第314話

あの後俺達はウィンドルでヒュマニアに向かって移動を始めた。ルリとベニは初めて乗る飛行戦艦に大はしゃぎで、アインのクランメンバー(自分達の事をシタッパーズと呼んでいた。それで良いのか君達?)に艦内を案内されている。


クリンとルゼダもこの戦艦が元ルシファーだと知って、変化の在った場所を調べるとそれぞれで調査に艦内を自由に動いている。俺?俺はシアとアイギスと一緒にブリッジ(操縦室だとカッコ良くないからとアインに名前を変えられた。)に居る。2人が見たいって言うからさ、リダと一緒に見学に来たって訳。まぁ俺とアイギスは1回見てるんだけどな。


「光が在ると印象変わるなぁ。」

「ルドさんが見たのは地下ドッグでですよね?そんなに違います?」

「多分人の手が入って動いてるからだろうな。不気味な雰囲気だったのが全く感じなくなってるな。」


最初に見た時は真っ暗だったもんなぁ。某宇宙船のホラゲみたいな雰囲気バリバリだったし、今の方がALO時代に見ていた操縦室って感じだ。


「パパ見てー!シアこれも動かせるよ!」

「やっ止めてくだせぇ!あっそっちの計器は弄っちゃダメ!!あぁ!?おれっち様にカスタマイズしたレーダーがっ!?これじゃあ初期設定からやり直しに・・・・・。」

「こっここは絶対に守ります!!火器管制なんて子供に触らせたら・・・・。」

「ヾ(*´∀`*)ノ」

「あっいつの間に!!ひぃぃぃぃっ!!そこ弄っちゃダメぇぇぇぇぇっ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


艦首展開砲チャージ・・・・・完了。艦首主砲発射!!


ドシューーーーーッ!!


うん、なんか家の娘たちがごめんね?窓の外を綺麗な光が走って行ったり、ホログラムの様に宙に浮いていた丸いレーダーが突然消えたりしたけど、君達なら大丈夫!なんせこのウィンドルの優秀なクルーだもん!何とかなるよ!ブリッジクルーは特に優秀だってアインが言ってたし。(目逸らし)


バンッ!


「なんだ敵か!?」

「あーすまんアイン。家の子達がはしゃいでるだけだ。」

「御免なさい。シアちゃんもアイギスちゃんもイタズラは止めて戻って来なさい!!」

「はーい、ごめんなさい。」

「(m´・ω・`)m 」


主砲なんか撃ったもんだからアインが慌てた様子でブリッジに駆けこんで来た。でも安心してくれ本当に何でも無いんだよ?悪戯っ子が居ただけでさ。


リダに呼ばれた2人は、傍で呆然としているクルーに謝ってからこっちに戻って来た。うん、悪いと思ったらちゃんと謝れるのは偉いぞー。


「ぬぉぉぉぉぉ急いで復旧しやすよ!今襲われたらまずい!!」

「あぁぁぁぁ兵装に回すエネルギーが底を突いてる・・・・。機関員緊急用の魔石使って補充をお願いします・・・・。」


うん、2人が悪戯した所を担当しているクルーからかなり恨みの籠った視線を向けられている。ここは2人の保護者としてしっかりと艦長に謝っておこう。


「・・・・・。本当にすまん。もし壊れたままなら修理代はこっちで持つよ。」

「いやいいさ、子供のした事だ気にしていない。」

「悪戯じゃないんだよ?修理したんだよ?」

「(´―`*)ウンウン」

「「「へっ?」」」


シアが修理したって言ってるがどういう事だ?ウィンドルには特に故障個所があったとかは聞いてないが?マジックドール達も居るんだから万全な状態じゃないのか?


「あぁっ!!レーダーの感知範囲が広がってる!?今まで何をやっても広がらなかったのに一体全体どうして!?」

「そんなっ、原因不明の不具合で安定してなかった兵装へのエネルギー供給が高水準で安定してる?さっき底を突いたはずのエネルギーがもう半分まで回復してる何て・・・、一体どうして!?」

「えっとねー。レーダーに変な機能が一杯あったから必要な分だけにして出力を調整したの。あとはエネルギー供給パイプにいらないものが溜まってたから、主砲を使って一杯エネルギーを流してパイプの中を綺麗にしたの。あっ、エネルギーパイプは後でしっかり点検してね?多分どこかが壊れて漏洩していると思うから。」

「「・・・・・・・。」」

「( ・´-・`)」

「うん、2人共問題点に気が付いて対処しようとしたのは偉い。だけどやる前に周りの人に相談しないと心配するだろ?次からはちゃんとやって良いか聞いてからにしなさい。じゃないとあぁなるから。」

「無駄・・・・無駄な機能が一杯・・・・。俺っちあれがデフォルトだと思って・・・・。はっ!!レーダーの動作チェックとバックアップを取っとかないと!!」

「エネルギー供給パイプに不具合何て気が付かなかった・・・・・。はっ!!すぐに点検させなきゃ!!」


シアの言葉に燃え尽きたように真っ白になった観測手と火器管制官。かと思いきやすぐに自分のやる事に気が付いたのか、それぞれに仕事に戻って行った。さすがアインが優秀だって言うだけあるな。その切り替えの早さと手際は凄まじかった。


「ふむ、艦の責任者として礼を言わないとな。不具合を治してくれてありがとう。マジックドール達にも点検を頼んでいたんだが・・・。恐らく彼女達でも解らないような故障だったんだろう。おかげで助かったよ。」

「どういたしましてー。」

「(`・ω・´)ゞ」


シアとアイギスは空中要塞なんてもっと大きな物を動かしていたしなぁ。これくらいの船の不具合ならすぐに対処できるか。2人をねぎらう意味も込めて頭を撫でてやろう。


なでなで

「えへへ。」

「(∀`*ゞ)」


俺が2人の頭を黙って撫でているとレーダーを確認していた鼠の男性が、アインに向かって声を掛けた。


「艦長!そろそろ例のポイントです。どうしやす?」

「うむ、このまま微速前進だ。頼むぞ操舵手。」

「アイアム!出力そのまま~、微速前進!」

「それじゃあ俺達は念のために甲板に出とくな。」

「あぁ、もしもの時は頼む。」

「ルシファー、じゃなかったウィンドルの火力なら倒せそうですけどね。」

「油断は禁物だぞリダ?なんせ挑戦した旅人は誰も倒せなかったって話だからな。」


そう、例のポイントとは旅人だけに襲い掛かる魔物が出現するポイントの事だ。この魔物の所為で城塞首都から別の街に行くことが出来なくなっているとか。


「たぶんエリアボス的な奴だろうなぁ。」

「エリアボスですか?」

「おう、ALOの時も居たじゃないか。草原にデカい兎がな。」

「あぁあれですか。ALO2だとそのボスを倒さないと先に進めない感じですね。」

「多分な。」


懐かしいなぁ。攻撃力が無かったからヘイトが移動しなくて、MPK(モンスタープレイヤーキル)を狙った赤落ちを空高く蹴り飛ばしていたジャイアントラビット。彼は元気にしているだろうか?


『報告!!レーダーに感あり!!敵数1!うっひょーこのレーダーすげぇ!!バッチリ相手の姿が見えっちまうぜ!リアルに欲しい!!』

『馬鹿!!先に敵の対処でしょ!!主砲以外の全砲門開きます。各員観測手からのデータを元に攻撃をお願いします!!』


おっと甲板で懐かしんでいたらどうやら旅人を葬っている敵さんを見つけたらしい。こりゃウィンドルだけで片が付くな。のんびりしてよ。


「パパ、それフラグだと思うよ?」

「(´-∀-`;)」

「私ルドさんの頭に赤い旗が立つ瞬間が見えました・・・・。」

「えっ!?うそマジで!?旗立ってんの!?」


俺達がわちゃわちゃしている間にも状況は進む。状況が解りやすいように、ブリッジの中の声はあえてスピーカーで流しているみたいだな。


『こりゃいいや、敵さんまだこっちに気が付いてねぇ!射程圏内まで5・4・3・2・・・はぁっ!?』

『どうした!報告しろ!!』

『奴さんこちらに気付きやした!でもこの速度はおかしい速すぎる!!敵さん猛スピードでこちらに向かって来やす!!』

『聞こえたか砲撃手!即座に攻撃開始!敵を近づけるな!!』


ダダダダダダダダッ!!


ウィンドルに備え付けられた武装が火を噴く。俺達には見えないが、その攻撃は眼下に在る森の中に吸い込まれて行った。いつの間にか森の上空まで来てたんだなぁ。


こちらの攻撃は森の木々を吹き飛ばし、土煙を立ち昇らせて森の姿を隠してしまった。


『やったか!?』

『艦長それ言っちゃダメな奴ですよ!!』

『・・・・・レーダーに敵影!野郎空を飛んでやがる!甲板に来るぞ!!』


ズドーンッ!!


ブリッジの報告から即座に戦闘態勢を取る俺達。すると、土煙の中から黒い影がバッと飛び出して甲板に音を立てながら着陸した。


その姿は巨体だった。立派な後ろ足に少し小さい手、白いモフモフの体毛に鳥の羽の様な耳。そして赤い目にヒクヒクと動く口と鼻。そう、そこには俺と同じ大きさの兎が姿を現していた。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る