第249話

元祖の連中は印籠の意味を知っていたのか慌てて冒険者ギルドから逃げる様に去って行った。うんうん、成敗しなくても良かったから一安心だな。もしそうなったらアイギスが張り切って冒険者ギルドが崩壊していたかもしれん・・・。こわっ!!


「成敗したかったぁ・・・・。」

「(´・ω・`)」

「止めなさい。それよりも君、大丈夫か?」

「あっありがとうございます!!」


倒れていた男の子を助け起こす。うん、ごめんね?男の子だと思ったら女の子でした。12歳くらいかな?成長途中な上に髪の毛も短かったから気が付かなかったよ。なんで解ったのかって?服の襟から膨らみかけの物が見えました。


「ルードーさーん?」

「はい、事故です。他意はありません。だから怒らないでリダさん。本当に申し訳ございません。」

「見事な土下座ですわ。」

「これはやり慣れてますね。リアルで仕込まれてます。」

「パパ素早―い。」

「ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ」

「あっ、あの~?」


女の子が背中に般若が見えるリダに怯え、土下座する俺を見て、呆れている仲間を見て困惑している。とりあえず落ち着いて話をしようか?リダさんやその拳を下げて頂戴な、話が進まないから。


「私、オーニャって言います!!助けて頂きありがとうございました!!」

「いふぇいふぇ、みふちがふぁふぁわっていまふのでおふぃになさらふ。」

「ルドさん、何言ってるか解りませんよ?」

「ぱぱの顔たんこぶ一杯!!」

「ヾ(*´∀`*)ノ」

「もうしょうがないですわね。<回復魔法(ヒール)>」

「すまん助かった。あと気にしないでくれ。身内に不祥事に君を巻き込んだだけだからさ。こちらこそ申し訳ないね。」


俺に拳を振り下ろしたリダはいまだに横を向いて拗ねているが、まずはオーニャの事について聞かねばならない。決して怖いから後回しにしているわけでは無い、決して!!


「それで?君はあの人達を偽物って呼んだ見たいけどそれはどうして?」

「私の村は鬼神斧槍流の人に助けて貰ったんです。そのお話が今でも残っていて・・・。鬼神斧槍流を使う人は見返りを求めず人を救い、助けを呼ぶ声の元にはすぐに駆け付けたと聞いていました。私はその話に憧れて、鬼神斧槍流を学ぶためにここに来たんです・・・。ですが、元祖も本家もどちらも高い入門料と貴族の紹介が必要だと門前払いを貰ってしまって・・・。うまくいかずにイライラしていた所にあの人達が居てつい・・・。」

「思った事が口に出てしまったと。」

「はい・・・。」


クリンの質問にオーニャが答えていく。なるほどなぁ、たぶんこの子の村を救ったのは親父だったんだろうな。それを見ていた村の人達が自分達を救ってくれた英雄を忘れないように語り継いでいたんだな。そりゃ今の鬼神斧槍流を見たら偽物だと言いたくなるだろう。解る解る。


「貴方が偽物だと言ったのは正しいですわ。なぜならば元祖も本家も正当な後継者では無いのですから。」

「本当ですか!?」

「えぇ、どちらも勝手に流派の名前を名乗っているだけにすぎませんわ。そして、この人が正当な後継者を選ぶ後見人のルドさんですわ。初代鬼神斧槍流師範ルバートの息子ですわよ?」

「それは凄い!!是非私に鬼神斧槍流を教えてください!!」

「ごめん、そりゃ無理。」

「何でですか!?後見人なんですよね!?」

「だっておれ鬼神斧槍流を収めてないもん。」

「そんなぁ・・・。」


オーニャがあからさまに肩を落としちゃった。まぁでも・・・親父の話を聞いて憧れたこの子が間違った鬼神斧槍流を習うより、正当な物を覚えるってのは良いよな。うん、俺は教えられないけどシルなら教えられるし、彼女の所に連れていくか。


「そんなに鬼神斧槍流が好きか?」

「はい!!お爺さん達の話を聞いて、私も村を救った英雄の様になりたいんです!!」

「その為にはかなりきつい修行が必要だが、耐えられるか?」

「耐えて見せます!!」

「じゃあ最後に。“君には守りたいものは在るか?”」

「?」


最後の質問が一番重要なんだよな。なんたって鬼神斧槍流に込められた思いは『大事なモノを守る。』って事だからな。それが物であれ人であれ、自分の守りたい物を守るのが鬼神斧槍流の存在意義だ。元祖も本家もその本質を見失っているみたいだけどな。


「大事な事なんだ。君には守りたいものは在るかい?」

「・・・・。私の村は時折魔物に襲われます。その所為で怪我する人や亡くなる人も出ます。今では兵士の皆さんが村の守りに居てくれますけど・・・。私も、村を守りたいです。魔物に襲われている人を助けたいです!!」


オーニャの目にはただ言葉を並べただけじゃない、確かな熱が在った。俺はその熱を感じ取って1つ頷く。


「うし、合格。君に鬼神斧槍流を教えよう。」

「本当ですか!?でもさっきそれは無理って?」

「教えられる人を知ってるからね。紹介するよ。俺の話なら聞いてくれるはずだしな。」

「っ!?よろしくお願いします!!」

「それじゃあ早速。」

「その人の所に行くんですね!」

「いんや、俺達の冒険者登録が先だ。」

ヽ(゚д゚)/ズコー

「大丈夫?」

「ヾ(・ω・*)なでなで」


ずっこけたオーニャをシアとアイギスに任せて俺達は冒険者登録の窓口に並んだ。いまだに唖然としたまま並ぶ俺達を見ているオーニャ。うん、ごめんな。登録終ったらすぐに行くから待っててくれ。


「冒険者ギルドにようこそ!!こちら登録窓口になって居ますがよろしかったですか?」

「はい、全員登録してください。」

「ではこちらに氏名と使用武器、スキルを記入してください。あっ!!スキルは全て書かなくて大丈夫ですよ!!隠したいスキルは記入いただかなくて結構です。」

「了解です。」


これで良いかなっと。


氏名 ルド

使用武器 双盾

スキル <盾使い><自己回復><両盾持ち><陽動>


「はい書けました。」

「私達も書けました。」

「これで良いんですの?」

「お願いします。」

「はいお預かりします・・・・・。あのぉ~ルドさん?攻撃用の武器やスキルはお持ちでは無いのですか?」

「・・・・・・無いです・・・・。」


うん、そこ突っ込まれるよね。だって冒険者って魔物と戦ったりするから武器持つのは当たり前だし攻撃スキルを持ってるのが普通だしな。


「えっと、規定で攻撃スキルを持たない人は登録できない事になってまして・・・・。」

「そうですか・・・・。」


登録できないかぁ。受付嬢さんの反応でそうじゃないかなぁと思ったけどやっぱりかぁ・・・・。


「友魔が居た場合はどうですの?」

「友魔ですか?」

「はい、ルドさんは友魔を2人仲間にしています。」

「確か友魔に攻撃能力が認められれば登録できたはずですよね?」

「たしかに、特例事項として友魔に攻撃能力が備わっていれば登録は出来ますが・・・。友魔だけに戦わせるのですか?」


おっと、これは友魔だけに戦わせて自分は後ろに下がっていると思われてるな。受付嬢さんの視線が冷たい物になったぞ?そんな事絶対しないからな!家の娘達は俺が守る!!


「俺が前に出て壁をやるんですよ。あの子達にはその間に攻撃して貰います。」

「・・・・・本当の様ですね。なら登録は可能です。」


今受付嬢さんの付けているイヤリングが光ったな。魔道具だったのか、嘘発見器みたいな物かな。


「ではルドさんはランクFから、他の方は・・・・60年前の登録情報がございますね。ランクは引き継がれますか?」

「いえ、ランクFからでお願いします。上位ランクが手伝うと低ランクの人のランクが上がり難いんですよね?」

「えぇ、その通りです。それに低ランク依頼を上位ランクの人が受けると、得られる貢献ポイントが激減しますのでお勧めは出来ません。」

「ならFランクからでお願いします。」


なるほどなぁ、パワーレベリングみたいな事は出来ない様になってるのか。皆と一緒に楽しむならランクを揃えた方が良いのか。


「ルドさんには後程友魔との模擬戦闘を行って頂いてから冒険者証の発行となります。他の方はこちらをお受け取り下さい。」


受付嬢さんが取り出したのは銅の板にさっき書いた情報が書き込まれたドッグタグだった。俺以外の皆はそれを首から下げて眺めている。


「そちらは冒険者としての身分を証明するもので、ランクFとEは銅、DとCは銀、BとAは金、そしてSは星金となっています。銅は初級、銀は中級、金は上級、星金は特級と呼ばれています。冒険者ギルドが発行するクエスト、または街が緊急時に発令する召集に参加すると貢献度が得られ、一定以上貢献度が溜まるとランクアップします。報酬もランクが高い程上がって行くので頑張ってください。何か他に聞きたいことは在りますか?」


前の時と似たような感じだから特に無いかなぁ。いや星金ってなんだ?


「星金っていうのはなんですの?」

「星金(ほしがね)というのは50年程前に発見された新しい金属です。黒い金属の中に白い星が浮かぶように存在していて、加工によりどの金属よりも強く柔軟になります。神々が齎した物、かつての守護者戦争の際に消えた神の体の一部だという話もあります。希少金属ですので手に入れたら是非ギルドに持ち込んでください。高値で買い取ります!!」


俺の体の一部!?そんな事・・・・在るのか?いや、前の体は塵になって消えて行ったはず・・・・。その塵が集まって金属になった?それよりも巨神様達が新しく作ったの方が信ぴょう性が高いか。あと受付嬢さん、カウンターから乗り出す勢いで言わなくても良いと思います。カウンターに立派な物がお乗りになっていて目が行ってしまいます。その所為で尻が超絶痛いです。リダさん抓るの辞めて。


「他に質問は在りませんか?無さそうですね。それでは、ルド様と友魔の戦闘能力測定を行いたいと思います。こちらにどうぞ。」


受付嬢さんに案内されたのは2階へ上がる階段の裏。そこには地下に続く階段が在った。俺はオーニャと一緒にいたシアとアイギスを呼んで、その階段を下りていくのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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