第248話
親父が生み出した流派の後継者をめぐって双子が争っているらしい。その仲裁を俺は頼まれたんだが・・・・。
「本当にシルが言っても聞かないのか?俺なんかよりもずっと一緒に居たシルの方が言う事を聞きそうだと思うんだが・・・・。」
「シルが指名したらダメなの?」
「(((uдu*)ゥンゥン」
「それが少々ややこしい事になって居まして・・・。」
シルが語るにお親父は鬼神斧槍流を双子に継がせる気が無かったらしい。なぜなら、戦争の中生き残る為に流派を教えたが、教えた武術を使って名を上げて己の欲を満たす事に使い始めたから。
斧槍を使い鬼神のごとく戦う親父達の元には、金も名誉も異性も山の様に寄って来たんだそうだ。親父はそれらを全て突っぱね、ただ誰かの大事な人を助ける為に戦った。だが双子は流派を継承するには若すぎた。
自制の効かなかった双子は金と異性に溺れ、名誉や賞賛を浴びる事に固執した。それはもう鬼神斧槍流が生まれた“信念”から外れた行為。その事に気が付いた親父は双子を後継者として指名しなかったんだそうだ。
「それでも、自分達こそが後継者にふさわしいと声を上げた訳だ。」
「はい・・・・・・。」
「シルは教わらなかったのぉ~?」
「私も鬼神斧槍中は収めています。父上からは免許皆伝とお墨付きをお貰いました。ただ、私が覚えた時にはすでに双子の悪評が広まってしまい・・・。」
「後継者を育てようにも人が来なかったと。」
「はい・・・・・・・。」
シルはまず知識を蓄える為に動いていたから、双子よりも流派を収めるが遅れたのか。その間に流派の名が地に落ちちゃってたと。なんとまぁ、やるせないな。
「結局最後まで父上は私達を後継者には指名しませんでした。ですが自分を後継者にするように何度も言い募る双子達に辟易とした父上は、亡くなる直前に試練を出したんです。」
「・・・・なんとなーく嫌な予感がするけどその試練とは?」
「お前達には長男が居る。その長男に認められたら後継者を名乗っても良いと・・・。」
「・・・・親父の奴。丸投げしやがったな!!」
まぁ何度も何度も後継者云々の争いを見続けて来て疲れたのは解る。解るがいつ戻って来るか分からない俺を指名するかね普通。
「んじゃシルが後継者って事で。」
「私はもう御婆ちゃんですから、この先どうなるか解りません。それに父上が私も後継者にしなかったのは理由があったはずです。だから辞退します。」
「パパ?そんな簡単にはいかないと思うよ?」
「( ´゚д゚)(゚д゚` )ネー」
「駄目かー。」
これは一度双子の所に顔を見せないと駄目だなぁ・・・・。面倒くさいが放っておいたら親父が浮かばれないし、動くしかないかぁ。
「はぁ・・・・。しょうがない、受けるよ。」
「申し訳ありませんルド兄様。」
「気にすんな、親父が何を思って後継者にしなかったのかも直接会えば解るだろうしな。双子の居る場所を教えて貰っていいか?」
「でしたら先ほど歩いて来た貴族区画を右に曲がれば『元祖鬼神斧槍流』の道場が、左に曲がれば『本家鬼神斧槍流』の道場が建っています。一目見れば解るかと。」
「暖簾分けに失敗したラーメン屋か何かかな?まぁいい、まずは冒険者ギルドに登録してから向かうとするわ。」
「はい、よろしくお願いしますルド兄様。」
クエスト 鬼神斧槍流、真の後継者はどっち!! を受注しました。
と言う事でまずは別れていた仲間に合流&事情の説明をおこないながら、ランスに教えて貰った冒険者ギルドに向かっております。
「ルドさんがクエストを受けたのは解っていましたが・・・・。後継者争いですかぁ。」
「面倒臭そうですわね。それで?どうするつもりですの?」
「まずはふざけた元祖やら本家やらの看板を下ろさせる。その後全員に聞き取りかなぁ。親父が生み出した流派の“根底”を理解していないなら全員破門だ。」
「ルドさんにそんな権限在るんですか?絶対に言う事聞かないと僕は思いますけど?」
「パパは後継者を指名出来るんだって。だからパパの言葉を聞かなかったら流派の名前を取り上げる事も出来るんだよ。シルが言ってた。」
「( ゚Д゚)⊃□」
「アイギスちゃんそれは何?」
「あぁ、シルから預かった鬼神斧槍流の後見人の証だ。親父が残した物だってよ。後継者指名の法的証拠にもなるらしいぞ?」
「そんな大事な物なんでアイギスちゃんが持ってるんですか!!」
「そう怒るなよリダ。アイギスが持ちたいって言ったんだもんなぁ。」
「(*´・ω・)(・ω・`*)ネー」
「それにアイギスから物が奪えると思うか?こいつ体の中に収納できるんだぞ?」
「( `―´)ノ」パタンッ
「あっ!!本当に体の中に入れた!!」
「これは取り出すのは無理ですわね・・・・。」
「変に近づいたらハチの巣になるよ!!」
「(`・ω・´)」
「まっそう言う事だからこれ見せて看板降ろせっていうのが最初だ。おっ?あれが冒険者ギルドか?」
話しているとあっという間に貴族区画を抜けて一般区画に入っていた様だ。懐かしい盾の上で剣と杖の交差している看板が風に揺れている。その周りでは武装した人達や、旅人であろう人が楽しそうにして賑わいを見せていた。
「さてと、俺は最初からだからランクFからか。」
「私達はCからですわね。」
「私はルドさんと一緒で最初からにしますよ。そうすればクエスト探しも同行も楽ですから!!」
「それ良いですね。僕達も最初からにしようか。」
「おいおい、そこまで合わせなくても高ランク者が低ランクのクエスト手伝っても良いはずだろ?」
「それがそうでも無いらしいんですよね。一緒に遊ぶならランクは合わせた方が良いみたいです。」
「それどこ情報?」
「掲示板情報です。ALO2が始まって賑わってますよ。」
「シアにも見せて見せて!!」
「σ(゚∀゚ )」
「シアちゃんもアイギスちゃんも後でね。先に登録しちゃいましょう。その時に説明があるみたいですし。」
カランカラン♪
冒険者ギルドの扉を開けて中に入る。冒険者ギルドはウエスタンな酒場をイメージして貰ったら解りやすいかな?スイングドアは入り口の上の鐘に連動していてドアを開けるとなる仕組みになってる。
中は結構広く、正面には冒険者登録、クエスト受注、商品買い取りの窓口が在り。左側を見ると奥に続く通路が見え、その先では酒を持った冒険者がクエスト成功を祝っていた。
受付の右奥には2階に続く階段が在って、2階は資料室になって居るみたいだな。外から見ると3階建てだから一番上がお偉いさんの居る場所になるんだと思う。
商品買い取りと2階への階段の間には裏手に続く通路が在って、その奥からわずかに血の匂いが漂ってきている。多分あの奥は解体場だな。旅人はドロップ品を持ってくるけど、住人は丸々持って来ているからそこで解体するんだろう。今もジャイアントウルフを一匹丸々担いだ冒険者たちが裏手に入って行ったしな。旅人も丸々取得出来る様になるんだろうか?
ピコン♪
大分様変わりした冒険者ギルドの中を見ていると何やら通知が届いていた。他の皆には聞こえていない様子だからこれは俺だけか?
鬼神斧槍流、真の後継者はどっち!!の受注者を確認。イベントを開始します。
ドガーンッ!!「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
何かを叩き壊す音と同時に酒場の方から1人の男の子が吹っ飛んできた。その背中には鉄の刃を持ち、持ちては木で出来た斧槍が背負われている。そしてその男の子を吹き飛ばしたであろう人物達が酒場からぞろぞろと男の子を追いかけて出て来た。
「てめぇ!!俺達が偽物だってのはどういう了見だ!!」
「俺達はあの『元祖鬼神斧槍流』一門だぞ!!」
「戦争で活躍したルーシ様の一派に喧嘩を売るとはいい度胸だ!!」
「両手をちょん切って二度とその武器持てない様にしてやる!!」
「ぐぅぅぅ、お前等は偽物だ!!鬼神斧槍流は人の為の武術だ!!それを汚すな!!」
「この!!まだ言うか!!お前等やっちまえ!!」
「「「おう!!」」」
出て来た男たちもそれぞれ斧槍を持って男の子を威嚇している。うむ、こいつらルーシの教え子たちなのか。で、この男の子は何やら流派について知ってる様子。多分この子が元祖を謳う連中に噛み付いて返り討ちに在ったんだなぁ。うんうん、まず元祖は1アウト!!
「喝っ!!」
俺が突然大声を出したからかビックリして連中の動きが止まった。しっかりと陽動も発動してるからあの男の子が傷付く事は無かったけど、止まったんなら好都合。ちょいとアイギスさんや、あれを出して下さいな。
「貴様らは誰の許しを得て鬼神斧槍流を名乗っている!!後継は決まっていない現状でその名を口にすることは出来ないはず!!誰の許可を得たのか言え!!」
「なんだぁこのおっさんは!!俺達はルーシ様の許しを得て名乗ってるんだよ!!」
「そうだそうだ!!ルーシ様に逆らってタダで済むと思うなよ!!この街の仲間達が絶対にお前を許さないからな!!」
「今更泣いて謝っても遅いんだぜ?」
「誰が許しを請うんだ?現時刻を持ってルーシ一派が元祖鬼神斧槍流を名乗る事を禁じる!!これは法的根拠に乗っ取った正当な権利である!!」
「この紋所が目に入らぬかぁ~。」
「ドヤァ( ・´-・`)つ□」
「「「「「そっ!!それは!!」」」」」
アイギスが掲げた後見人の証には鬼の顔と斧槍が交差している紋が金で描かれている。台座は黒い入れ物になっていて、完全に時代劇でよく見る印籠だ。その紋所を見た連中は倒れている男の子も合わせて目を見開いている。
「ルーシに伝えろ。お前等の長男が帰って来たとな。後看板を今すぐ降ろせってな。」
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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