第321話

ヒュマニアの後継者問題に巻き込まれたアジス君(偽名)はどうやらシルに助けて貰うつもりらしい。うーん、どうすっぺ?


「ちょっと聞きたいんだが良いか?」

「なんでしょう?」

「君はヒュマニアではどういう立場の人間になる?いや、街の代表の子供ってのは知ってるんだが、それ以外の事を全く知ら無くてな。」

「それでしたら私がお話致しましょう。」


まぁ執事君が出て来るわなぁ。変な事を喋らない様にかなり気を使っているみたいだしな。


「アジス様は街長の3番目の御子息となります。ドラニア地方にある魔法学園に通っておられたのですが、この度の後継者問題の報告を受けて御実家に戻られる最中になります。」

「3番目って事は後2人、上に兄弟が居ると?」

「1番上に兄君であるホーク様、2番目には姉君であるプリン様、そしてアジス様の3兄妹となります。今回騒動を起こされたのはホーク様とプリン様にございます。」


どちらが後を継ぐのかで問題になったのか?こういう時って長男が継ぐもんだよな?それ元別に問題でも起こったか?しかし開発さんよ、名前どうにかならなかったのかい?完全に名前がモブのそれやん。


「騒動の原因はなんなん?」

「学園に通われているのがアジス様だけ、という所でお察し頂けるかと・・・・。」

「正当な後継者はアジスって訳だな。でもそれに納得のいっていない2人が暴動を起こしたと。」

「左様に御座います。お2人にも良い家との縁談を組んでおりましたが、全く納得されていなかったみたいでして・・・。」

「その兄妹2人の評判はどうなんだ?為政者としてやっていけるなら譲っても良いんじゃないか?」

「・・・・家臣としてこう言わざる終えないのは恥ずかしい限りなのですが、ホーク様は傲慢で人の事を、特に街に住む市民の事を家畜としか見ていません。プリン様は自身が贅沢をする為に他は苦しんでも良い、というお考えの方です・・・・。」

「そらあかんな。」

「完全にダメ人間ですね。」

「そんな人トップにしたら駄目だよー?」

「(((uдu*)ゥンゥン」

「我が兄弟ながら大変お恥ずかしい・・・。」


アジス君がまた落ち込んでしまった。そのまま行くと地面に埋まるんじゃないか?まぁここは空の上だからその前に堕ちるか。


そんな冗談は置いといて兄妹の方は絵に描いたようなクズな訳ね。で、その2人を傀儡にして私腹を肥やそうとしている奴がバックに着いてると。うわぁ面倒臭い!!俺そう言うの考えるの苦手なんだよな!!


「それでアジス君はどうしたい?ヒュマニアに戻って。」

「・・・・。このペンタント、父上が留学する際に持たせてくれたんです。」


胸のポケットから取り出したのは綺麗な銀細工のペンダントだった。青と銀が描いている紋章はヒュマニアの家紋かな?城と街と空が描かれている。


「これがヒュマニアを継ぐ者の証だと、僕に沢山の事を見て、一杯学んで、何が人々の為になるかを勉強して来なさいって・・・・。」


ずいぶん立派なお父さんみたいだなぁ。まぁお父さんが立派でも子育てに失敗すればこういう騒動が起こるんだけど。逆か、2人で失敗したからアジス君がまともに育った訳だな。


「でも兄上達の所為で今、ヒュマニアの民は苦しんでいます。私は・・・・・苦しんでいる民を救いたいです。民無くして統治者にはなれません。兄上達のこの度の行いは多くの民草に苦境を強いる行為、決して許される事ではありません。私は兄上達を止めたい!!」


うむ、しっかりと魂の籠った言葉だな。あと気を付けないと地が出てるぞアジス君。私って言っちゃってるし。後ろの2人もバレないかヒヤヒヤしてるし。


まぁそう言う事なら仕方ないかな?俺達もクランランクを上げるっている打算がある訳だし、ちょっとくらい融通利かせても・・・な?


「うっし解った。ならおじさんが手を貸してやろう。」

「うちらもや!」

「お手伝いします!!」

「有難い申し出ですが、まずは相談役に今回の件でお知恵を拝借しないと・・・・。」

「そこら辺はすでにクリア済みだ、首都に着いたら任せてくれていい。まぁちょっとした試験は在るだろうが・・・。今の気持ちを素直に伝えたら大丈夫だろ。」

「パパに話をした時点でフリーパスだよ!!良かったねアジス君!!」

「( ´∀`)bグッ!」

「えっ?あのっ?えっ?」


おうおう、アジス君が突然の事でオタオタしておられるぞ!!その仕草が完全に女の子なんだが良いのかい?まぁリダ達もこれが見たかったんだろうなぁ。まったく可愛い子に意地悪するんじゃないよ!!


「言ってなかったな、俺は現国王の相談役シルの兄貴だ。」

「はっ!?相談役の兄君ですと!?そんな話聞いた事は・・・。」

「諸事情で亜空に帰ってたからな。シルも帰って来るか分からないから話をしてなかったんだろ。まぁそう言う事だから任せてくれ、首都に着いたらすぐに会えるようにしてやる。」

「証拠は!証拠は在るのですか!!」

「ほれ。」

「ほっ本物・・・・。」


俺のステータス画面に燦然と輝く『ルバート家の長男』の称号。それを見て騒いでいたブラド君が黙った。まぁ相談役に話をするのに家名を知らないって事は無いわな。他の称号を見て固まっている気がするが・・・・気にしないでおこう。さてと、ルゼダにスピークバード借りて先にシルに伝言送っておくか。


「あっそうだパパ!!えっとね・・・・。」

「・・・・。そうか、ありがとな。一緒に伝えとく。」

「うん!!」


ウィンドルはほどなくして城塞首都に到着した。俺達は地下ドッグに入る前に降ろして貰い、すぐにシルの住居である霊廟に向かう。先に連絡を送って待っていると返答が在ったからな、到着したらすぐに話し合いが出来るだろ。


「ここがシル相談役の住居・・・・。」

「ルドさんの妹さん凄すぎひん?」

「街の一等地じゃないですかここ!!ここに入ろうとしたらすぐに追い返されるってSNSにも書いてあったのに!」

「あんまり言い触らすなよ?シルは穏やかに過ごしたいみたいだからな。それに騒がしくしてるとここに眠っている人達が起きて報復に来るかもしれないから。」

「恩を仇で返すような事はしません。」


俺がシルの兄貴だと知ってからずっと考え事をしていたアジス君は、覚悟が決まったのかキリっとした表情をしている。うんうん、しっかりとその覚悟を知るに示してくれたまえ。


「お帰りなさいませルド様。其方が?」

「ただいまファラン。こちらがヒュマニアの次期後継者候補のアジス君とその御付きの人達だ。」

「アジスです。相談役にはお忙しい中時間を取って頂き感謝の言葉もありません。」

「アジス様の執事でブラドと申します。私達の為に時間を取って頂き感謝致します。」

「同じくアジス様のメイドであるシーンと申します。この度はお手を煩わせて申し訳ありません。」

「シル様の専属メイドのファランと申します。主よりあなた方の案内を申し付けられました。それよりも・・・・。」


ファランがどこかに目配せをして頷くと、3人を囲う様に兵士達が現れた。あー、もう始まってる感じ?


「なっ!?これは一体!!」

「ルド様!!貴方は私達を騙して!!」

「黙りなさい!!」


即座に戦闘態勢に入るシーンさんと、慌てるアジス君とかばうように立つブラド君。まぁこんな状況になれば俺が騙したと思うだろうなぁ。だけど違うんだろファラン?


「主は国王の相談役を務める高貴なお方!!その御方に謁見しようとする者が身分を、ましてや名も性別も詐称しようとは片腹痛い!!そのような者達をこの霊廟に入れる訳には行きません!!恥を知れ!!」

「っ!?」


完全に目上の人に会うってんだから、偽証して近づくのは悪手だよなぁ。誠意に欠ける上に暗殺を目論んでいる!!何て言われても文句言えない訳だわ。そこら辺どうなんだ?って聞いてる訳だねこれは。


「・・・・ご無礼をいたしました。」

「アジス様!!」

「ここまで来て私達を兄上達に引き渡すならすぐ行動に移していたでしょう。ですが兵士が周りを囲むだけで手を出してこない。これは最後のチャンス、そう言う事ですね?」


まぁ最初の関門で躓くとは思わなかったけどな。普通に自己紹介すると思ったら偽名を言うんだもん。そりゃ俺達が一緒に居るから正体ばれたくないってのは解るが、相談役の兄貴の仲間が罠に嵌める様な事をするわけないじゃん。シルの沽券にも関わるし、そんなことしたら俺が国から追われちまうしな。


俺が頷いて返すと、アジス君はおもむろに指に嵌めていた指輪を外し始めた。そして、指輪が完全に指から抜けると、その姿は光りの中に消える。


次に現れたのは、ロングの髪に女性用の制服を着たアジス君、もといヒュマニアの次期後継者の女の子の姿だった。髪の色や目の色まで変わってら、両方共綺麗な青色だわ。


「私はヒュマニア・リ・アニス。ヒュマニアの次期街長です。シル相談役に謁見をお願いいたします。」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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