第343話
何とか職質されずに拠点に戻って来た俺達。うん、大手が戦争状態に入ったからって漁夫の利を狙ったクランと、争いから逃げるクランで商業区は混乱の坩堝に陥った。その混乱を利用して割とあっさりと拠点に戻って来れた。戦闘は無かったのかって?クリンが爆弾で吹っ飛ばしてたよ。お宝は放置してきたから俺達の通った道はなおさら混乱が酷かったなぁ・・・・。
「宝箱は・・・・無事だな。」
「南京錠が壊されてませんね。」
「この中に彼の居場所を突き止められるものが在るんですか?」
「不思議に思うのも無理ないなぁ。見た目完全に冷蔵庫やもん。」
「安心して下さいホーラさん!!ちゃんとこの中に在りますから!!」
「えっと~・・・これだ!!」
俺は冷蔵庫の中からあの赤い宝玉を取り出す。するとホーラさんは目を見開いて俺の手の中の宝玉を見ていた。
「これ!!これです!!これが在れば彼の居場所が解る!!」
「俺達だと使い方が解らないな。ちょっと使って見てくれるか?」
「はい!!えっと、このペンダントを近づければ・・・・。」
ポゥ
赤い宝玉にホーラさんがペンダントを近づけると、宝玉の中心から白い光りがペンダントに伸びた。そしてそれとは別の方向にも白い光りが伸びている。多分この先にホーラさんの彼氏が居るはずだ。
「見つけました!!良かった無事で・・・。」
「そうとは言い切れませんわねぇ。」
「どうしてそう思うんですかルゼダさん?」
「この光が射す先を見れば解りますわ。」
そう言って窓の外を指さすルゼダ。だけど光りは真逆を向いている。つまりこれは一回外に出ろってことか?
2階建ての拠点、その2回には広いバルコニーが用意されていた。全員がその場所に出て、光りに行く末を視線で追う。すると光はこの街の一番高い場所に在る建物を指して居た。
「あそこは極楽島を管理している領主の館。ホーラさんの彼はあそこに囚われていると考えられますわ。」
~・~・~・~・~
一方、その領主の館ではその館の主が盛大に暴れていた。
「なぜだ!!なぜ次々に奪われる!!」
「すでに島で使っている魔道具の大半が旅人連中に奪われました。」
「ぐぬぬぬぬ!!この1年間あいつにずっと作らせていた魔道具ばかりが狙われる!これではわしの計画が!!」
ダンッ!!
机の上の書類をばら撒き、椅子を蹴り飛ばし、何度も何度も机を殴る領主。最後には手に持ったワイン瓶を机に叩きつけて割っていた。
そんな領主は1年前、この島に有名な魔道具技師、通称魔具師が訪れると聞いて準備を整えて待っていたのである。その理由は、その魔具師を飼い殺しにして島の税収を上げる為。
ホーラはあの容姿の為にあまり人付き合いが得意ではなく。知り合いもほとんど島に居なかった。技師の方もこの島にはホーラしか知り合いがおらず、強引に自分を誘拐した領主が彼女に手を出す事を恐れて旅行に来たと言っていたのである。
2人が結婚するという情報は本当に一部の者にしか伝わっておらず、まさかその技師が島の女性と婚約関係にあり、放っておいても島に貢献した事を知らないままだった。
「魔具師を死なない様にこき使い、島を発展させて利益を独り占め作戦が失敗しそうですな。」
「そんなダサい名前では無いわ!!そんな事より彼奴の守りは大丈夫なんだろうな!!あ奴が旅人に見つかればわしの悪事も・・・。」
「そこは大丈夫でございます。この島一番の戦士に守らせていますので。大陸の物にも負けない奴であれば、有象無象の旅人等簡単に蹴散らすでしょう。」
執事の言葉に若干落ち着きを取り戻した領主は深々と椅子に座る。そして、領主館の裏に広がる森に視線を向けてから、執事に再度声を掛けた。
「奴と一緒に管理している例の物は大丈夫なんだろうな?」
「はっ、それはもう抜かりなく。」
「せっかくの好機だ。この機を逃せばわしが大陸を制覇するのは難しくなる。そちらの警備も万全にして置け。」
「彼奴と一緒に守るように戦士には申し付けています。『魔薬計画』。これだけは完遂させます故。ご心配なく。」
深々と頭を下げる執事に、領主は頷いて返すのだった。
~・~・~・~・~・~・~
その頃、1つのクランが領主間の裏の森で迷っていた。
「なーアチャー。お前絶対迷っただろ?」
「アチャー。」
「迷ってない!!あと私の名前で遊ばないで!!」
「全くこれだから年増はいかんな。なぁリー氏、コーン氏。」
「然り然り。」
「ロー氏の言う通りですぞ。」
「黙りなさいそこのロリコン共!!もう忍者さん早く帰って来てぇ・・・。」
「もうちょっとがんばろアチャーちゃん?私達も手伝うから。」
「ミノリちゃんの言う通りだよ!!ミノレも頑張るから一緒にがんばろ?」
「ミノラちゃんも索敵してくれるから、ねっ?」
「ほらっミノルも何とか言って!!」
「えぇ~。面倒くさいよ・・・。」
「うぇぇぇぇん!ミノちゃん達だけが味方だよぉ~!!」
「「「「ミノタウロスみたいだからその呼び方は止めて!!」」」」
覚えて言えるだろうか?魔物暴走の際にリダ達と一緒に冒険していた彼女達の事を。あの後彼女達は縁が在り、今は同じクラン『ワンダラー』を結成して今回のイベントに参加していた。
「観光地である島に来れば薄着の幼女が見られると思ったのに!!」
「我らは迷いに迷ってなぜか森の中に・・・。」
「斥候も出来ると息巻いていた年増の所為でこんなことに・・・・。」
「「「はぁ・・・。」」」
「溜息吐きながら犯罪まがいの事を言うなよ。ロー、リー、コーン。」
「我らは幼女を守る者!!」
「決して幼女を害しはしない!!」
「然り!!我等は唯幼女を見守り、幼女を悪意から守る者なり!!イエスロリータ!!」
「「「ノータッチ!!」」」
「世間一般じゃ犯罪行為だぞそれは。はぁ・・・。ここまで名が体を現すというのを体現している人もおらんだろうなぁ・・・。」
「うぇぇぇぇん!助けてダンド!!皆が虐めるぅ!!」
「やれやれ。仕方ない、一回休憩にしよう。シノービが情報を持って帰って来てくれるだろ。」
弓使いのアチャーをクランマスターに添え、盾使いのダンドがサブマスターに。メンバーに回復使いのミノリ、炎魔法使いのミノラ、ミノル、ミノレの4姉妹(という設定)。軽戦士のケフザ。忍者のシノービ。地魔法使いのロー、リー、コーン。総勢11人が『ワンダラー』のメンバーである。
「しっかしここ何処なんだろうな?マップにも表示されないとか・・・。」
「ここは意図的に捻じ曲げられた変な魔力に満ちているのですぞ!!」
「然り然り。その魔力の所為で方向感覚が狂わされ、出られないんですぞ。」
「我等地属性の魔法使い。この地に満ちる魔力がおかしい事は最初から気が付いておりましたぞ!!」
「ならもっと早く言いなさいよ!!」
「年増が忠告する前に森の入ったのが悪いんですぞ!!」
「「然り然り。」」
「あちゃー、やっちゃったな!!」
「黙れぇぇぇぇぇぇ!!」
シュトトトトトト!!
「ぐべぇっ!?」
ロリコン3人に言い負かされ頭を抱えるアチャー。その姿を見て揶揄ったケフザがアチャーの矢によって顔面をハリネズミにされる。ミノリは慣れた手つきでケフザを回復し、他の面々にも気にした様子はない。このクランに取ってそれくらい日常茶飯事だからだ。
その時、頭上から一枚の枯れ葉がひらひらとクランメンバーの傍に落ちた。その彼ははボウンと音を立てて煙を吐き出す。その煙の中からは全身黒装束に身を包んだシノービの姿が現れた。
「ここに居たで御座るか。」
「お帰りシノービ。」
「待ってたよ忍者さん!!それでそれで?出口はあった?」
「無念、出口は見つからなかったで御座る。」
「忍者さんでも駄目かぁ~・・・。」
「これからどうする?死に戻る?」
「餓死すれば戻れると思うけど・・・・。」
「もう皆ここで暮らそうよ。」
「ミノルは何でも面倒臭がらないの!!」
「そう結論を急がれては、拙者の見つけた物を報告出来ないで御座る。」
「見つけた物?それはなんだ?」
シノービの言葉に首を掲げる面々、たいしてシノービは覆面の上からでもわかるくらいのドヤ顔をして全員に報告した。
「この先に一軒家を見つけたで御座るよ。」
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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