第257話

「じゃ、そう言う事だからオーニャの指導頼むな。あとこの印籠は返却で良いのか?」

「解りました。鬼神斧槍流を継ぐのですからそれはもうみっちりと修行を付けさせて頂きます。印籠はそのままお持ちください。何かの役に立つかもしれませんから。」

「お願いします。シル師匠!!」


後継者選定試験も終わって俺はオーニャを連れてシルの屋敷に戻って来ていた。リダ達は貰ったアクセサリーの力を試すと言ってフィールドに残ったよ。そうそう、流派スキルの表示が変わった、リダに見せて貰ったらこうなってた。


<心義夢想>:流派スキル

 心に義を宿し、夢や想いを乗せて戦う。相手のダメージ軽減スキルを20%まで無効化


どうもこの表記は住人ではない旅人向けみたいだな。そりゃ住人だったらどんなスキルが流派なのかは知ってるけど、ALO2から始める人や久しぶりの人だと解り難い。だからこその流派表記何だろう。


シアとアイギス?ファランからお菓子を貰って今はリスにジョブチェンジしてるよ。アイギスは口無いの食べてるのが不思議なんだよなぁ。口元まで持って行ったお菓子が瞬時に消えて、頬を膨らませてモグモグしている。食べて大丈夫なんだよな?


まぁ2人の事は置いといて、鬼神斧槍流の正統な後継者を指名出来たので後は後継者として腕前を上げて免許皆伝を取得。道場を開いて門下生を集めれば流派としての引継ぎは終わりだ。これからの鬼神斧槍流はオーニャの手に委ねられたから俺達が手を貸すのもここまでだな。


あの双子については・・・。代表者だけで後継者を決めるのはずるいとかなんとか文句を言い始めたので、俺達に勝ったら考えてやると言ったら全員で襲い掛かって来た。その時点で全員失格だったんだがなぁ・・・・。まぁせっかく何で対人戦の練習と思って相手をしたさ。


でも長年の不摂生と歳食った体で双子達が動けるはずも無く、まともに指導されずに魔道具や特権に縋っていた門下生達が強いはずも無く。軽く返り討ちにしておしまいだったな。これで流派の後継者を名乗ってたんだから救いがねぇ。双子達が勝ったらどうしたのかって?俺達に勝てても“考えてやる”だけで結局は却下だな。


そんでもって後見人の権力を使って、今まで迷惑を掛けて来た人達に対しての補償と、裏で行って来た様々な陰謀に対する賠償と罪の償いをして貰う事になった。うん、簡単に説明すると財産の全没収と一族全員の鉱山での強制労働だね。なおシル一家と俺は一族から外されております。関わってた貴族の方はシルの方に任せてあるぞ。後々クエストを頼まれるかもしれないが・・・。まぁシルのお願いなら力の限り協力する事にしよう。


「この度は面倒事を押し付けて申し訳ありませんでしたルド兄様。」

「気にすんな。元々は後継者を指名しなかった親父が悪い。まぁ、今では指名しなかったのは正解だと思うけどな。」


多分親父は血で流派を受け継いでいくことを嫌ったんだろう。だから、何年後か何十年後かに帰って来る俺に、後継者の内面を見極めて欲しいと思ったんだろうな。だからシルにも継がせなかったんだと思うぞ?


「それでな。報酬で貰ったこれなんだが、どこかに良い師範代は居ないか?」

「何人か知り合いは居ますが・・・。ルド兄様の希望は在りますか?」

「俺が攻撃出来る技を教えてくれる流派が良い!!」

「・・・・・。申し訳ありません。大変心苦しいのですが・・・・。」

「うん、知ってた。全てこの呪いスキルが悪い!!」


流派推薦書を見せながらシルに良い師範代が居ないかどうか聞いたけどもまぁ結果はお察しだよ。こんな事ALOでも経験済みだからな!!悔しくなんかないぞ!!


「それじゃあ盾職向けの師範代は居るか?」

「えっと・・・それがですね?」


申し訳なさそうな顔をしているが何かあるのか?


「ルド兄様?落ち着いて聞いて下さいね?その・・・・現在この世界では盾職向けの流派は“存在しません”。」

「は?」

「・・・・・。もう一度言います。“この世界で盾職向けの流派は在りません。”」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


いやいやいや!!確かにALOの時にも盾職の流派は1つしか残って無かったけどさ!!でも盾が見直されて復活した流派も在ったし、最低でもシチート師匠が残ってるはずだろ!?あの人が流派を引き継げば1つは在るはずだろ!?


「戦争の中で盾職の流派を引き継いだ人はまさに最前線に出ます。その折に敵方の兵器に次々と継承者達が打ち取られてしまったんです・・・。」

「師匠は?シチート師匠の城塞が在れば結構生き残ってると思うんだが?」

「ルド兄様が世界から消えて、兄様の後を追うように行方不明となりました・・・・。」


師匠せめて流派だけでも残して行ってくれよ!!あぁっ!!俺が習える流派が無いんだったらこの流派推薦書は唯のゴミじゃねぇか!!


「パパ?どうしたの?」

「(。´・ω・)ん?」

「申し訳ありません。」

「はぁ・・・・・。大丈夫だ。こんな事前にも在ったしな、何か逆に懐かしい感じがするわ。この思い通りに行かない感じ、帰って来たった感じだわ。はぁ・・・・・。」


これじゃあ俺だけ報酬なしじゃないか・・・・。うん、だったらシルから別で報酬を貰おう。具体的に言うと拠点が欲しい。ALOだと守備隊の兵舎や親父の家が拠点だったからな。ALO2でも落ち着ける拠点が欲しいんだよ。


「なぁシル?俺達が拠点にしても良い場所は無いか?宿屋に泊るにしても、どこかに家を借りるにしても金が掛かるからさ。」

「ならばこの場所に住んでもらっても構いませんよ?もちろんリダさん達も一緒にどうぞ。」

「本当に良いのか?」

「子供達も自立していますし、開いている部屋は沢山あります。どうぞお使いください。」

「助かる。」


うっし、これで拠点は確保できた。皆に霊廟が拠点になるって連絡してっと・・・・。


ピロンッ♪


ん?リダからチャット?何かあったのか?


【ルドさん!!助けて下さい!!】


なっ!!救援要請だと!!くそっ!!待ってろ皆すぐ行くからな!!


~・~・~・~・~・~・~

時は少し遡り、ジャイアント平原


ルドさんを見送った私達はクエストの報酬で手に入れたアクセサリーの効果を確かめに平原でジャイアントウルフを狩っていました。


「う~ん、私の流派だと防御無効化率が30%ですか。ジャイアントウルフの土壁が無効化出来るのは大きいなぁ。」

「私の方ですと体力回復量が15ポイントに、ダメージが-30ポイントですわね。」

「<勇天聖剣流>光波!!はぁぁぁぁぁっ!!」


クリンの剣による攻撃。

<勇天聖剣流><剣使い>発動。

ダメージ20ポイント。


ジャイアントウルフの防御。

土壁生成。ダメージ30%カット

ダメージ14ポイント HP残り6


ジャイアントウルフの攻撃。

噛み付き攻撃。

ダメージ10ポイント。


クリンの回避。

<軽業>発動。クリンはジャイアントウルフの攻撃を躱した。

ダメージ0ポイント。


「これで、止め!!」


クリンの剣による攻撃。

<勇天聖剣流><剣使い>発動。

ダメージ20ポイント。


ジャイアントウルフの防御。

土壁生成。ダメージ30%カット

ダメージ14ポイント


ジャイアントウルフは倒れた。

オーバーキル!!ドロップ減少!!


「クリン君お疲れ様。」

「はい、ダメージが上がってくれるのは嬉しいですね。」

「クリンは万能型ですもの。近接だけだと火力が下がってしまいますわ。そこを補えるアクセサリーは貴重ですわね。」

「そうだね。」

「さっ、そろそろルドさんの元に戻りましょう。報告も終わって待ってるはずですし。」

「ちょっと待ってくれ!!」


私達がアクセサリーの効果を確認し終わって帰ろうとした所、突然目の前に男性が飛び出してきました。前に使っていた私のアバターに似ていて、髭面にぼさぼさの髪、長い髭のまるで山賊の様な人でした。


「・・・旅人ですわね?」

「名前が青色ですね。」

「何か御用ですか?」


ALO2で旅人の名前は頭上に表示されるように変わっています。旅人の名前は青で、NPCは状態により緑(友好)、黄色(中立)、赤(敵対)に変化する仕様ですね。ただし、赤落ちと呼ばれるこの世界での犯罪者になった場合は、ネームの頭に赤いナイフの表示が出る様に変わりました。


「さっき君達が使っていたのは流派スキルという奴だろう?どこで覚えたのか教えて欲しい!!頼む!!」


頭を下げる男性。流派を教えて欲しいですか・・・・。困りました。私達の流派はALOからの引継ぎです。新たに覚えた物ではありませんから、教える人が残っているかどうか・・・・。


「申し訳ありませんわ。私達は“引継ぎ組”。流派スキルも引継ぎで覚えた物ですの。ですから覚えた場所はすでにありませんわ。」

「うえっ!?そうなのか・・・・。君達から直接教えて貰うわけには?」

「それで覚えられる確証が在りませんわ。残念ですがお断りいたします。」

「・・・・・・。無理を言ってすまないな・・・・。」


トボトボと街まで歩いて行く男性。ですがこっちを見てニヤリと笑った後突然駆けだしました。


「ここに流派持ちが居るぞーーーー!!流派を覚えたい奴は凸しろーーーー!!」

「「「なぁっ!?」」」


大声で私達が流派スキルを持っている事を言いまわる男性の旅人。その声を聴いて街に居た旅人達が大勢でこちらに押し寄せて来る!?


「あいつやりやがりましたわ!!きっちり通報してやりますわ!!」

「完全に人に迷惑を掛ける目的でやってるよね。」

「そんな事よりすぐに逃げますよ!!」


街から押し寄せる人から逃げる様に、私達は平原の奥地に向かって駆けだすしかありませんでした。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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