第344話

シノービが見つけたという一軒家に向かう『ワンダラー』の面々。そして、丁度その一軒家が見える位置でシノービが止まった。


「拙者が見つけたのはあれで御座る。」

「どう見ても普通の一軒家ね?」

「・・・・・あの家の前で仁王立ちしてる人は誰なんでしょう?」

「聞いてみません?せっかく人が居たんですから出口を知って居るかも。」

「・・・・やめよう。あの人からは怖い気配がする。」

「ミノル?」

「またミノルの直感?」

「そうみたい。あの人が怖いんだって。」

「たまに感が鋭くなるのよねぇこの子。」

「そう言ってもこのままですと何も変わりませんぞ?」

「然り。現状を打開するにはあの家に入るか、あの御仁から情報を得ねば。」

「普通に声を掛ければ問題無いはずですぞ?」

「・・・いや、ちょっと待て。ありゃこっちに気が付いてるぞ。」

「そうなのかケフザ?」


軽戦士であるケフザの言葉に全員が注目する。


「あいつ、立ったままの振りしてこっちに重心を向けてやがる。俺達が変な動きをするか、気を逸らしたら一気に攻めてくるつもりだ。ほらっ今もじりじりと脚を動かしてる。」

「・・・・全く見えないよ?」

「拙者は見えるで御座る。あの御仁、なかなかの手練れで御座るな。」

「全員警戒を解くなよ。俺が殿になるから森のゆっくり後退だ。」

「っ!?駄目だ遅かった!!来るz」ぐしゃっ


ダンドが撤退の指示を出し、ケフザが警戒の声を出そうとしたところで一軒家の前に立っていた男がケフザの顔面を殴り潰してその場に立っていた。あまりの出来事に固まるワンダラーの面々、だが男は全く待ってはくれなかった。


「総員たいh」

「アチャーさn」

「私が魔法で足を止めるから逃げぴぎゅっ!?」

「あーおわっt」

「今かいh」

「ミノr」

「これで戻れるんですz」

「兄弟よ先にいk」

「後を追いますz」

「拙者はそう簡単n」


あっという間にポリゴンになって消えて行くワンダラーの面々。その行為を成した男はと言えば、周りに対象が居なくなった事を確認してから再度家の前で仁王立ちとなる。鍛え抜かれた体に、首に大きな傷を残している男はただ黙って命令を遂行するのだった。


~・~・~・~・~・~


「よし、これでホーラさんの彼氏の居場所は解った。早速助けに行こう。」

「待ってくださいルドさん。その前に忘れてませんか?」

「うん?何か忘れてるか?」

「私達は元々寝具を手に入れにお店に行きました。そして、その店主のホーラさんがここに居ます。お店に良い商品は在りませんでしたけど、その理由は材料費の不足。だったら私達でその材料、提供できませんか?」

「それに日が落ちるまであまり時間が在りませんわ。一度体制を整えて明日、救助に向かった方が良いと思いますわ。」

「パパお腹空いた!!」

「(((uдu*)))ゥンゥン」


ふむ、そう言えばそろそろそんな時間か。色々あり過ぎて時間経過を忘れるなぁ。それにしたって寝具に使えるような素材か・・・・・。ってかホーラさんは良いのか?


「彼を助ける為に協力してくれてるんです。材料さえ出して頂ければ無料でお作りしますよ?」

「材料つったって何かあったっけ?」

「ジャイアントウルフの毛皮は沢山ありますわよ?」

「それなら僕も提供できるよ。訓練場で飼ってたジャイアントコッコの羽毛だね。良い筋肉は良いたんぱく質から!!何て言って鶏肉を大量消費してたからついでに貰ってたんだ。」

「あのごっつ強かった兎の素材もまだ余ってんで?」

「私も師匠から木材貰ってるんです。これ使って寝具、作れませんか?」

「シアも一杯持ってるよ!!アイギス出してくれる?」

「(‘◇’)ゞ」


ふむふむ、素材は売り払ったり自分で使ったりでいくらか消費しているが、それでも皆沢山余らせてるんだな。俺?俺はほら、シアとアイギスが持ってるから・・・・。あっ!!ロアから預かったままの粘土!!あれを提供するか。見せて貰ってからそのまま持ってたんだよなぁ。インベントリから出てこないし、返して貰おうともしないから俺が使って良いだろう。


「まぁまぁまぁ!!これだけの素材が在れば素敵な寝具が作れます!!すぐに作業に取り掛かっても良いですか?」

「人数分作れるなら是非お願いしたいですわ。」

「なら早速始めますわね!!」


ホーラさんがドレスのポケットに手を突っ込むと即座にジ〇イソン化し、俺達が提供した素材を抱えてリビングの隅で作業を始めた。その手さばきはまさに神業の一言!!っつっても何してるか全くわからないくらいに早く手が動いてるんだよな。残像しか見えないぞ。


そして瞬く間に作られて行く布団と枕。毛皮からいつの間にか布が出来てるんだがこんな短時間でどうやってるんだ?謎だ。


「もうしばらく時間が掛かりますので、皆さんは別の事をしててください。」

「うっし、なら俺は料理でも作るか。パエリアの他に希望は在るか?」

「エビの良いのが在りました!!ガーリックシュリンプが食べたいです!!」

「女性がニンニク料理って口臭気にしないのか?」

「ゲームの中だから良いんです!!」

「サラダも欲しいですわ。」

「僕はスープが良いな。香辛料が入った奴。スープカレーでも良いですよ?」

「シアは何でもいい!!」

「うちもうちも!!」

「南国料理がどんなのか知らないもんね。あっ私は魚が良いです。」

「’’`ィ (゚д゚)/ (・∀・)つ「肉」」

「あーわかったわかった。バナナの葉みたいなのが在ったから、魚は野菜と一緒に包み焼きにするだろ?肉はそのまま香辛料欠けて焼くか。味濃い目の料理が多くなりそうだからスープはさっぱり目の奴にするぞ?サラダは果物と一緒に入った南国風で作るとして・・・。って1人で全部作れるかぁ!!全員手伝え!!」

「「「「「「「はーい!( ´ ▽ ` )ノ」」」」」」」


結構な量の料理を手分けして作った。スープなんかは日持ちするから大量に作って3日間アレンジしながら食べる事に。インベントリに入れて置けば熱々のまま保存出来るからな。


後は全員が作った料理を並べている時に片付けをすると言ってこっそりと1人で料理を続ける。と言ってもケバブサンドみたいに、中空のナンもどきを焼いて肉と野菜を挟んだお手軽サンドを作っただけだがな。明日の朝皆に配って、緊急時に食べる様に言っておこう。


ホーラさんにも声を掛けて全員で食事。魚介のうまみを十分に吸ったパエリアはうまみも深く、失敗するとべちゃついてしまうそれがうまい具合に炊けていてとても美味しかった。ムール貝っポイかいから凄い良い出汁が出てる。


肉はタンドリーチキンを用意。これには全員うまいうまいと言って食べてすぐに消えて行った。香辛料が例の旅人が持っていた魔道具産だと気が付いたのは入っていた瓶の後ろを見た時だった。あれはたしかに人気になるわ。適度な辛さと鼻に抜ける華やかな香りはすぐお代わりが欲しくなる程だった。魔道具が無くてもう作れないだろうから我慢したけど。


バナナの葉もどきの包み焼きも、葉っぱからフルーティな香りが魚に映り、適度な塩加減でとってもうまかった。一緒に蒸し焼きにした芋やトマトらしきものも、甘みが引き立ちしょっぱい魚と一緒に食べると丁度良かったな。


スープは薄味の魚介出汁スープだ。具は入れずにスープだけにしたが、濃い味ばかりの食事に口の中をリセットしてくれた。


サラダもフルーツを添えて出したが、酸っぱさと甘さの混ざったそれはスープと同じように口の中をリセットしてくれて、さらに食が進んだのは言うまでもない。


腹いっぱい食べた俺達は、今はお茶を飲みながらくつろいでいた。ホーラさんだけは食事の後すぐに作業に戻って行ったが。


「ふぅ、ルドさんの料理の腕。また上がってますね。」

「誰かさんのお陰で趣味みたいになったからな。それにどうせ食べるならうまい物が食べたいだろ?」

「私、ルドさんに料理を教わりたいと本気で思いましたわ。」

「こんな料理が毎日食べられたら幸せだよね。」

「兄ちゃんほんまに料理人とちゃうの?下手な店の奴よりうまかったで?」

「馬鹿言うなよ。本職は俺よりもっと腕は上だぞ?」

「ルド兄さんは謙遜し過ぎです。」

『出来ましたぁーー!!』


さてそろそろ寝ようと思った所でリビングの隅で制作活動をしていたホーラさんが大声を上げた。その手には9組の布団と枕が掲げられている。いや寝具とはいえ結構重くないか?良く持ち上げられてるなぁ。いやあの力が強くなる手袋のお陰か。


「ぷはぁー!!久しぶりに全力を出せました。会心の出来です!!どうぞお使いください!!」


仮面を脱ぎながら幸せそうな笑顔で寝具を渡してくるホーラさん。そう言って差し出された寝具はこんな表記だった。


成長促進の寝具

この寝具で寝ると、起きてから24時間スキル熟練度が上がりやすくなる。完成度が高い為バフ効果にも影響が出た代物。オーダーメイドにより店では買えない。


獲得熟練度+2倍

バフ効果+3倍

バフ効果時間+20時間

自動修復

快眠

防御結界


ぶーっ!!


寝具の効果を見た俺達は飲んでいたお茶を吹き出すのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る