第185話

「村人の人は下がって下さい!!『誘引の歌』!ランララァ~♪」


僕達は西側から土地を浄化しながらお山を登っていた。でもこちら側は崖が多くて遠回りしないと行けない事は多いし、頭上からの奇襲にも気を付けないといけない。だけど僕がヘイトスキルを使う事で、今の所誰も倒されずに移動できている。僕をここに配置したメガネさんは凄いね。


「僕の華麗な剣技を見て行くと良いよ!『銀閃』」

「あっ!!その魔物はまだヘイト取ってません!!」

「ひぎゃぁぁぁっ!僕の体に黒いものが!!」

「先走るからそうなるのですよ!!浄化を早く!!」


シルバーっていう全身銀色の人が1人で突っ込んで、ヘイトを稼いで戻って来てくれるから敵を集めるのも簡単だ。この人多分天然でやってるんだろうけど見事な囮っぷりで感心する。僕も負けてられないね!!


「テッタさん大丈夫ですか?」

「あっリダさん!はい大丈夫です!!リダさんのスキルのおかげで固くなれましたし!!」

「それなら良いのですが。でも無理してはいけませんよ?あなたが倒れるとこの隊は総崩れになりますから。気を付けて下さい。」

「はい!!」


この人はリダさん。師匠のPTのアタッカーの人だ。盾職の師匠と良く組んで動いてるだけあって、僕の手の届かない所を凄くカバーしてくれる。所属していたギルドの所為で偏っていたステータスもリダさんの『心与』っていう技のおかげで盾職向けに変更出来た。


「ふぅ、僕の美貌が損なわれる所だったよ。」

「貴方はもうちょっと周りを見て行動してください。」

「そんなにプリプリ怒らないでくれよレディ。所で今度一緒にディナーでもどうだい?」

「殴りますよ?」ドゴンッ

「・・・HAHAHA!!ディナーは又別の機会にするとしよう。」


女性に所かまわずに声を掛けていたシルバーさんが曲がりなりにも戦闘に参加しているのはリダさんのおかげ。さすが師匠のPTメンバーだけあって守備隊の副隊長さんだって!!だからセクハラで逮捕出来るって脅したら素直に戦闘に参加してくれたの。今も変な事を言うシルバーさんを崖を殴ってクレーターを作る事で黙らせてた。お姉様って呼んじゃダメかな?


「リーダー!赤落ちを発見しました!どうやら死角の多いこっちから本体の方に回り込む算段の様です!」

「リダさんどうしましょう?」

「・・・・・。戦力的にはどうですか?」

「向こうとこちらで人数は同じくらいです。」

「赤落ちなんてすぐに討伐すれば良いのだよ!さぁ者共このシルバーに続け!!勝利の栄冠を我が手に!!」

「あっ!!シルバーさんが勝手に突っ走って行きました。」

「・・・仕方ないですね。貴重な戦力ですし見捨てられません。赤落ちの対処に向かいます。1人は必ず捕虜にする事、相手の勝利条件を知る事が先決です。良いですね?」

「はい!!それでは皆さん突っ走って行った馬鹿の回収に向かいますよ!!」


赤落ちを発見した人の案内で現場に急行した私達、目標地点に近付くと爆発音や凄い派手なエフェクトが飛び交っていた。


「ヘールプ!!僕を助けてくれたまえ!!」

「おら!!大人しくやられちまえ!!」

「1人で来たのが間違いなんだよ!!さっさとくたばれ!!」


逃げまどうシルバーさんに攻撃を加える赤落ち達。魔法や投擲武器がバンバン飛び交っているけどシルバーさんは器用にその中を逃げ回っている。


「僕が死んだら全国に居る僕のファンが君達を許さないぞ!」

「だったらお前をボロボロの惨めな姿にしてその映像広めてやるよ!!」

「リア充は爆発だぁーーーっ!!ヒャッハーーーーー!!」

「嘘です!!僕にファン何て居ません!!だから助けてぇ~!」


立ち止まって何を言うかと思ったらただ妄言を垂れ流して赤落ち達の怒りを買ってさらに攻撃を激しくさせただけだった。あの人何やってるんだろう?


「あれ放って置いたら駄目なんですか?それか私達もあの人の討伐に参加しません?凄く楽しそうですよ?」

「一応赤落ちが私達の敵だから倒しましょうね。シルバーを殴りたい気持ちは凄く解るけども。」

「はぁ・・・。それじゃあ総員赤落ちと戦闘開始!!」

「やっと来たね僕のエンジェル達!!さぁ僕と甘い一時を「「時と場所と人を選べこの色ボケ馬鹿!!」」げふぅ~。」


あー、いつもの事なんですね。同じギルドの人達がシルバーさんを殴って止めてから赤落ちと戦闘に入りました。もっと早く動いて欲しかったなぁ・・・。もしかして普段やらかしすぎて感覚麻痺してるのかな?ちゃんとしてないとセクハラ行為でシルバーさんも赤落ちになるよ?


「テッタさんヘイトをお願いします!!」

「あっすみません!!」


いけないいけない、今は戦闘中なんだから盾職として働かないと!でもこんなPTで大丈夫かなぁ?


本隊(ルドサイド)

俺達はお山の南側にある山門から土地を浄化しながら北上してる。西の方が凄く賑やかだが大丈夫なのか?


「ルシファーから連絡ですわ。北と東はミアズマを処理しながら順調に進んでいます。西は赤落ちと現在戦闘中。相手の勝利条件を知る為に捕縛を試みるそうですわ。あと東から連絡で赤落ちの本隊がこっちに向かっているそうですわ。」

「と言う事は赤落ち達の勝利条件がこっちに関係あるって事か?」

「普通に考えたらローズさんっすよね?」

「嬢ちゃんの守りは特に固くしてる。クエスト攻略のカギは絶対にあの嬢ちゃんだろうからな。」

「私も戦えます!!」

「何か在ってからじゃ遅いんだから守られてろ。」

「ですが私は戦士です!!」

「ローズ、聞き分けなさい。この方たちは私達の事を思って言ってくれているんだぞ?」

「ですが父上!!」

「まぁまぁ、落ち着け。そのうち存分に戦う事になるだろうからさ。」

「本当ですかルド殿?」


まぁ十中八九そうなるだろうなぁ。だってどう考えたってクエストのラスボスと戦う時に共闘する奴じゃんねこれ。


「それに赤落ちは私達旅人の問題ですわ。住民の皆さんにご迷惑はお掛けできませんもの。」

「おう、犯罪者になっちまった同胞は俺達が始末を着けねぇとよ。」

「そう言う事でしたら・・・。」


まぁ普段はこんな事を考えて赤落ちと戦ってる訳じゃ無いんだけどね。これも建前ってもんですよ。こう言っておけば納得しやすいと思いますよ?とメガネが言ってた。


「そろそろ来ますわね。」

「最初はどうしますか?」

「相手の出方次第か?まぁその前にルドにヘイトを取ってもらうが。」

「おう、任せとけ!」

「盾職が居ると頼もしいっすねぇ。やっぱりうちのギルドに入らないっすか?」

「誘いはうれしいが入らねぇよ。」

「ノート、辺りに気を付けて置いて下さいね。私はいつでも狙撃できるように準備しておきます。」

「はい!!」


ガサガサガサッ!!


戦闘準備を整える俺達の前に堂々と赤落ち達が姿を現した。その中でも先頭に立って歩いて来ているのは、アフロでサングラスを掛けて紺の短パンとアロハシャツを着たおっさんだった。


「いやぁ、どうもどうも。あんた達が巨神側の人?すまんねぇ付き合わせて。あっこっちは瘴気側の人だからね?一応君達の敵なんだけどちょっと事情を説明しとこうと思ってねぇ。」


現れた赤落ち達に武器を構えて戦闘準備を整える俺達、だけどアロハのおっさんは頭を掻きながら凄い軽い調子で話しかけて来た。


「偉い気安く話しかけて来たな?で?その事情ってのはなんだ?」

「おっ?話聞いてくれる感じ?助かるよー。いや実はね、赤落ち側のクエスト発見したの俺達なのよね。で、瘴気の奴に良いように使われちゃってる訳よ。クエスト失敗=キャラが永久に瘴気に囚われるって話でさぁ。いやぁ参った参った。」


本当に困った様に話すおっさん。その様子にこちら側の人達には動揺が広がっている。いやだって赤落ちがこんなフレンドリーに話するなんて考えて無かったからね。


「赤落ちの言葉なんて信用して良いんですの?」

「あ~やっぱり疑われちゃうかぁ。まぁ仕方ないわな。俺達名前は赤いが弱い者からは奪わない!!むしろ強い奴から積極的に奪う!!て信念持って義賊やってんだよね。悪い事している住民や、違法な売買をしている店を襲撃したりしてるから名前は赤いけどさ。心情的にはそちらの味方よ?あっ自己紹介まだだったな俺は見たまんまアロハ!!おっちゃんでもおっさんでもアロハおじちゃんでも好きに呼んでくれ!!」


おいおっさん、一番最後に自分の欲望が駄々洩れだぞ。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る