クラン設立!イベント参加に向けて!!
第309話
その日、東京にあるとあるビルの一室にて1人の女性が上官に呼び出されていた。大きな窓の前にあるアンティークの机と皮張りの椅子に座る男性。女性はその男性の前で直立不動で立っていた。
「狩魔君。君が呼び出された理由は解るね?」
「いえ、不祥事を起こし謹慎していた私には分かりかねます。」
呼び出された女性と言うのはALOの事件に深く関わり、最後には自身の上司の不正や他国との関係を暴露して逮捕のきっかけを作った狩魔玲子だった。
「そうか。私は遠回しの言い方が嫌いでね。担当直入に言おう。君も関わりの在る電子兵計画を再始動する事になったのだよ。そこで君には電子兵計画のカモフラージュである部隊、情報特務部隊の長官に着いて貰いたい。例の事件で部隊創設と関連する装備の研究は凍結されているが、まぁそこは私のバッグが何とかしてくれる。どうだ?謹慎になり、出世の道も立たれた君にはいい話だろう?」
「お断りします。」
「そうか。なら明日から・・・・。なんだって?」
悩むそぶりも見せずに即答する狩魔に目を白黒させる軍のお偉いさん。しかし狩魔は微塵も揺るがずに言い放つ。
「お断りします。と申し上げました。」
「君は自分が何を言っているのか解っているのか?あまつさえ1年前の事件で軍を去る所を拾ってやった恩を忘れたと?それにこの話を聞いた時点で君も責任を問われるのだぞ?なんせ前任の責任者が君なのだから。」
「軍に残る事を私は望んでいませんでしたので。それにあなたに拾われたわけではありません。」
「軍の上層部に君達が残るように働きかけた一人だぞ私は!!君は本当に自分の立場を解っていないようだね。私のバッグの力を使い、君が電子兵計画を動かしているとリークしても良いんだよ?」
「ふんっ。」
溜息を吐きながら偉そうに椅子に踏ん反り返る男を見て、狩魔は鼻で笑う。その事に見る間に顔に血が上る上官。
「なんだその態度は!!」
「お言葉ですが西後大尉。やっと尻尾を現したなこの下種め。入れ!!」
バタンッ!!ドタドタドタ!!
「なっ!!何だ貴様等は!!」
「先ほどあなたが言った元電子兵候補者ですよ。」
「セカンドライフ社のお陰で良い義肢が手に入りましてね。原隊復帰したんですわ。」
「あんたで最後だ。おとなしく捕まりな!!」
「西後浅利!!現在軍の機密事項であり、再稼働禁止とされた電子兵計画を動かそうとした罪で逮捕する!!あと残念だったな、お前さんのバッグに着いていた国家は手を引くとさ。」
「くそっ!!囮だったか!!」
義肢や義眼を嵌めた隊員に連れ去られる西後大尉。それを見送りながら狩魔は安堵の溜息を吐く。
「隊長。これで終わりですね。」
「あぁ、やっと終わった。まさか1年以上掛かるとは・・・・。」
「仕方ありやせんよ。奴等巧妙に潜り込んで隠れてやしたから。一部の奴らは国籍偽造までして潜り込んでたんで、時間はそれなりに掛かりますわ。」
狩魔達はこの1年。表向きは謹慎しているとしながらもずっとALO事件に関わっていた者達を追っていた。それと言うのも、国家防衛を担う防衛用AI。『ツインズ』を生み出す計画に不正や賄賂、果ては他国による内部干渉まで受け、AIが無防備になるプログラムまで仕込まれていたのだ。1人2人捕まえるだけで終わる話ではない。複数の関与が疑われていた。
そこで白羽の矢が立ったのが最後には国の為に上官を裏切った狩魔達だった。自分達の犯した罪は自分達で償うと強く懇願した彼女達は監視付きの秘匿部隊となり。AI達の協力とセカンドライフ社の開発陣によって生み出された(という名のロマンを実現したかった開発陣の暴走によって生まれた。)特殊兵装を与えられ、偽の情報を流して狩魔をおとりとしやっと最後の1人を逮捕したのだった。
「それで?どうなんです?」
「どうとは何だ?」
「またまたぁ~。部隊の皆は知ってますぜ?隊長がALO2をやってるって事。」
「なっ!?どうしてそれが!!」
「だって俺達もやってますから。」
「セカンドライフ社も太っ腹ですやね。電子兵計画に関わって迷惑掛けたってのに、ぜひ遊んでくださいってEEDと一緒に送って来るんですから。」
黒(父神)から電子兵計画の話を聞いたセカンドライフ社の社長二条礼二は、謹慎になって暇だろうからと全員にEEDとソフトを送っていた。まぁ表向き謹慎なだけでこの1年バリバリに活動していたのだが、それでもせっかく送られてきた物だからと隊員たちは非番の日に遊んでいた。それはもちろん狩魔も例外ではなかった。
「俺達のEEDはちょっと特殊ですもんね。」
「契約者の名前が見える機能付き。迷惑掛けたお詫びに犯罪者を取り締まれって無言で言われてる気がしやすやね。」
「あら。それは普通に遊んでいてもし見つけたら、って二条社長からのメッセージ付きだったでしょ?まぁ不正アクセスに偽装IDで何人か捕まえたけど。」
狩魔たちが居る部屋に1人の女性が入って来る。右足が義足の彼女は、2人に詰め寄られて困惑している狩魔の前まで歩き敬礼をした。
「狩魔“情匿隊”(国家情報局所属、秘匿特選部隊)隊長!容疑者の移送終わりました!!」
「うむ、ご苦労だった。我々はこれより別命あるまで待機となる。撤収するぞ。」
「待機時間を使って思う存分ALO2やるんですね?解ります解ります。楽しいですもんねぇ。」
「貴様もか斉藤監査官・・・。まったく我々の監視が任務のはずがどうしてそのように協力的になったのか・・・・。」
「日頃から皆さんを見ていて不正何てする人じゃないって解ってますから。それで、任務も終わりましたしALO2で皆で遊びません?」
この斉藤と呼ばれた女性が秘匿部隊の監査官である。だが彼女の証言の通り、現在の狩魔の部隊で不正や悪事を働く者は居ない。全員が罪を償う為に休みを返上する勢いで身を粉にしてこの1年動いていたのだ。健康管理の為に休ませたが、その心意気を彼女は認めていた。
「そうだな。我々に与えられた任務も終わった。日頃の訓練は手を抜けないが、その後でなら皆で遊ぶか。」
「よっしゃ!!隊長のキャラどんな奴です?俺のは狼人種で守備隊やってます!」
「私は種人種で魔法使いです。」
「おれっちは鼠人種でスカウトやってまさぁ。」
「「鼠人種!?」」
ワイワイとALO2の話題で盛り上がる隊員達。その姿に苦笑を浮かべながらも、自分の作ったキャラクターをこれからどう強化していこうかと考えている自分に気が付き、自嘲気味に笑みを深める狩魔。
「へぇ~。そんな獣人種が。」
「鳥人種を選んだ奴も居るよな?俺達が集まったらALO2でも活躍できるんじゃないか?」
「まさか全員やってるなんてね。任務が終るまで皆秘密にしてる何て酷いわ。」
「貴方だって秘密にしてたじゃない。そう言えば隊長のキャラはどんなのです?」
「ん?私か?機人種という種族でな。そうそう、この前面白い出会いがあったんだ。街中でアンドロイドの友魔が攫われそうになっていてな。」
現場を引き上げ、それぞれが変装して帰路に就く。その話題がALO2である事もあり、一般の人達から見ればゲーム仲間がオフ会を開いていると勘違いする光景だった。
「飛行戦艦!?まだ在ったんだ!!」
「隊長是非乗せてくだせぇ!!むしろ俺達をクルーに!!」
「あっずるいぞお前!!抜け駆けするなよ!!」
「私も乗りたいです!!」
「まぁ落ち着け。全員乗せてやるから。」
「本当ですね隊長!!」
「言質は取りましたからね!!」
「今更嘘ってのは無しですぜ!!」
「あぁ、約束する。」
とある旅人の協力を得て手に入れた飛行戦艦の話で盛り上がる面々。すると、斉藤がふとこんな提案をした。
「ねぇ隊長。私達でギルドを作りませんか?」
「うん?ギルドか?今更作る必要もあるまい?」
「隊長、昨日のイベント後の告知。見てないんですかい?」
「俺達仕事でイベント参加出来なかったからなぁ。見てない奴多いんじゃないか?」
「何か在るのか?」
「1週間後、クラン対抗イベントが在るんですよ。そこに出てみませんか?」
それは、次に行われるイベント告知の話だった。
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