第256話

「本当にありがとうございました。」

「いえ、人助けですから気にしないで下さい!!」

「はい、貴方が無事で良かった。」


無事に女性を街まで送り届け、城壁の中で女性と話をするメイド組。ルーフは先を急ぎたいのかソワソワとしているが、オーニャもファランも女性を不安にさせない様に落ち着いて対応していた。


「お礼と言っては何ですが。これをお受け取り下さい。」

「これは?」

「ジャイアントウルフから逃げる途中に拾ったものです。何やら紋が掛かれてたのでもしかしたらあなた方の用事に関係があるかもしれません。」

「ありがとうございます。では受け取っておきます。」

「2人共急ぎましょう!!この間にも他の2チームが帰って来てるかも!!」

「では私達はこれで失礼します。」

「今度から外に出るときは気を付けて下さいね!!」

「本当に助けて頂きありがとうございました。」


オーニャが受け取ったのは、何やら円の下半分が描かれている割れた木の板だった。それを受け取った2人は急かすルーフに押されながら感謝を示す女性と別れ、墓標を目指す。途中、元祖と本家の残りの人達が居るはずの場所を通ったが。そこには誰も居なくなっていた。


「ゴールはここでは無いんでしょうか?」

「そう言えば持って帰って来ればと言っただけでゴールがどこに在るか言ってませんでしたよね?」

「てっきりここに持って帰って来るんだと思ってた。ゴールってどこだ?」

「なるほど、先に進めば解るかも知れませんね。」


何かに気が付いたファランに促され、墓標に向かう3人。途中穴の開いた地面を見つけたり、『罰則につき救助無用』と書かれた看板の傍で、首から下を地面に埋められた冒険者を見つけた。一瞬助けるか悩んだが、看板の下に守備隊の名が書かれていたので放置して先を進む。


そして墓標が目前に迫って来た時に、傍で倒れている女性の姿を見つけた。


「だっ大丈夫ですか!!」

「ルーフ君、周りの警戒をお願いします。」

「了解っすファランさん!!」


女性の格好から即座に男性を遠ざけるファラン。オーニャは自分の体でルーフから女性を隠しながら、女性の体を揺さぶって声を掛けた。ルーフも女性の際どい格好を見ない様に周囲の警戒に集中する。


「うぅぅぅぅ・・・・。お腹が空きました・・・・。」

「お腹が空いただけなんですね?怪我とかはしていませんか?」

「・・・・大丈夫みたいです!この人空腹で倒れただけみたいですね!」

「非常食なら持ってます!!鞄から出して渡して上げてください!!」


ルーフが持っていあカバンから携帯食料を取り出して女性に渡すオーニャ。女性は一心不乱に差し出された携帯食料を食べた後、ファランに渡された毛布を貰って体を覆い3人にお礼を言った。


「助けて頂きありがとうございます。このままだと餓死する所でした・・・・。」

「貴方はどうしてこんな所に?」

「お墓参りに・・・・。こちらに親族が眠っているのでどうしてもお参りがしたくて・・・・。」

「お一人でここまで来たんですか?」

「えぇ、お腹さえ空いていなければそれなりに戦えますので。そうだ!!お礼にこちらを差し上げます。」


そう言って女性が取り出したのは、割れた木の板の片割れだった。女性の話によると、墓地の上にポツンと置かれていた物らしい。


「ありがとうございます。街まで送りましょうか?」

「いえ、これくらいでしたら1人で戻れます。それに皆さんには何やらご用事がある様子。私はこれで失礼しますので、どうか先をお急ぎください。」

「本当に大丈夫なんですね?」

「えぇ、すこし寄りたい所もあるのでご一緒出来ませんが。街まででしたら大丈夫です。」

「心配何で残りの携帯食料も持って行ってください!!」

「まぁありがとう。では半分だけ頂きます。」


残っていた携帯食料を女性に渡し、帰路に就く3人。途中、渡された木の板を取り出してよく見てみると、どうやら板同士が元々1枚の物だったことが解った。


「合わせてみます!!」ぺかーーっ!!

「おぉ!!1枚になった!!」

「やはりあの人達は試験官でしたか。」

「「そうだったんですか!?」」


ファランの言葉に驚くオーニャとルーフ、そんな2人の様子から、打算ではなく心から困っている人を助けようとした事を感じ取ったファランは、好ましい2人の性格に笑みを浮かべる。


「最初の女性の時から恐らくとは思っていました。それによく見て下さい。合わせた木の板に鬼神斧槍流の紋が浮かんでいます。」

「あっ本当だ!!」

「教会で奇跡を掛けて貰ったんですね。2つが揃わないと持ってくるように指示された紋が手に入らないという事です。」

「つまりは先に行った2組は・・・・。」

「すでに失格になっているかと。」


ファランの言葉に先に行った2組がまだゴールしていないと確信した2人はほっと胸をなでおろした。


「それでも時間制限が在りますから急ぎましょう!!」

「何があるか分からないからな!!本当に助けを求める人が居ても助けられる様に時間に余裕を持たせよう!!」

「私達程度が助けられる人は少ないと思いますが、その意見には賛成です。では先を急ぎましょう。」


3人は完成した紋を大事にしまい。急いで街に戻った。途中、迷子(の振りをしたシアとアイギスだった。変装していたが体の蔓と喋れない事でバレバレだった。)の姿に笑みを浮かべながら手を差し伸べ、2人の案内の元無事に集合場所に行くことが出来た。


「ゴーーーーーーール!!合格はファラン、オーニャ、ルーフの3人だ!!」


ゴールで完成した紋を渡すと、大声で3人の合格を告げるルド。その言葉を聞いて元祖と本家の者達はがっくりと肩を落として落胆していた。その様子に首を傾げる3人。なぜならば、自分達が合格した瞬間に難癖を付けるか、暴れ出して試験を無効化する物だと思っていたからだ。


「ふっふっふ、こいつらがおとなしく結果を受け入れた事が不思議か?」

「はい、結局はごねて結果をうやむやにするものだとばかり・・・。」

「その結果があれだとしてもか?」


ルドの指さした先には、全身真っ黒こげで体中に痣を作り木から吊るされている本家と元祖の一族と、先を走っていった参加者の姿が在った。


「冒険者を雇っての妨害や、要救助者に邪な行為をしようとしたからな。即時失格の上でお仕置きして貰ったんだよ。こいつらの目の前でな。」


威力を低くした爆弾で焼かれ、体中に痣が出来る程にボコボコにされ、光りの矢で撃たれる。泣き叫んでも、助けを願っても止まらない拷問まがいの扱いを受けた人々を見て、ここで騒ぎを起こせば次は自分達だと道場の門下生達の心が折れていたのだ。


「私の美貌も捨てた物じゃ在りませんでしたわね。」

「やっぱり恥ずかしかったよー。私あんなに食いしん坊じゃないのにぃぃぃぃぃ・・・。」

「参加出来て面白かった!」

「☆-(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ」


その場所に試験官として参加していた仲間達が帰って来た。襤褸を纏っていたのはルゼダ。シルに頼んで容姿を変更出来る物が無いか聞くと、身長変更薬という物が在るそうでそれを使った。襤褸を纏っていたのは顔を判別されないためだな。ちなみにこの薬、巨人族やドラゴンが店に入る為に小さくなる為に使われている薬なんだそうだ。今回は逆の効果を狙って使ったな。


墓地で倒れていたのはもちろんリダだ。胸はまぁ寄せて上げて詰め物して。後は耳をカツラで隠し、尻尾ばれない様に背中に張り付けて隠しただけ。顔は化粧で誤魔化した。最後はシアとアイギスだが・・・・ぶっちゃけ髪の色とアイギスの見た目を人に近づけただけだ。まぁバレちゃったけどな。


「これで結果は出た!!鬼神斧槍流の後継者は・・・・・オーニャだ!!」

「えぇーーーーーーーーっ!!」


何を驚いてるんだ?元々後継者を決める為の試験だったろうに。


「わっ私何てまだ基礎を教えて貰ってる途中でだから、えっと。」

「後継者っていってもすぐに継ぐわけじゃないからな。シルから手の空いた時にきちんと習って、免許皆伝になったら道場を開けばいい。それまでに元祖と本家の土地を売って土地とを確保しとくとシルが言ってたぞ?」

「でも私何て・・・・。」


ふむ、試験が始まる時には他の道場に渡すなら!!と意気込んでいたのに、いざ自分が継ぐとなったら尻込みしたか。でも継承者としての資格は十分に在るんだぞ?


「いいかオーニャ。鬼神斧槍流の神髄は敵を倒す事にあらず!!」

「へっ!?」

「鬼神斧槍流の神髄とは!自分の大事なモノ、誰かの大事なモノを守る為の。心を救う為の流派だ!!親父は一度大事なモノを失った。その後悔を、無念を人に味わって欲しくないと生まれたのがこの流派の前の技でありこの流派の信念だ!!目の前に居る困っている人を見捨てず、寄り添い助けたオーニャには十分その資格がある!!」

「でもそれならファランさんやルーフ君でも・・・。」

「私は途中で試験の意図に気が付いてしまったので駄目ですよ。心から純粋に人を助けたいと思っていたあなたの方がふさわしい。」

「俺なんて助けた人を見捨てようとしたからな!!条件に合わねぇよ!!」

「と言う事だ!!さぁ覚悟を決めて後継者の証を受け取れ!」


ルドが差し出したのはオーニャたちが集めた木の板だった。そこには鬼神斧槍流政党後継者と書かれ、すでにオーニャの名前が入っている。オーニャは手渡された木の板を手に取り、笑顔を浮かべているルドに真剣な目で頷いで返した。


「私は、初代様の思いを継いで鬼神斧槍流を広めます!!自分の!!誰かの大事なモノを守る為にこの力を使います!!これからよろしくお願いします!!」


それは、オーニャによる世界への宣言だった。天に居る初代に届けとばかりに張り上げた声は必ず初代に届いただろう。何せ親父の声が聞えた気がしたんだから。


“頼んだぞ。時代の担い手。腑抜けたらぶっ飛ばすからな!!”


ピコン!!


鬼神斧槍流、真の後継者はどっち!!をクリアしました!!


特殊イベントを介してのクリアとなります!!上位の報酬が与えられます!!


受注者ルドへの報酬

流派推薦書:特殊アイテム

60年前に発生し、今も受け継がれる流派スキル。その中で自由に流派を習う為の書類。師範代に渡す事で好きな流派を取得できる。※(呪)スキル所持者の為、攻撃出来る流派は取得できません。


パーティーメンバー クリン・リダ・ルゼダへの報酬

流派継承者の証:アクセサリー(体)

流派の免許皆伝の証。アクセサリー装備時流派スキルの威力を1.5倍にする。


ピンポンパンポーン⤴ 流派スキルに表示が追加されました!!これによりどのスキルが流派スキルなのか簡単に見分けられる様になります!!世界に隠れている流派スキルを是非探してみてください!! ピンポンパンポーン⤵


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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