第186話

自称義賊のアロハというおっさんが俺達の前で座っている。後ろに赤落ち連中が居るがその人達も同じようにすぐ動けない姿勢でくつろいでいる。


「いやぁ、クエスト見つけてラッキーだとは思ったんだよ。赤落ちってレベル上がりにくいだろ?捕まったり殺されちゃうと持ち物と経験値全部没収だからさぁ~。これからも義賊やっていくにはどうしてもレベル上げたかったのよね。そんな時にこんなおいしいクエスト在ったらどうよ?受けるっしょ?で受けた結果が瘴気の奴隷。本当嫌になっちゃう。」


ヤレヤレと肩を竦めながら派内を続けるアロハ。俺達もそんな話を聞いて武器を降ろしていた。


「巨人族の村を占拠したのはなんでだ?」

「ありゃ占拠したんじゃなくてミアズマから守ってたんだよ。せっかく助かっても住む所無かったら悲しいだろ?住民の救済は巨神側がやってくれると思ってたからな。」

「じゃあなんで瘴気石を使ったのですか?」

「さっきも言ったがレべル上げの為だよ。それと瘴気の汚染地域を狭めたかったんだけどなぁ。うまく行かずに広がっちまったのよ。いやぁすまんね。」


またもや数多を掻きながら苦笑を浮かべるアロハ。でもその表情には本当に申し訳ないという感情が浮かんでいた。


「そんで、その被害者であるアロハは今回のクエストどうしたいんだ?」

「俺達の勝利目的は巨人を連れてあの山の池に行くこと。そうすっとこの奴隷状態から解放されるらしいのよ。とりあえずそれをクリアしたい。まぁ多分裏切られるだろうけどなぁ。」

「なんでそう言えますの?」

「瘴気の思念つうの?そういうのと話した事あるんだわ。ありゃー信用できねぇな。完全に裏切る気満々の奴の話し方だわ。こっちに都合の良い事並べ立てて気持ちよくさせてさ。腹の中じゃ何考えてるか全く分からないタイプってぇのかなぁ。分かるっしょ?」

「で、結局はどうしたいんっすか?」

「義賊の矜持として何の罪もない住民を生贄には出来ねぇ。かといってクエストクリアしないと俺達が救われねぇ。それに次いでと言ったらおかしいが、俺達側のクエストをクリアすると瘴気は一旦湖に引っ込むらしいんだわ。つまり土地と人を同時に救うには死んでも大丈夫な巨人が必要な訳だな。そんでもってそんな都合の良い旅人が実はここに居たりする。」

「俺か。」

「そういうこったな。だからよ、あんちゃん俺達に捕まってくれねぇか?」


最後の言葉だけはとても真剣に、そして自分達の行動の責任を他人取らせてしまう事への後悔の気持ちが表情のとても現れていた。そんな顔されたら答えは一択だわな。


「解った。装備やアイテムを仲間に預ける時間を貰っていいか?」

「こっちからお願いしてるんだ。構わない。」


とりあえずルゼダに全部預けとけば大丈夫かな?後はメガネにちょっとした伝言をしておいてっと。


「本当に信用して大丈夫だと思いますの?」

「少なくとも嘘は言ってないみたいだからな。それにもしもの時が在っても。」

「指示された通りにしておきますので安心して下さい。」

「頼んだぞメガネ。」


俺は持っているアイテムを全部預けて、アロハの元に向かった。


「すまないねぇ。苦労ばっかり掛けちまって。」

「アロハさんよ、それは言わない約束だぞ。」

「おっノリが良いね!まぁ少しの間だけどよろしく!!」

「それじゃあ皆、後は頼んだぞ!!」

「瘴気石はもう使わないからじゃんじゃん浄化しちゃって!それじゃ!!」


歩き出した俺達を皆が見送ってくれる。ローズだけは文句を言いたそうな顔だったがね。話を聞いたら自分が行くって聞かなそうだからあえて無視した。いやだってローズが死んだら取り返しつかんし。


「村に寄ってから山頂に向かうから。そのつもりでよろ!!」

「あいよ。そう言えばあんたらはどうやってここに来たんだ?」

「瘴気の野郎に無理矢理転移さぁ。今自分達がどこの国に居るのかも分かってないよん。」

「おいおい、どこでクエスト受けたんだよ。」

「盗掘者を処罰した時にちょっとあってにゃ~。あぁもうその遺跡潰れちゃったから多分見つからないよん。」

「一体何したんだあんた等・・・。」

「うーん、秘密かな?」


道中アロハやその仲間と色々と話をした。なんとこのフィールド最初はいろんな赤落ちが居るバトルロワイヤル状態だったそうだ。そこをアロハのチームが勝ち残り覇権を握ったんだと。


義賊をしているアロハ達の事を気に入らない連中が強襲してきたりもしたが、そこは他のチームが争っている間にミアズマを狩ってレベル上げをしっかりした事で乗り切ったんだそうだ。悪い奴を懲らしめて装備もアイテムもウハウハだったと高笑いしてたよ。


色々喋ってくれるもんだからもっと踏み込んだ話も聞いてみた。それはアロハ達の名前が赤くなった理由だ。


アロハ達が赤落ちになった理由はとある孤児院の話に関わって来るそうだ。領主と結託して孤児院を経営難に陥れ、土地を無理やり奪おうとした地上げ屋が居たんだそうだ。そいつを勢い余って殺っちゃったらしい。


で、そんな不正に関与していた領主も同罪だ!!死ぬならそいつにも怖い目見せてからレベルリセットが良い!!何てノリで言い出して実行。なんと領主の悪事の暴露と私刑に成功しちゃったんだと。


NPCを2人も手にかけて晴れて赤落ちになったそうだ。それはもうあっけらかんと話してくれたよ。


「多分正解は王都に行って王様に報告する事だったんだろうがなぁ。見事なクズだったからついカッとなっちまって手が滑ったんだわ。」

「アロハの親父は悪くねぇんですよ?俺達がクズに鉄槌をって息巻いてたのが悪いんでさぁ。」

「だがあの地上げ屋も領主も本当にクズだったんですよ?土地の取り上げだけじゃなく、孤児院のシスターや子供達を奴隷にして自分の欲を満たそうとしてやがったんですから。」

「まぁ関係者全員のあそこちょん切って、首謀者は天国に逝かせてやったがな!!いや地獄に堕ちたのか?どっちでも良いか!!」

「「「「がははははははは!!」」」」

「君達?笑い事じゃ無いんだからね?俺達が追われる原因それなんだからね?分かってる?」

「分かってまさぁアロハの親父!!」


聞いた限りだと、多分王都に行って窮状を知らせても孤児院は間に合わなかった可能性が高いな。彼らに必要だったのは守備隊か騎士団の仲間だったんだろう。どちらかが居れば犯罪行為を確認した時点で相手を犯罪者にして赤落ちすることは無かっただろうしな。


「もう少しで村に着きやす。」

「おう、一旦休憩してから山頂に行こうじゃないか。」

「そう言えばアロハの言う事を信じてここまで来たけどよ。いまさらだが本当に俺で大丈夫なのか?」

「クエスト説明文に巨人を連れてこいとしか書いて無いんだ。兄ちゃんの種族も巨人だろ?」

「そうだな。」

「だったら問題ねぇ。巨人族の女を連れてこい何て書いて無いんだからな!!まさか瘴気の奴もこんな屁理屈捏ねる奴が生き残るなんて思ってもみなかっただろうしな。」


まぁアロハ達も巨人族を山頂に連れて行ったら何が起こるのか全く分からないらしいし。出たとこ勝負だな。


考え事としながら歩いていると、目の前には立派な石の壁で囲われた村が見えた。


「最初は木の柵だけだったんだよね。それじゃ頼りないからって石の壁作っちゃいました。」

「おいおい、勝手に作っても良いのかよ。」

「駄目なら解体もこっちでやるから大丈夫だよん。」


ブイサインをこっちに向けながらキラリと歯を光らせて笑うアロハに苦笑を返しながら。俺は皆より一足先に巨人族の村に入るのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る