第313話
別の街に行く。驚く程簡単で“難しい”ルゼダの言葉に固まる他の面々。いやぁ、そういう反応になるよね?
「ルゼダ?あえて聞くけど・・・・別の街って行けたっけ?」
「まだ他の街に行ったという報告は在りませんわ。」
公式SNSにも他の街に着いた!!何て言う報告は今だに上がっていない。まぁ最初の街である城塞首都でやる事が一杯あるからというのもあるが、他の街に行くための条件がまったく解っていないからというのが本当に理由だ。
別の地方に行く商隊の護衛クエストが在っただろうって?クエスト内容をよく読んで欲しい。戦闘が出来る人という記載が在るだろ?その戦闘が出来る人ってのは冒険者ランクがCになった人と言う意味が在るんだとさ。つまりC以下の人は戦闘員とは見なされないらしく、問答無用で追い返されるらしい。そしてその冒険者ランクCになる為には試験が在るとか。内容は教えて貰えなかったが相当厳しいという話だった。
「ルゼダちゃん?それじゃあどうやって他の街に行くの?」
「それはもちろん、自力で辿り着くんですわ!!」
冒険者ランクをCに上げるには試験を受けないと行けない。けど試験はすぐに受けられるような物じゃなく、なんとイベント後にしか行われていなかった。
じゃあどうするか?と言えば、自分達の足で向かえば良いじゃない!!となる訳だ。まぁ他の旅人達が同じ事を考えていない訳じゃなく・・・・。
「道中に旅人だけを襲うボスが居るという話ですわ。」
「つまり詰んどるっちゅうことやないか!!」
「そこは俺の人脈を使うんだよ。」
「お兄さんの人脈ですか?」
「それほんまに大丈夫なんやろなぁ?」
大丈夫大丈夫、安心しなさい。性能は折り紙付きだから。まぁちょっと運転が荒いかもとか、道中襲撃が在るかも?とか心配は多いけどな。
「それでルドさんの人脈?を使って別の街に行くと。その人とは連絡取れたんですか?」
「おう、向こうもクランランクを上げる為に別の街に行くってんで一緒に乗せて貰う事になったぞ。今迎えに来てくれてるはずだ。」
本当にタイミングが良かった。向こうも最近クランを作って似たような状態に陥っていたらしく、ルゼダの提案にかなり乗り気だったからなぁ。
ピロン♪
おっと、噂をすれば向こうさんからのチャットだ。
【今冒険者ギルドに到着した。すぐに来れるか?】
【おう、メンバーに説明終った所だ。すぐに行く。】
「お迎えが来たみたいだ。皆外に出るぞー。」
俺は立ち上がって冒険者ギルドの外に向かって歩き始めた。後に続く全員が本当にそんな方法が在るのか?何て懐疑的な目で見て来る。だが外に繋がるスイングドアの向こうで旅人や住人が騒いでいるのを見て、何人かはその方法に思い至った様だ。
「ルドさんもしかして人脈って!?」
「あの騒動確かにルドさんの関わってましたね。」
「私も聞いた時驚きましたわ。」
「えっ?本当にこれに乗るん?まじ?」
「お兄さんって凄い人だったんですねぇ・・・。」
「シアあれに乗るの久しぶりだよ!!」
「( ・´-・`)」
「そうだな、アイギスも手伝ってくれたもんな。」
ゴウンッゴウンッゴウンッ
ギルドの外は何かが日の光りを遮って深い影が出来ていた。そして、他の人達と同じようにメンバー全員が頭上を見上げる。そこには、駆動音を響かせながら、白い塗装と青いラインが入った飛行戦艦が浮かんでいた。
「おーいルド!!迎えに来たぞー!!」
「ありがとうアイン!!早速乗せてくれ!!」
「解った!!お前達梯子を降ろせ!!」
「「「「「「「アイアイサーー!!」」」」」」」
魔道人形とは違う、旅人達の姿が船内に見えた。あれがアインのクランメンバーかな?どう見たって騎士団装備ではない、海賊の下っ端の様な服装の人達が俺達に向かって縄梯子を降ろして来た。俺はいち早くそれに捕まり、唖然としている他の面々に声を掛ける。
「早く捕まれ。じゃないと置いてかれるぞ?」
「はっ!?せやった!詳しい事は後で聞くとしてはよ乗らな!!」
「うわっ!!ギルドから人が押し寄せて来てる!!」
「乗るなら早くしてくれ!!ルドの知り合い以外乗せたくないぞ!!」
「話は乗り込んでからだ、急げ!!」
旅人の中にはもちろん飛行船の存在を知っている人も居る。そして俺達がやろうとしている事を察する奴も。そういう奴等が自分達も便乗しようと降ろされている縄梯子に殺到しようとした。だけど俺達の目に前に垂れ下がっていた縄梯子は、全員が捕まるとすぐにウィンドルに回収され、俺達以外が乗る事は出来なかった。
「さて、騒ぎになる前にまずはここを離れるか。お前達微速前進!!首都を離れたら目的地を決めるぞ!!」
「「「「「アイアイサー!!」」」」」」
「もう手遅れだと思いますわ・・・。」
「うわぁ、下で旅人達が騒いでますよ。これどうするんですかルドさん。」
「知らん!!」
「パパが悪い訳じゃないもんね。」
「(´―`*)ウンウン」
俺も乗せろ!!お前達だけずるいぞ!!何て声が聞こえるが知らん!!悔しかったら自分達で飛行船を作るなり、どっかで拾って来るなりすればいいんじゃないか?まぁ唯一その可能性のある場所は今守備隊で調査中で立ち入り禁止だけど。
「見てみてお姉ちゃん、私達飛んでる!!」
「すごいな飛行船!景色もめっちゃ綺麗や・・・・。」
「お気に召して頂けたようで何よりです。」
「おうキニス。元気だったか?」
「ヾ(*´∀`*)ノ」
「ルド様もアイギス様も、その節はありがとうございました。私も姉妹達も元気にやっていますよ。他の方々は初めまして、私はマジックドールのキニスと申します。艦長であるアイン様の部下をやっています。」
降り立った甲板から下を見ていた俺達の傍に、アインの持ち込んだクエストで修理したキニスが来た。キニスは俺達に挨拶をした後、深々と頭を下げて自己紹介をしている。
「ほえー、マジックドールですか。綺麗な人ですね。」
「なぜそこで脇を抓るんだいリダさんや?」
「失礼ですが、マジックドールって何ですか?」
「マジックドールとは、簡単に言えばアイギス様に似た魔力で動く人形の事です。」
「魔道人形。空神様に上げた空中大陸覚えてるか?そこで独自に発展した文化から生まれたらしいぞ?」
「いつか私はその大陸に行くことを夢見ているのだ!!」
俺達の会話に部下に指示を出していたアインが割り込んでくる。だがその格好は前に見た守備隊の恰好ではなく、昔のアニメなんかで見る宇宙戦艦の船長みたいな服を着ていた。
「ようこそ飛行戦艦ウィンドルへ!!ルドの友達なら私達は大歓迎だ!!」
「大分キャラ変わったよなぁアイン。守備隊は止めたのか?」
「止めてないぞ?私達は城塞首都所属の独立航空部隊扱いだ。まぁ部隊と言っても飛行船はウィンドル一隻しかないけどな!!」
はっはっはっはと高らかに笑うアイン。それを見て手下の恰好をしている部下たちがヒソヒソと陰で話をしていた。
「リアルと大分印象違うよな。」
「多分あっちが素だと思うぞ俺。」
「でもぜったいこっちの方が良いと思うんだ私。なんか伸び伸びしてるっていうか、楽しそう。」
「私もそう思った!今の隊長の方が私は好きだなぁ。」
「お前達!!頼んだ仕事は終わったのか!!」
「「「「はい今します!!」」」」
話をしていた部下を叱り仕事に戻らせるアイン。どことなく堂に入ってると言うか、槍慣れている雰囲気だな。リアルでも責任ある立場なんだろうか?
「こほんっ!それで?これからどこに向かうんだ?と言ってもヒュマニアかドラニアの2か所しか情報は無いが。」
「どうするサブマスター?」
「ここはヒュマニアに向かいますわ。」
「ルゼダと言ったか?なぜだか聞いても良いか?」
「ドラニアは元ドラゴニア公国ですからクエストの難易度が高い事が予想されますわ。逆に王都であったヒュマニアでしたら、今の私達でもクリアできるクエストが在ると思いますの。」
「あー、確かにドラゴンが治めている場所のクランクエスト何て高レベル当たり前なイメージだな。」
「なるほど、ならヒュマニアに向かうか。」
「乗せて貰って何だが、場所は解ってるのか?」
「大丈夫だ!!私にはキニスが着いているからな!!」
「ここら辺の地図でしたら、私達マジックドールの記憶領域に記録されていました。」
さすがだ、ルシファーに乗って活躍していたのは伊達じゃないって事ね。これで道に迷わずに済む。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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