第247話

シルに親父達が眠っている場所に案内された、そんな俺達の目の前には見上げる程の白とも呼べる立派な建物が存在していた。


「親父達がこれを作ったのか?派手過ぎないか?」


俺の疑問に笑顔を浮かべるシル。


「はい、兄様が帰ってきたら一発でわかる建物を作るんだと張り切っていましたから。兄様が手紙に書かれていたんでしょう?」

「あー、確かにそんなメッセージを送ったな。その結果がこれかぁ・・・・。」


確かにこれだけ立派でデカい建物だったら一発で解るわな。まぁそこに親父達が眠っているかどうかは調べないと出てこなかったが。


「さぁ、中に入りましょう。」

「皆行くぞー。」

ポポポポ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン…


ランスが建物の扉に手を掛けて開けてくれている。シルが中に入ろうと促しているが、俺以外の全員が建物を見上げて放心していた。いや、これくらいの建物だったらリアルにあるだろうに。確かに歴史ある教会の様な迫力は感じるけどさ。


「ほれほれしっかりしろ!!さっさと中に入るぞ!!」


何とか全員を引き連れて中に入る俺達、中も白で統一された空間になっていて外よりもさらに神聖な雰囲気を醸し出している。柱や壁には彫刻が入っていて、神々を模した模様や教会で見た神々の歴史に加えて、法国との戦争の事も描かれていた。


入り口から続く長い通路を真っ直ぐ進むと、外の光りが入って来る出口が見える。眩しさを我慢してその場所から外に出ると、そこには白い壁に囲まれた美しい庭園が姿を現した。


美しく手入れをされ、芝生に加えて様々な草花が咲き誇る庭園の奥に、これまた俺を模したであろう巨大な白い石で出来た双盾を持つ巨人の像が建っていた。そしてその手前には白い石で出来た墓が並んでいる。


シルは像の正面にある墓の元に歩いて行った。多分あれが親父達の墓なんだろう。ハルバートに鞭が絡まってるモニュメントが建てられていて、墓石には親父とカマーンさんの名前が掘られている。俺達もシルの後に続いてその墓に近づいた。


「父様、母様、ルド兄様が帰って来ましたよ。今日は父様達に挨拶をする為に寄って下さいました。」

「親父、カマーンさん。やっと帰って来れたよ。遅くなってごめんな?ずいぶん長い事待たせちゃったな・・・。」

「じぃじ、ばぁば、ただいま!!」

「(=人=)タダイマー」


シルが墓の前で膝を着いて墓石に話しかける。俺もその横に膝を着き、墓に眠っている親父とカマーンさんに挨拶をする。シアとアイギスも、俺とシルの横に並び一緒に祈りを捧げていた。


しばらく無言で墓石に祈りを捧げる俺達。そして祈りが終って立ち上がると、墓石の向こう側に親父とカマーンさんの幻影が手を振っているのが見えた。


目を見開いて固まる俺の姿を見て笑顔を浮かべる2人。そして、2人の口が動いたと思えば俺の目の前に突然ウインドウが表示される。


称号取得

<帰還者> 長い時を得て戻って来た者の証。

『無事に戻って来れて良かったわ。元気な顔を見せてくれてありがとう。』


<ルバート家の長男> 英雄であるルバート一族の長男である証。

『どこに行っても、どれだけ時が経っても、姿形が変わっても。お前が俺達の息子である事は変わらない。だから今の世界も楽しんで生きて行け。』


親父達の口の動きは“おかえり”と言っていた。称号に付いていたメッセージを読んで。俺は幻影に向かって笑顔を浮かべながら言う。


「ただいま。言われなくても楽しむ為に来てるよ。だから心配すんな。」


俺の言葉に再度笑顔を浮かべてスーッと消えていく親父達。俺はここでやっと帰って来たんだという実感が沸いたのだった。


クリンとルゼダの師匠もこの場所に眠っていて。俺と同じように帰還者の称号と剣聖の弟子、聖女の愛娘の称号を貰っていた。リダについては、ここにもシンハ夫妻の墓があり、そこで祈りを捧げると帰還者と心義夢想流の伝承者と言う称号が増えた。


「幻影とは言え、もう一度師匠たちに会えてよかったです。」

「そうですわね。別れの挨拶をしていたとは言え、寂しかったですもの・・・。」

「お爺さんとお婆さんに又会えて良かったです。」

「ルド兄様も父上と母上に会えましたか?」

「あぁ、ちゃんと挨拶出来たよ。」


俺の言葉に笑顔で頷くシル。そして、シルの案内でこの霊廟とも呼べる建物の中に案内された。庭園から中に入れたらしい。そこも白で統一された場所だった。ただし、生活感が溢れあの神聖な雰囲気はまったくない場所だったが。


「ここは実は私の住いなんですよ。」

「この場所はお爺様達が母上の為にと作られた家になっています。人とは違う母上が苦労しない様にとお作りになったとか。」

「親父らしいな。」

「えぇ、おかげで色々と助かりました。」


ここにはリダ達は居ない。気を使ってくれたのか、やっぱり家族水入らずで話して欲しいって霊廟の探索に出かけて行ったよ。他にも英雄と呼ばれる人達の墓もあるし、城塞都市の人達はほとんどここに眠ってるそうだから、全員に声を掛けてくるんだと、俺も後で行かないとな。


ここに居るのは俺とシアとアイギス、それにシルとランスの5人だ。さてそれじゃあお互いの近況報告でもしますかね。それに気になる事もあるし。


「なるほどなぁ、国の相談役に・・・・。」

「えぇ、何分長い時を生きていますから色々と相談される事が多くて・・・。」

「母上の助言は的確で、現国王も大変頼りにされています。」

「よしてくださいランス。私は唯得た知識を披露しているだけにすぎません。」

「シルは凄い!!天才!!」

「(((uдu*)ゥンゥン」

「シア姉様まで、あまり持ち上げないで下さい恥ずかしい・・・。」


戦争が始まって親父達は前線に、シルは双子を守りながらこの城塞都市で生活していたんだそうだ。その間に人々を守る為の知識を集め始めた。その方法は俺がやったみたいに体を張って守る事じゃなかった。


言葉で人と繋がり発展を促して人類全体で魔物の脅威に対抗する事を選んだシルは、戦略や戦術、さらには外交や内政の知識までも貪欲に吸収しいき、その知識を惜しげもなく人々に伝えた。いつしかシルは指導者として国の相談役になっていたんだそうだ。


なんとあの万魔図書館にも3年程籠り、知識を求めたのだとか。その頃には双子も自立していて、気兼ねなく知識を貪ったと笑っている。


「そりゃ頼りにされるわな。万魔図書は失われた知識も眠ってるはずだし。」

「えぇ、古の兵法から失われた農耕技術まで。色々と勉強になりました。」

「シールとドルーはどうなったの?」

「あの2人は・・・・・。」

「(・・?)」


シルの努力と苦労に思いを馳せていると、シアが双子の事について質問した。シアの質問に表情を曇らせるシル。これはもしや死んだか?


「死んでは居ません。死んでは居ないのですが・・・。」

「死んでないならどうしてそんなに暗い顔をしているんだ?」

「兄様は父上が流派に開眼していたのを覚えているでしょうか?」


そんなの覚えているに決まっている。俺達の目の前でマネバザンが変化した親父の流派。鬼神斧槍流。戦争の時に親父の二つ名にもなっててビックリしたな。俺が頷いた事に気が付いたシルが話を続ける。


「戦争の際、父上に教えを受けてあの子達も鬼神斧槍流を学びました。そして活躍して一気に流派は有名になり、教えを乞う人が増えたのですが・・・・。」

「もしかして、どちらが一番弟子かとか後継者かで揉めたとかか?」

「・・・・・兄様にはお見通し何ですね。まさにその通りです。父上が後継者を指名していなかったので、お互いが正当な後継者だと主張し始めて・・・・。」

「ずっと喧嘩中?」

「はい・・・・・。シア姉さんの言う通り2人の子供や孫まで巻き込んで争っています・・・。」

「Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン」


おいおいおい、すでに60にもなるいい大人が利権争いで家族巻き込んでいがみ合いか?親父が知ったら嘆き悲しむぞ。いや、両方の頭に拳骨落して立てなくなるまで訓練かな?


「そこで相談なのですが・・・ルド兄さんに2人の仲裁をお願いしたいのです。私の話だと2人は聞いてくれませんから・・・・。」


ピコンッ♪特殊クエスト発生!!


鬼神斧槍流、真の後継者はどっち!!


双子が父から受け継いだ流派を巡って骨肉の争いをしている。どちらが後継者にふさわしいのかあなたが見極めよう!!


※受注条件、血族、もしくは関係者になるか、弟子としてどちらかに加担する。

※クリア条件 真の後継者を決める。


うわーい、身内でクエスト発生だー。はぁ、本当に何やってんだろうなあの子達は・・・・。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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