地を好きに切り取っても良いが、その代わり第2城壁の修復を依頼するクエストがシル名義で書かれていた。


「すぐ土地が貰えるわけじゃないのか!?」

「何事もうまい話しは無いという訳ですわ。」

「材料は事前に運び込んでいるそうなんです。いつでも良いから、城壁修復をお願いしたいと・・・・。」

「パパお得意の土木工事だね!!」

「(´―`*)ウンウン」

「ルド兄さんは10メートルまで大きくなれますし、意外とすぐ終わるのでは?」

「いや確かに前もそんな感じだったが・・・・。」


確かに以前も大きな体を利用して城壁を作ったぞ?だけど第2城壁の時は50メートルの身長の時じゃなかったか?今はその5分の1何だが?


「ちなみにこのクエストを受けた他の人達も参加してます。その人達は貢献度によって土地の広さと場所を選べますからグズグズしていると・・・・。」

「選べる土地も広さも変わるってか。」

「ですからさっさと始めますわよ!!ルドさんが参加すれば百人力ですわ!!」

「なぁベニ?これ完全に最初からルド兄の力を当てにしとるよな?」

「完璧に当てにしてるねお姉ちゃん。」

「シアも魔法で手伝うよ!!」

「(´・ω・`)」

「あー、アイギスはテッタとカイトを連れて来てくれるか?用事が終ったらここに来るはずだ。」

「( ̄▽ ̄)ゞ」


さてと、せっかく貰えるならデカい土地に城壁に近い場所が欲しい。カイトたちにすぐに行けるぞと言ってしまった手前あまり時間も掛けられない。全員の力を借りてさっさと終わらせるか!!


元第2城壁修復現場


現在、ここに居る工事クエストを受けた旅人達は目の前の光景に唖然とするしか無かった。


「なぁ・・・俺の眼はおかしくなったのか?」

「いんや、たぶん正常だ。じゃなかったら俺達の頭が完全にイカれたかだな。」

「すごーい!どんどん岩から石材が作られてる!!」

「あの小さい子剣士かな?凄い速さで材料を斬ってる!」

「傍に居る姫っぽい子は何もしてなく無いか?」

「いや、石材が光ってるのって浄化してるんじゃないか?確か建材に聖魔法や浄化を掛けると魔物避けになるよな?」

「あっちの髪の青い子は石材を撃って何してるんだ?」

「あっちの髪の赤い子が作った凸に合うように凹を作ってるんだろ。ほら、がっちり組み合ってまったくズレてない。」

「緑色の子。かなりの腕前の魔法使いだな。植物と土をあんなに自由に操ってるぞ。」

「あれは精霊魔法ですな。出来た石材をどんどん積み上げ、地面を動かしてがっつりと固定してますな。うん?名前の色からしてあの子は友魔?幼女の友魔とは是非手に入れたいですぞ!!」

「然り然り。」

「我々も鈴を手に入れましたので、是非探しますぞ!!」


ポカンとしながらも近くの仲間と会話を続ける旅人達。その目の前でどんどん石材は切り分けられ、加工され、積まれて行く。そんな中で一番の異彩を放っているのが・・・・。


ドドドドドドド!「はいルドさん!!」ポーンッ!

がしぃっ!「ほいよっと。」ドンドンドン!

「なんであんなに小さいのにあれだけデカい石材を投げられるんだ?」

「いや、素手で石材加工している事に驚けよ。」

「一気に組み上げてる巨人さんも大概じゃないか?」

「10個以上は一気に組み上げてるもんな。あっという間に壁が組みあがるって何?」

「あんなに高い所まで一気に組み上げられるんだもんなぁ・・・。同じ巨人族だったら行けるのか?」

「俺には無理。そもそもあんなに一瞬で組み上げる技術がない。」

「私じゃあんなの無理だよー・・・・。身長も倍は違うしぃ~・・・・。」

「君には君の良い所が在るから。大丈夫だから。」


リダが石材を素手で切り分け。ホゾを作りルドに投げる。加工された石材を受け取ったルドは、足で地面を踏み地面を沈下させてから一気に城壁を組み上げる。2人のコンビネーションはまるで曲芸を見ているかの様に美しく。効率的にどんどん組みあがって行く城壁はまるで魔法の様だった。


「はっ!!このままだと俺達の貢献度が全部取られるぞ!!」

「土地を確保して自力でクランハウスを建てる計画が!?」

「お店開店の為の土地が無くなる?」

「道場を開く為の広い土地が!?」

「「「「「こうしちゃいられない!!」」」」」


見とれていた旅人達は慌てて城壁修復に取り掛かって行く。時には協力して、時には石材の取り合いをして、確保した石材を奪い奪われながらもどんどん城壁が出来上がって行く。その様子を街から見ていた警備の兵士はこう漏らした。


「地面からモリモリ城壁が生えてるみたいに見えた。でもあんな急造品で大丈夫か心配になったよ。」


そんな事を言った兵士の不安は的中しなかった。なぜなら最後に緑色の小さい子が、全員で作った城壁を土で覆った上に茨を生やしたからだ。ある程度のずれや隙間は盛り上がった土で塞がり、魔法的に固められた。生えた茨は近づこうとした魔物にダメージを与え、傍に生えた花は魔物の嫌う匂いを放ち始める。ALO時代の開拓村を思い出した旅人達は、その懐かしい姿にこれでもう安全だと胸を撫で下ろし、ALO2からの参入組は突然変わった城壁を驚きの表情で見上げた。特に一番困ったのは依頼をしたシルで、茨で覆われてしまった城壁は壁に取り付く事も、ましてや上に昇る事も出来なかった。これでは巡回も出来ないとして追加の報酬を用意し、兵士の歩哨用の通路を追加で作って貰う羽目になるのだった。


そんな事を露とも知らないルド達は、思ったよりも早く出来上がった城壁を額を拭いながら見上げていた。


「いやぁ、かなり時間が短縮出来たな。」

「作業を分担したのが効きましたわね。」

「うちらより2人の方が早かったのが気に入らんけどな!!」

「まぁまぁお姉ちゃんそれは仕方ないよ。それに一番頑張ったのはルゼダさんとシアちゃんだよ。ずっと魔法を使ってたんだから。」

「シア頑張ったよ!!これで魔物さんは寄って来ないね。」

「そうですわね。浄化の効果を石材に封じ込めて、封じ込められた魔法の効果を循環させる植物を植える何て思いつきませんでしたわ。」

「まっ、昔実際に作った壁から着想を得たんだけどな。」

「御神木が管理していた茨の壁は強かったですからねぇ。」


ちなみに最初の神器と御神木は今だ埋まったままだが、その効力は完全に消失している。というか今のこの世界に現存している神器も御神木も全て死んでいる。今旅人達をこの世界に繋ぎ止めているのは完全に神様の力のみって訳だ。


「まっ、そのうちシルが神器の作成方法を復活させれば解らんけどな。」

「知識は在っても材料がない。ですか。」

「どこで取得できるかもわからないというのは痛いですわね。」

「おーいルドさーん!!」

「こっちの用事終わりましたー!!」

「L(・∀・ L) オーイ」

「おっテッタ達が来たな。」

「丁度良いですしこの場所にクランハウスを建てますか?」

「そうだな。場所も良い感じだしちゃっちゃと立てるか。」


クランハウスを建てるのは第1城壁の出入り口付近だ。第1城壁と第2城壁の出入り口を繋ぐ道路を跨がないように・・・・。広さは最大で、建物は・・・・和風で良い?全員OKっと、2階建てには・・・オッケーするで良いな。一階部分は広くして、2階には1階の半分くらいの建物と広いベランダを設定してっと・・・。内装は和洋折衷で。キッチンとリビングは一体型にして床はフローリングに、キッチンは・・・おっ!!システムキッチンが選べるな!冷蔵庫と食洗器とオーブンはこの位置に・・・。食器を入れる場所はこことここ、コンロはこっちににしてっと。風呂場と脱衣所はここが良いか。各自の部屋は各々の好みに設定して貰うとして・・・・。うっし、これで出来たな。それじゃあ早速設置!!


ズズーン!!


ピロン♪この場所はクラン『ティーターン』のクランハウスとなりました。以後許可の無い人物は立ち入り禁止となります。


うっし!!これで設置完了だ!!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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