第348話

先走ってチェーンソーを振り回しながら家に突入したホーラさん。俺達も急いでその後を追った。


ギュィンギュィンギュィィィィィン!!バキバキバキッ!!


ホーラさんが飛び込んでいったドアから駆動音と何かが壊れる音が!!もしや中にまだ敵が居た?急がないとホーラさんが危ない!!


「ホーラさん無事か!!」

「あぁダーリン!!」

「おぉハニー!!」


家に飛び込んだ俺達の目に飛び込んで来た光景は。部屋全体が甘~い雰囲気に包まれそうな光景だった。壊れた鉄の檻と横に転がるチェーンソーにホッケーマスクを無視すればだけど。


ホーラさんが抱き着いているのが例の彼か?想像と全然違うんだが?


すらっとした慎重に流れるような黄色い髪。青い瞳にアマイマスクをしている美青年がホラー顔のホーラさんと抱き合っている。


「まぁあれがホーラさんの思い人何ですのね。かなりイケメンですわね。」

「私舞台俳優かと思いました。」

「映画とかに出てきそうだよねぇ。」

「抱き合ってるホーラさん幸せそうやなぁ。」

「あそこだけ別空間になってるよ。」

「パパあの2人は番?」

「ん?あぁ番になる約束をした2人だな。」

「交尾する?」

「ぶっ!!ここではしないと思うぞ?」

「えー、見たかったなぁ。ねぇアイギス?」

「°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°」

「シア達が見るのは100年早い!!」(全くだれが教えたんだ?)ブツブツ


このままだと本当にこんな場所で始めかねないので代表して俺が声を掛けた。


「あーごほんっ!!盛り上がってる所悪いが、貴方がホーラさんの婚約者で間違いないか?」

「あぁ君に会えなくて寂しかったよホーラ。1年間も待たせてごめん。」

「うぅん良いの。あなたが生きていてくれたから。それだけで・・・。」

「ホーラ・・・。」

「ジョーゴ・・・・。」

「いい加減2人の空間から戻って来い!!」ゴチンッゴチンッ!!


俺が声を掛けても待ったく気にせずそのままキスしそうになったので慌てて2人の頭を殴って止めた!!ここには未成年も居るんだからそう言う事は2人だけの時にやれ!!


「あぁこれは申し訳ない。私はジョーゴ。ホーラの婚約者で間違いないよ。」

「そうか。俺はルド。それで?あんたはここで何をやらされてたんだ?ざっと見る限り色々な工具が置かれているみたいだが?」


部屋の中は別途と作業机、それと材料に工具しか置かれてなかった。食事とかはどうしてたんだ?


「僕はここで魔道具を作らされてたんだ。この街の領主から無理矢理命令でね。」

「まぁ!!ジョーゴにそんな事をさせるなんて!!今すぐその領主を血祭りに・・・。」

「こらこらこら、待て待て待て。チェーンソー持ってどこに行くつもりだ!!」

「それは決まってるでしょ?その領主を殺しによ。」

「物騒だからやめろ!!それにそんなことしたらジョーゴさんと結婚できなくなるぞ!!」

「あぁ、それは困るわ。なら止めましょう。」ガシャン


止めるのは良いがチェーンソーぶん投げるなよ。何かの魔道具壊したぞ今。


「あぁ愛しのホーラ!!僕を縛る鎖を壊してくれてありがとう!」

「この壊れた魔道具が鎖ですの?檻では無くて?」

「檻だけなら僕一人で脱出出来たんだ。でもその魔道具があったから僕は逃げられなかった・・・。」


ジョーゴさんの話によると、1年前強制的にここに連れて来られた時に言う事を聞かせる為に置かれた魔道具が今ホーラさんが壊した物だったらしい。


何でも、ジョーゴさんが魔道具の効果範囲外に出ると一番大事にしている“モノ”が傷付くという物だったそうだ。もちろんその効果を疑ってかかったジョーゴさんは魔道具を調べた。その結果、傷付くどころか人を殺傷できる能力を持っていたんだと。


「僕は一番大事なホーラに死んでほしく無くて今までずっとこの家で暮らしていたんです。」

「あぁジョーゴ。私の為に!!」

「ホーラ!!」

「はいはい、抱き合うのは良いけど話を進めるぞ?それで、あんたはずっとここで魔道具を作っていたと、なんで逃げなかった?後その目的は?」

「逃げようにもこの島に知り合いは彼女しか居なくて助けも呼べなかったんだ。だから大人しく従ってたんだよ。それと、領主たちの目的は魔道具でこの島を豊かにして税収を上げる事、それと並行して在る物を作れと言われてたんだ。」

「ある物ですか?」

「そう、とある薬草から魔力回復薬を作る魔道具だ。僕はずっとここでその魔道具の研究をさせられていたんだよ。」


なんとまぁ、ここで魔力回復薬。つまりはMPポーションの話が出て来るのか。


前にも話したが、ALO2ではMPポーションが売っている場所もその製造方法も確認されていない。戦争の際にMPポーションが全て消費され、製造方法と原料が全て焼けたからと言われている。


現在はシルが何とかMPポーションを復活出来ないかと方々を探しているらしいんだが、万魔図書の知識を持ってしても昔ほど効果の出せるポーションは作れていないそうだ。


しかも原料が無い為に量産も出来ず。出来上がったポーションは全て軍事物資として騎士団が管理している。


「そんなMPポーションが作れると?それも大量に?」

「そうなんだ。ついさっき完成したんだよ。それがこれだ。」


そう言ってジョーゴさんが紹介したのは銀色のタンクに四角い箱と蛇口が付いた物。こんな簡単そうな見た目で本当にポーションを量産できるのか?


「見た目は誰に見られても重要な物に見えない様にという指示だったからね。極力シンプルにして、何に使うか分からない様になっているんだ。」

「それで?これ1つでどれくらい生産できるんですか?」

「1日稼働して魔力回復薬を3000本は作り出せるよ。この薬草1つでね。」


ジョーゴさんが手にしたのは大葉の様な葉っぱだった。これ1つでMPポーション3000本はコスパ良すぎだろ。


「この葉っぱの成分が空気中の魔力を貯め込む者だと判明してね。その容量は体積の3000倍。この装置は葉っぱから抽出したその成分に外部から魔力を送り込んで精製。薬に作り替えるという物なんだよ。」

「その葉っぱは何処にでも生えてるもんなのか?」

「いいや。この島にしかない固有種だね。だからこそ、この葉っぱを使った魔力回復薬で大陸の市場を独占しようとしていたんだ。その功績を持って国王の傍に行き、暗殺もするつもりだったみたいだけどね。」


何とまぁ、国の乗っ取りまで考えていたのか。そんな計画絶対うまくいくはず無いのになぁ・・・。だって国王の傍にはシルが居るんだぞ?そんなクーデターの計画何てすでに掴んでるに決まってる。俺の自慢の妹だからな!!


「ルドさんが兄馬鹿の雰囲気を出していますわ。」

「ポンコツになったルドさんは置いといて・・・。それならこれですべての問題は解決ですよね?その魔道具と設計図を持って街に戻り、領主の悪行を報告しましょう!!」

「それがそうも行かなくて・・・。」

「何か在りますの?」

「魔道具の研究と、生活を豊かにする魔道具製造の他にもう1つ、僕がやらされていた仕事が関係してるんだ。それは・・・。」

「「「「「それは?((;゚д゚)ゴクリ…)」」」」」

「海に住む魔物。クラーケンの完全制御を可能とする魔道具の作成なんだ。」

「それは成功しましたの?」

「そんな物、とっくに作り上げて奴等に渡してあるよ。僕天才だから。」

「なんでそんな物を作ったんですか!!海に居る魔物を制御出来るのなら、この島に来る人達が危険ですよ!!」

「止めて!!ジョーゴを責めないで!!」


ジョーゴさんの言葉に声を荒げるリダ。まぁ確かにそんな物が在ったら島に来る人達が襲われても不思議じゃない。だがそこでルゼダが考える様な仕草を始めた。


「多分目的は逆ですわね。」

「逆?」

「島の秘密を知った者を大陸に帰さないちゅうことやな。」

「そうですわ。恐らく技師を監禁している事も、魔道具を使って島が発展している事も、MPポーションもとい魔力回復薬が作れることも情報が洩れる事は織り込み済みですわ。ですが情報をもった人が大陸に戻らなければ向こうは動けない・・・。」

「なっなら転異ポータルで大陸に渡ればいいんじゃ!!」

「転移ポータルは一方通行ですわ。イベントが終わるまでどうなるか分かりませんのよ?」


気が付けば俺達は絶海の孤島に閉じ込められている状態だったみたいだ。

 

毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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