第264話

初レイドが不発に終わり、流派スキルの問題も正しい情報が知れ渡ったので騒動が落ち着いた。と言う事で師匠を連れて再度シルの元に来た俺達。今日1日で何回この場所に足を運んでいるんだか・・・・。外はやっと夕日に照らされて夜に向かってる途中だな。


シチート師匠は流派を教えて貰う為に街まで連れて来た。道中多くの旅人や男の住人が師匠の美貌に目を奪われ・・・・。師匠が幸せそうに腕を組んでいる俺に嫉妬の視線を向けて来たよ。リダも負けじと反対の手を組んでたから傍から見たらハーレム野郎だな俺。嫉妬の視線は甘んじて受け入れよう・・・・。そんな針の筵の様な状態で霊廟迄来て、今はシルに事情を説明している所だな。


「と言う事で悪魔になったシチート師匠だ。鬼神斧槍流の道場跡地の片方を師匠に融通してくれないか?」

「それは良いんですが・・・。彼女、大丈夫なんですか?その・・・・色々と。」


そう言ったシルの視線は、椅子に座っている俺の膝の上に頭をのせている師匠と、その師匠を俺から引き剥がそうと奮闘するリダに向いていた。


「あー、実害はないと思うぞ?俺以外にはだが。」

「心配いらないわ。色欲の力はルドきゅんにしか使わないから。他の男になんか興味は無いのよ。はぁ~ルドきゅんの匂い・・・・。くんくん。」

「いい加減離れなさいーーーーーー!!ルドさんの膝枕は私の物ですぅぅぅぅぅぅ!!」


俺の足にしがみつきながら匂いを嗅いでいる師匠と、師匠の薄い服を引っ張って引き剥がそうとするリダ。うん、俺の膝は誰のものでもないからな?後リダ気が付いて。師匠の服引っ張るもんだから師匠の山が零れ落ちそうになってるから。男達の目の毒になってるから止めなさい。


「パパ、嫌なら嫌っていうべきだと思うの。このままだと大変な事になるよ?」

「(*´・ω・)(・ω・`*)ネー」

「うーん、これで落ち着くって言うからなぁ。変なセクハラでも無いし、匂いを嗅ぐくらいはな。」


守護双璧流も師匠の話だと進化しているって事だし。何なら旅の間に覚えた新たな技を教えて貰えるって事だからな。その報酬の前払いだと思えばこれくらい・・・・。


「ルドさん、言い難いんですが大分毒されてますよ?」

「普通異性に匂いを嗅がれたら嫌がる物ですわよ?」

「くんくんくん!!はぁーーー!!生き返るーーーー!!」

「はーなーれーろーーーーっ!!」

「本当に大丈夫なのかしら?」


シルに懐疑的な目線で見られながら、俺達は没収された本家鬼神斧槍流の道場がシチート師匠の物になる為の手続きを行った。本家の道場を選んだ理由は、元々あの土地はシチート師匠の物だった事と、建物が似ているからだな。土地は持ち主不明で首都預かりのはずが、汚職貴族が勝手に使う事を許可してたらしい。だから建物付きで元の持ち主に戻ったという訳だ。


その手続きが完了して、あの土地と建物が師匠の物になった時に、俺達の元にログイン時間が迫っていると通知が届いた。


「じゃ、俺達はいったん亜空に戻るよ。明日は道場の掃除と、師匠の生活用品を揃える所からだな。」

「その前にまずはお金を稼がないとですよ?僕達まだクエストは道場の奴しかクリアしてませんし、報酬でお金貰ってませんから。」

「あー、そう言えば所持金0マネだったか。」


師匠もお金は持ってないって言うし、これだけ迷惑を掛けたシルにお願いするっていうのもなぁ。冒険者ギルドでクエスト受ければ稼げるだろうし、明日は金稼ぎからだな。


「お金が出来るまではシチートさんもシルさんの所でお世話になりますの?」

「えぇ、ルドきゅんと離れるつもりは無いわ。あわよくば・・・・ジュルリ。」

「シルさん。シチートがルドさんに悪さしない様に厳重に!!それはもう厳重に監視をお願いします!!」

「・・・・ルド兄様は私の部屋に泊って貰いましょう。あの部屋ならセキュリティはばっちりですから。」

「くっ!!意識の無いルドきゅんに夜這いを掛ける計画が!!」

「そんな事言ってるから信用失うんだぞ師匠?」


そんな訳で俺はシルの部屋のソファでログアウトする事になった。念の為にファランかランスが部屋の前に立ち俺の体を護衛するって話になった。そこまでする必要は・・・・・在るんだよなぁ。前科持ちが居るから。シアとアイギスにも師匠の動向を監視する様にお願いして、俺はログアウトした。


ルド達がログアウトした後・・・・・。


夜になり激動の1日が終った。ソファで横になり、死んだように眠るルドを見てシルは兄が帰って来た事は夢ではないと再確認していた。


「兄様・・・・よくお帰りになりました・・・。」


そっとルドの顔に手を添えるシル。傍から見れば夜這いに見えるかもしれないが、そこに浮かんでいるのは家族の愛情であって、決して異性への好意ではない。


「兄様はこれからどのような冒険をするのでしょうね?」


コンコンコンッ


ルドの寝顔を見ながら、これからいつも騒がしかった兄がどのような騒動に巻き込まれるのかと想像して笑顔を浮かべるシル。そんな彼女の耳に扉をノックする音が聞えた。


「こんな時間に誰かしら?」


相談役であるシルの部屋を直接訪れる者は少ない。ましてやこんな夜更けに来る者等皆無であった。シチートの監視をしているファランか、もしくは緊急の要件を伝えに来た国王の使者を連れたランスか・・・。


「どなた?」

「母上、ランスです。緊急の要件を使者が持ってきました。使者は霊廟の外で待たせています。手紙の方はこちらになります。」


そう言ってランスは扉の下から手紙を差し込む。その手紙の封には国王の印が刻まれていた。


「すぐに読んで返事を書きます。あなたはそこで待機を。使者殿は応接間に案内してお茶を出して上げて。」

「はっ!」


ランスに指示を出して受け取った手紙を早速開封する。そこには今この国を襲っている問題について書かれていた。


「赤落ちと呼ばれる旅人による治安の悪化と、それによる国内の不穏分子の活性化の懸念ですか・・・・。」


旅人が戻って来てたった1日。そのたった1日の間に様々な影響が出ていた。中にはこの城塞首都をかつての都市の様に発展させようと協力してくれる旅人も大勢いる。逆に、犯罪に手を染め、人を食い物にしようとする者達も大勢いたのだ。


その者達が首都から離れた場所で徒党を組み、これから商隊や人々を襲う算段をしているという。その赤落ち達に同調する様に、首都内に居る犯罪組織が動き始めていると報告が書かれていた。今回の案件は原因となった赤落ち達への早急な対処を求めた物だった。


シルも馬鹿ではない、かつての旅人達に一定以上そう言う人達が居る事を覚えていた。だからこそ早急に対処できるよう、犯罪行為を行った旅人は監視してその後の動向を調べる様に指示を出していたのだ。


「冒険者ギルドに早急に護衛として旅人を雇う様に指示を出す様に、後は赤落ちとなった旅人の情報を開示して指名手配しましょう。軍にも手配を回して懸賞金を掛けてっと・・・。犯罪組織の方は動き始めた所で頭を押さえるしかありません。こっちにも旅人の力を借りましょう。報酬は金銭か消耗品もしく赤落ちが所持しているアイテムの譲渡にするように・・・。っと今出来る事はこれくらいですか。」


王への手紙のほかに、冒険者ギルドと軍に当てた手紙を書きあげたシルはソファで寝ているルドを見た後に窓の外に視線を向ける。窓の外には今までと同じような、だけど決して同じではない街の景色が浮かんでいた。


「これからの世界がどのように変わって行くのか・・・。それは旅人達に掛かっています。ですからどうか、世界を悪しき道に進ませないで下さい。それでももし、そのような道に進んでしまった時は・・・・。期待していますよ、ルド兄様。」


かつて世界の滅亡を救った兄。そんな兄であれば、世界が間違った道に進んでも何とかしてくれるだろうとシルは思っている。寝ているルドの顔を見て笑顔を浮かべたシルは、書き上げた手紙をランスに託して自身も眠りに付いた。


そんな妹からの絶大な期待を受けている事等知るはずも無くルドは眠り続ける。その体にかすかに白い光りを纏いながら。


なお、どこかの部屋で植物の根にぐるぐる巻きにされ、獣の様な鳴き声を上げながらも額に銃を突き付けられ身動きが取れない悪魔が居たとか居なかったとか。


「パパはシア達が絶対に守る!」

「( `,_・・´)フンッ」

「フゴーッ!!フゴーーーーーーーーッ!!」

「まさか初日に夜這いを掛けようとするとは・・・・。シアちゃん、アイギスちゃん、そのまま一晩お願いね。」

「「(>Д<)ゝ“ラジャー!!」」

「フゴーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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