第263話

空中で動きを止めるシチート師匠であろう女性と、攻撃しようとしていたリダが地面に降りる。


「あー、確認何だが本当にシチート師匠なのか?」

「えぇっ!!えぇっ!!貴方のシチートはここに居ますよ!!ルドきゅんの帰りをずっと待ってたんだから!!」


俺の問いかけに頬に手を当てて、顔を真っ赤に上気させながら答える女性。ログにもしっかりと出てるし、本当に間違いないのか?よし、ならいくつか質問してみよう。


「じゃあ師匠の流派は?」

「守護双璧流よ。忘れちゃったの?」

「盾どこやった?」

「ずっと洞窟に居たら朽ちてしまったわ。」

「なんで60年も経ってるのに若いままなんだ?それに前よりもその・・・。」

「若さの秘訣はルドきゅんへの愛よ!!愛ゆえにルドきゅんに相応しくなろうと体も成長させたの!!どう?興奮する?」

「ノーコメントで。」

「ふふふ、ルドきゅんが嘗め回す様に私の肢体を見つめているわ。ルドきゅんは私の虜ね!!」

「まぁ確かに美人だとは思うが・・・。本当にシチート師匠なんだよな?」

「ルドきゅんがそこまで私の事を疑ってるなら初めて体を合わせたあの夜の事を「シャラップ!!ちょっと黙って!!師匠だと認めるから!!」もう、皆に聞かせて上げればいいのに、あの熱い夜の事を♡」


この感じ、確かにシチート師匠だな。ってか最後こんな大勢の前で何を暴露しようとしやがった!!あれは完全に俺が悪いとはいえ、意識が全くない状態だったんだから事故だ事故!!俺の意思じゃねぇ!!


ちなみに、ALO2に変わってからは生年月日を登録する必要がある。そして年齢が満20歳になって居ない場合は年齢制限が自動でONになり、残酷描写や性的描写が緩和されるようになっているぞ!!つまり俺は20歳を超えているから年齢制限が掛かっていない。気を付けないと同じような事故を起こしそうだな・・・・。


「で?師匠が若いのは本当の所どうやったんだ?俺はてっきり師匠は流派を残して亡くなってると思ってたんだがなぁ。行方不明で墓も無かったから2度と会えないと思ってたし。」

「ふふふ、寂しい思いをさせちゃったのね。ごめんなさい。でもその答えはね、私がもう人じゃないからなの。」

「「「人じゃない?」」」

「(・・?)」


いつの間にか俺の横に居たリダにシアと声が被ってしまった。アイギスも首を傾げて?マークを浮かべている。


「あの日、私も城塞都市の防衛をしていたの。そこで空の彼方で消えていくあなたを見た。手を伸ばしても届かない場所で朽ちていくあなたを見て私は深く、それはもう深く絶望したわ。もうこの世の全てがどうでも良くなってしまう程に。そんな時私の元にルバートが訪ねて来たの。ルドきゅんはルバートに手紙を出したでしょう?その手紙を持ってね。私の元に手紙が来なかったのはとても悲しかったけど。」

「あー、それはすまなかった。1通しか送れなかったんだよ。」


文字制限まであったから親父達への言葉を入力したら師匠への言葉入れられなかったんだよな。別に忘れてたわけじゃないぞ?


「その事も聞いたわ。そしてルドきゅんがいつかこの世界に帰って来ると知ったの。だったらやる事は1つじゃない?」

「いつかルドさんが返ってくる時まで生き残る方法を探す・・・・・。」


横で話を聞いていたリダが、師匠のたどり着いた結論を代弁した。


「ふふふ、さすが私の恋敵。まさにその通りよ。私は必死に探したの。いつルドきゅんが戻って来ても良い様に、未来永劫を生きる方法を。いつか自分自身がルドきゅんと再会する為にね。そして長い長い旅の果てにやっと見つけたの。」


その言葉と同時にシチート師匠の体から黒い靄が溢れて、辺りを暗くし始めた。翼も、爪も大きくなり今まで何も無かった頭に角まで生え始めた。


「大陸に封印されていた大罪スキルの1つ。私はそれを見つけてこの体に取り込んだ。今の私は悪魔。【色欲】の悪魔シチートよ。これからあなたの身も心も私の虜にして上げるから覚悟しなさい。良いわねルドきゅん?」


【色欲】の悪魔シチートが現れた。


うん、師匠の雰囲気が変わったとたんにフィールドも薄暗くなり何やらバッチリ戦闘ですぜ!!っていうBGMまで流れ始めた!!完全にレイドボスと化すシチート師匠。でもちょっと待ってくれ。戦闘に入る前にもう一点だけ聞きたいことが在るんだ。


「なぁ師匠?師匠はまだ流派スキル教えられるか?」

「えぇ、流派スキル<守護双璧流>はルドきゅんとの絆ですもの。まだちゃんと教えられるわよ?」


うっし、それなら大丈夫だな。リダ達が戦闘態勢を取る中、俺は懐に手を入れながら師匠の前に歩き出した。そんな俺をみて歓喜の声を上げるシチート師匠と、その言葉を聞いて慌てるリダ。


「あぁ!やっと解ってくれたのね!!ルドきゅんを一番大事に思っているのが誰なのか!!さぁ私の元に来て!!」

「ルドさん!?そう言えばシチートは発情何て状態異常を使ってた・・・・つまりこれは魅了!?気をしっかり持ってくださいルドさん!!」

「いんや?魅了なんてされてないぞ?」

「「あれぇ~~~~?」」


まぁさっきからこんなログは流れてるけどな。


シチートの魅了攻撃。対象ルド

ルドの<状態異常無効>スキルが発動。魅了失敗。


こんなログが延々と流れてる最中ですわ。だから魅了なんてされてない。


「じゃあなんでシチートの傍なんかに!!」

「いやな、一生に一度のお願いが在ってな。これは師匠にしか頼めないんだよ。すまんな。」

「そのお願いって何ですか!!なんで謝るんですか!!もしやあの時本当は2人は愛し合って・・・・・待って!!ルドさん行かないで!!」

「あぁルドきゅん!!私は何時でもウェルカムよ!!その一生に一度のお願いと言うのを聞かせて頂戴!!」


リダの静止の声を聴きながら歩みを止めない俺。シチート師匠は両手を広げて歩いて来る俺を歓迎してくれている。まぁこんな状況じゃ無ければ師匠にお願い何てしないんだけどなぁ・・・。でもしょうがないよなぁ。大事な事だし。


俺は懐から封のされた手紙を出しながら師匠の正面まで近づく。師匠の方も空中から降りて来て俺の前に立った。


「あぁ!!あの手紙はもしかして婚姻届けですか!?そんなルドさん!!結婚するなら私と!!」

「リダお姉ちゃん落ち着こう?パパがそんな事考えてると思うの?」

「(´―`*)ウンウン」

「ふふふ、これでやっと私はルドきゅんと結ばれるのね!!さぁその婚姻届けを私に!!」


何やら後ろが騒がしいし、シチート師匠も興奮して手紙を早く寄越せと手を伸ばしている。俺は手紙を師匠に渡しながら頭を下げた。


「守護双璧流をまた俺に教えてください師匠!!お願いします!!」

「へっ?」

「「「「「「へっ??」」」」」」」

「やっぱりねぇ~。」

「(´・ω・)(・ω・`)ネー」


俺の行動を見守っていたグラスの仲間やリダも俺の言葉を聞いて驚きで固まっている。君達俺が何をお願いすると思ったんだ?


シチート師匠も俺の言葉を確認する様に封筒の中にある“流派推薦書”を見て動きを止めた。


「いや、しょうがないじゃん。盾職の流派は全滅。唯一残ってるのがシチート師匠の守護双璧流しかないんだから。」

「ルドきゅん?前に教えた事はどうなったの?」

「あー、あの事件の時に体を作り直す関係で消滅したんだよなぁ。だから改めて教えて欲しくて。お願いできませんかね師匠?」

「ルドきゅんのお願いならいくらでも聞いちゃう!!これからルドきゅんは私の弟子よ!!」


ピコン♪【色欲】の悪魔シチートはルドの師匠になった。

戦闘終了!!戦闘行為が行われなかったので報酬は無しとなります。


「「「「「「「「「なんじゃそりゃーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」

「はぁ・・・・・はぁ・・・・やっと追いつきましたの・・・・。」

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・今どういう状況?」


ALO2初のレイド戦だと気合を入れていたグラス達が叫び声を上げる中、洞窟からルゼダとクリンが出て来て周りを見回している。俺はと言えば、さらさらと流派推薦書に師匠がサインをした後に腕に絡みつかれて困ってる最中だ。反対側にはリダまでくっ付いてるんだがどうすりゃいいのコレ?腕に柔らかい山の感触と、柔らかな丘の感触が在って戸惑うばかりなんだが?


「ふふふ、師匠命令であんな事やこんな事も・・・。そして困難を乗り越えた2人は最後に結ばれるのよ!」

「させませんからね!!修行の間は私がずっとルドさんの傍に居ます!!絶対に2人きりにはさせません!!」

「邪魔な雌猫!!」

「淫乱サキュバスが!!」

「俺を挟んで喧嘩するの止めてくれない?」


そんなこんなでALO2初のレイド戦は戦闘が始まる前に終わりましたとさ。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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