第342話
さて、ホーラさんが俺達の拠点に来てくれる事になったのは良い。早速俺達の拠点に!!何て言えれば良かったんだけどここで問題が1つ。そう、ここって大手クランのお膝元なのよね。
「監視している人達に100%クエストだとバレますよね?」
「大手クラン以外にも情報が洩れて妨害される可能性が高いですわ。」
「その結果複数クランに絡まれるねぇ。」
「どうするん?」
「どうしようも無いと思うよ?どうしますかルド兄さん?」
「うーん、正面突破しか思いつかないんだよなぁ・・・・。」
慎重に行動しようにも隠れて移動できる裏路地は今絶賛勢力争いの真っ最中だから無理だろ?なら堂々と表から一緒に出て歩くしかない訳で・・・。どちらにしても他クランに情報は流れるよなぁ。
「うーん。ホーラさんを何かで隠せたら良いんだが・・・。」
「ねぇパパ?あれは使えないの?」
「ん?あれってどれだ?」
「コレ!!」
「ρ(・д・*)コレ」
シアとアイギスが指さしたのは、茶色い麻袋で出来た布団だった。ホーラさん曰く、材料費が無くなって何とか作った寝具の1つだとか。これを使う?・・・・・・・あぁなるほど。
「これに入って貰って俺が担ぐのか。」
「なるほど!!人から見れば寝具を買って持ち帰るように見えますね!」
「巨人のルドさんが背負うなり担ぐなりすれば正面からは見えませんわね。でもなぜインベントリに入れないか気にされそうですわよ?」
「大丈夫じゃないかなぁ。今回のイベント、小さな部品でもインベントリの枠を圧迫するし。他のクランもその事には気が付いてるだろうから、お宝でインベントリが一杯で入らなかったって思うはずだよ?」
「それはそれで絡まれそうやなぁ。」
「あの、でしたらこれとか使えませんか?」
「ひっ!?」
「突然出てくると驚きますわね・・・・。」
「あっすみません・・・・。」
俺達が相談しているとぬっと顔を出したホーラさん。それに驚いてベニの奴が小さく悲鳴を上げた。顔がホラー顔だからね。仕方ないね。でそのホーラさんが何やら袋を持ってる訳だ。
「大丈夫大丈夫、それで?その袋の中身は?」
「彼が送って来た何かの部品何ですが・・・・。」
袋の中には何に使うか分からないネジやらバネやらいろいろと細かいパーツがびっしりと詰まっていた。しかもこれ、全部お宝判定。ポイントは1ポイントだけどな。
「これを送って来た彼は何て言ってたんですか?」
「あまり使わない細かい部品を先に送るって言って送って来たんです。」
それって唯ゴミを押し付けただけって言いません?本当に大丈夫なのかその彼は。
「・・・・・妙ですわね。」
「妙?どうしてそう思ったのルゼダ?」
「なんでこのガラクタがお宝なんですの?私達が拾って来たのも、全てパーツが抜けていたり、何かに使えそうな部品ばかりでしたわ。しかも組み上げた方がポイントが高い。それなら最初から完成品を用意しておけば良いはずですわ。」
「そらそうやな。」
「確かに。」
ルゼダの言う通り今回のイベントはお宝探し。お宝と言えば金銀財宝とか強い武器とか、便利な道具を思い浮かべるよな。でも実際はバラバラになった機械の部品やそのままじゃ動かないガラクタばかり。もしかして『宝』の意味が違ってるのか?
ガヤガヤガヤ
「店の外が騒がしくありませんか?」
「うん?・・・・たしかに。何か盛り上がってる?」
「見に行こうパパ!!」
「(* ̄0 ̄)/ オゥッ!!」
こっそりと店の外の様子を伺うと、そこには手に持った道具を掲げた旅人らしき人の姿が在った。
「見ろ!!この魔道具1つでポイント30ポイントだぞ!!」
「おいおいこれで俺達のクランが一気にトップじゃないか!!それどこに在ったんだ?」
「よーく聞けよ?これはうまい料理を出すって言う店で使われていたスパイス調合用の魔道具だ!!」
「まじか!?どう見ても玩具にしか見えないけどなぁ。それでお前それ盗んだの?」
「イベント終わったら返すって言って金積んで借りて来た。」
赤いパンチグローブにしか見えない魔道具1つで30ポイント?ポイント高すぎないか?
「なるほど、私達は修理して高得点を取りましたが。現状動いてる完璧な物ならポイントが高いんですね。」
「・・・・・なぁ。これちょっとまずいんとちゃう?」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「壊れてない魔道具が高得点って知られてしもたんやろ?やったらこれからこの島で魔道具狩りが始まるんちゃうかなって・・・・。」
「・・・・・。十分考えられますわね。特に今回のイベント報酬であるクランハウスがどうしても欲しいという所は、力尽くで奪うという行動に出でもおかしくないですわ。」
「そんな手段に出る程クランハウスは欲しい物なのか?ただの庭付き一戸建てだろ?イメージ図を見たけど普通の家だったぞ?」
「ルドさん。クランハウスは設置場所が自由で外装や内装なんかもある程度弄れます。それにクラン人数によって大きさが変わるんですよ?これから悪い事を考えている人、赤落ちの協力者なんかがそれを手に入れると・・・。」
「即席の隠れ家の完成って訳か。」
赤落ちは街に入れない。つまりは俺達が使える拠点倉庫サービスも受けられない。だからせっかく奪った物資もほとんどが放置されている。物が持てないから必要最低限の物資で動き、必要なら奪うしかなく、その都度逆に狩られるリスクを負う。もちろん倒されたらアイテムと赤落ちになって今まで取得した経験値の全ロストだ。そうやってじわじわと弱体化させて最後は狩り取るという自浄作用がこのゲームには適用されている。
そんな中クランハウスを手に入れた赤落ちが居たらどうなるか?安全に休めて奪った物資も蓄えて置ける上に準備も整えられる。クランハウスを餌に団員も集まって一気に赤落ちの一大勢力が出来る訳だな。
「そう考えると下手な所に取られるのはまずいな。」
「自分達の力を強める為に欲しいという所も在りますわね。」
「アインさんなんかは飛行戦艦の増強の為に欲しいって息巻いてました。」
ウィンドルの中にも居住空間はちゃんと在るだろうに・・・・。それにクランハウスを空中戦艦に組み込むのは有りなのか?あっ外装を弄れば入れられるのか。
「かといって俺達に出来る事は無いからなぁ・・・。」
「あっあのマークは!!」
ホーラさんが指さしたのは旅人が掲げている魔道具に描かれていたマーク。クロスするスパナとドライバーの真ん中に笑顔のシンボルが描かれてるな。
「あれは彼が作った道具に書かれているマークです!!」
「そうなのか?見間違いじゃないな?」
「見間違いじゃありません!!ほらこれ!!」
そう言ってホーラさんが、ボロボロのドレスのどこから出したのか分からない金槌を取り出した。その絵の部分に同じマークが描かれている。
「これは彼が私の為に作ってくれたんです。」
「寝具を作るのに金槌が居るんですか?」
「ベッドも手掛けて居ましたので・・・。他にもこれとか、これとか。これとか。」
そう言ってホーラさんが取り出すのは、寝具屋というよりも大工では?と思うような道具ばかり。力のいらない金槌に始まり、重さを感じない釘入れ。引っ掛からず使った場所をつるつるにするカンナ。絶対に水平を取る水平器。何でも断ち切るチェーンソー。少ない力で思った通りに素材を削る動力付きのやすり。絶対に体を傷付けず、色々な道具を体の各所に入れられる作業服。火花やなぜか魔法から身を守る茶色いエプロン。目と顔を保護する為に作られたホッケーマスクに似ている仮面などなど。しかもホーラさんはそれを喜々として身に着け始めた。その姿はまるで・・・・。
「ジェ〇ソン?」
「胸元に輝くにこちゃんマークが別の笑顔に見えますわね・・・・。」
「夜道で在ったら絶対に怖い奴ですこれ!!」
『どうですか?これ全部彼の作品なんですよ!!』
「分かった!!分かったからその状態で詰め寄って来ないでくれ!!妙な圧力と言うか寒気がするというかぶっちゃけ怖い!!今にも手に持ったチェーンソーで体をぶった切られそうだ!」
『この姿を見た皆さんそう言うんですよねぇ・・・。前にもベッドを作っているだけなのに人を解体している何て噂が流れて兵士を呼ばれましたし・・・。』
「それはデザインに問題が在るんだと思います・・・・・。」
「すごーい!!かっこいい!!」
「°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°」
「シアちゃんとアイギスちゃんは一回眼科いこか?」
ホーラさんジェイ〇ン化事件は在ったが、今回のイベントの方向性は解った。1年前行方不明になったホーラさんの彼氏が作った魔道具がキー何だな。だって今ホーラさんお宝の山って表示されてるし。全部で1000ポイントだぜ?これだけで一気にトップだぞ。
「とりあえずホーラさん。その道具類は全部仕舞って下さい。他の旅人に狙われちゃいますので。」
「はいもう仕舞いました!!」
「この騒ぎに紛れて拠点に戻りますわよ。今ならあまり注目されてませんわ。」
「うっし、急いで戻るぞ!!」
魔道具を掲げていた彼に別の大手クランの旅人が襲い掛かって通路は戦場になっている。今なら裏通りから出て拠点に戻れそうだ。俺達は見つからない様に急いで出発するのだった。
もちろんホーラさんを袋に詰めてな!!
・・・・職質されたらどうしよう。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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