第330話

『攻撃出来ないなら船体で圧し潰せ!!』

『駄目ですって!内部に泥が侵入して船が乗っ取られる可能性が在るんですから!!』

『くぅっ!!』


飛んでいく泥を何とかしようとウィンドルのブリッジで言い争いが起こっています。ですが会話の通り、意思の在る泥が船内の重要機関に入り込むと、乗っ取りが起こる危険性があるので直接攻撃は駄目ですね。


「打つ手なし・・・・ですか。」

「まぁ今回は後継者問題の解決が目的だからね。これでもクエストクリアにはなると思うよ?」

「次に襲ってくる時の為に対策を立てて置かないと行けませんわね。」

「諦めるんか!?ここまでやったのに!?」

「しょうがないよお姉ちゃん、見てよあれ。もうあんな遠くに・・・・あれ?」

「・・・・・・・・!?」


何とか視認できる距離にまで飛んで行ってしまった泥。討伐報酬(在るか分からないですが)を諦められない旅人が一生懸命追いかけています。それとは反対方向から駆動音の様な物と人の叫び声が聞こえています。そちらの方向を見ると、小さな黒い影が1つ。


「何か飛んでるね?」

「鳥でしょうか?」

「雲じゃない?」

「飛行船?」

「にしては小さいですわよ?」

「いやっあれは!!」


ヒィィィィィィィィィィィィィィィン!!


「誰か止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「パパブレーキ!!ブレーキ踏んで!!」

「ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ」

「「「「「「「「「ルドさん!?」」」」」」」」」」


あっという間に近づいて来たそれは、黒いアメリカンバイクの様な物に乗ったルドさんでした。そのバイクはルドさんの叫び声を響かせながら、私達の頭上を凄いスピードで飛び去って行きます。


「あれは一体何ですの!?この短い間であの人は一体何をしでかしたんですのぉぉぉぉ!!」

「ちょっ落ち着いてルゼダ!!」

「小型の飛行船?というか完全にバイクだったよね?」

「せやな。お父ちゃんが乗っとるバイクそっくりやった。サイドカーを2つ付けとるのは初めて見るけど。」

「あれ?あの飛行コースって・・・。」


一方、泥の塊から飛び出した本体はと言うと・・・・


〔くくく、まさか我らが空中を逃走経路に選ぶとは思うまい!!〕

〔あの空飛ぶ船に攻撃されないかヒヤヒヤしたが・・・。これも我々の悲願を叶えろと神が仰っているに違いない!!〕


無事に旅人達の攻撃から逃げ出せたと思って安心し切っていた。


〔まずは安全な場所を探して再起を図る。なに、今の体であれば隠れる事は造作もない。〕

〔時を見て下水からヒュマニアに戻り、住民を恐怖のどん底に落としてくれる。真の王が誰か解らせてやる!!〕

〔〔我等の悲願の為に!!〕〕


すでに完全に混ざり合い悲願がどのような物だったかが曖昧になっている状態だが、それでもこの怪物は自分の願いを叶える為にまた無辜の民に手を出す事を決めていた。


・・・・・・・ヒィィィィ・・・


〔むっ?なんの音だ?〕

〔後ろから?〕


ヒィィィィィィイイイイイイイイイイイイ!!


〔〔なっ何だあれは!?〕〕

「うわっちょっ!!なんで空に泥の塊が!!」

「ぶつかるよパパ!!」

「(/ω\)」

〔〔くっくるなぁぁぁぁ!!〕〕


ドパァァァァァァァン!!


猛スピードで突っ込んで来たバイクによって泥の体は簡単に吹き飛んだ。空中だった事もあり回避も出来ず、ウィンドルの攻撃により半分シャーベットの様に固まっていた泥はキラキラと光りを発しながら霧散する。そしてそのままポリゴンとなって消えて行ってしまった。


「あっやっと速度が落ちた!これでブレーキが効く!!」

「もう、スピード出し過ぎだよパパ!!めっ!!」

「(`・д・´)」

「ごめんごめん、ちょっと調子に乗り過ぎた。ぶつかったのが泥で良かったよ。」


まさかその泥が元人間で、アニスの兄妹である事を知らないルドはさっき見えたウィンドルに向かってバイクを走らせる。1つのログを見落として。


クエストクリア!!ヒュマニアの後継者をクリアしました。このクエストは報酬が固定されています。


参加者全員のクランランクがCに上昇します。


“???がマッドデビルを討伐しました。これより自立進化を開始します。”


ウィンドルの近くまで飛んでくると、皆が手を振って俺の事を呼んでくれていた。俺は仲間の呼びかけに答えてその近くにバイクを着陸させる。


「ふぅ、すまん皆。遅れた。」

「遅いですよルドさん!もうクエスト終わっちゃいましたよ!!」


一番にリダが俺の近くに走って来て腕を振りながらプリプリと怒った。まぁでも尻尾が揺れてるから本当に怒ってる訳じゃなさそうだな。


「美味しい所はルドさんが持って行きましたけどね。」

「ボスを轢き殺す何て思いもよりませんでしたわ。というかあのバイクは何処で手に入れたのか是非聞かせて欲しいですわ!!」


次にクリンとルゼダが近づいて来たが・・・。俺が引いたのはボスだったの!?それは悪い事をしたかなぁ。後ルゼダが近い!!知りたいのは解るがちょっと落ち着け!!


「まぁまぁルゼダ姉ちゃん。まずはやる事あるやろ?」

「まずはボスが討伐されたって皆に知らせないと大変な事になりますよ?」

「それはウィンドルに任せているから大丈夫ですわ!!」


ルリとベニが最後に追いついて来て、ボスが討伐された事を知らせる方が先だという。まぁ皆ログにクエストクリアの表示が出てるから解ってると思うぞ?解らないのは住人の人だけだろう。そちらも今ウィンドルから街を襲った化け物が討伐されたと放送している。だから俺はまず、クエストがどのような物だったか皆に詳しく聞いた。


「うわぁ、思いっきり人身事故だったのか・・・。」

「人間やめてましたから人身事故と言わないのでは?」

「それでもアニス嬢の兄妹を轢き殺したのには変わりないだろ?」

「その事はお気になさらないで下さい。」


突然の声に振り向くと、そこには金髪ムキムキの親父と一緒に立つアニス嬢の姿が在った。一緒に居る所を見るにあの人がゴルドンさんか。大剣振り回すだけあってごっついなぁ。


「この度はヒュマニアの危機を救って頂き感謝する。」

「まぁほとんど仲間がやった事ですから。俺は最後にちょっと手を貸しただけですし?お礼を言われる程の事はしてないよ。」

「いや、首都にて相談役に口利きをして頂いた話は聞いている。それが無ければこれだけ早く解決する事は出来なかっただろう。自分の不徳を助けて頂いた身だ、関わったすべての人に感謝したい。もちろん相談役にもだ。」


おっとこのおっさん、また聞きなのにシルの真意に気が着いちゃったのね?これは見た目に反して頭も相当良さそうだ。


「なら感謝は受け取っておく。報酬の話も聞いてるだろ?」

「もちろんだ。クランランクを上げる件は私の独断ですでに命令を出して置いた。すぐにでもランクが上がるだろう。」

「あっ見て下さいルドさん!!クランランクがCに上がってます!!」


確かにクランランクがCに上がってるな。冒険者ランクがFがさらに目立つようになってしまった・・・。イベントまでにランク上げとくか?


「報酬は確かに。それじゃあ俺達はこれで失礼するよ。」

「そうなのか?この後正式な任命式と宴をしようと思っていたのだが・・・。」

「それは・・大丈夫ですの?城も崩れましたし、そんな事をしている余裕は無いんじゃありませんの?」

「なに、全ての私財を城に入れていたわけでは無いのでな。それに、大きな厄災が降りかかった街に少しでも明るい話題をと思っているだけだ。」


さっき上空から見ると、街の中心部にデカい穴が開いていてそこに水が流れ込み始めていた。周辺の家屋にも少なからず影響が出ていて、完全に倒壊していたり一部が崩れている家も在った。今後の復興の為にも街の人に希望を持って貰いたいって所かね。


「おっそうだ。これシルからの手紙だ。ゴルドンさんとアニスちゃん、2人に預かって来てる。今読んでくれ。」

「今?急ぐのか?」

「返事を持って来て欲しいって言われてるんだよ。アニス嬢も頼むな。」

「はっはい!!解りました!!」


シルからの手紙と聞いて緊張するアニス嬢。まぁ彼女にとっては軽くトラウマだろうからなぁ。まぁだからなんだ。手紙の内容を見て泣きそうな顔になるのは止めてくれ。強く生きろ!!


「なんと!?相談役の元で統治の勉強をさせて頂けるとは・・・・。これは本当か?」

「嘘の手紙出してどうすんだよ。それに封蝋の紋章も間違いないだろ?」

「むむむむ、確かに・・・。」

「お父様!!」

「なんだアニス?改まって?」

「私、相談役の元で勉強して来たいと思います!!」


アニス嬢の目には恐れ以上にやる気の炎がメラメラと燃えていた。まぁこのままだと統治者として未熟だと言われてたからな。そんな自分が国王を導く相談役の元で学べるまたとない機会に恵まれたんだ。やる気のある奴は飛びつくさ。


「俺達ギルドに寄った後にそのまま復興の手伝いをするよ。2~3日はこっちに居るから、もろもろが終ったら声を掛けてくれ。俺が送って行く。」

「お父様!!」

「・・・・・。そうだな。お前には是非このままこの街で私の代わりをと思っていたが、相談役が是非にと言う話だ。行って、沢山学んできなさい。」

「はいっ!!」


その後ゴルドンさん達はこれからの話し合いの為に立ち去って行った。もちろんアニス嬢もシルの元に行くまで父親の傍で少しでも知識を集めるらしい。自分のやりたい事をあの歳で見つけられるのは良い事だ。是非頑張ってくれ。


「あのぉ~ルドさん?」

「ん?どうしたリダ?そう言えば皆はどこ行った?」

「それなんですが・・・・。」


そっとリダが指さした先は俺がバイクを止めた所だった。そして、その場所は今とても眩しい光りに包まれているぅ!?


「えっ?ちょっ!?何が起こった!!」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る